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第九章:奪還作戦と、国の闇
473:石橋をわたろう
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やがて深い森を抜けると、眼前に幅の広い崖が広がる。
向こうの崖まで五十メートルほどの裂け目が左右ずっと続いており、その先は見えない。さらに谷底は二十メートルはあろうか、水がながれているが、かなりの高さで落ちたら命は無いだろう。
その危険な渓谷は向こう岸まで石橋がかかっており、そこの入り口には関所のような検問所があった。
エルヴィスは森の出口で、氷狐王に止まるようにお願いする。
「ここからは徒歩で行こう。イルミス様のお連れの方は……あれ?」
氷狐王から全員降りた後、エルヴィスは背後を見る。するとそこには、イルミスの仲間たちが消えていた。
「あれ? いったいどこに消えたんです?」
「いやですわエルヴィス。彼らは最初から乗っていませんでしたわ」
「そうだぞ。あいつらはイルミスの影の中に消えたからな」
「と、言うわけですわ。わたくしの眷属として蘇りましたが、その肉体は塵そのものと言ってもいいでしょう。そういう存在だと思ってくださいな」
「そ、そうですか。ナガレと知り合ってからわずかの間だが、度肝を抜かれっぱなしだな」
「ははは。まぁそのうち慣れるさ。俺なんか人間やめることになったが、それなりに慣れたぞ?」
「それもまた本当に凄い話だなぁ」
「さて、これからだが……どうするんだ?」
エルヴィスは「あぁ」と頷くと、目の前の渓谷について説明する。
「ここはタマラマン渓谷と言う。下に水はながれているが、激流で落ちたらほぼ命はないだろう。そんな危険な場所であるが、あの石橋があるから安心だ」
「結構広いわね。私も初めて来たけど、あれなら兵士が横に十五名は並べるかな?」
「はっはっは。お嬢様はすぐに戦に関する物の見方ですな。関心関心」
「姫将軍は景観より戦か。関心関心」
「もぅ、ナガレまでからかわないでよね! それにしてもこの景色は本当に凄いね……それにあの石橋、よく見るとどうやって架けたのかしら?」
セリアの言う通り石橋は巨大であり、とても堅牢そうに見える。武装した歩兵が多数乗っても問題はなさそうだ。
「なぁエルヴィス。いったいどうやってあの規模の石橋を作ったんだ? しかもまともな補強もしていないように見えるし、上から吊っているわけでもない。凄いなこれ! どうなっているんだ?」
橋の形はブレースドリブアーチに似ているが、明らかに強度不足なほど薄い。
しかも全て石のみで作られており、下に支えも何も無いように見える。
流の問に、エルヴィスは自慢げに指を鳴らすと答えを話す。
「いい質問だ。これはな、通常城壁とかに使われる石の、重さが半分程度のものだ。だが強度だけはある」
「へぇ~! でもだからと言って、この規模で橋を架けるには難しいだろう?」
「そう、そこだよ。まずこの石は重さも軽いが、硬度も硬い。それがうりでもあり、橋にしか使えない材質だ。というのも――」
エルヴィスの説明によると、この橋の材質である石はとても軽く、とても硬い。しかも折れにくいと言う橋にうってつけの材質だという。
だがこの石は、叩くと割れやすいと言う。だから城壁とかには使われないんだそうだ。
そして最大の疑問である、この巨大な構造物がどうやって浮いているように、橋がかかっているのかだが。
「えー!? 魔法で浮かせているのか?」
「そうだ。ほら、橋の入口に魔法陣が描かれているだろう? あれを起点に、向こうまで同じように繋げているのさ」
「うへぇ、もし万一魔法陣が壊れたりしたら落ちるのか……こわすぎ」
「いや、そいつも大丈夫だ。魔法陣が壊れても、しばらくの間は橋そのものに刻まれている魔法陣によって、橋はつながったままだからな。天災でどうにかなっても、そこは安全に考えられている」
「なるほどねぇ~。魔法ってのは本当に凄いんだなぁ……」
初めて見る石の巨大な橋に、流は関心する。その見事なまでの工法と安全性は、現代日本より優れているようにすら感じた。魔法ってずるい。
「そろそろ行こうか。観光は町に入ってからもできるしな。橋番には私から話をしよう」
「頼むよ。最後の町か……ここを超えたらいよいよ王都か」
流は渓谷の向こうにある、アルマークの町を見つめ、さらに奥にそびえる山頂が平らな山を睨むように見る。
そのまま進むと橋へとつき、いざ渡ってみると普通の橋だった。もっと〝ふわり〟とした感がある、歩き着心地を期待していたが、残念ながら普通の橋と同じ硬質なもので少し残念に思う。
途中で渓谷をのぞき見ると、見事な絶景が広がり観光地として成り立つだろう。実際向こう岸には屋台が立ち並び、そこで商売をしているようだった。
「いい場所だなぁ。こんな時じゃなければ数日滞在して楽しみたいほどだ」
『メリサちゃんを助けてから、みんなでまた来ようよ?』
「あ、それいいな! うん、そうしようぜ!」
『ふふ、楽しみが増えたね』
