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第20話:初めての体験
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回復ポーションを買い物した、翌日になる。
今日は冒険者の仕事が出来る日。
ボクは朝一に冒険者ギルドに向かう。
ギルドに入る前に、周囲と中を確認。あの赤髪の少女がいないか、念のために確認しておく。
よし、いない。
感じ的に、あの子は別の街の住人。
もしかしたら昨日だけ、ハメルーンに立ち寄ったのかもしれない。
あと怖い顔の冒険の人たちにも遭遇しないように、ボクは印象を薄くして受付カウンターにいく。絡まれたら怖いからだ。
「お姉さん、おはようございます」
「うわっ⁉ ハルク君? おはよう。相変わらず、いきなり出現するのね。今日も初級向けの仕事を探しにきたの?」
驚いてはいるが、お姉さんも慣れた感じで、対応してくれる。
こういうのは常連客みたいで、なんかボクも嬉しい。
「はい、そうです。何かありますか?」
「そうね……それなら、この大蜘蛛狩りの依頼は、どうかしら? 対象は一匹だから、ソロでも可能だけど?」
「いえ、魔物狩りは危険なので、遠慮しておきます。一角ウサギみたいに攻撃してこない狩りなら、大歓迎ですが」
「それなら、これはどうかしら? “水晶魚”狩りは? 相手は攻撃してこないけど、捕まえるのは難しいけど?」
「魚ですか? はい、それにします!」
水晶魚は魔物図鑑で見たことがある。
大人の太もも位の大きさの魚で、警戒心が強い魔物の一種なはず。
戦闘をしたくないボクには、ピッタリの依頼だ。
「了解……これが依頼書よ。あっ、そういえば、ハルク君。ハメルーン近郊で、“ある人物”を見かけたら教えてください」
「ある人物? どんな人ですか?」
受付のお姉さんが、意味深なことを伝えてきた。
人探しだろか?
「実は昨日、今の代の《剣聖》に人が、うちに来たのよね。目的は“魔人将ベリアル”を一撃で倒した、“凄い冒険者”を探すためなのよ……」
お姉さんは詳しく説明してきた。
何でも剣聖様ですら討伐に手こずっていた上級魔族の《魔人将》を、一撃で倒した人物がいるという。
強大な“魔王の加護”を持つ《魔人将》の身体に、一メートルくらいの大穴を開けた攻撃力の持ち主だ。
剣聖様の話によると、たぶん強大な魔力を持つ魔法使い系らしい。
その人物のことを、剣聖様が探しているという。情報提供者には十万ペリカが支払われるのだ。
「なるほど。そんな凄い冒険者が、このハメルーン近郊にいるんですね。一度でいいから会ってみたいですね」
上級魔族をワンパン出来る冒険者。
きっとカッコよくて、神武具とかの凄い装備の人なのだろう。
ん?
それにしても“魔人将ベリアル”か。
どこかで聞いたことがあるけど、気のせいだろう。
ボクには関係ない雲の上の存在の話だから、忘れておこう。
駆け出し冒険者の自分に出来るのは、コツコツとした初級依頼をこなしていくこと。
上級魔族や剣聖様なんて雲の上を見ていないで、しっかりと足元を見ていくのだ。
「それじゃ水晶魚狩りに行ってきます!」
気持ちを新たにして、ボクは水晶魚の生息地に向かう。
◇
「よし、ここが水晶魚の生息地のバイカリ池か」
目的の場所にやってきた。
深い森の中にある、大きめの池。情報通りハメルーンの街から“少し”北にきた場所。
ここに水晶魚が生息しているという。
「さて、さっそく狩りの準備をするか。ん? でも、どうやって、狩ればいいんだ?」
魔物図鑑によると水晶魚は、湖の中に生息する魚。
つまり剣を振り回して、捕まえられる相手ではない。
これは困った。
「あっ、そうか! 無いなら、作ればいいんだ!」
ボクの本職は鍛冶師で、モノ作りが得意。
さっそく【収納】から《持ち運び鍛冶場》を取り出し、池のほとりに展開する。
「魚の魔物狩り道具か? よし、前に生活辞典で見た、アノ道具を作ってみよう!」
記憶をさかのぼりながら、道具を作ってみることにした。
一度も作ったことが無い種類だけど、知識はあるから何とかなるはず。
記憶を頼りに、目的の道具を作っていく。
「よし、完成したぞ!」
何とか水晶魚狩りの道具が、完成した。
今回、作ったのは二つの道具。
――――“釣竿”と“魚取り網”だ。
どちらも加工がしやすいミスリル金属製。
釣竿の糸と、網は前に編んでおいたミスリルの糸を使用している。
「うーん? でも、大きさが少し道具図鑑と、違うような気がするな? まっ、いっか」
釣りはしたことがないけど、道具は上手く作れた気がする。
よし、さっそく狩りを開始しよう。
まずは釣竿から試してみる。
魔物図鑑に書いてあった水晶魚の好物のエサ。それに似せて作った“ルアー針”を糸の先につける。
もちろんルアー針もミスリル製。太陽に反射して虹色に輝いていた。
「よし、水晶魚さん、上手くかかってちょうだい!」
こうしてボクは初めての釣りに、挑戦するのであった。
◇
◇
――――だが、この時のハルクは知らなかった。自分がやって来たのはバイカリ池とは違う池なことを!
――――ここは樹海の“魔の池”で池の底には、とんでもない魔物が住みついていることを!
