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第12話:未来への種(シード)
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《魔道農耕機ヤンマー》と農業班のみんなのお蔭で、荒野の開拓に成功。
一面に感動的な畑の光景が広がっていた。
「みんな、お疲れ様です……えっ⁉」
作業を終えた領民を、労おうと視線を向けた時、ボクは思わず言葉を失ってしまう。
「うっ……」
「うっ……うっ……」
何故なら農業班のみんなも感動していたのだ。
自分たちが苦労して開墾した農地を見つめながら、誰もが大粒の涙を流していた。
「みなさん……」
彼らは全ての家財道具と農地を捨てて、ボクの後を追ってきた。強い決意と覚悟があって、ここまできた。
だが昨日まで誰もが、不安に思っていたに違いない。
……「本当に全てを捨てて、ライル領に移住してよかったのか⁉」
……「こんな不毛の荒野しかないライル領で、本当に農業をまたできるのか⁉」
……「もしかしたら自分たちは農家を辞めて、狩人として生きていかないくてはいけないのでは⁉」
彼らは代々農業で生計を立ててきた者たち。だからこそ不毛な土地のライル領に、誰にも言えない不安があったに違いない。
「ああ……これがワシらの新しい農地……」
「これでご先祖様に顔向けができるぞ……」
「息子たちにも先祖代々の技を、伝えてもいいんだな……」
だからこそ彼らは涙を流し、感動に浸っていた。
過去の先祖から受け継ぎ、子どもたちへ手渡す未来へ希望が見えて、今まで抑え込んでいた不安が、感動の涙に反転していたのだ。
「みなさん、本当にありがとうございます! これからもよろしくお願いします!」
だからこそボクは頭を深く下げて、彼らに最大級の敬意を払う。普通の領主は農民に頭など下げない。
だがボクは知っている。こうした領民たちの想いと努力によって、多くの領地が成り立っていることを。
だからライル領の領主として、改めて全ての領民に感謝したかったのだ。
「ラ、ライル様、頭を上げてください!」
「そうです、ライル様! ワシらのために、そんな……」
「こちらこそ感謝しかないです! こんな広大で肥沃な土地を耕かせてもらって!」
「そうですぜぃ! これほど広大な農地は、アルバート領にもなかったですから!」
農業班の誰もが、ボクに駆け寄ってくる。感謝をし合いながら、互いに敬意を払い合う。
「みなさん、ありがとうございます。あっ、そうだ! せっかくだから種植えもしていきませんか? 種や材料はこの《収納袋》に入れてきたので!」
「「「分かりました」」」
予想以上に開墾が早く終わったので、まだ今日の作業時間はある。ボクたちは引き続き種植えの作業に、移行することにした。
「それじゃ少し待ってください。《魔道農耕機ヤンマー》を“別モード”にしますね……」
収納袋から追加パーツを取り出し、《魔道農耕機ヤンマー》に装着していく。
新しいモードの機能は『効率的に素早く種と苗を植えていく』こと。手元のスイッチで植える間隔や深さ、量も小まめに調整していける。
細かい調整は農業班の人たちに一任。ボクは使い方と調整方法を始動していく。
種植えの準備が整い、いよいよ作業が開始となる。
「それではいきましょう!」
ウィ――――ン! ウィ――――ン! ウィ――――ン!
ボクの合図と共に、十台以上の《魔道農耕機ヤンマー》が起動。農業班に操作され、本格的な種植え作業が開始となる。
ウィ――――ン! カッ、カッ、カッ!
