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8話 王家に仕えてみないか?

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 しばらくすると、マリアンヌさんが戻ってきた。
 彼女は軽く会釈をすると、

「姫様。用意が整いました。すでに国王陛下並びに王妃様も起こしになられております」
「分かったわ。カズマ、それでは向かいましょう!」
「待ってくれ! 俺の服装だが、これでいいのか?」

 服装は、ダークスーツのまま。
 これは起きた時から着たままの服。
 日本というか地球では、スーツならある程度のパーティでも晩餐でも許される服装だが、このよく分からない世界では何とも言えない。

「そうですね……」

 俺の周りを歩き回り、正面に来て上目遣いで顔を上げてきたアーデルハイドさんは、

「かなり仕立てがシッカリとした良質な布地ですから、問題ないです」
「そうですか……」

 量販店の紳士服売り場で購入したモノだが、流石は日本製のスーツなだけはある。

「はい。それよりもお父様とお母様が待っていますから急ぎましょう」

 アーデルハイドさんに手を掴まれて引っ張られるようにして宛がわれた部屋から出た。



 ――城の中を歩き回ること3分、到着したのは食堂とは名ばかりの大きな広間。
 広さ的には帝国ホテルで立食パーティを行うほどの広さがある。
 
「……金はあるところにはあるんだな……」
「どうかされましたか? カズマ様」
「――いや、何でもない」

 それにしても、給仕やメイド服を着た人間が壁に10人近く並んでいるのを見ると、流石は王族だなと感心してしまう。
 そして長いテーブルの上には、これまた多くの料理が並んでいる。
 やっぱり立食パーティじゃないのか?

「カズマ様は、こちらにお座りください」

 席を勧められて座ると、20メートルほど先に座っている国王と目が合う。

「カズマ君と呼べばいいかな?」

 どうしようかと迷っていたところで、相手側から話しを振ってきてくれた。
 正直ありがたい。
 そして、国王から話しを振ってきてくれた時点で、アーデルハイドさんは俺の近くに椅子を置き座った。
 どうして、俺の横に座るのか意味が分からない。

「カズマでいいです」
「そうか。――では、カズマ」
「はい」
「君さえ良ければ我がスメラギ王国の兵士になるつもりはないか?」
「誠に恐縮ではございますが私のような若輩者にはとても務まるような仕事では――」
「ふむ……。だが、君のステータスは普通の兵士どころか騎士よりも数倍高いとアディから聞いている。つまり君は原石だということだ。そして昨今は魔物が活性化し各地で暴れまわっている。つまり強い兵士が欲しい。民を守るためにな。君も冒険者なら、そこは分かるだろう?」

 冒険者設定、まだ生きていたんだな……。
 まぁ、最初に冒険者だと説明したからな。
 
「そうですが……」
「どうだろうか? 冒険者ギルドは、貧民のセーフティネットという事で王家や貴族が資材を出して作った組織ではあるが、できれば王家に仕えてほしい」

 さて、どうやって断ったらいいものか。
 
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