105 / 105
完全開放!! 爽快バトル編
104:三百年の思い
しおりを挟む
「……そうだ。自分らはこの国を、正当な主の元へ奪還するためにいる」
「正当な主? あの豚王の他に誰かそんな奴がいるのかよ」
「あぁいる。だが今はとても遠いところに居られる……。だから何としても、安心してお戻りになれる環境を作らねばならないのだ」
また面倒な話になってきたな。
お家騒動に巻き込まれちまうのはカンベンだが、どのみち人形がらみだったら、中核にいるのはあのブタ王たるセルド、か。
いや、セルドは傀儡だろうな。
とすれば……やはりエカテリーナが言っていた事を考えると、バーゲンの野郎が黒幕か?
そうなると面倒だがここは――。
「――いいぜ。おたくらのスイートホームへ案内してくれよ」
「その言い方は好かん。が、心強い見方となってくれそうだ」
ジンはニヤリと笑うと、右手を差し出す。
それを固くにぎることで、戦極も了承の気持ちを伝える。少し強めに。
「ッ、たく。センゴクは加減ってものを知らんのか?」
「あ! すまない。力を取り戻してから時間が短いもんでさ、ついつい力みすぎたらしい」
やはり、か。
妖気はこの世界で異質なのは違いない……が。
「それでジン。これからどうするんだ?」
「それだが、自分はこのまま一度現隊へと戻る。イザーク。疲れている所すまないが、センゴクを案内してやってくれ」
「了解だ。それにセンゴクの旦那には大きな借りもあるし、俺に出来ることなら何でも言ってくれよな!」
ジンは頷くと、そのまま踵を返し去っていく。
森の中へと入る寸前で、一度振り向くと戦極へと話す。
「センゴク、巻き込んでしまいすまないと思う。だが、おまえの力は凄まじいのだろう。だから頼む、この国を救ってくれ」
「救うのはアンタらの仕事だ。が、やれる事はするさ」
「……感謝する。ではなセンゴク、また会おう」
どうにも胡散臭いねぇ。
ジンはどうして魔力を込めて握ってきた? 試そうとするには稚拙にも感じるが……。
たくっ、色々と楽しめそうな未来で、俺は感激の海にしずみそうだねぇ。マジかんべん。
「センゴクの旦那。ジンはちょっと変わっていはいるが、悪いやつじゃない。気分を害したら許してやってくれ」
「ん? あぁ大丈夫だよ、変わり者は世の中にごまんといるさ」
「そう言ってもらえると助かるぜ。んじゃ行こうか、まずは俺んちへ行こうぜ旦那!」
「旦那ってなんだよ、ったく。話もまとまったから行こうぜ二人とも」
「「はい!」」
色々と気にはなるが、まずは流れに乗るとしよう。
それが濁流となり、汚泥を運び、罠の元へと流れ込めばどうする?