《魔道農耕機ヤンマー・植えバージョン》が前進していき、リズミカルに種が植えられていく。
「おお、これは凄いぞ!」
「人の手で植える方法の、十倍以上の速さと効率だぞ!」
「しかも腰にまったく負担がかからず、力もほとんど必要ないぞ!」
種植えをしながら、誰もが感動の声を上げていた。
何しろ穀物を育てる中で、種植えは一番キツイ重労働の一つ。それが鼻歌混じりでも手軽に、しかも十倍以上の効率で可能になったのだ。
農業のプロの彼らが感動するもの無理はない。
ボクも一緒に種植えの作業を手伝い、穀物の種植え作業がひと段落する。
「よし、次は野菜も植えるぞ!」
「ああ、そうだな! 子どもたちの好きな野菜も、たくさん植えてやろうぜ!」
「収穫時期になったら、みんなの度肝を抜かしてやろうぜ!」
次は色んな種類の種と、苗を植えていくことになった。
彼らは家財道具と嗜好品を、ほとんどアルバート領に置いてきた。だが先祖代々で受け継いできた種と苗だけは、全て持ってきている。
彼らは信じていたのだ。
……「たとえライル様な荒野に追放されても、きっとこの種を生かす領地経営をしてくれる!」そう心の底から信じて、未来へとの種を持ちだしてくれたのだ。
「ライル様、終わりました!」
「こっちも終わりました!」
陽が沈む前に、全ての種植えの作業が完了した。
予定では一ヶ月近くかかる開墾と種植え作業を、たった一日で終わらせてしまったのだ。
「皆さん、お疲れ様です。今日のところは村に戻りましょう!」
農作業は暗くなったら仕事はできない。片づけをしてみんなで、村に戻っていく。
「明日からも、大変な作業になるな」
種植えがされた農地に、ふと視線を向ける
明日以降は水やりや雑草抜きなど、多くの仕事が待っている。
収穫ができるのは、早い野菜で数週間後。穀物は数ヶ月まで待たないといけない。
「でも持ち出してきた穀物も、段々と減っていくから、もう少し早めに収穫がしたいな……」
領民たちはある程度の穀物も持ってきている。だがどんな節約しても、数ヶ月は持たない。
その間のライル村の食料は森で狩りをした獣肉や、木の実やキノコ類だけになってしまう。
領民の健康を考えたら、できたら野菜や穀物は、もっと早い時期に収穫したいものだ。
「ん? あっ、そうか。ここはアルバート領じゃないから、大手を振って魔道具を使ってもいいのか!」
そんな時、ボクはある事実を思い出す。
前までは家族の目があったから、目立つ魔道具を使いうことはできなかった。
でも今は違う。
ここは自分の領地であり、“どんなに目立つ魔道具”を使ってもいいのだ。
「よし、それなら、昔作った魔道具を、今宵中に改造しておこう! 明日の農作業に向けて!」
こうしてボクは《“少し早め”に収穫できるための魔道具》の製作に取りかかるのであった。
一面に感動的な畑の光景が広がっていた。
「みんな、お疲れ様です……えっ⁉」
作業を終えた領民を、労おうと視線を向けた時、ボクは思わず言葉を失ってしまう。
「うっ……」
「うっ……うっ……」
何故なら農業班のみんなも感動していたのだ。
自分たちが苦労して開墾した農地を見つめながら、誰もが大粒の涙を流していた。
「みなさん……」
彼らは全ての家財道具と農地を捨てて、ボクの後を追ってきた。強い決意と覚悟があって、ここまできた。
だが昨日まで誰もが、不安に思っていたに違いない。
……「本当に全てを捨てて、ライル領に移住してよかったのか⁉」
……「こんな不毛の荒野しかないライル領で、本当に農業をまたできるのか⁉」
……「もしかしたら自分たちは農家を辞めて、狩人として生きていかないくてはいけないのでは⁉」
彼らは代々農業で生計を立ててきた者たち。だからこそ不毛な土地のライル領に、誰にも言えない不安があったに違いない。
「ああ……これがワシらの新しい農地……」
「これでご先祖様に顔向けができるぞ……」
「息子たちにも先祖代々の技を、伝えてもいいんだな……」
だからこそ彼らは涙を流し、感動に浸っていた。
過去の先祖から受け継ぎ、子どもたちへ手渡す未来へ希望が見えて、今まで抑え込んでいた不安が、感動の涙に反転していたのだ。
「みなさん、本当にありがとうございます! これからもよろしくお願いします!」
だからこそボクは頭を深く下げて、彼らに最大級の敬意を払う。普通の領主は農民に頭など下げない。
だがボクは知っている。こうした領民たちの想いと努力によって、多くの領地が成り立っていることを。
だからライル領の領主として、改めて全ての領民に感謝したかったのだ。
「ラ、ライル様、頭を上げてください!」
「そうです、ライル様! ワシらのために、そんな……」
「こちらこそ感謝しかないです! こんな広大で肥沃な土地を耕かせてもらって!」
「そうですぜぃ! これほど広大な農地は、アルバート領にもなかったですから!」
農業班の誰もが、ボクに駆け寄ってくる。感謝をし合いながら、互いに敬意を払い合う。
「みなさん、ありがとうございます。あっ、そうだ! せっかくだから種植えもしていきませんか? 種や材料はこの《収納袋》に入れてきたので!」
「「「分かりました」」」
予想以上に開墾が早く終わったので、まだ今日の作業時間はある。ボクたちは引き続き種植えの作業に、移行することにした。
「それじゃ少し待ってください。《魔道農耕機ヤンマー》を“別モード”にしますね……」
収納袋から追加パーツを取り出し、《魔道農耕機ヤンマー》に装着していく。
新しいモードの機能は『効率的に素早く種と苗を植えていく』こと。手元のスイッチで植える間隔や深さ、量も小まめに調整していける。
細かい調整は農業班の人たちに一任。ボクは使い方と調整方法を始動していく。
種植えの準備が整い、いよいよ作業が開始となる。
「それではいきましょう!」
ウィ――――ン! ウィ――――ン! ウィ――――ン!
