もふもふ子狐のせいで、廃棄(ゴミ)の烙印を押されたハズレ男。あまりにも酷い扱いをされたので、異世界召喚をした国を爽快バトルにて滅ぼします

竹本蘭乃

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完全開放!! 爽快バトル編

100:続・戦国無双

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「せ、戦極さん? 無事だったんですね……よかったぁ」
 
 倒れたまま首だけをあげ、戦極を見上げる。
 そのすがたに一瞬ドキリとする桜。
 それというのも見た目――いや、何かわからないが、圧倒的な力を感じることができたから。
 
 だから見るからに〝ちがう〟と確信し、その存在そのものに〝安心と安らぎ〟を感じ、涙があふれる。
 震える右手で戦極へと手を伸ばす。
 それを自然に手を取り桜を起こす戦極は、じっと瞳を見つつ「無事でよかった」と一言告げた。

「剛流。その墓石で作ったバリケードに背中をあわせて、桜を頼む」
「は、はい。わかりました!」
「戦極さん!? まさか一人で行く気じゃ!!」

 戦極はチラリと桜と剛流を見る。
 そのボロボロになった姿を見て、ここを死守しようと必死だったと理解。
 だからこそ、優しげに口を開きこう話す。

「そのまさかってやつ・・・・・・・を見せてやるよ。美琴、妖気はどの程度回復した?」
『さっき大技を使ったから、四割ってところなんだよ』
「上等。なら――いくぜ?」

 戦極は前面より迫るアンデッドの群れに突っ込む。
 その数、最低数百はいるだろう。
 
 だがなんの気負いなく口角すらあげながら、獲物を狩る野獣の眼光で周囲を見る。
 さらに腰を低くして頭から突入し、アンデッド群へと迫ること残り二メートル。
 生者の気配を察知し、一斉に襲いかかるアンデッドが戦極を呑み込む。

「せ、戦極さんッ!!」
「そんな!? 戦極さんいやあああ!!」

 剛流と桜はその様子を見て絶叫。
 だが次の瞬間、呑み込まれた場所からくぐもった声が聞こえた。 
 
「ジジイ流 抜刀術! 夜叉独楽やしゃごま!!」

 ――夜叉独楽。
 中伝の抜刀術の基礎として覚える最初の業である。
 本来抜刀術は〝静止した状態から放つ高速剣〟であり、動きながら使うなどはありえない。
 
 が、そこは古廻戦極。
 天才的な武術の才能は、動きながらの抜刀術を可能にした。
 さらに、この夜叉独楽は戦極のオリジナルでもある。

 なぜなら本来の業は、一回転のみの斬撃で周囲を一掃するものだった、が――。

「邪魔だ、とっとと輪廻へ還れ」

 そう言いながら、さらに回転は加速。
 右足を擦り気味に地面へとすべらせ、さらに左足を交差させながら回転を重ねる。
 その反動で一気に悲恋を振り抜き、驚くほどの速さで高即納刀。

 さらに動きはとまらず、また鞘から悲恋を抜刀し夜叉独楽で斬り込む。
 時には斜めに回転し、時には縦に回転し、極めつけはブレイクダンスをしているとしか思えない、アクロバットな動きで夜叉独楽を放つ。

 そのあまりにもデタラメで圧倒的な攻撃により、一気にアンデッドが細切れになり吹き飛ぶ。
 スケルトンは鎖骨さこつ・仙骨・大腿骨だいたいこつを切断され、ゾンビは何がおきたのかも分からず斜めに三等分にされた。

 生々しく、骨ぼねしい破壊音が桜と剛流の耳に入ったころ、アンデッドの壁が崩壊したのを二人は目撃。
 あれほどいたアンデットの群れは、その大半がただの死体へと変わり果て、土へと帰っていくのを二人はただ見ていることしかできない。

 震える声で桜は問う。本当にアレは自分の知っている戦極なのか、と。

「せ……戦極さん?」

 そんな桜へと苦笑いを浮かべながら、左手で髪をかきあげながら戦極は話す。

「大丈夫って言ったろう? 創業三百年ってのは、伊達でも酔狂でもねぇのよ。これが俺の本当の力だ」
「「戦極さん!!」」
「まぁ見ていなって、もうすぐ終わらせるからよ。わん太郎二人を頼んだぜ?」
「わかったワンよ~。ほれぇ、二人ともワレが守ってあげるから、安心するがいいワン。なにせワレはエライからして」

 そう言うと戦極は残りのアンデットへと斬り込む。
 その姿に呆然とし、油断をしていた桜を背後からアンデットが襲う。

「桜ちゃん危ない!」
「え……きゃあ!?」

 油断した桜へと襲いかかるゾンビ三体。
 逃げようと体勢を斜め前へと動いた瞬間、足元から気の抜けた声がする。

「あ~。臭い死体だワン、お鼻がまがっちゃうから嫌いだワンよ~」

 わん太郎は二本立ちになり、両手で器用に小さいまん丸お鼻を肉球で塞ぐ。
 さらに右後ろ足を〝ぽむり〟と地面へ打ち付けると、そこから氷の刃が出現してゾンビを串刺しにした。
 
 あまりの状況に二人は混乱し、桜は困惑のまましゃがみこみ、そして――。

「えっと……お手?」
「なんでだワンよ! それにワレは犬じゃないワン! エライ狐の王様だからして、そんな屈辱的なことはしないワン。でも例外として、あるじぃと激コワ女狐だけはしてやるんだワンよ」
「い、意外といるんだね。僕も子犬かと思ったよ、だってワンワン言ってるし」
「失礼な下僕どもだワン。このカッコよきワレを見て犬だなどと、見る目なさすぎだワン」
「かっこよくはないけど、かわいい……」

 そう言うと桜は、ふんぞりかえっている子狐を抱きしめるのだった。
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