「あ、ちょっと。私も連れてきてよね? それよりあれ……またあなたのせいかしら?」
「しらんがな……と、言いたい。言わせてくれ」
先行していたエルヴィスが、橋番と何やら揉めている。それは平和的に町へと入れない事を意味しており、流は雄大な自然を見つめながら軽くため息を吐くのだった。
向こうの崖まで五十メートルほどの裂け目が左右ずっと続いており、その先は見えない。さらに谷底は二十メートルはあろうか、水がながれているが、かなりの高さで落ちたら命は無いだろう。
その危険な渓谷は向こう岸まで石橋がかかっており、そこの入り口には関所のような検問所があった。
エルヴィスは森の出口で、氷狐王に止まるようにお願いする。
「ここからは徒歩で行こう。イルミス様のお連れの方は……あれ?」
氷狐王から全員降りた後、エルヴィスは背後を見る。するとそこには、イルミスの仲間たちが消えていた。
「あれ? いったいどこに消えたんです?」
「いやですわエルヴィス。彼らは最初から乗っていませんでしたわ」
「そうだぞ。あいつらはイルミスの影の中に消えたからな」
「と、言うわけですわ。わたくしの眷属として蘇りましたが、その肉体は塵そのものと言ってもいいでしょう。そういう存在だと思ってくださいな」
「そ、そうですか。ナガレと知り合ってからわずかの間だが、度肝を抜かれっぱなしだな」
「ははは。まぁそのうち慣れるさ。俺なんか人間やめることになったが、それなりに慣れたぞ?」
「それもまた本当に凄い話だなぁ」
「さて、これからだが……どうするんだ?」
エルヴィスは「あぁ」と頷くと、目の前の渓谷について説明する。
「ここはタマラマン渓谷と言う。下に水はながれているが、激流で落ちたらほぼ命はないだろう。そんな危険な場所であるが、あの石橋があるから安心だ」
「結構広いわね。私も初めて来たけど、あれなら兵士が横に十五名は並べるかな?」
「はっはっは。お嬢様はすぐに戦に関する物の見方ですな。関心関心」
「姫将軍は景観より戦か。関心関心」
「もぅ、ナガレまでからかわないでよね! それにしてもこの景色は本当に凄いね……それにあの石橋、よく見るとどうやって架けたのかしら?」
セリアの言う通り石橋は巨大であり、とても堅牢そうに見える。武装した歩兵が多数乗っても問題はなさそうだ。
「なぁエルヴィス。いったいどうやってあの規模の石橋を作ったんだ? しかもまともな補強もしていないように見えるし、上から吊っているわけでもない。凄いなこれ! どうなっているんだ?」
橋の形はブレースドリブアーチに似ているが、明らかに強度不足なほど薄い。
しかも全て石のみで作られており、下に支えも何も無いように見える。
流の問に、エルヴィスは自慢げに指を鳴らすと答えを話す。
「いい質問だ。これはな、通常城壁とかに使われる石の、重さが半分程度のものだ。だが強度だけはある」
「へぇ~! でもだからと言って、この規模で橋を架けるには難しいだろう?」
「そう、そこだよ。まずこの石は重さも軽いが、硬度も硬い。それがうりでもあり、橋にしか使えない材質だ。というのも――」
エルヴィスの説明によると、この橋の材質である石はとても軽く、とても硬い。しかも折れにくいと言う橋にうってつけの材質だという。
だがこの石は、叩くと割れやすいと言う。だから城壁とかには使われないんだそうだ。
そして最大の疑問である、この巨大な構造物がどうやって浮いているように、橋がかかっているのかだが。
「えー!? 魔法で浮かせているのか?」
「そうだ。ほら、橋の入口に魔法陣が描かれているだろう? あれを起点に、向こうまで同じように繋げているのさ」
「うへぇ、もし万一魔法陣が壊れたりしたら落ちるのか……こわすぎ」
「いや、そいつも大丈夫だ。魔法陣が壊れても、しばらくの間は橋そのものに刻まれている魔法陣によって、橋はつながったままだからな。天災でどうにかなっても、そこは安全に考えられている」
「なるほどねぇ~。魔法ってのは本当に凄いんだなぁ……」
初めて見る石の巨大な橋に、流は関心する。その見事なまでの工法と安全性は、現代日本より優れているようにすら感じた。魔法ってずるい。
「そろそろ行こうか。観光は町に入ってからもできるしな。橋番には私から話をしよう」
「頼むよ。最後の町か……ここを超えたらいよいよ王都か」
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そのまま進むと橋へとつき、いざ渡ってみると普通の橋だった。もっと〝ふわり〟とした感がある、歩き着心地を期待していたが、残念ながら普通の橋と同じ硬質なもので少し残念に思う。
途中で渓谷をのぞき見ると、見事な絶景が広がり観光地として成り立つだろう。実際向こう岸には屋台が立ち並び、そこで商売をしているようだった。
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「あ、ちょっと。私も連れてきてよね? それよりあれ……またあなたのせいかしら?」
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