もふもふ子狐のせいで、廃棄(ゴミ)の烙印を押されたハズレ男。あまりにも酷い扱いをされたので、異世界召喚をした国を爽快バトルにて滅ぼします

竹本蘭乃

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転移の妨害編

002:狭間を超えて~異世界へ

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 俺は慎重な漢。
 
 だから当然、無駄に作りのよい豪華な引手に手をかけ、両手で〝スパーン〟と気持ちのいい開閉音とともに、勢いよく開く。
 その瞬間、背後と腰から「ちょぉぉぉッ!?」と声が聞こえたが気にしない。

 そう、俺は大胆な漢であるからだ。って、なにかまぶしいんだが?

「――ッ、目がくらむ!?」
『やだ、一体何があったの!?』

 戦極と美琴の声が重なる。
 その瞬間、異世界へと通じる空間がネジ曲がり、さらに戦極が内部へと吸い込まれて行く。
 よく見ればいびつな魔法陣があり、そこへと吸い込まれているようだ。

「これは!? ッ、いけない! 古廻様もう一度よく聞いてくださいまし! 何があっても悲恋美琴だけは手放しませぬように!!」
「せやで古廻はん! 美こっちゃんがいないと、あっちで死にまっせ!!」
「フム! 古廻様この状況は通常の異世界渡りとは大きく違います!! 何があるか全く予想が出来ませぬ!」

 オイオイオイ! なんだよそれは!?
 あ、もしかして俺が勢いよく襖を開けたから? フッ……いい漢ってのはな、後悔はしないもんだぜ?

 とはいえ、だ……このままじゃ、マジやべぇええええ!!

「クッ、ソ――体が引きちぎられそうだッ!!」
「「「古廻様!!」」」
「美……琴……俺から、離れるんじゃねえぞッ!!」
『うん! 分かっているよ戦極様!!』

 戦極は腰の悲恋美琴を左手で強く握りしめると、右手を伸ばし入り口の方向へと伸ばす。
 それを三兄妹は必死につかもうとするが、見えない壁がありつかめない。
 
「クッ、こうなれば異超門を破壊して――」
「やめい阿呆あほう!! 古廻はんまで殺す気か!!」
「しかし兄上、このままでは古廻様が、古廻様がッ!!」
「わかっとる!! が、現状どうしようもないわ……しん、何かあらへんか!?」
「フム……先程から手を尽くしています。が、全て弾かれてしまいますな」

 〆と壱は高速で動く、参の両手から放たれるモノを見る。
 それは何かの呪符のようであり、効力を実行したそばから消滅を繰り返していた。
 苦々しくそれを見た二人は、即座に視線を戦極へと戻す。
 戦極もまた必死に抵抗しており、額に脂汗を浮かべ、苦しげな表情を浮かべながらも、必死にこちらへと戻ろうとしている。

「参ほどの空間干渉術の使い手を寄せ付けないとは……まさかッ!?」
「あぁせやろうな。どっかの馬鹿が、『ことわり』の法則を破ったに違いない」
「フム、それはまた大胆な……しかしそんな馬鹿な事をするとは、一体誰がそんな事を?」

 〆はギリリと奥歯を噛み締め、兄二人の疑問に右手を指して応える。

「アレでしょうね。あんな魔法陣は三百年前はありませんでした」
「フム、確かに無かったはず。アレに干渉さえできれば、このような結界など容易く壊せるものをッ!!」

 ぐうううううッ!! 意識が飛びそうだ、このままでは後ろの魔法陣に吸い込まれる!
 だが三兄妹あいつらも必死に手をうってるが――。

「オ、イ! お前……たち、やめないか!! 手から血が吹き出ているぞ!!」
 
 馬鹿ヤロウどもがッ! 俺のために何してるんだよッ!?
 素手で障壁を殴ってもどうしようもねぇだろうが!!

「お前……ら、が。傷つくのは……見たく、ねええええ!!」
「「「それは我らも同じです!!」」」

 チッ、アイツらはもっと深刻な大怪我をしてもやめねぇ。
 ならやる事は一つのみ!! クソ、この落とし前、かならず償ってもらうぜ、見えない誰かさんよッ!!

「短い間だったが世話になった! 兄妹仲良く楽しく過ごせよ!! じゃあ行ってくる!!」
「な!? まさか……ダメです古廻様ああああああああ!!」
「ちょ、待ちいなああああああ!!」
「フムウウウウウウウ!!」

 戦極は左腰の悲恋美琴を強く握ると、〆たちに背を向ける。
 直後、これまでとは違い、とてつもない吸引力で魔法陣へと吸い込まれる戦極。
 やがて戦極が魔法陣へと吸い込まれた瞬間、異超門がゆっくりと音も立てずに閉まり始めた。

「「「古廻様ああああああああ!!」」」
「ただいま帰ったワンょ~。って……なんだワン?」

 常識が通用しない異怪骨董やさんの店内へ、突如現れた小さな障子戸。
 その中より超小型犬くらいの、青白い小さな子狐が出てくる。
 それが異超門のすぐ目の前だったものだから、小狐が気がついた時にはすでに遅し。
 残された三人とは違い、ものすごい勢いで異超門へと吸い込まれていく。
 どうやら転移してきた座標と、異超門が作用して小さな穴が障壁に開いたようだ。

「うわわわ!? な、何が起こっているんだワンよ!!」

 小さな前足で必死に踏ん張るも、あわれ子狐。
 まぬけな声で「あ~れ~」と言いながら、吸い込まれたと同時に異超門が閉じる。
 それに気が付かない三兄妹。だが何か違和感を感じるが、戦極のことで頭が一杯であった。

「くぅぅぅッ、あの不格好な魔法陣のせいで古廻様が……。必ず、そう。必ず突き止め、あの魔法陣を作った愚か者が生まれてきたことを、九億九千九百九十九回後悔しても、もっと、もっと、もっと、地獄すら生ぬるい苦痛を味あわせてやるッ!!」
「もうチリすら残ってないでそれ……が」
「フム……」

 三人はこの世のものとは思えない、恐ろしく冷徹な声で声を合わせつぶやく。

「「「首謀者は必ずブチコロス」」」

 店内の骨董品たちが一斉に震え上がり、物音一つ立てることはない。
 その本来の骨董品にもどり、静寂に包まれた店内で三人はほの暗く瞳を光らせるのだった。

 ――ここは現世と異世界のはざまにある、〝異怪骨董やさん〟と呼ばれる場所。
 戦極の先祖が代々集めた、超常的な力を持つ骨董品を〝封印〟しておく場所である。
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