ボクの合図と共に、十台以上の《魔道農耕機ヤンマー》が起動。農業班に操作され、本格的な種植え作業が開始となる。
ウィ――――ン! カッ、カッ、カッ!
《魔道農耕機ヤンマー・植えバージョン》が前進していき、リズミカルに種が植えられていく。
「おお、これは凄いぞ!」
「人の手で植える方法の、十倍以上の速さと効率だぞ!」
「しかも腰にまったく負担がかからず、力もほとんど必要ないぞ!」
種植えをしながら、誰もが感動の声を上げていた。
何しろ穀物を育てる中で、種植えは一番キツイ重労働の一つ。それが鼻歌混じりでも手軽に、しかも十倍以上の効率で可能になったのだ。
農業のプロの彼らが感動するもの無理はない。
ボクも一緒に種植えの作業を手伝い、穀物の種植え作業がひと段落する。
「よし、次は野菜も植えるぞ!」
「ああ、そうだな! 子どもたちの好きな野菜も、たくさん植えてやろうぜ!」
「収穫時期になったら、みんなの度肝を抜かしてやろうぜ!」
次は色んな種類の種と、苗を植えていくことになった。
彼らは家財道具と嗜好品を、ほとんどアルバート領に置いてきた。だが先祖代々で受け継いできた種と苗だけは、全て持ってきている。
彼らは信じていたのだ。
……「たとえライル様な荒野に追放されても、きっとこの種を生かす領地経営をしてくれる!」そう心の底から信じて、未来へとの種を持ちだしてくれたのだ。
「ライル様、終わりました!」
「こっちも終わりました!」
陽が沈む前に、全ての種植えの作業が完了した。
予定では一ヶ月近くかかる開墾と種植え作業を、たった一日で終わらせてしまったのだ。
「皆さん、お疲れ様です。今日のところは村に戻りましょう!」
農作業は暗くなったら仕事はできない。片づけをしてみんなで、村に戻っていく。
「明日からも、大変な作業になるな」
種植えがされた農地に、ふと視線を向ける
明日以降は水やりや雑草抜きなど、多くの仕事が待っている。
収穫ができるのは、早い野菜で数週間後。穀物は数ヶ月まで待たないといけない。
「でも持ち出してきた穀物も、段々と減っていくから、もう少し早めに収穫がしたいな……」
領民たちはある程度の穀物も持ってきている。だがどんな節約しても、数ヶ月は持たない。
その間のライル村の食料は森で狩りをした獣肉や、木の実やキノコ類だけになってしまう。
領民の健康を考えたら、できたら野菜や穀物は、もっと早い時期に収穫したいものだ。
「ん? あっ、そうか。ここはアルバート領じゃないから、大手を振って魔道具を使ってもいいのか!」
そんな時、ボクはある事実を思い出す。
前までは家族の目があったから、目立つ魔道具を使いうことはできなかった。
でも今は違う。
ここは自分の領地であり、“どんなに目立つ魔道具”を使ってもいいのだ。
「よし、それなら、昔作った魔道具を、今宵中に改造しておこう! 明日の農作業に向けて!」
こうしてボクは《“少し早め”に収穫できるための魔道具》の製作に取りかかるのであった。
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