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第六章:商いをする漢
191:恐怖の幽霊屋敷~再び
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「壱:何を言ってるんや、この化け狐娘は。頭ぁグズグズに沸いとるんちゃうか」
「フム。鏡を見てから物を言って欲しいですな。頬を染め瞳を潤ませてるとか、不気味と言うか、不気味で気持ち悪いほど、不気味ですな」
「ナニカ、イッタカシラ?」
瞬間二人が氷に包まれると、そのまま氷柱になり閉じ込められる。
「悪は滅びました。さ、古廻様中へ行きましょう。嵐影もおいでなさい」
「……マ」
「お前が悪に見えるが……。まぁなんだ、お前らの死は無駄にしないぞ……さらば、壱と参」
「……マァ」
「おっとそうだったな、行こうぜ。しかしお前凄いなぁ、〆のあの迫力に全く動じないとは」
そんな話をしつつ、流が執務室へと入るのを柱の陰から見守る一人の影があった。
影がその姿を現すと、氷柱に丁寧に触れて優しく撫でる。
「御可哀そうに……。少しでも溶けるように日向へ移動しましょうか。おや、これは」
流達が去った後にセバスが現れ、氷柱を移動させようと柱の上部ふと見る。そこには瑞々しい果物が、二つ乗っていたのだった。
「――なるほど、では本日お客様がおいでになるのですか」
「ああ、セバスにも言ったがプレゼントに何が良いと思う?」
「そうですね……。そのバーツなる者には万年筆等はいかがでしょう?」
「お~それはいいな。事務仕事が多い人だし、ちょっと良いものなら喜ぶだろう」
「ご友人の方には金属製のタンブラー等はいかがでしょうか? 高級な品も良いですが、武骨な方とお見受けしたので、温度が変わりにくい物など良いかと」
「それもいいな! ファンならあちこちへ持って行って使いそうだし、めったな事では壊れないしな」
「最後は女性ですか……。別に何も差し上げなくてもよいのでは?」
〆は少しツンとした雰囲気になると、頬を膨らませて流れを見る。
よく見ると少し涙目のようだったが、流にはその理由は全く分からなかった。
「おいおい、そう怒るなよ。そいつにも世話になっているから選んでくれよな?」
「そうですか……。それでは髪飾りなどはいかがでしょうか。素材を厳選した鼈甲とプラチナで装飾した花をモチーフにした物などをご用意いたしましょうか?」
「それは凄そうだな。じゃあそれを頼む。セバスには俺から伝えとくから用意してきてくれ」
「承知しました……古廻様。その、あまりつまみ食いはいけませんよ?」
「? まぁ気をつけるよ?」
〆は「もう、仕方ありませんね」と言い残し、朧気に姿を消す。
その様子に首を傾げながらも、流は約束の時間まで空いた予定を少し考えてから行動に移す。
「さて、俺はやる事無くなったから、気合入れて訓練でもするか。美琴今日も頼むぞ!」
『…………』
「よし、じゃあアリスが寂しがってたから、今日は地下でやるか」
そう言うと流は、時間が来るまで地下室で特訓をしたのだった。
◇◇◇
――この時期の夜は遅い。
領主の館の陰に日が落ちる頃、一台の豪華では無いが、立派な馬車がお屋敷街へと滑り込む。
その車内には商業ギルドの主であるバーツと、その部下のメリサ。そして流の友人であるファンが乗っていた。
バーツは羽織っている物が膝まである、貴族風の落ち着いた藍色の衣服を着用しており、ファンも同じようなデザインの、貴族風な深いエメラルドグリーンの服を着ている。
メリサに至っては何時ものスーツ姿ではなく、こちらも美しい薄い紫を基調とした品が良いドレスで、緊張するように胸に手を当てていた。
「ふぅ。緊張しちゃいますね、私はまだ幽霊がいた頃に行ったきりですから」
「本当にどうなっているのか楽しみだな、俺も以前行った事があるが、幽霊に囲まれて逃げ帰って来たわ」
ヘタレな過去を豪快に笑い飛ばすバーツと、楽しみに心躍るメリサ。
「いや~幽霊がいた頃は半端じゃなかったからなぁ。俺も冒険者が幽霊を討滅するってんで、聖水やらの補給物資を積んで、庭に入った途端囲まれて冷や汗をかいたもんだ」
「それをよくもまぁナガレは討滅したものだな。本当に凄い男だ」
「ナガレ様はお強くて、商才もあって最高ですよね! しかもかっこいいし……」
「ん? 最後何か言ったか?」
「い、いえ何も!」
「お? そろそろ流の屋敷が見えて来たぜ」
車窓から顔を覗かせるファンは、流の屋敷へ到着した事を二人に伝える。
屋敷の前に来ると、自動で門が開閉し、馬車はそのまま奥へと進む。
やがて馬車が止まると、御者が馬車のドアを開け、そこには使用人達が勢ぞろいで三人を迎える。
「「「いらっしゃいませお客様」」」
「ほぉ。ナガレは何時の間にこんな使用人達を」
「凄いお出迎えですね、一糸乱れぬとはこう言う事を言うんでしょうね」
