日本最狂の妖刀で、誰も見た事がない異世界・骨董無双~狂気の娘を返品したいがもう遅い!!だから神が宿る骨董品達で、俺が世界を改変してやるッ!!

竹本蘭乃

文字の大きさ
268 / 486
第七章:新たな力を求めるもの

268:失態の意味

しおりを挟む
 典膳は万世の帝が言った「失態」の意味が分からなかった。
 たしかに御物を創造出来ず、真逆の妖刀になってしまったのは痛恨だろう。
 しかし先に神が言っていたように「手痛い代償」を支払ってまで、神の体を捨て受肉をして顕現する。
 その意味が全く理解できなかった。

「神よ、なぜにお体を捨ててまで、美琴へと移られたのですか?」
「そうよな……。そちには知る権利もあろう。聞くがよい、あれは我が時空の歪にある些細な事に気を取られていた時に起きた事だった。そちも先ほど見た人形とはどう言う物かは分かるな?」
「はい、人に仇なす恐ろしい存在です」
「そうだ。神としては一世界の事など些細な出来事なれど、人と言う存在は愚かしくもあるが、愛でるべき存在でもある」

 万世の帝は言いながら、美琴の顔で自愛の表情を浮かべる。
 それがどうにも天膳には奇妙に見えたが、やはり神なのだと思い直す。なぜなら、とても落ち着く波動を美琴の体から放出していたのだから。

「そこに積極的に関与する事は理が邪魔する事で、力がありすぎる上位神になる程に難しくなる。が、下位になる程に人界で力も行使出来るのだ。無論我らからすれば些細な物だがな。時に典膳、最下位の神はどのようにして生まれるか知っておるか?」
「はい、私の知る所では古き物や、長く生きた獣が神格化すると聞いた事があります」
「その通りだ。そして今回の話の肝は、その人形が神格化した存在『付喪神』になった事から始まる」

 そこまで話し終わると、万世の帝は美琴の顔で苦虫を噛み潰したように話しを続ける。

「最下位の神たる付喪神の力は、大きくなるには最低数百年単位が必要だ。ところがあの人形に関してはそうでは無かった。人の際限ない欲望を取り込み、それを力とする事で僅か数十年と言う短い時間であの人形は『禍津神まがつかみ』へと覚醒した」
「だからあんなに人を塵のように……」
「そうだ。そしてあの禍津神を脅威と見た人間達が、それを討滅しようとした」
「それが古廻の前にある、鍵鈴けんれいの者達ですか?」
「うむ。だがそれも敵わず、鍵鈴と同格であった二家は滅ぼされ、鍵鈴は名を捨て古廻となったのは見たな?」
「はい……そしてその生き残りが、美琴をたぶらかした男である事も理解しました」

 典膳は悔しそうに目の前にいる、娘だった者を凝視しながら絞る様に呟く。

「やがて禍津神の暴挙に下級神共が騒ぎ始めた、あのままでは「神の力による大虐殺で理が乱れる」とな。事実その弊害は出始めておった。この世界だけでは無く、別の世界でも同時に似た現象が起こり始めたりしてな」
「先程見せていただきましたが、異世界ですか……驚くべき事実です」
「さもあろう。だが我らからすれば、隣の家に行く感覚だ。だからこそ見落としていたのだ。いくら最下級の神から覚醒し、禍津神へと成ったあの人形が、異世界へと逃れる力を持つなどとはな」
 
 娘の顔で怒りを滲ませながら震える神を見て、典膳も心底から恐怖を感じる。
 やがてその怒りも多少収まったのか、万世の帝は話を続ける。

「禍津神が異世界へと逃れる原因となったのは、下級神共がこれ以上放置は出来ないと直接動いた事にあった。いくら絶大な力を持つ禍津神とて、下級神達に狩り立てられる事には対処が不可能となった。そこで異世界へと逃げ込んだ訳だ」
「こ、ここまでは分かりました。しかし何故貴方様のような最上位の神が、娘の肉体を使ってまで?」

 典膳は震える声で確信へと迫る。

「そこだ!! それこそが我が油断した隙を付いて、禍津神が時空をこじ開けたのだ!! ヤツは理を捻じ曲げ、無理やり異世界へとの門を開き渡って行ったのだ。時空間の管理責任者たる我を無視し、あざ笑うかのようにな……。このような醜態を失態と言わず何とする!?」
「ひぃッ!? か、神よどうかお静まりください」

 娘だった体の周りに青と金色の炎が顕現し、怒りによって渦巻いていた。
 それを何とか諫める典膳だったが、魂を握られたような圧迫感で押しつぶされそうになる。

「む? すまなかったな。少し感情的になってしまったようだ許せ」
「お戻りになられて助かりました……。人の身ではあまりに酷ゆえに」
「そうだったな、話を戻そう。そこで我はそち、もとい娘に禍津神を討滅しえる神剣たる御物創造を命じた訳だ。それを古廻の者へと託すためにな。めぼしい者も選定済みだったのだがな。だが扱える力はあれど、妖刀・悲恋美琴を、人の身では持っただけで、取り殺されてしまう程の強烈な呪力がある。だからこそ我が失態を雪ぐためにこうして顕現したと言う訳よ」

