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015:魔釣力と想像力
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「うわわ! なんだか絡まっちゃったワンよ~大和たすけてぇ」
「お前なにやってんだよ。たく、仕方ないやつだなぁ」
◇◇◇
主はそう言うと、駄犬へむけて駆けていく。
その幼い走りに〝ほっこり〟としつつも、色々とありえない状況を考えてみる。
いきなり伝説級を持つ男なんて聞いたことも見たこともない。数値も三桁のもあるし、何より釣運が見えないのがおかしい。
そう、この短時間の釣果の片鱗ですらコレなのだ。
釣り上げたのは二つ。一つは蘇生魚と呼ばれる、〝伝説級の魚〟がそうなのだが、存在が激レアなだけで釣り上げるのはコツさえ分れば簡単。
まぁそれすら予想外の方法で釣り上げたが……。
もう一つはあの駄犬が絡まっている繊維だ。失敗前提でチャレンジしてもらったが、まさかの一発クリア。
しかも予想以上に大量の繊維を釣り上げてしまう。
『これは面白いことになるのは確定でしょうな。ふふ、今回ばかりは〝理〟に感謝してもよいかもしれませんね』
いまだ裸の主の後ろ姿をみつつマヌケだなと思う。
しかし初めて出会う、とてつもない釣り人の原石に心が踊りだし、それが初めての感覚だと気が付き、妙な気分になりながら主たちを見つめた。
◇◇◇
「よし取れたあああ! たく、面倒かけてくれるよ」
「うわぁ、ありがとうだワンよぅ。あのまま謎の糸で繭になるかと思ったワン」
『これだから駄犬には困ったものです』
「むぅ。駄犬じゃないんだワン! ほれぇ、見てみるがいいんだワン」
わん太郎が小さな肉球で〝むにょり〟とはさんだ先に、小さな布が出来ていた。
よくみると子狐の顔まで刺繍してあるおまけつき。
「まさかその糸から作ったのか!? 器用すぎるだろ!!」
「そうだワンよ~。助けてもらったお礼に大和へあげるんだワン」
「ぉ。そうかい? ありがたくもらっておくよ。おぉ……これぞ文明! そう。文明を感じるけど、こんなちいさな布切れでアレが隠れてしまう現実に涙が止まらない」
『またケモノからほどこしを……と、まぁいい機会ですから、駄犬と同じように糸から生地を作ってみましょう』
「作るって言ったって、俺にはそんな事できないぞ?」
相棒は楽しげに『ふふん』と鼻を鳴らすと、先端をしならせながら糸へと向けて話し出す。
『そこで先程の話に戻りますが、スキルを使ってもらいます』
「スキル? 二つあるけど、やっぱり器用貧乏だよな?」
『ええそうです。まずはその繊維はすでに糸と言ってもいいので、そのまま使います。次に繊維を持ってください』
言われたとおりに繊維を持つ。少しざらつくが、匂いもなく悪くない手触りだ。
『次に糸へイメージを送り込みます。できるだけ具体的に厚さや形を、主が欲する形で想像してください』
分かったと頷きながら、今一番ほしいモノ――つまり衣服を想像した瞬間、糸が動き出すのが分かった。
思わず「なんか変だぞ!?」と叫ぶと、相棒が『今です、魔釣力を込めて!』と力強く返す。
体から言いようのない不思議な感覚が抜けると同時に、ごっそりと疲労に似たナニカが左の肩甲骨あたりに集まるのを感じる。
その初めて感覚に「くぅ」と苦しげにもらしながら、自分の力で創り出したと実感しながら、その出来たモノを握りしめた。
「ッ、出来た!! 見てみろよ相棒、いい感じにデニムっぽくなったろう!?」
振り返りながらそう言うと、ヤツは『まぁできましたが……』と呆れながら言うと、『ダメージ仕様ですか?』と言い出す。
その言葉に「どこがだよ!」と言ってみるが、持ってる所から徐々に糸がほつれてきた。
さらにヒザの部分が崩壊しだし、左膝下がポテリと落ちる。
「……そう。ダメージ仕様の特別仕様だ」
『意味不明なダブル仕様なのは分かりましたが、せめてあのくらいはして欲しいのですが?』
相棒が先端をしならせた先にある光景。
それは屈辱と敗北だった。
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ここまでお読みいただきありがとうございます。
お気に入りや、コメントをいただき、とてもうれしいです。
さらにエールまでいただき、大感謝です!
