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058:絶景の風呂とおねえさん()
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まず目指したのが熱交換ヒートパイプ式ってヤツだ。
試験管のデカイやつを作り、それを複数横に並べ、その中に対流液を入れる。
その中央に熱伝導の高い銅を入れて、貯湯タンクへそれを差し込む。
銅は近くの岩から見つけ出し、具現化出来たのもよかった。
上部のタンクにある水に近い銅部分が冷たくなり、試験管の下にある部分が太陽光で熱くなる。
熱気は上に行き、冷気は下へ。
その理屈を使って水を温める感じだ。
熱せられたデカイ試験管内部の熱は、上部にある水が溜まったタンクへと、銅の棒を伝い熱を伝える。
とまぁ理屈はこんな感じだが、それを作ろうと思うと中々大変だった。
本来なら真空にしたり、アルミを使ったりして熱伝導をよくするのだが、そんなものは今の俺には具現化できない。
だからそれらしいモノを目指して作ったが、水が漏れたり、対流液になりそうな物を探し、使ってみたらダメだったりと、まぁ色々と苦労した。
結果、熱湯には程遠いが、風呂の温度程度なら問題ない。
いや、むしろ丁度いい温度になる物ができた。
必要以上にバカでかい施設にしたから、湯量は一晩かけ流ししても問題ないほどだ。
そいつがパイプを使って、わん太郎の顔をモチーフにした口から湯が出てくる。
ちょっと微妙だが、わん太郎が頑張って作ってくれたのでよしとしよう。
「じゃあ……いくぞ?」
全員がコクリと頷き、お湯が出てくるのを待つ。
お湯を止めている元栓をしずかにひねると、チョロリとしか出てこない。
「また失敗かぁ……」
「ヤマトさん、元気だしてください! また明日頑張りましょう!」
「そうだワンよ~失敗は成功の元っていうんだワン。しらんけど」
わん太郎に呆れていると、相棒が「主……聞こえませんか?」と言い出す。
耳をすませば、空気がボコボコと配管を叩く音が聞こえ、やがて〝ポ……ゴポッ……ヴォボボボ!!〟と音が激しくなる。
全員で木彫りのわん太郎の口を見ていると、何かがヤバイ。
「おい、待て……ッ――全員離れろおおおおお!!」
俺がそう言った瞬間、木彫りのわん太郎の口から勢いよくお湯が吹き出す。
夕日に照らされたそれは、とても綺麗に虹を描き、浴槽へと勢いよく流れ出した。
「わあああああ!! 本当にお湯がでましたよヤマトさん!!」
「ワレのお口が湯を吹いたワン!!」
楽しそうにお湯をすくい上げる二人。
それを見た相棒が、『良かったですね主』と言うので、「お前のおかげだよ」と言いながら、はしゃぐ二人を静かに見守っていた。
――それから数十分後――
「ふぅ、やっと溜まったな!」
贅沢に作った巨大なお風呂。
拡張予定ではあるけど、今のところは十人は余裕で入れるだろう。
早速湯船に入ろうとする……が、アリシアがなぜかお姉さん風をふかせ、一緒に入ろうとするから困ったものだ。
「あ、あの。私おねえさんなので、お背中ながしてあげます!!」
「子供におねえさん言われてもなぁ……」
「むぅぅ! ヤマトさんより大人ですぅ!!」
「そういう所だよ……ハァ~、もうひと仕事すっか~」
むぅむぅカエルみたいに唸るアリシアを尻目に、残った材料に虎色のゴッド・ルアーを打ち込む。
自分でも驚くほど、空中で編み込まれる緑色の素材――竹。
滝の上に自生する、どう見ても青竹にしか見えないそれを、建築資材として集めて置いたのがよかった。
あっという間に小洒落た敷居になり、そのまま湯の中へと沈む。
枠にピタリとハメたことで浮くこともなく、なんとも風情あるおもむきになった。
「いいか自称おねいさん。おまえはそっちの女湯、俺はこっち男湯だ。OK?」
「べ、べつに私より幼いヤマトさんになんて、恥ずかしくないんですからね!?」
「ハイハイ。おまえが良くても、俺がガキだからこまるって事でヨロ。さ、楽しいお風呂タイムといこうぜ♪」
速攻湯船へと飛び込みたいが、そこは日本文化を愛する俺だ。
ヤシの実の殻で、ちゃんとかけ湯をし、風呂に入る礼儀は忘れない。
そっと、右足から湯船に入り、肩まで入った瞬間それはおとずれた。
湯船と夕焼けに染まる海が一つとなり、まるで巨大な湯船に浸かっていると錯覚し魂から「ア゛ァ゛~゛しみるねぇ……」と声が漏れた。
そんな声を聞いた、仕切りの向こうのアリシアは「なんだかオジサンぽくないですか?」と声が聞こえた。
