もふもふ子狐のせいで、廃棄(ゴミ)の烙印を押されたハズレ男。あまりにも酷い扱いをされたので、異世界召喚をした国を爽快バトルにて滅ぼします

ダンジョン～〝戦極〟覚醒編

０５３：システム

「そう、人を殺さないなんてのは常識的な話だよ。だがもう異世界ココはそれが通じない」

　二人は思い出す。
　晩餐会ばんさんかいであった、村人を使い潰す話を。
　それを思い出した二人は、顔色を青くしてお互い見つめあう。
　戦極は二人がその意味を悟った事で、さらに話を続ける。

「だからこそ俺は強く言う。もし二人の身に危険が迫り、どうしようもないほど命の危機に陥ったら、相手が人間だろうが迷わず攻撃してほしい」
「え!?　それでは今言った事と違うんじゃ……」

　桜は不思議そうに戦極を見た後、剛流と顔を見合わせる。
　剛流も同じ疑問を持ったようで、そのワケを口に出す。

「せ、戦極さん。それは一体どういう意味でしょうか？」

　戦極はフェリスへと顔を向けると、この世界でおこりうる現象を確認。

「フェリス、この世界で人が人を殺すと、その後どうなる？」
「どうって……そりゃ死ぬわよ。そのあとちゃんと埋葬や処理をしないと、アンデッドになったりする感じかな？　ちなみにこの国では、さほどの罪でもないわね」

　桜と剛流は、フェリスの言葉にショックをうけたか。
　無理もない……人の命が軽いとか、悪い冗談にしか聞こえないだろうからな。
　だが俺が知りたいのはそこじゃない、その先がどうなるか、だ。

「アンデッドはどういう仕組みでなるんだ？」
「そうねぇ。聞いた話では天に還る魂・・・・・が、闇落ちするみたいね」

　やはり日本で聞いたとおり、アンデッドになるってのは本当か。
　そして天に還る魂……つまり輪廻リンネシステムが異世界こちらにもあるって事か。
　ほぼ確定だな。奴らは異世界にもいる。

「そう……か、今の話で確信した。やはりこの世界で人を殺すと――人間ヒトをやめることになる可能性がある」
「そ、それはどういう事ですか戦極さん!?」
「人間をやめるって……」
「変態さん、それはいくらなんでもねぇ？」

「言葉のとおりだよ。詳しくは言えないが、俺たち日本人がこの国で人を殺すとそうなる可能性がある」
「戦極さん、そんな事はしたくないですよぅ」
「う、うん。僕も同じです」
「わかっているよ。だがもう一度いう。自分の命の危機がせまったら、迷わず相手を倒してくれ。それ以外は出来るだけ殺さないでくれ。いいな？」

　そんなに心配そうにするなよ。
　今はこんな状態だから日本へ返せると、ぬか喜びさせたくないから言えないが、きっと帰れる。
　いや、帰してみせるから今は耐えてくれ。

「わ、わかりました。僕は戦極さんを信じます」
「私も同じです。なぜか戦極さんの言うことは、ウソとは思えなんですね」
「そう言ってくれて助かる。詳細を言えばもっと危険な目にあうかもしれないから、今はこの話だけですまない」

　二人は力強くうなずくと、明日の予定を話す。
　どうやら明日の朝、ライオスの訓練場へと集まるらしい。
　
「わかった、二人ともありがとうな。じゃあ明日」
「「はい！」」

　駆け足で去っていく二人は、三度振り返りながら手を振る。
　戦極も桜と剛流が見えなくなるまで手をふり、そのまま背後へと倒れこむ。
　瞬間、〝ふわり〟と金色に包まれながら、その暖かさにホッと安心しながら話す。

「っと、すまないフェリス」
「しかたないなぁ変態さんは。あの二人に心配かけたくないから、ムリもしちゃうよね」
「九日も動かないと流石に足にくるな」
「回復するまでこのままでいいよ？」
「助かる。少ししたら歩けるだろうから、このまま甘えさせてもらうよ」

　さて明日か……。
　武器もある。気も思った通りに錬ねれた。
　現在出来ることは全てした。あとは――。

「――俺の運だけだな」

　大樹の木漏こもれれ日を顔にうけ、まぶしげに目を細める戦極。
　フェリスの柔らかな心地よさに満足し、そのまま目を閉じ回復をはかるのであった。