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第三話 真っ直ぐな愛と歪んだ愛
父の日に 夫婦喧嘩の種贈り
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羽田まで、母に送って貰うつもりでいたら、翔に運転命令が下り、今日は業務として、私の運転手となり、送ってくれることになった。
右腕にギプスをつけ、左肘固定の状態で運転しても違反にならないのかと疑問だけど、母の好意を喜んで受け入れ、私は助手席に座り、彼と羽田空港へと向かった。
私の左手の薬指には、貧弱なダイヤの指輪が嵌めたまま。
今日、ニューヨークには戻るけど、私は翔と結婚すると決めたからだ。
昨晩、あんな事しなくたって、抱かせて上げたのにと思いながら部屋に戻り、これからの事を改めて考えた。
セックスしないことにしたのは、翔を傷つけることになると思ったからで、こうなってしまえば自分勝手にしたってもう同じこと。
なら、彼の部屋に行き、最後にもっともっと愛し合って、最高の思い出を作ろう。
そう考えて、改めて翔の部屋に行き、仲直りして、最後の思い出に愛し合い、彼の部屋で一晩を過ごした。
その所為で、帰りたくなくなっていたところに、今朝、裕ちゃんがきて、変な事を言い出すし、デビットまで「婚約おめでとう」と言い出すから、訳が分からなくなり、皆が言う様に、素直に彼と結婚することにしたという訳。
でも、翔に私をレイプする様に命じたのが、ダッドだと裕ちゃんから聞かされて、許せなかった。
「今頃、夫婦喧嘩の真っ最中よ。きっと」
「えっ? どういうこと?」
「昨日のリベンジ。裕ちゃん宛てのメールに、ショッキング動画を添付して送ってやったの」
メールは第三者に覗かれる危険があるので、母のPC上に、動画ファイルを置いときたかったのだけど、母がPCを立ち上げてくれなかったので、メールで送りつけるしかなかった。
まあ、普通なら、メールを盗み見なんてしないから、第三者に知られることはないという読み。
「あのエロ爺、必要もないのに、翔にあんなことさせて、絶対に許さないんだから」
ダッドは、私と翔が一緒になるという凄いシナリオを考えてくれていたのだけど、私が、「裕ちゃんをレイプしちゃえば」と言ったのを受けて、翔に私をレイプさせると言う必要のないステップを踏む様にしたのだ。
だから、しっかり復讐してやった。
「昨日、貴方に呼び出しに、あんなに遅くなっちゃたのは、お義父さんの隠しファイルの謎が解けそうになっていて、プログラム作成で必死だったのよ。ファイル情報を管理しているFATという情報部があるんだけど、それをHDDの欠陥部だって登録して、アクセス禁止にして、ファイルを見えなくしてたの」
一昨日、義父が私の部屋にやってきて、ダッドがこういった。
「真剣に考えた結果が、婚約解消して、アメリカに帰るなのか。失望したよ。研究なんて何処でもできるが、一生を誓った女を失った男の心の穴は、一生消えないんだ」
その後は、奥さんを亡くした時の話や、裕ちゃんが別人となって復活した時の話をして、その心の穴がどんなに大きいかを話してくれた。
一応、私の選択を否定はしないとも言ってくれたけど、必死に出した結論をダメだしされ、そんな悲しい話を突き付けられて、相当に落ち込んだ。
その後も、ずっと「心の穴は一生消えない」がリフレインしていて、その言葉でふと、『裕子の記録』を解くための秘密に気が付いた。
通常、消去されたファイルは、他のデータで徐々に上書きされて行き、時間と共にファイル復元できなくなっていく。でも、それを一生消えない様に細工したのではないかと気が付いたのだ。
後は、HDDの欠陥クラスターが、どのように管理されているのか、FATとの関連はどうなのかを必死に調べて勉強し、あのファイルに従って、そのハードディスク上のデータを読み出し、連結させるプログラムを作って、読み出せば『裕子の記録.MPEG』ファイルができるという訳。