「うーん。なかなか釣れないな。よし、もう少し深い所を探ってみよう!」
ボクは糸を更に池の底に垂らしていくのであった。
今日は冒険者の仕事が出来る日。
ボクは朝一に冒険者ギルドに向かう。
ギルドに入る前に、周囲と中を確認。あの赤髪の少女がいないか、念のために確認しておく。
よし、いない。
感じ的に、あの子は別の街の住人。
もしかしたら昨日だけ、ハメルーンに立ち寄ったのかもしれない。
あと怖い顔の冒険の人たちにも遭遇しないように、ボクは印象を薄くして受付カウンターにいく。絡まれたら怖いからだ。
「お姉さん、おはようございます」
「うわっ⁉ ハルク君? おはよう。相変わらず、いきなり出現するのね。今日も初級向けの仕事を探しにきたの?」
驚いてはいるが、お姉さんも慣れた感じで、対応してくれる。
こういうのは常連客みたいで、なんかボクも嬉しい。
「はい、そうです。何かありますか?」
「そうね……それなら、この大蜘蛛狩りの依頼は、どうかしら? 対象は一匹だから、ソロでも可能だけど?」
「いえ、魔物狩りは危険なので、遠慮しておきます。一角ウサギみたいに攻撃してこない狩りなら、大歓迎ですが」
「それなら、これはどうかしら? “水晶魚”狩りは? 相手は攻撃してこないけど、捕まえるのは難しいけど?」
「魚ですか? はい、それにします!」
水晶魚は魔物図鑑で見たことがある。
大人の太もも位の大きさの魚で、警戒心が強い魔物の一種なはず。
戦闘をしたくないボクには、ピッタリの依頼だ。
「了解……これが依頼書よ。あっ、そういえば、ハルク君。ハメルーン近郊で、“ある人物”を見かけたら教えてください」
「ある人物? どんな人ですか?」
受付のお姉さんが、意味深なことを伝えてきた。
人探しだろか?
「実は昨日、今の代の《剣聖》に人が、うちに来たのよね。目的は“魔人将ベリアル”を一撃で倒した、“凄い冒険者”を探すためなのよ……」
お姉さんは詳しく説明してきた。
何でも剣聖様ですら討伐に手こずっていた上級魔族の《魔人将》を、一撃で倒した人物がいるという。
強大な“魔王の加護”を持つ《魔人将》の身体に、一メートルくらいの大穴を開けた攻撃力の持ち主だ。
剣聖様の話によると、たぶん強大な魔力を持つ魔法使い系らしい。
その人物のことを、剣聖様が探しているという。情報提供者には十万ペリカが支払われるのだ。
「なるほど。そんな凄い冒険者が、このハメルーン近郊にいるんですね。一度でいいから会ってみたいですね」
上級魔族をワンパン出来る冒険者。
きっとカッコよくて、神武具とかの凄い装備の人なのだろう。
ん?
それにしても“魔人将ベリアル”か。
どこかで聞いたことがあるけど、気のせいだろう。
ボクには関係ない雲の上の存在の話だから、忘れておこう。
駆け出し冒険者の自分に出来るのは、コツコツとした初級依頼をこなしていくこと。
上級魔族や剣聖様なんて雲の上を見ていないで、しっかりと足元を見ていくのだ。
「それじゃ水晶魚狩りに行ってきます!」
気持ちを新たにして、ボクは水晶魚の生息地に向かう。
◇
「よし、ここが水晶魚の生息地のバイカリ池か」
目的の場所にやってきた。
深い森の中にある、大きめの池。情報通りハメルーンの街から“少し”北にきた場所。
ここに水晶魚が生息しているという。
「さて、さっそく狩りの準備をするか。ん? でも、どうやって、狩ればいいんだ?」
魔物図鑑によると水晶魚は、湖の中に生息する魚。
つまり剣を振り回して、捕まえられる相手ではない。
これは困った。
「あっ、そうか! 無いなら、作ればいいんだ!」
ボクの本職は鍛冶師で、モノ作りが得意。
さっそく【収納】から《持ち運び鍛冶場》を取り出し、池のほとりに展開する。
「魚の魔物狩り道具か? よし、前に生活辞典で見た、アノ道具を作ってみよう!」
記憶をさかのぼりながら、道具を作ってみることにした。
一度も作ったことが無い種類だけど、知識はあるから何とかなるはず。
記憶を頼りに、目的の道具を作っていく。
「よし、完成したぞ!」
何とか水晶魚狩りの道具が、完成した。
今回、作ったのは二つの道具。
――――“釣竿”と“魚取り網”だ。
どちらも加工がしやすいミスリル金属製。
釣竿の糸と、網は前に編んでおいたミスリルの糸を使用している。
「うーん? でも、大きさが少し道具図鑑と、違うような気がするな? まっ、いっか」
釣りはしたことがないけど、道具は上手く作れた気がする。
よし、さっそく狩りを開始しよう。
まずは釣竿から試してみる。
魔物図鑑に書いてあった水晶魚の好物のエサ。それに似せて作った“ルアー針”を糸の先につける。
もちろんルアー針もミスリル製。太陽に反射して虹色に輝いていた。
「よし、水晶魚さん、上手くかかってちょうだい!」
こうしてボクは初めての釣りに、挑戦するのであった。
◇
◇
――――だが、この時のハルクは知らなかった。自分がやって来たのはバイカリ池とは違う池なことを!
――――ここは樹海の“魔の池”で池の底には、とんでもない魔物が住みついていることを!
「うーん。なかなか釣れないな。よし、もう少し深い所を探ってみよう!」
ボクは糸を更に池の底に垂らしていくのであった。
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