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065:発見されたおとぎ話
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冒険者に扮した五人は静かに街へと侵入し、聖女・アリシアの行方を探る。
だが人が集まる場所とは少し方向が違う所を指し示し、最後には海岸まで出てしまう。
「……隊長やはり壊れているのでは?」
光が指す方。それは海の向こうであり、地図上では無いもない場所のはずだ。
そう思いながら海図をみつつ、隊長と呼ばれた男は一つの決断をする。
「このまま進む。一度街へ戻り装備を整え、船を用意する」
「し、しかし何も無い海へというの――ッゥ!?」
新人の男はそう言うと、そのまま砂浜へと膝から崩れ落ちる。
見れば眉間へ細い針が打ち込まれており、それに突かれて絶命をした。
「お前は宰相の任務と意味が分かっていなかったようだ」
「すみません隊長、人選ミスでした」
「いい。使えない奴はいずれこうなる」
「では行くぞ。出発は明日の朝とする」
静かにうなずく三人を従え、黒色のローブを着た男は去っていく。
後に残ったのは、無精髭を生やした二十歳すぎの男が、海を見ながら膝立ちで死んでいた。
――同日夜。領都イグジスの、とある酒場で漁師が噂話で盛り上がっていた。
「だからよ~マジで見たんだって! あれは間違いなく伝説の島だつぅ~の! ヒック」
「昼間っから呑んで漁してたんだろ? おめぇは呑みすぎなんだよ」
「バッカ! そうじゃねぇて言ってるだろうがダボスケ! いいか、あの海域で採れる魚は何種類か言ってみやがれ!」
太った男は木製ジョッキをテーブルに叩きつけ、周りにいる三人をグルリと見回す。
そのうちの一人が指を折りながら数え、「三魚種だな」と答える。
「だろう? もちろん、オメェらなら、その魚種も分かるわな?」
当然だと全員が首をたてに振り、それを見て気を良くした男が「だろう?」と言いながら、足元にあったこ汚い袋をテーブルへと上げた。
「じゃあよ……コイツは何だと思う?」
その袋から取り出したのは、真っ赤な魚の頭。
それはこの海域に居ないとされる、もっと南に海にいる魚だった。
「こ、コイツは赤魚!? しかもまだ新しいぞ。おめぇどうやって、こんなモノ拾ってきた!!」
その様子にニヤリと口角を上げ、男はジョッキの中身を一気飲みして、テーブルへと叩きつけた。
「だ~からよぅ、その島が見えた近くの海域よ。そこで網いれたらよ、速攻でかかりやがったのよ」
驚く漁師たちの後ろから、黒いローブを着込んだ男が、新しいジョッキを片手に饒舌に語る漁師へと差し出す。
「面白い話しだな。まずは一杯やってくれ、もっと詳しく聞きたい」
「ぉ? いいなアンタ。こんなわからず屋共より、よほどいい酒が飲めそうだ」
「なに、お互い旨い酒を呑みたいからな。それで?」
「あぁ、そんでよぉ~」
漁師の男から話を聞き出し、今夜の酒代と、明日船を出す約束を取り付けた黒いローブの男――密偵の隊長は仲間の席へと戻ってくる。
「おかえりなさい。あの程度オレらの仕事ですのに」
「いや、生の情報を得る行為が楽しいのさ」
「そうですか……それで成果は?」
隊長はジョッキを傾け半分ほど呑み干し、静かに置いてから「ビンゴだ」と一言。
「明日、あの漁師に島へ連れて行ってもらう事になった」
「島? 海図に無いはずでしたが?」
「それなんだがな、この辺りで伝わっている、あのおとぎ話の島が、近海に眠っているって言うのが、代々漁師に伝わっているらしい」
「おとぎ話の島? って、まさか……」
また一口中身を呑み、ゴクリとノドをならした後話す。
「そうだ。子供の頃に誰でも聞いたことがある、伝説と呼ばれた禁忌の島――神釣島がな」
「まさか……」
「そう、そのまさかだ。が、光はそこを指している……なら確認をする価値があるだろう?」
そう言うと残りを呑み干し、全員分のジョッキをオーダ。
「前祝いだ。さぁ明日は狩りを大いに楽しもう」
