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064:アリシアの冒険と迫る魔の手

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「ふぁ~ちょっと早いけど起きるかぁ……」
「ふぇ~そうですねぇ……」
「ふわ~まったく迷惑なヒヨコだワン……」

 そう言いながら俺たちはエマージェの体から降りると、ヤツはトテテテと走り出し、丁度乗れるほどの岩の上でまた鳴き出す。マジ近所迷惑なんだが?

『清々しいほどの鶏っぷりですね』
「ほんと、ドコが神の生体兵器なんだアイツ?」
「ふふ、いいじゃないですか。可愛いんですから」
「あざといんだワン」

 それから海へ行ってシャケに似た魚を釣り上げ、それを輪切りにした後、海の水にかるく漬け込んだ状態で焼く。

 思ったよりもふくよかな味と、満足感を感じて満腹になった所で今後の話をしていると、アリシアが思いついた感じで話す。

「えっとヤマトさん、一つお願いがあるんですが」
「ん、言ってみ?」
「はい、えっとですね。私も色々と食材を探したり、探索をしたいなと思いまして、今日から別行動の時間もあれば、より早くお食事も用意できると思うのですよ」

「確かにそれはそうだけどなぁ。子供一人で歩かせるのは心配だな」
「もぅ! 私のほうがお姉さんなんですぅ!」
「ハイハイ。とはいえ……近場なら安全性も確認出来たし、俺と行った場所以外には、絶対に行かないって条件ならいいぞ?」
「本当ですか!? じゃあ頑張りますね!!」
「無理はするなよ? それと一応エマージェも連れて行ってくれ。何かあったら盾にして逃げてこい」

 その言葉に「ぽみょっぅ!!」とお怒りな様子だが、まぁいいだろう。
 一応は四聖獣らしいし、何かあったらアリシアを守ってくれるだろうからな。

 見た目は黄色のデカイ毛玉だけど、内包する力は感じることができる。
 足も意外と早いし、まぁ大丈夫だろう。

「じゃあ準備しますね! エマージェちゃん、待っててね?」
「ぽみょん!」

 そう言うと、アリシアは最近作ったばかりの自分用のカゴを取りに、コテージへ戻る。
 部屋も作ったのだが、なぜか俺の部屋で寝たがるから困った娘だ。

 そんな事を思っていると、アリシアが戻って来る。

「じゃあ行って来ますね!」
「あぁ頼むよ。絶対に無理だけはしちゃだめだぞ?」
「ふふ。分かっていますって。じゃあエマージェちゃん行こ!」
「ぽみょぽみょ♪」

 そう言うと、二人は何度も手を振りながら食材探しに出かける。
 俺もそれに応え、元気に手を振りかえした。

『随分とあかるくなりましたな』
「だな……やっぱり子供は笑顔が一番だからな」
「じゃあワレたちも、お出かけしようだワン」
「よっし、じゃあ今日もデカイの釣るぜッ!!」

 相棒を握りしめ、お気に入りの船着き場の先端へと向かうのだった。




 ◇◇◇
  ◇




 ――大和が釣りに出かけた頃、アスガルド帝国宰相のオルドの命により配下の部隊が動く。

 オルドは直接指揮ができる兵士を持ってはいないが、代わりに国の闇に深く精通する裏部隊を創設し、そのトップでもあった。

 そのオルドより密命を受けた密偵五名が、早馬を乗りつぶしながら、聖石の片割れが出す光をたよりにアリシアへと向かう。

「隊長。このまま光の指す方へ向かうとなれば、ベストパーレ辺境伯領についてしまいますが」
「ベストパーレ辺境伯か……また面倒な場所にいるものだ。が、俺たちの任務は変わらぬ。元・聖女ターゲットを暗殺するのみよ」

 その言葉に部下四名は小さく返事をすると、馬を走らせる。

 目的はこのあたり最大の商業地であり、軍備の整った街である〝領都イグザム〟
 そこへ帝国の魔の手が入り込むのに、そう時間はかからなかった。
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