「その動画、なんだったの?」
「今の裕ちゃんが覚醒した瞬間の、二人の変態プレーの一部始終」
前半は、想像以上の拘束プレーで呆れたけど、後半は笑えた。意識が戻った裕ちぉんとダッドの漫才が繰り広げられていて、気持ちいいのに、必死に抵抗する母と、次第に母が戻ってきていることに気づく義父。そして、子供みたいに涙を流して裕ちゃんに抱き着いて、土下座して謝ったりもしていた。
そして、母が最期に、「必ずファイルを消しなさい。もしファイルが残っていたら、離婚ですから」と啖呵を切って、触覚過敏の所為なのか、蟹股で格好悪く帰って行く場面で、そのファイルが終わっていた。
「それは、確かに大事になってる。でも、それって、ちょっと酷過ぎないか?」
「良いのよ。あの二人は、運命の絆で結ばれてるらしいから」
本当は凄く感謝している。
ダッドの描いたシナリオは、あのレイプ事件以外は、目から鱗の筋書きになっていて、今朝、その事実を全て知ることになった。
来月、探偵部用の事務所として、隣の二十五平米の貸店舗を準備する予定でいたらしいのだけど、そこを『フューチャーネットラボ』の日本支部にするという解決策を用意してくれていた。
一昨日の深夜に、デビットにその承認を取りつけたらしく、今朝、部屋に戻ると、デビットからその件に関するメールが届いているのに、漸く気が付いた。
その日本支部の支店長も、私が兼任する事になっていて、人材集めから全て私に一任すると書いてあった。
二人とチャットして話したが、「婚約、おめでとう」と言われ、アメリカに帰っても、直ぐに日本に戻って、八月開業に向け、いろいろと準備をすることになってしまった。
一昨日の夜、ダッドが「君の会社の社長に、一度ちゃんと挨拶しておきたいから、メールアドレスをおしえてくれないか」と訊いてきたのは、このためだったらしい。
デビットの生の声が聞けなかったので、本当の所は良く分らないけれど、きっと一晩中泣き続けたに違いない。
否、もしかすると、全くその逆で、私を重い女と思って、私の結婚が決まって、心から清々したのかもしれない。
いずれにせよ、もうデビットは私の上司の社長に過ぎず、私的関係は完全に消えることになった。
そして、ラボの研究設備もこっちに移設する事になり、こっちで研究開発することもできる。
朝、ダッドにお礼をいうと、更に美味しい話もしてくれた。
開業と同時に、便利屋昴のセキュリティー管理を任せたいと、早くも業務依頼をしてくれたのだ。
しかも、翔をフューチャーネットラボ日本支部見習いとして、ネットワークの知識を裏の手法も含めて、教えてやって欲しいという依頼まで。
悔しいけど完敗、脱帽。ダッドは、やはり私なんかより遥かに上にいる。
「七月から、貴方は私の部下だから」
「一生、君は、俺の女だから」
互いに笑って、こんな幸せで良いのかなと、少し不安も過る。でも、今の幸せを満喫することにした。
「ねぇ、冗談抜きに、いつごろ式を挙げるつもり? 私、二年も待てないよ」
「社長からは、後は二人で、だって」
「良い事、教えてあげるね。私が、レイプした男を許すと思ってる? 私は裕ちゃんの娘だよ。あの二人にはきっちり復讐したけど、貴方に復讐しない訳無いでしょう?」
彼が急にびくびくし始めて、可愛い。
「私、あの後、貴方の部屋に行って、夜に二回、朝もしたよね。実は今日辺りが排卵日。貴方の精液四回分、しっかり子宮に仕込んだから、五割ぐらい確率で妊娠する」
「じゃあ、できちゃった婚で、急がないと」
「そう。一年どころか、直ぐにでも結婚しないといけない状況にするのが、私の復讐。まぁ、来月の結果待ちで考えてもいいけど、どっちであっても二年は待てないから」
「分った。でも、それって、どちらかというと、ご褒美だね」
空港でも、売店巡りをして楽しく過し、公衆の面前で、熱い別れのキスをしてから、ゲートを潜った。
辛いアメリカ帰りには違いないけど、こんな幸せな気分でサヨナラすることになるとは思いもしなかった。あの二人にますます頭があがらない。
裕ちゃん、昴、本当に有難う。
