聖女な幼馴染に裏切られた少年、地獄の【一万倍の次元】の修行を突破。最強剣士として学園生活を満喫する

ハーーナ殿下

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第36話:次鋒戦

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オレは自由を手にして、北の名門キタエル剣士学園に入学。

お姫様のマリエルと、猫獣人の少女ミーケ、三人で【学内選抜戦】に挑戦。
なんとか決勝戦まで駒を進めることができた

だが先鋒のマリエルが、謎の異変に襲われて、敗退。
仲間の仇を討つため、ミーケが次鋒戦に挑む。



『それでは次鋒戦、始め!』

審判長の合図で、次鋒戦が始まる。

「いくぜ!……剣術技【第二階位】一の型……【蛇斬り】!」

開始と同時だった。
相手の次鋒が、ミーケに猛攻を仕掛けてくる。
巨大な大矛(おおほこ)を振り回し、一気に攻撃を仕掛けてきたのだ。

「くっ……よく見て、受け流すニャー!」

だがミーケは冷静に対処。
身体能力の高さをフルに使い、相手の攻撃を受け流していく。

「甘いぜ! 剣術技【第二階位】二の型……【蛇斬り大蛇斬り】!」

更に相手は剣術技を連発。
体格が劣るミーケを、強引に攻め込んでいく。

「冷静に……相手を見るニャン!」

ミーケは必死で回避に専念する。
力では圧倒的に相手が格上。

だがミーケはくじけていない。
相手の連続攻撃を、何度も回避。

最小限の動きで、冷静に対処していく。

「ちっ! チョコマカと猫野郎が! 潰れ散れ!……剣術技【第二階位】三の型……【大蛇潰し】!」

焦った相手は絶叫と共に、更なる剣術技を発動。
防御こと相手を潰す大技を、発動してきた。

「これで潰れろぉお、獣人野郎がぁああ!」

大技を発動して、相手は勝利を確信していた。
非力なミーケは、この技は受け流すことは出来ないと。

「今だニャー! 『大地の精霊よ、我が足となり敵を討て!』……剣術技【第一階位】一の型……【地針斬ちしんざん】ニャン!」」

だがミーケは冷静だった。
即座にカウンターで剣術技を発動。

「なっ⁉ うぎゃっ!」

予期せぬ罠をくらって、相手は体勢を崩す。
ダメージは与えているが、相手の防御も固い。

だが今が好機。

「いくニャん! 『大地の精霊よ、我が身体に強き力を……」

ミーケは大技を発動の詠唱。

「よし! やった、ミーケ!」

オレは思わず叫ぶ。
この流れは彼女の得意パターン。

このまま高火力の剣術技を発動。
体勢を崩した相手は、耐え切ることが出来ないだろう。

「……ニャ⁉」

だがミーケは発動が出来なかった。
顔色が急変し、血の気が引いていた。

「うっ……」

そのまま苦悶の声を上げて、片膝をつく。
今まで元気に優勢に押していたのに、顔色が急変。
さっきのマリエルと同じ状況だ。

「おい、審判! 何かが変だ! 試合を止めろ!」

オレは大声で叫ぶ。

この試合は明らかに不自然だ。
早くしないとミーケの身が危ない。

「…………」

しかし審判は無視してきた。
聞こえているはずなのに、あえて無視しているのだ。

「隙あり! 砕け散れ!……剣術技【第二階位】四の型……【大蛇降ろし】!」

片膝をついたミーケに向かって、相手は攻撃をしかけてきた。
動けない相手に向かって、無慈悲な剣術技を発動してきたのだ。

「ミャッァー!」

まともに攻撃を喰らい、ミーケは悲痛な声を上げる。
場外まで吹き飛んでしまう。

『勝者! 剣士教団学園チーム!』

場外となったところで、審判が宣言する。

「くっ! ミーケ!」

急いで彼女の元に駆け寄る。

「うっ……」

「動くな、ミーケ!」

急いで回復の魔道具を使う。
応急処置を施す。

「あっ……ハリトたん……」

よかった、ミーケの意識が回復した。
まだ立ち上がることは出来ないが、何とか上半身を起こそうとする。

「まだ、無理をするな、ミーケ」

「見守ってくれて、ありがとう、ハリトタン。でも、負けちゃって、ごめんニャー……」

ミーケは悔し涙を流していた。
歯を食いしばっているが、大粒の涙は止まらない。

そんな非情なタイミングでアナウンスが流れる。

『さて、これで剣士教団学園のチームの勝利が、ほぼ確定しました。一応は規則なので、これより大将戦を行います。両チームの大将は登壇してください!』

このまま大将戦に突入するという。

(……コイツら、もしかしたら審判団までグル……いや、あの司祭長が張本人か⁉)

