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第29話:第二地獄
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まぬけな大賢者レイチェル=ライザールを、《七大地獄》の第二階層、《第二地獄モアブ》に招待する。
「くっ、まさか……ここは、本当に魔界なのか?」
レイチェル=ライザールは研究室の非常口から、外に飛び出していく。
外に広がっていた光景に、言葉を失っている。
「はっはっは……だから言っただろう。魔界へ、ようこそ、二人目の勇者よ」
ボクも久しぶりの魔界へと足を進める。
拷問を受けていた義体は、既に回収済み。
今は“こっちの本体”が思考のメインとなっている。
「二人目? そうか、バーナードが、ああなったのは、お前の仕業か⁉ いや……先ほどの義体、そうか。バーナードは既に葬られた後か⁉」
さすがは大賢者といったところだろうか。少しの情報だけでレイチェル=ライザールは、多くを理解している。
お蔭で無駄な説明が省けて便利だ。
「葬られた? それは誤解だ。 奴は今ごろ最終地獄を楽しんでいる最中さ。永遠に終わらない苦しみをな!」
「最終地獄か……くっくっく……はっはっは……」
レイチェル=ライザールは急に高笑いを上げる。もしや、既に敗北感で、心が折れてしまったのだろうか。
いや……この狂気の女に限って、それは無いな。
「いやー、ライン。キサマには感謝しているぞ。まさか魔界にアタシを招待してくれる、とはね!」
そして不敵な笑みを浮かべて、《第二地獄モアブ》を見回している。
「ほほう? 随分と余裕だな? 勝算でもあるつもりか?」
「余裕? 勝算? それは違うわよ、ライン! アタシは歓喜しているのさ! 念願の魔界に来られて! だって、そうでしょ! ここには魔族が沢山いるのよ! いくら切り刻んで拷問して壊しても、すぐに新しいスペアがあるのよ! こんな最高の研究所はないでしょ、ライン⁉」
レイチェル=ライザールは正常だった。魔界に連行されたことを、好機とさえ喜んでいたのだ。
コイツにとって魔族は、実験用の小動物のような存在。魔界と聞いても、怖くとも何ともないのだろう。
「さて、ライン。お前の本体をそろそろ調べさせてもらうわよ! さっきの宣言の通り、切り刻んであげるわ! キサマの精液を丸ごと取り出してあげるわ!」
レイチェル=ライザールは杖に続き、全身の装備を身につける。禍々しいほどの魔力を発する、危険な装備だ。
【収納】系の勇者魔法で、常に持ち歩いていたものであろう。アホなバーナード=ナックルとは違い、この大賢者は常に戦闘態勢に臨んでいるのだ。
「そう発情するな、レイチェル=ライザール。キサマの最初の相手はボクではない。キサマに相応しい門番を紹介しよう」
「門番だと? ん? この気配は?」
レイチェル=ライザールの背後に、一人の青年が立っていた。
金髪の制服姿で、少し眠そうな顔の学生だ。
「ベルフェ一回生? アイツも仲間か? ということは、コイツも魔族の一種か。これは面白い! ラインの前に、あの気に食わない仏頂面を、ズタズタに内臓を引き出してやるわ!」
――――人族最強である勇者、その中でも最強の勇者魔法の使い手《大賢者》レイチェル=ライザール。
――――魔界随一の魔術の使い手である《怠惰《たいだ》ベルフェ》。
こうして異次元の魔法戦が、幕を開けるのであった。
「くっ、まさか……ここは、本当に魔界なのか?」
レイチェル=ライザールは研究室の非常口から、外に飛び出していく。
外に広がっていた光景に、言葉を失っている。
「はっはっは……だから言っただろう。魔界へ、ようこそ、二人目の勇者よ」
ボクも久しぶりの魔界へと足を進める。
拷問を受けていた義体は、既に回収済み。
今は“こっちの本体”が思考のメインとなっている。
「二人目? そうか、バーナードが、ああなったのは、お前の仕業か⁉ いや……先ほどの義体、そうか。バーナードは既に葬られた後か⁉」
さすがは大賢者といったところだろうか。少しの情報だけでレイチェル=ライザールは、多くを理解している。
お蔭で無駄な説明が省けて便利だ。
「葬られた? それは誤解だ。 奴は今ごろ最終地獄を楽しんでいる最中さ。永遠に終わらない苦しみをな!」
「最終地獄か……くっくっく……はっはっは……」
レイチェル=ライザールは急に高笑いを上げる。もしや、既に敗北感で、心が折れてしまったのだろうか。
いや……この狂気の女に限って、それは無いな。
「いやー、ライン。キサマには感謝しているぞ。まさか魔界にアタシを招待してくれる、とはね!」
そして不敵な笑みを浮かべて、《第二地獄モアブ》を見回している。
「ほほう? 随分と余裕だな? 勝算でもあるつもりか?」
「余裕? 勝算? それは違うわよ、ライン! アタシは歓喜しているのさ! 念願の魔界に来られて! だって、そうでしょ! ここには魔族が沢山いるのよ! いくら切り刻んで拷問して壊しても、すぐに新しいスペアがあるのよ! こんな最高の研究所はないでしょ、ライン⁉」
レイチェル=ライザールは正常だった。魔界に連行されたことを、好機とさえ喜んでいたのだ。
コイツにとって魔族は、実験用の小動物のような存在。魔界と聞いても、怖くとも何ともないのだろう。
「さて、ライン。お前の本体をそろそろ調べさせてもらうわよ! さっきの宣言の通り、切り刻んであげるわ! キサマの精液を丸ごと取り出してあげるわ!」
レイチェル=ライザールは杖に続き、全身の装備を身につける。禍々しいほどの魔力を発する、危険な装備だ。
【収納】系の勇者魔法で、常に持ち歩いていたものであろう。アホなバーナード=ナックルとは違い、この大賢者は常に戦闘態勢に臨んでいるのだ。
「そう発情するな、レイチェル=ライザール。キサマの最初の相手はボクではない。キサマに相応しい門番を紹介しよう」
「門番だと? ん? この気配は?」
レイチェル=ライザールの背後に、一人の青年が立っていた。
金髪の制服姿で、少し眠そうな顔の学生だ。
「ベルフェ一回生? アイツも仲間か? ということは、コイツも魔族の一種か。これは面白い! ラインの前に、あの気に食わない仏頂面を、ズタズタに内臓を引き出してやるわ!」
――――人族最強である勇者、その中でも最強の勇者魔法の使い手《大賢者》レイチェル=ライザール。
――――魔界随一の魔術の使い手である《怠惰《たいだ》ベルフェ》。
こうして異次元の魔法戦が、幕を開けるのであった。
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