(了)
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最後までお読みいただいた皆様、今後の参考にさせていただきますので、忌憚なき感想を頂ければと思います。
お手数ですが、一言でも、感想、宜しくお願いします。
右腕にギプスをつけ、左肘固定の状態で運転しても違反にならないのかと疑問だけど、母の好意を喜んで受け入れ、私は助手席に座り、彼と羽田空港へと向かった。
私の左手の薬指には、貧弱なダイヤの指輪が嵌めたまま。
今日、ニューヨークには戻るけど、私は翔と結婚すると決めたからだ。
昨晩、あんな事しなくたって、抱かせて上げたのにと思いながら部屋に戻り、これからの事を改めて考えた。
セックスしないことにしたのは、翔を傷つけることになると思ったからで、こうなってしまえば自分勝手にしたってもう同じこと。
なら、彼の部屋に行き、最後にもっともっと愛し合って、最高の思い出を作ろう。
そう考えて、改めて翔の部屋に行き、仲直りして、最後の思い出に愛し合い、彼の部屋で一晩を過ごした。
その所為で、帰りたくなくなっていたところに、今朝、裕ちゃんがきて、変な事を言い出すし、デビットまで「婚約おめでとう」と言い出すから、訳が分からなくなり、皆が言う様に、素直に彼と結婚することにしたという訳。
でも、翔に私をレイプする様に命じたのが、ダッドだと裕ちゃんから聞かされて、許せなかった。
「今頃、夫婦喧嘩の真っ最中よ。きっと」
「えっ? どういうこと?」
「昨日のリベンジ。裕ちゃん宛てのメールに、ショッキング動画を添付して送ってやったの」
メールは第三者に覗かれる危険があるので、母のPC上に、動画ファイルを置いときたかったのだけど、母がPCを立ち上げてくれなかったので、メールで送りつけるしかなかった。
まあ、普通なら、メールを盗み見なんてしないから、第三者に知られることはないという読み。
「あのエロ爺、必要もないのに、翔にあんなことさせて、絶対に許さないんだから」
ダッドは、私と翔が一緒になるという凄いシナリオを考えてくれていたのだけど、私が、「裕ちゃんをレイプしちゃえば」と言ったのを受けて、翔に私をレイプさせると言う必要のないステップを踏む様にしたのだ。
だから、しっかり復讐してやった。
「昨日、貴方に呼び出しに、あんなに遅くなっちゃたのは、お義父さんの隠しファイルの謎が解けそうになっていて、プログラム作成で必死だったのよ。ファイル情報を管理しているFATという情報部があるんだけど、それをHDDの欠陥部だって登録して、アクセス禁止にして、ファイルを見えなくしてたの」
一昨日、義父が私の部屋にやってきて、ダッドがこういった。
「真剣に考えた結果が、婚約解消して、アメリカに帰るなのか。失望したよ。研究なんて何処でもできるが、一生を誓った女を失った男の心の穴は、一生消えないんだ」
その後は、奥さんを亡くした時の話や、裕ちゃんが別人となって復活した時の話をして、その心の穴がどんなに大きいかを話してくれた。
一応、私の選択を否定はしないとも言ってくれたけど、必死に出した結論をダメだしされ、そんな悲しい話を突き付けられて、相当に落ち込んだ。
その後も、ずっと「心の穴は一生消えない」がリフレインしていて、その言葉でふと、『裕子の記録』を解くための秘密に気が付いた。
通常、消去されたファイルは、他のデータで徐々に上書きされて行き、時間と共にファイル復元できなくなっていく。でも、それを一生消えない様に細工したのではないかと気が付いたのだ。
後は、HDDの欠陥クラスターが、どのように管理されているのか、FATとの関連はどうなのかを必死に調べて勉強し、あのファイルに従って、そのハードディスク上のデータを読み出し、連結させるプログラムを作って、読み出せば『裕子の記録.MPEG』ファイルができるという訳。
「その動画、なんだったの?」
「今の裕ちゃんが覚醒した瞬間の、二人の変態プレーの一部始終」
