日本最狂の妖刀で、誰も見た事がない異世界・骨董無双~狂気の娘を返品したいがもう遅い!!だから神が宿る骨董品達で、俺が世界を改変してやるッ!!

竹本蘭乃

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第七章:新たな力を求めるもの

267:視えぬ未来

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267:視えぬ未来

「愚かな娘よ。我が加護を与える等そう無き事。それを逆手にとり、このような暴挙に出るとはな。所詮は人間と言ったところか。だが我は時の神、妖刀になる前に巻き戻し回収させてもらおう」

 万世の帝は空間から錫杖を取り出すと、先端を床に打ち付けるようにする。
 するとそこから金色の波紋が広がり、鍛冶場全体に広がりきると異変が――起きなかった。

「な、なんだと!? 何故時が巻き戻らないのだ!?」

 そこへ無機質な声が四方八方より響き渡る。

≪『つげる』。 「時空神・万世ノ帝」ノ、理ヘノ、過剰ナ、介入ノ為、因果律ノ修復不能。 ソレニヨリ。 疑・神刀ハ「神聖」属性ヲ、反転…………『成功』。 新タナ属性トシテ「深淵」ヲ、獲得。 『妖刀・悲恋美琴』ヲ、理ニ記録ヲ申請…………『可』。 此レニヨリ、妖刀・悲恋美琴ノ認証ハ、完了。 日ノ本ノ、ちからノ天秤ハ、先ノ変化以降、変ワラズ、継続。 哀レナ人ノ子ヨ、必ズ救イハ訪レマス。 ドウカ、忘レナイデ  

「こ、『理』風情が! この最上位の神たる我を愚弄するつもりか!!」

 怒りのまま時空神・万世の帝は空間を切り裂き、声の主達を排除する。
 その様子を呆然と眺める事しか出来ない典膳は、既に事切れている美琴へとそっと手をのばす。

「お前はそんなに俺を憎んでいたのか……。いや、憎まぬはずが無いか……。お前を失って初めて分かった、俺はなんて愚かで…………最低の父なのだ……」

 そんな典膳の心など知った事では無いとばかりに、万世の帝は典膳の所まで歩いて来ると、そのまま刀照宮美琴へと手を伸ばす。

「こうなっては仕方ない。最終手段だ、手痛い代償になるだろうが『受肉』を行う。素材はソレにするか」
「神よ、一体何を……」

 典膳の言葉を無視し、そのまま右手を前に突き出す。すると刀照宮美琴の体が浮き上がり、まるで十字架に貼り付けられたような恰好になる。
 そして万世の帝は己の胸に両手を突っ込むと、そこから「青と金色が混ざり合った炎」を取り出し、刀照宮美琴の胸へとそれを入れた。

「な!? か、神よ美琴に一体――」
「じきに分かる。さあ刀照宮美琴よ、神の依り代となれるその栄誉を寿ほごう。その肉体を多大なる感謝と共に差し出せ」

 青金の炎が美琴を包み込む。その勢いが一瞬業火に包まれたかのようになり、骨すら残らないのでは無いかと思う程の勢いだったが、不思議と熱は一切感じない炎だった。
 やがて青金の炎が収まると、そこから青色のメッシュが入った金髪で、肌が異様に白く、目が青い娘……色目は違えど、刀照宮美琴だったものが現れると同時に、万世の帝は砂塵のように消え失せる。

「み、み、美琴……なのか?」
「愚か者め、我は時空神・万世の帝なり。典膳よ、形は違えども約定は果たそうぞ」

 一瞬神の奇跡により、愛する娘が帰って来たのかと思った典膳は、それが最悪の結果だと知り空しくなる。
 そしてその娘だったであろう体から伸びる金髪には、千石と言う男が美琴へと送った美しい髪留めで纏められているのを見ると、典膳は何とも言えない複雑な心境になる。

「約定、ですか……。今となっては空しい響きですが、それより一体美琴の体で何をするつもりなのですか?」
「ほぉ。我を呼べるほどの魂の叫びを持つ願いを空しいと言うか。まあ良い。だが神との約定は絶対ぞ? お前の名は後世に残るだろう、妖刀を創造した娘の父としてな」
「…………では、娘の解放はどうなるのです?」
「そう、正にそれよ。お前の娘、刀照宮美琴は元々開放が不可能であった。どの未来を視てもお前の娘は確実に死ぬのが確定しておったからな」

 その言葉に典膳は絶句する。

「なっ!? それでは初めから美琴が死ぬのを分かっていて、あの約定を?」
「そうだ。だからこそ娘が無駄に死ぬ事を回避し『無駄死にからの解放』をしてやったのよ。意味のある死こそ人が望むものの一つであろう?」

 そう言うと万世の帝は満足気に笑う。

「では美琴には救いは無かった、と?」
「あったではないか。人としては膨大な容量を持つ霊臓庫を持ちえた結果、我にその肉体を差し出す栄誉にあずかれた事を誇るがよい」
「何と言う傲慢な」
「クハハハハ! それこそが神と言う存在ぞ? それにだ、そちには理解が及ばぬかもしれぬがな、そちの娘は死す事でその願いが叶う特殊な存在でもあった」
「……それは一体?」
「うむ、本来ならこんな死に方をしなければ、その魂は輪廻に還り来世にて思い人と結ばれると言う力があった。それも強力な物がな。しかし今そちの娘の魂はそこにある」

 万世の帝はいつの間にか、刀を打つための金属の塊である、金床かなどこに突き刺さっている「悲恋美琴」を指差して〝ニヤリ〟と嗤う。

「妖刀に美琴が宿ったと?」
「うむ、実に色濃くな。思いとか思念等と言う物ではなく、本人その物と言ってもいい」
「なんと…………」
「それにより輪廻の輪から逸脱し、本来の救いが得られない状況だ」
「そんな!? それでは美琴があまりにも不憫ふびんすぎます!」
「落ち着け典膳よ。そこで我もその妖刀の未来を視たのだ。それをお前にも見せよう」

 先程と同じように右手の人差し指を光らせると、典膳の脳裏に「悲恋美琴」の未来が見える。

「ぐぅぅぅ…………こ、これは!? 誠の事なのですか?」
「当たり前であろう。我を誰と心得る? すべて真実よ。ついでに少し別の過去も見せたがな」
「なんと……。未来からの使者・異世界・そしてその元凶たる『人形』の存在とは……」
「理解出来たようだな、重畳な事よ。さて問題はその時まで此度は最初の時間軸ゆえに数百年あると言う事だ。いくら神とは言え、そこまで悠長にする気も無い。一刻も早く今回の『失態』の原因を根絶せねばなるまい」

 そう時空神・万世の帝が、刀照宮美琴の顔で苦々しい顔つきになる。
 ただ一つ、気になる事がある。いったい未来からの客人はどうやって、ここへたどり着いたのか? と……。
 それがどうしても視えず、これも因果律がネジ曲がったせいだろうと思い、怒りで顔がゆがむ。
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