日本最狂の妖刀で、誰も見た事がない異世界・骨董無双~狂気の娘を返品したいがもう遅い!!だから神が宿る骨董品達で、俺が世界を改変してやるッ!!

竹本蘭乃

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第七章:新たな力を求めるもの

266:銘は「悲恋」名は「美琴」妖刀――『悲恋美琴』

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「出迎えご苦労。そちは典膳と申したな? よくぞここまで娘を育てた、大義である」
「ははあ~。ありがたき幸せ!」
「うむ、それでは早速その神剣たる御物を…………? 待て、何だそれは! どうしてその刀に『魂が籠っていない』のだ!?」

 それは典膳が初めて見る、神が余裕を失った瞬間だった。

「神よ。そ、それは一体どう言う……」
「どうもこうも無いわ! その刀には『霊臓庫の魂』が一片も組み込まれておらぬ……。美琴、貴様どう言うつもりだ!?」

「それこそ……どうもこうも無いですよ。……私は父に言いました」
「美琴……お前なにを言っているのだ? 俺に言った事だと?」

 美琴は〝ニチャッ〟とした笑顔を張り付けた顔で、睨みつけている神と父へと諭すように話す。

「だから……私は言いましたよ……。一世一代の『刃物』を作って『魅せる』と……」
「クックック。なるほど、刀では無く刃物で、見た目は神剣のように魅せるとな。理の愚物共が言っていた『疑』と言う事はそう言う事か。まさに仏作って魂入れずと言った所か。確かにその日本刀として力は絶大だが、我の望む力は出せん。それでお前は何をしたいのだ?」

 時空神・万世の帝は刀照宮美琴へと苦々しく問う。

「別に、何も……。ただ……許せなかったのですよ。私と……愛しい人の時間を奪った……あなた達が……」
「チッ。やはりあのイレギュラーが祟ったか。まあ良い、もう一度創造し直せばすむ事」
「え? 神よ、いれ……? そ、それより愛しい人? 美琴お前は一体何を……?」
「典膳よ、そちは知らなかっただろうが、お前の娘はある男に妄執しておった。言葉より見た方が早い」

 そう言うと万世の帝は右手の人差し指より、典膳の額へ向けて一筋の黄金の光を放つ。

「なっ!? あがああああ!! ……ぐぅぅぅ………………これは!?」

 典膳は黄金の光を受け一瞬苦しそうにするが、次の瞬間目を見開き驚愕する。
 その顔は驚きから次第に怒りへと変わり、そして絶叫する。

「美琴!! 誰だこの男は!!!!!! 千石だと? こいつがお前を誑かし、御物創造を邪魔したやつなのか!?」
「…………千……石? 誰? 思い、出せない……でも……」

 その言葉を聞き、最上神たる万世の帝は震える瞳で美琴を見る。

「待て。ま、まさか……。ッ!? やはり霊臓庫の魂を擦切らしておったか!! これでは二度と神剣たる御物の創造は不可能だ! 刀照宮美琴……キサマ、やってくれたな!!!!」
「そ、そんな……。美琴、お前は何て事をしてくれたんだ!!!!」

 狼狽する一柱と一人。その様子を滑稽だと見つめる刀照宮美琴は、最後の行動に移る。

「黙れ……煩い……お前達が望む物を、今から…………創造する」

 美琴はもう一度高温になっている火床ほどに入れた刀身を引き抜き、小槌を握ると「無名のはもの」へと睨み寄る。
 そして持てるだけの力を込めて、無銘の刀へと小槌を打ち下ろす。
 
「チィッ! 形は違えど典膳、そちの娘の解放は成ったぞ」
「は、え? 一体何を仰っているので……す、か」

 無銘の刀の刀身を、研磨する「鍛冶押し」すら行っていない状態で、刀照宮美琴が文字通り命を込めた最後の一打を刀身へと打ち込む。
 すると無銘の刀に無数の亀裂が走り、その後〝パキキキキッ……〟と言うような堅い殻が崩壊するような音が響く。そして――。

「神よ、こ……これは!?」
「黙って見ておれ……お前の娘が最後に込めた思いだ。因果律がねじ曲がりすぎて、先は読めんが『最上位』の刀が出来るのは間違いない」

 ――ついにその時がついに来る。
 全てを出し切った美琴の命はこの時、ついに終わりを迎える。
 小槌を無銘の刀へと打ち下ろした事で刀身全体へ亀裂が入り、それがもうすぐ弾けようとしたが、一時踏みとどまる……が、次の瞬間『美琴は盛大に吐血』して、無銘の刀をその血で染め上げる。

 すると殻が破れるように刀身全体を覆っていた、鈍色のくすんだ金属が弾け飛ぶと『刀身全体から、黒い紫の光』が鍛冶場を満たす。

 そして朦朧もうろうとする意識の中で、無銘の刀へ名付をする。

「貴女の……銘は……『悲恋』……よ」

 さらに刀照宮美琴は傍に落ちていた筆を取り、血だまりから筆に赤き命を染み込ませ「悲恋」へ傘を描き、その傘の下半分に『美琴』と執念で書き上げる。

「ハァハァ……これで……完成……です、お父様」
「美琴……。お前と言う奴は……」
「お……とう様……。これが私……の貴方……へ全力で贈る『形』であり……貴方が、受ける報い……です。どうぞ、お受け……取り、ください…………『妖刀・悲恋美琴』です」

 そう言うと、刀照宮美琴は目を見開きながら絶命した。
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