前半は、想像以上の拘束プレーで呆れたけど、後半は笑えた。意識が戻った裕ちぉんとダッドの漫才が繰り広げられていて、気持ちいいのに、必死に抵抗する母と、次第に母が戻ってきていることに気づく義父。そして、子供みたいに涙を流して裕ちゃんに抱き着いて、土下座して謝ったりもしていた。
そして、母が最期に、「必ずファイルを消しなさい。もしファイルが残っていたら、離婚ですから」と啖呵を切って、触覚過敏の所為なのか、蟹股で格好悪く帰って行く場面で、そのファイルが終わっていた。
「それは、確かに大事になってる。でも、それって、ちょっと酷過ぎないか?」
「良いのよ。あの二人は、運命の絆で結ばれてるらしいから」
本当は凄く感謝している。
ダッドの描いたシナリオは、あのレイプ事件以外は、目から鱗の筋書きになっていて、今朝、その事実を全て知ることになった。
来月、探偵部用の事務所として、隣の二十五平米の貸店舗を準備する予定でいたらしいのだけど、そこを『フューチャーネットラボ』の日本支部にするという解決策を用意してくれていた。
一昨日の深夜に、デビットにその承認を取りつけたらしく、今朝、部屋に戻ると、デビットからその件に関するメールが届いているのに、漸く気が付いた。
その日本支部の支店長も、私が兼任する事になっていて、人材集めから全て私に一任すると書いてあった。
二人とチャットして話したが、「婚約、おめでとう」と言われ、アメリカに帰っても、直ぐに日本に戻って、八月開業に向け、いろいろと準備をすることになってしまった。
一昨日の夜、ダッドが「君の会社の社長に、一度ちゃんと挨拶しておきたいから、メールアドレスをおしえてくれないか」と訊いてきたのは、このためだったらしい。
デビットの生の声が聞けなかったので、本当の所は良く分らないけれど、きっと一晩中泣き続けたに違いない。
否、もしかすると、全くその逆で、私を重い女と思って、私の結婚が決まって、心から清々したのかもしれない。
いずれにせよ、もうデビットは私の上司の社長に過ぎず、私的関係は完全に消えることになった。
そして、ラボの研究設備もこっちに移設する事になり、こっちで研究開発することもできる。
朝、ダッドにお礼をいうと、更に美味しい話もしてくれた。
開業と同時に、便利屋昴のセキュリティー管理を任せたいと、早くも業務依頼をしてくれたのだ。
しかも、翔をフューチャーネットラボ日本支部見習いとして、ネットワークの知識を裏の手法も含めて、教えてやって欲しいという依頼まで。
悔しいけど完敗、脱帽。ダッドは、やはり私なんかより遥かに上にいる。
「七月から、貴方は私の部下だから」
「一生、君は、俺の女だから」
互いに笑って、こんな幸せで良いのかなと、少し不安も過る。でも、今の幸せを満喫することにした。
「ねぇ、冗談抜きに、いつごろ式を挙げるつもり? 私、二年も待てないよ」
「社長からは、後は二人で、だって」
「良い事、教えてあげるね。私が、レイプした男を許すと思ってる? 私は裕ちゃんの娘だよ。あの二人にはきっちり復讐したけど、貴方に復讐しない訳無いでしょう?」
彼が急にびくびくし始めて、可愛い。
「私、あの後、貴方の部屋に行って、夜に二回、朝もしたよね。実は今日辺りが排卵日。貴方の精液四回分、しっかり子宮に仕込んだから、五割ぐらい確率で妊娠する」
「じゃあ、できちゃった婚で、急がないと」
「そう。一年どころか、直ぐにでも結婚しないといけない状況にするのが、私の復讐。まぁ、来月の結果待ちで考えてもいいけど、どっちであっても二年は待てないから」
「分った。でも、それって、どちらかというと、ご褒美だね」
空港でも、売店巡りをして楽しく過し、公衆の面前で、熱い別れのキスをしてから、ゲートを潜った。
辛いアメリカ帰りには違いないけど、こんな幸せな気分でサヨナラすることになるとは思いもしなかった。あの二人にますます頭があがらない。
裕ちゃん、昴、本当に有難う。
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