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「お前なにやってんだよ。たく、仕方ないやつだなぁ」
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主はそう言うと、駄犬へむけて駆けていく。
その幼い走りに〝ほっこり〟としつつも、色々とありえない状況を考えてみる。
いきなり伝説級を持つ男なんて聞いたことも見たこともない。数値も三桁のもあるし、何より釣運が見えないのがおかしい。
そう、この短時間の釣果の片鱗ですらコレなのだ。
釣り上げたのは二つ。一つは蘇生魚と呼ばれる、〝伝説級の魚〟がそうなのだが、存在が激レアなだけで釣り上げるのはコツさえ分れば簡単。
まぁそれすら予想外の方法で釣り上げたが……。
もう一つはあの駄犬が絡まっている繊維だ。失敗前提でチャレンジしてもらったが、まさかの一発クリア。
しかも予想以上に大量の繊維を釣り上げてしまう。
『これは面白いことになるのは確定でしょうな。ふふ、今回ばかりは〝理〟に感謝してもよいかもしれませんね』
いまだ裸の主の後ろ姿をみつつマヌケだなと思う。
しかし初めて出会う、とてつもない釣り人の原石に心が踊りだし、それが初めての感覚だと気が付き、妙な気分になりながら主たちを見つめた。
◇◇◇
「よし取れたあああ! たく、面倒かけてくれるよ」
「うわぁ、ありがとうだワンよぅ。あのまま謎の糸で繭になるかと思ったワン」
『これだから駄犬には困ったものです』
「むぅ。駄犬じゃないんだワン! ほれぇ、見てみるがいいんだワン」
わん太郎が小さな肉球で〝むにょり〟とはさんだ先に、小さな布が出来ていた。
よくみると子狐の顔まで刺繍してあるおまけつき。
「まさかその糸から作ったのか!? 器用すぎるだろ!!」
「そうだワンよ~。助けてもらったお礼に大和へあげるんだワン」
「ぉ。そうかい? ありがたくもらっておくよ。おぉ……これぞ文明! そう。文明を感じるけど、こんなちいさな布切れでアレが隠れてしまう現実に涙が止まらない」
『またケモノからほどこしを……と、まぁいい機会ですから、駄犬と同じように糸から生地を作ってみましょう』
「作るって言ったって、俺にはそんな事できないぞ?」
相棒は楽しげに『ふふん』と鼻を鳴らすと、先端をしならせながら糸へと向けて話し出す。
『そこで先程の話に戻りますが、スキルを使ってもらいます』
「スキル? 二つあるけど、やっぱり器用貧乏だよな?」
『ええそうです。まずはその繊維はすでに糸と言ってもいいので、そのまま使います。次に繊維を持ってください』
言われたとおりに繊維を持つ。少しざらつくが、匂いもなく悪くない手触りだ。
『次に糸へイメージを送り込みます。できるだけ具体的に厚さや形を、主が欲する形で想像してください』
分かったと頷きながら、今一番ほしいモノ――つまり衣服を想像した瞬間、糸が動き出すのが分かった。
思わず「なんか変だぞ!?」と叫ぶと、相棒が『今です、魔釣力を込めて!』と力強く返す。
体から言いようのない不思議な感覚が抜けると同時に、ごっそりと疲労に似たナニカが左の肩甲骨あたりに集まるのを感じる。
その初めて感覚に「くぅ」と苦しげにもらしながら、自分の力で創り出したと実感しながら、その出来たモノを握りしめた。
「ッ、出来た!! 見てみろよ相棒、いい感じにデニムっぽくなったろう!?」
振り返りながらそう言うと、ヤツは『まぁできましたが……』と呆れながら言うと、『ダメージ仕様ですか?』と言い出す。
その言葉に「どこがだよ!」と言ってみるが、持ってる所から徐々に糸がほつれてきた。
さらにヒザの部分が崩壊しだし、左膝下がポテリと落ちる。
「……そう。ダメージ仕様の特別仕様だ」
『意味不明なダブル仕様なのは分かりましたが、せめてあのくらいはして欲しいのですが?』
相棒が先端をしならせた先にある光景。
それは屈辱と敗北だった。
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