「「「ハッ」」」
そう言うと静かにジョッキを合わせ、未知の島の全容を暴き、聖女の最後を確信する隊長であった。
だが人が集まる場所とは少し方向が違う所を指し示し、最後には海岸まで出てしまう。
「……隊長やはり壊れているのでは?」
光が指す方。それは海の向こうであり、地図上では無いもない場所のはずだ。
そう思いながら海図をみつつ、隊長と呼ばれた男は一つの決断をする。
「このまま進む。一度街へ戻り装備を整え、船を用意する」
「し、しかし何も無い海へというの――ッゥ!?」
新人の男はそう言うと、そのまま砂浜へと膝から崩れ落ちる。
見れば眉間へ細い針が打ち込まれており、それに突かれて絶命をした。
「お前は宰相の任務と意味が分かっていなかったようだ」
「すみません隊長、人選ミスでした」
「いい。使えない奴はいずれこうなる」
「では行くぞ。出発は明日の朝とする」
静かにうなずく三人を従え、黒色のローブを着た男は去っていく。
後に残ったのは、無精髭を生やした二十歳すぎの男が、海を見ながら膝立ちで死んでいた。
――同日夜。領都イグジスの、とある酒場で漁師が噂話で盛り上がっていた。
「だからよ~マジで見たんだって! あれは間違いなく伝説の島だつぅ~の! ヒック」
「昼間っから呑んで漁してたんだろ? おめぇは呑みすぎなんだよ」
「バッカ! そうじゃねぇて言ってるだろうがダボスケ! いいか、あの海域で採れる魚は何種類か言ってみやがれ!」
太った男は木製ジョッキをテーブルに叩きつけ、周りにいる三人をグルリと見回す。
そのうちの一人が指を折りながら数え、「三魚種だな」と答える。
「だろう? もちろん、オメェらなら、その魚種も分かるわな?」
当然だと全員が首をたてに振り、それを見て気を良くした男が「だろう?」と言いながら、足元にあったこ汚い袋をテーブルへと上げた。
「じゃあよ……コイツは何だと思う?」
その袋から取り出したのは、真っ赤な魚の頭。
それはこの海域に居ないとされる、もっと南に海にいる魚だった。
「こ、コイツは赤魚!? しかもまだ新しいぞ。おめぇどうやって、こんなモノ拾ってきた!!」
その様子にニヤリと口角を上げ、男はジョッキの中身を一気飲みして、テーブルへと叩きつけた。
「だ~からよぅ、その島が見えた近くの海域よ。そこで網いれたらよ、速攻でかかりやがったのよ」
驚く漁師たちの後ろから、黒いローブを着込んだ男が、新しいジョッキを片手に饒舌に語る漁師へと差し出す。
「面白い話しだな。まずは一杯やってくれ、もっと詳しく聞きたい」
「ぉ? いいなアンタ。こんなわからず屋共より、よほどいい酒が飲めそうだ」
「なに、お互い旨い酒を呑みたいからな。それで?」
「あぁ、そんでよぉ~」
漁師の男から話を聞き出し、今夜の酒代と、明日船を出す約束を取り付けた黒いローブの男――密偵の隊長は仲間の席へと戻ってくる。
「おかえりなさい。あの程度オレらの仕事ですのに」
「いや、生の情報を得る行為が楽しいのさ」
「そうですか……それで成果は?」
隊長はジョッキを傾け半分ほど呑み干し、静かに置いてから「ビンゴだ」と一言。
「明日、あの漁師に島へ連れて行ってもらう事になった」
「島? 海図に無いはずでしたが?」
「それなんだがな、この辺りで伝わっている、あのおとぎ話の島が、近海に眠っているって言うのが、代々漁師に伝わっているらしい」
「おとぎ話の島? って、まさか……」
また一口中身を呑み、ゴクリとノドをならした後話す。
「そうだ。子供の頃に誰でも聞いたことがある、伝説と呼ばれた禁忌の島――神釣島がな」
「まさか……」
「そう、そのまさかだ。が、光はそこを指している……なら確認をする価値があるだろう?」
そう言うと残りを呑み干し、全員分のジョッキをオーダ。
「前祝いだ。さぁ明日は狩りを大いに楽しもう」
「「「ハッ」」」
そう言うと静かにジョッキを合わせ、未知の島の全容を暴き、聖女の最後を確信する隊長であった。
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