だって仕方ないぢゃない? 中身はおぢさんなんだもの。
試験管のデカイやつを作り、それを複数横に並べ、その中に対流液を入れる。
その中央に熱伝導の高い銅を入れて、貯湯タンクへそれを差し込む。
銅は近くの岩から見つけ出し、具現化出来たのもよかった。
上部のタンクにある水に近い銅部分が冷たくなり、試験管の下にある部分が太陽光で熱くなる。
熱気は上に行き、冷気は下へ。
その理屈を使って水を温める感じだ。
熱せられたデカイ試験管内部の熱は、上部にある水が溜まったタンクへと、銅の棒を伝い熱を伝える。
とまぁ理屈はこんな感じだが、それを作ろうと思うと中々大変だった。
本来なら真空にしたり、アルミを使ったりして熱伝導をよくするのだが、そんなものは今の俺には具現化できない。
だからそれらしいモノを目指して作ったが、水が漏れたり、対流液になりそうな物を探し、使ってみたらダメだったりと、まぁ色々と苦労した。
結果、熱湯には程遠いが、風呂の温度程度なら問題ない。
いや、むしろ丁度いい温度になる物ができた。
必要以上にバカでかい施設にしたから、湯量は一晩かけ流ししても問題ないほどだ。
そいつがパイプを使って、わん太郎の顔をモチーフにした口から湯が出てくる。
ちょっと微妙だが、わん太郎が頑張って作ってくれたのでよしとしよう。
「じゃあ……いくぞ?」
全員がコクリと頷き、お湯が出てくるのを待つ。
お湯を止めている元栓をしずかにひねると、チョロリとしか出てこない。
「また失敗かぁ……」
「ヤマトさん、元気だしてください! また明日頑張りましょう!」
「そうだワンよ~失敗は成功の元っていうんだワン。しらんけど」
わん太郎に呆れていると、相棒が「主……聞こえませんか?」と言い出す。
耳をすませば、空気がボコボコと配管を叩く音が聞こえ、やがて〝ポ……ゴポッ……ヴォボボボ!!〟と音が激しくなる。
全員で木彫りのわん太郎の口を見ていると、何かがヤバイ。
「おい、待て……ッ――全員離れろおおおおお!!」
俺がそう言った瞬間、木彫りのわん太郎の口から勢いよくお湯が吹き出す。
夕日に照らされたそれは、とても綺麗に虹を描き、浴槽へと勢いよく流れ出した。
「わあああああ!! 本当にお湯がでましたよヤマトさん!!」
「ワレのお口が湯を吹いたワン!!」
楽しそうにお湯をすくい上げる二人。
それを見た相棒が、『良かったですね主』と言うので、「お前のおかげだよ」と言いながら、はしゃぐ二人を静かに見守っていた。
――それから数十分後――
「ふぅ、やっと溜まったな!」
贅沢に作った巨大なお風呂。
拡張予定ではあるけど、今のところは十人は余裕で入れるだろう。
早速湯船に入ろうとする……が、アリシアがなぜかお姉さん風をふかせ、一緒に入ろうとするから困ったものだ。
「あ、あの。私おねえさんなので、お背中ながしてあげます!!」
「子供におねえさん言われてもなぁ……」
「むぅぅ! ヤマトさんより大人ですぅ!!」
「そういう所だよ……ハァ~、もうひと仕事すっか~」
むぅむぅカエルみたいに唸るアリシアを尻目に、残った材料に虎色のゴッド・ルアーを打ち込む。
自分でも驚くほど、空中で編み込まれる緑色の素材――竹。
滝の上に自生する、どう見ても青竹にしか見えないそれを、建築資材として集めて置いたのがよかった。
あっという間に小洒落た敷居になり、そのまま湯の中へと沈む。
枠にピタリとハメたことで浮くこともなく、なんとも風情あるおもむきになった。
「いいか自称おねいさん。おまえはそっちの女湯、俺はこっち男湯だ。OK?」
「べ、べつに私より幼いヤマトさんになんて、恥ずかしくないんですからね!?」
「ハイハイ。おまえが良くても、俺がガキだからこまるって事でヨロ。さ、楽しいお風呂タイムといこうぜ♪」
速攻湯船へと飛び込みたいが、そこは日本文化を愛する俺だ。
ヤシの実の殻で、ちゃんとかけ湯をし、風呂に入る礼儀は忘れない。
そっと、右足から湯船に入り、肩まで入った瞬間それはおとずれた。
湯船と夕焼けに染まる海が一つとなり、まるで巨大な湯船に浸かっていると錯覚し魂から「ア゛ァ゛~゛しみるねぇ……」と声が漏れた。
そんな声を聞いた、仕切りの向こうのアリシアは「なんだかオジサンぽくないですか?」と声が聞こえた。
だって仕方ないぢゃない? 中身はおぢさんなんだもの。
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