「だろう? 俺も度肝を抜かれたさ」
そんな話をしていると奥の扉が開き、幽霊屋敷の主がやって来る。
流は子供のような笑顔で「実に楽しそう」に、両手を広げながら三人を出迎えた。
「フム。鏡を見てから物を言って欲しいですな。頬を染め瞳を潤ませてるとか、不気味と言うか、不気味で気持ち悪いほど、不気味ですな」
「ナニカ、イッタカシラ?」
瞬間二人が氷に包まれると、そのまま氷柱になり閉じ込められる。
「悪は滅びました。さ、古廻様中へ行きましょう。嵐影もおいでなさい」
「……マ」
「お前が悪に見えるが……。まぁなんだ、お前らの死は無駄にしないぞ……さらば、壱と参」
「……マァ」
「おっとそうだったな、行こうぜ。しかしお前凄いなぁ、〆のあの迫力に全く動じないとは」
そんな話をしつつ、流が執務室へと入るのを柱の陰から見守る一人の影があった。
影がその姿を現すと、氷柱に丁寧に触れて優しく撫でる。
「御可哀そうに……。少しでも溶けるように日向へ移動しましょうか。おや、これは」
流達が去った後にセバスが現れ、氷柱を移動させようと柱の上部ふと見る。そこには瑞々しい果物が、二つ乗っていたのだった。
「――なるほど、では本日お客様がおいでになるのですか」
「ああ、セバスにも言ったがプレゼントに何が良いと思う?」
「そうですね……。そのバーツなる者には万年筆等はいかがでしょう?」
「お~それはいいな。事務仕事が多い人だし、ちょっと良いものなら喜ぶだろう」
「ご友人の方には金属製のタンブラー等はいかがでしょうか? 高級な品も良いですが、武骨な方とお見受けしたので、温度が変わりにくい物など良いかと」
「それもいいな! ファンならあちこちへ持って行って使いそうだし、めったな事では壊れないしな」
「最後は女性ですか……。別に何も差し上げなくてもよいのでは?」
〆は少しツンとした雰囲気になると、頬を膨らませて流れを見る。
よく見ると少し涙目のようだったが、流にはその理由は全く分からなかった。
「おいおい、そう怒るなよ。そいつにも世話になっているから選んでくれよな?」
「そうですか……。それでは髪飾りなどはいかがでしょうか。素材を厳選した鼈甲とプラチナで装飾した花をモチーフにした物などをご用意いたしましょうか?」
「それは凄そうだな。じゃあそれを頼む。セバスには俺から伝えとくから用意してきてくれ」
「承知しました……古廻様。その、あまりつまみ食いはいけませんよ?」
「? まぁ気をつけるよ?」
〆は「もう、仕方ありませんね」と言い残し、朧気に姿を消す。
その様子に首を傾げながらも、流は約束の時間まで空いた予定を少し考えてから行動に移す。
「さて、俺はやる事無くなったから、気合入れて訓練でもするか。美琴今日も頼むぞ!」
『…………』
「よし、じゃあアリスが寂しがってたから、今日は地下でやるか」
そう言うと流は、時間が来るまで地下室で特訓をしたのだった。
◇◇◇
――この時期の夜は遅い。
領主の館の陰に日が落ちる頃、一台の豪華では無いが、立派な馬車がお屋敷街へと滑り込む。
その車内には商業ギルドの主であるバーツと、その部下のメリサ。そして流の友人であるファンが乗っていた。
バーツは羽織っている物が膝まである、貴族風の落ち着いた藍色の衣服を着用しており、ファンも同じようなデザインの、貴族風な深いエメラルドグリーンの服を着ている。
メリサに至っては何時ものスーツ姿ではなく、こちらも美しい薄い紫を基調とした品が良いドレスで、緊張するように胸に手を当てていた。
「ふぅ。緊張しちゃいますね、私はまだ幽霊がいた頃に行ったきりですから」
「本当にどうなっているのか楽しみだな、俺も以前行った事があるが、幽霊に囲まれて逃げ帰って来たわ」
ヘタレな過去を豪快に笑い飛ばすバーツと、楽しみに心躍るメリサ。
「いや~幽霊がいた頃は半端じゃなかったからなぁ。俺も冒険者が幽霊を討滅するってんで、聖水やらの補給物資を積んで、庭に入った途端囲まれて冷や汗をかいたもんだ」
「それをよくもまぁナガレは討滅したものだな。本当に凄い男だ」
「ナガレ様はお強くて、商才もあって最高ですよね! しかもかっこいいし……」
「ん? 最後何か言ったか?」
「い、いえ何も!」
「お? そろそろ流の屋敷が見えて来たぜ」
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やがて馬車が止まると、御者が馬車のドアを開け、そこには使用人達が勢ぞろいで三人を迎える。
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「ほぉ。ナガレは何時の間にこんな使用人達を」
「凄いお出迎えですね、一糸乱れぬとはこう言う事を言うんでしょうね」
「だろう? 俺も度肝を抜かれたさ」
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