「簡単だ、噛み砕けばいい」
『さす極。戦極様ならイージーモードだよ』
「嫌だねぇ美琴さん、心を覗かないでくださいまし」
そんな話を美琴としていると、イザークが不思議そうに話しかける。
「センゴクの旦那? 誰と話しているだい?」
「あぁ独り言だよ。それでイザーク、どこへ向かっているんだ?」
イザークは「この森を抜けたら見えるぜ」というと、よどみなく歩きつづける。
それから十数分歩くと、モリを抜けて崖の上へと到着した。
周囲は一面森となっており、遠くに建物群が見えた。
それはイザークの言っていた街だろうと、戦極たちは思う。
「見えた見えた! あそこに見える〝リザールの街〟へ行こうぜ!」
そう言うとイザークは鼻の下へと人差し指を当て、グスリと鼻をすする。
見れば瞳はぬれており、どうやら街を見て妻と娘を思い出したようだ。
「あいつらには心配かけちまったなぁ。今帰るからな、待っててくれよな……」
『リリーちゃんも奥さんも、あなたを心配していたんだよ。だからお土産を持っていかないとだよ?』
イザークは「しまった!?」と声を上げると、美琴の言う土産の意味を理解。
それは食料であり、リザールの街では貴重品であったのだから。
「しまったなぁ。センゴクの旦那たちにも食べさせる食料が無いし、どうしようか……」
そんな事をイザークが言って悩むと同時に、背後から声がする。
あざとい〝ぽむぽむ〟という足音と共に、それは現れた。
「んあ~、おまたせだワンよ~。ほれぇ、見てみて~大漁だワンよ」
わん太郎は氷で出来たソリを引きながら、森から出てくる。
ソリの中には鳥と何かの動物が乗っており、氷漬けになっていた。
「こ、これは!? レアな動物ばかり……もらってもいいのかよ!?」
「かまわないワンよ~。どうせ食べようと思って、てきとーに狩っただけだワンからねぇ」
喜ぶイザークと、珍しい動物に驚く桜たち。
そんな三人を尻目に、戦極はわん太郎へと話しかける。
「……それで?」
「よくわからないんだけどねぇ。あの男、ジンは怪しさ満点だったワンよ。ただ周囲に罠らしいものや、つけてくるヤツもいないから、このまま進んでも大丈夫だワンよ」
「そう、か。ならばこのまま行くか」
遠くに見える白い町並みを見ながら、戦極は悲恋の柄を握りしめる。
その意味を察した美琴は、悲恋より抜け出ると、戦極の隣へ立ち話す。
「これからが本番なんだよ」
「あぁ、これからだ。そう、全てはこれから始まる。待っていろよ人形――いや、弐刃。今から三百年研ぎ澄ませた刃を、一族最強の俺が叩き込みにいくからな」
戦極は天に輝く双子の沈まない月を見上げる。
まだ昼だが月は怪しい光をたたえ、戦極を嘲笑い照らす。
それを見つつ、口角をあげる戦極の表情は、獲物を狩る狼のように自信に満ちあふれていた。
――――――
ここまでで「完全開放!! 爽快バトル編」が終了となります。
次回再会は未定ですが、全体のブラッシュアップをして再開する予定です。
全105話を応援していただき、本当にありがとうございます!!
「正当な主? あの豚王の他に誰かそんな奴がいるのかよ」
「あぁいる。だが今はとても遠いところに居られる……。だから何としても、安心してお戻りになれる環境を作らねばならないのだ」
また面倒な話になってきたな。
お家騒動に巻き込まれちまうのはカンベンだが、どのみち人形がらみだったら、中核にいるのはあのブタ王たるセルド、か。
いや、セルドは傀儡だろうな。
とすれば……やはりエカテリーナが言っていた事を考えると、バーゲンの野郎が黒幕か?
そうなると面倒だがここは――。
「――いいぜ。おたくらのスイートホームへ案内してくれよ」
「その言い方は好かん。が、心強い見方となってくれそうだ」
ジンはニヤリと笑うと、右手を差し出す。
それを固くにぎることで、戦極も了承の気持ちを伝える。少し強めに。
「ッ、たく。センゴクは加減ってものを知らんのか?」
「あ! すまない。力を取り戻してから時間が短いもんでさ、ついつい力みすぎたらしい」
やはり、か。
妖気はこの世界で異質なのは違いない……が。
「それでジン。これからどうするんだ?」
「それだが、自分はこのまま一度現隊へと戻る。イザーク。疲れている所すまないが、センゴクを案内してやってくれ」
「了解だ。それにセンゴクの旦那には大きな借りもあるし、俺に出来ることなら何でも言ってくれよな!」
ジンは頷くと、そのまま踵を返し去っていく。
森の中へと入る寸前で、一度振り向くと戦極へと話す。
「センゴク、巻き込んでしまいすまないと思う。だが、おまえの力は凄まじいのだろう。だから頼む、この国を救ってくれ」
「救うのはアンタらの仕事だ。が、やれる事はするさ」
「……感謝する。ではなセンゴク、また会おう」
どうにも胡散臭いねぇ。
ジンはどうして魔力を込めて握ってきた? 試そうとするには稚拙にも感じるが……。
たくっ、色々と楽しめそうな未来で、俺は感激の海にしずみそうだねぇ。マジかんべん。
「センゴクの旦那。ジンはちょっと変わっていはいるが、悪いやつじゃない。気分を害したら許してやってくれ」
「ん? あぁ大丈夫だよ、変わり者は世の中にごまんといるさ」
「そう言ってもらえると助かるぜ。んじゃ行こうか、まずは俺んちへ行こうぜ旦那!」
「旦那ってなんだよ、ったく。話もまとまったから行こうぜ二人とも」
「「はい!」」
色々と気にはなるが、まずは流れに乗るとしよう。
それが濁流となり、汚泥を運び、罠の元へと流れ込めばどうする?