直感的にビビッときた。
先ほどのマリエルとミーケの異変。
あれは、この司祭長が仕組んだ罠。

“何かの力”で、二人を弱体化。
自分の属する剣士教団学園の勝たせたのだ。

(マリエル……ミーケ……無念だっただろうに……)

――――その時だった。

今まで感じたことがない、感情が湧き出てきた。
全身の血が沸騰するほどの強い感情。

身体の奥底がフツフツと沸騰しているようだった。

(そうか……これが“怒り”か)

今までオレは、怒りに身を任せたことない。

だが、この感情な何なのか分かった。

大事な仲間を卑怯な手で、傷つけられた。
そのことに対して、オレは怒りの感情を抱いているのだ。

(アイツ等……許せない……な)

卑怯な罠で、オレの大事な仲間を傷つけた元凶たる司祭長。
共謀している審判団の連中。
そして剣士教団学園の三人組。

(こうなったら……全員、“半殺し”にしてやる!)

怒りのあまり、オレに負の感情が湧き出てきた。
魂の奥底からドス黒いモヤが、湧き出てくる。

その漆黒のモヤは、オレの全身を包みこもうとしていた。

――――だが、そんな時だった。

「ハリト様……そんな怖い顔をしては、ダメです……」

オレの手を握る少女がいた。
まだダメージが残るマリエルだ。

「ハリト様には、そんなに思いつめた顔は、似合いません。いつものハリト様に、お戻りください」

マリエルは心配してくれているのだ。
怒りのあまり、自分を見失っているオレのことを。

「マリエル……」

オレの手を握る彼女の力は、か弱い。
ダメージを受けていて、握力が残っていないのだ。

「ハリト様、私は大丈夫。だから元気をだして下さい」

だが握る手から、強い想いを感じる。
マリエルの優しさと、真っ直ぐな力だ。

「そうだニャン……ハリトたんには、そんな暗い顔は、似合わないニャン……」

ミーケも上半身を起こしながら、オレの手を握ってきた。
まだ自分が動けないのも関わらず、オレのことを心配してくれたのだ。

「そうですね、ミーケ。一緒にハリト様の応援を、ここからしましょう」

「わかったニャン……ハリトたんの勇姿を、ここから応援しているニャン」

まだ選抜戦を、二人は諦めていなかった。
決勝戦の最後の試合に向けて、気力を振り絞っていたのだ。

「マリエル……ミーケ……」

そんな二人を見て、オレは言葉を失う。

負の感情に飲み込まれそうになった自分。
不甲斐なさを情けなく思う。

(オレは、この二人に比べて……子どもだっんだな……)

彼女たちは選抜戦に全力で挑んでいた。

マリエルは王都学園から追放された、悲しい過去を払しょくするために。
キタエル学園の代表になり、ライバルに再び挑む想いがあった。

ミーケは強くなって、自分の里の敵討ちを願っていた。
そのために常に前を向いて励んでいた。

「ああ……そうだったな」

二人の想いを感じて、血が上った頭が冷えた。
今、オレが怒りに身を任せて、どうなる。

暴挙に出て、失格になってしまったら、この二人の夢は途絶えてしまう。

こんな時だからこそ、オレは冷静に行動をする必要があるのだ。

『ハリト団の大将は、はやく準備をしてください!』

アナウンスで促される。

「ふう……後はオレに任せて、二人はここで、ゆっくり見ていてくれ」

「えっ……ハリト様……はい、信じて待っています!」

「ハリトたん……ファイトにゃー」

「ああ、任せて。あと二人の剣、少し借りていくよ」

ミーケの細身剣と、マリエルの片手剣を手に取る。

オレはゆっくり立ち上がり、両手に剣を構える。

「さて、いってくるか」

こうして二人の想いを受け取り、決勝戦の大将戦。

最後の戦いの場に、オレは向かうのであった。
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