 全ては神の油断と、その傲慢な考えに巻き込まれた……いや、典膳自身も喜んで加担した結果、最愛の娘をこの手で殺したも同然の事実に膝から崩れ落ちるように座る。

「そ、そんな事のために美琴は……」
「馬鹿者が。どの道、娘は死ぬ運命だったのだ。だから有効活用してやったまでの事」
「…………」
「それにだ、あの忌々しい禍津神たる人形を神たる我の力で斬れば、悲恋美琴ですら無事では済まないだろう。予想では真っ二つに折れるはずだ」
「なん……だと」

 驚愕する典膳、だがそれを無視をしてさらに続ける時空の神。

「その時が我と、そちの娘双方の願いが叶う時だ。我は汚辱を雪ぎ、美琴は『運が良ければ』妖刀から解放され、また輪廻へと戻る事が可能となろう」
「もし、失敗すれば?」
「当然そちのむすめの魂は消滅し、二度とこの世界には戻って来れぬだろうな」
「そんな…………」
「これで理解したな? 今だこの体に馴染んではおらぬ故、数日このまま養生し、その後に古廻の者達と合流して異世界へと立つ。そちも付いて参れ、新しい世界の始まりを見せてやろう」

 呆然とする典膳をその場に置き、万世の帝は鍛冶場の入り口へと向かって行く。
 その様子を呆然と見つめる典膳は、そこにある「悲恋美琴」に目が移る。
 研ぎも磨きもしていない状態だと言うのに、悲恋美琴はとても美しく、まるで熟練の研ぎ師が一世一代の仕事をやり遂げたような美しさがあった。
しおりを挟む
感想 77

あなたにおすすめの小説

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

無能認定され王宮から追放された俺、実は竜の言葉が話せたのでSSS級最凶竜種に懐かれ、気がついたら【竜人王】になってました。

霞杏檎
ファンタジー
田舎の村から上京して王宮兵士となって1年半…… まだまだ新人だったレイクは自身がスキルもろくに発動できない『無能力者』だと周りから虐げられる日々を送っていた。 そんなある日、『スキルが発動しない無能はこの王宮から出て行け』と自身が働いていたイブニクル王国の王宮から解雇・追放されてしまった。 そして挙げ句の果てには、道中の森でゴブリンに襲われる程の不遇様。 だが、レイクの不運はまだ続く……なんと世界を破壊する力を持つ最強の竜種"破滅古竜"と出会ってしまったのである!! しかし、絶体絶命の状況下で不意に出た言葉がレイクの運命を大きく変えた。 ーーそれは《竜族語》 レイクが竜族語を話せると知った破滅古竜はレイクと友達になりたいと諭され、友達の印としてレイクに自身の持つ魔力とスキルを与える代わりにレイクの心臓を奪ってしまう。 こうしてレイクは"ヴィルヘリア"と名乗り美少女の姿へと変えた破滅古竜の眷属となったが、与えられた膨大なスキルの量に力を使いこなせずにいた。 それを見たヴィルヘリアは格好がつかないと自身が師匠代わりとなり、旅をしながらレイクを鍛え上げること決める。 一方で、破滅古竜の悪知恵に引っかかったイブニクル王国では国存続の危機が迫り始めていた…… これは"無能"と虐げられた主人公レイクと最強竜種ヴィルヘリアの師弟コンビによる竜種を統べ、レイクが『竜人王』になるまでを描いた物語である。 ※30話程で完結します。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

神の加護を受けて異世界に

モンド
ファンタジー
親に言われるまま学校や塾に通い、卒業後は親の進める親族の会社に入り、上司や親の進める相手と見合いし、結婚。 その後馬車馬のように働き、特別好きな事をした覚えもないまま定年を迎えようとしている主人公、あとわずか数日の会社員生活でふと、何かに誘われるように会社を無断で休み、海の見える高台にある、神社に立ち寄った。 そこで野良犬に噛み殺されそうになっていた狐を助けたがその際、野良犬に喉笛を噛み切られその命を終えてしまうがその時、神社から不思議な光が放たれ新たな世界に生まれ変わる、そこでは自分の意思で何もかもしなければ生きてはいけない厳しい世界しかし、生きているという実感に震える主人公が、力強く生きるながら信仰と奇跡にに導かれて神に至る物語。

異世界転移からふざけた事情により転生へ。日本の常識は意外と非常識。

久遠 れんり
ファンタジー
普段の、何気ない日常。 事故は、予想外に起こる。 そして、異世界転移? 転生も。 気がつけば、見たことのない森。 「おーい」 と呼べば、「グギャ」とゴブリンが答える。 その時どう行動するのか。 また、その先は……。 初期は、サバイバル。 その後人里発見と、自身の立ち位置。生活基盤を確保。 有名になって、王都へ。 日本人の常識で突き進む。 そんな感じで、進みます。 ただ主人公は、ちょっと凝り性で、行きすぎる感じの日本人。そんな傾向が少しある。 異世界側では、少し非常識かもしれない。 面白がってつけた能力、超振動が意外と無敵だったりする。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜

サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。 〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。 だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。 〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。 危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。 『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』 いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。 すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。 これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。

処理中です...