「簡単だ、噛み砕けばいい」
『さす極。戦極様ならイージーモードだよ』
「嫌だねぇ美琴さん、心を覗かないでくださいまし」
そんな話を美琴としていると、イザークが不思議そうに話しかける。
「センゴクの旦那? 誰と話しているだい?」
「あぁ独り言だよ。それでイザーク、どこへ向かっているんだ?」
イザークは「この森を抜けたら見えるぜ」というと、よどみなく歩きつづける。
それから十数分歩くと、モリを抜けて崖の上へと到着した。
周囲は一面森となっており、遠くに建物群が見えた。
それはイザークの言っていた街だろうと、戦極たちは思う。
「見えた見えた! あそこに見える〝リザールの街〟へ行こうぜ!」
そう言うとイザークは鼻の下へと人差し指を当て、グスリと鼻をすする。
見れば瞳はぬれており、どうやら街を見て妻と娘を思い出したようだ。
「あいつらには心配かけちまったなぁ。今帰るからな、待っててくれよな……」
『リリーちゃんも奥さんも、あなたを心配していたんだよ。だからお土産を持っていかないとだよ?』
イザークは「しまった!?」と声を上げると、美琴の言う土産の意味を理解。
それは食料であり、リザールの街では貴重品であったのだから。
「しまったなぁ。センゴクの旦那たちにも食べさせる食料が無いし、どうしようか……」
そんな事をイザークが言って悩むと同時に、背後から声がする。
あざとい〝ぽむぽむ〟という足音と共に、それは現れた。
「んあ~、おまたせだワンよ~。ほれぇ、見てみて~大漁だワンよ」
わん太郎は氷で出来たソリを引きながら、森から出てくる。
ソリの中には鳥と何かの動物が乗っており、氷漬けになっていた。
「こ、これは!? レアな動物ばかり……もらってもいいのかよ!?」
「かまわないワンよ~。どうせ食べようと思って、てきとーに狩っただけだワンからねぇ」
喜ぶイザークと、珍しい動物に驚く桜たち。
そんな三人を尻目に、戦極はわん太郎へと話しかける。
「……それで?」
「よくわからないんだけどねぇ。あの男、ジンは怪しさ満点だったワンよ。ただ周囲に罠らしいものや、つけてくるヤツもいないから、このまま進んでも大丈夫だワンよ」
「そう、か。ならばこのまま行くか」
遠くに見える白い町並みを見ながら、戦極は悲恋の柄を握りしめる。
その意味を察した美琴は、悲恋より抜け出ると、戦極の隣へ立ち話す。
「これからが本番なんだよ」
「あぁ、これからだ。そう、全てはこれから始まる。待っていろよ人形――いや、弐刃。今から三百年研ぎ澄ませた刃を、一族最強の俺が叩き込みにいくからな」
戦極は天に輝く双子の沈まない月を見上げる。
まだ昼だが月は怪しい光をたたえ、戦極を嘲笑い照らす。
それを見つつ、口角をあげる戦極の表情は、獲物を狩る狼のように自信に満ちあふれていた。
――――――
ここまでで「完全開放!! 爽快バトル編」が終了となります。
次回再会は未定ですが、全体のブラッシュアップをして再開する予定です。
全105話を応援していただき、本当にありがとうございます!!
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
138
この作品は感想を受け付けておりません。
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる