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第五章 幕間

第277話 神楽坂都(1)

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 目を開ける。
 そして、気が付く。

 ――ああ。ここは夢の中だと……。

 小さいころから何度も何度も何度も何度も見てきた夢。

 辺りを見渡せば、私が立っている場所は、石畳の上だった。
 周囲は、壁に囲まれてはいたけど、部屋の大きさは推定で50メートルほどあり、天井はアーチ状のドームで、高さは30メートルを優に超えていると思う。

「姫様、これより勇者召喚の儀を行います。すでに儀式の用意は整っています。召喚魔法陣に、姫様の魔力を流してください」
「ええ。分かったわ」

 目の前に霞みがかかったかと思うと、突然、現れた老人が、日本語ではない、まったく別の言語で私に話しかけてきたけど、自然と話しかけてきた内容が理解できた。
 老人は、私を姫と呼ぶ。
 そして召喚という言葉を呟く。
 それに対して、私は――、何の躊躇もなく返事をすると、石畳の上を歩いていく。
 石畳には、何か魔法陣らしきモノが刻み込まれていた。

 何が起きるのか想像もできない。
 だけど、何故か知らないけど胸の鼓動だけが早鐘を打っていく。
 何か危険な――、行ってはいけないという不安だけが心の中に広がっていく。
 だけど、私が宿っている姫と呼ばれた存在は、聞き慣れない言葉を謳うように呟いていくと、石畳に刻まれていた魔法陣が蒼く光り――、それに合わせるようにして合唱するような音が聞こえてくる。
 そこで、私はようやく気が付く。
 光輝く魔法陣の周りには、数えきれないほどの人が、声を上げていることに――、その異様さに。

 声量は高くなっていき――、それに伴い魔法陣の光は強くなり――、目が開けていられないほどの眩しさが視界を覆った直後、軽い音が聞こえてくる。

「姫様! 成功です! 勇者の召喚に成功しました!」
「そう……」

 何の感情も感じさせない声で応じる私が入っている体は、視線を魔法陣の中央部へと向ける。
 必然的に、私の視線も、そちらへと。
 すると、魔法陣の中央には二つの人影が見えた。
 一人は、私がよく知っている人物――、そう――、私自身――。
 そして、もう一人は、意識を失っているのか倒れている優斗であった。



 ――ジリリリリ。

「ハッ!」

 目覚まし時計と共に、私は夢の中から抜け出す。
 また、同じ夢を見てしまった。
 以前は、一年に一回――、多くて一年に数回だったのに、最近は、毎日ではないけど頻繁に見るようになっていた。

 ――コンコン

「都、今日から学校だけどどうするの? 体調が悪いようなら、先生に連絡を入れておくわよ?」

 昨日、優斗と喧嘩をして家に帰ってきたあと、お母さんには何も説明できてない。
 優斗との同棲を、お母さんとお父さんが許可してくれたのに。
 それなのに突然帰ってきて何も聞かないお母さんには、感謝しかない。

「ううん。大丈夫だから」

 連休も終わったから、学校に行かないと――。
 学校に向かう。
 何時も一緒に登下校していた純也と優斗がいないだけで、とてもつまらないし何か足りない。
 登校したあとは、私は一人、学校でぼーっと外を見ているだけ。

 椅子に座り窓から校庭を見てぼーっとしていた私に――、

「ねえねえ。都!」
「どうしたの? 朽木さん」

 話しかけてきたのは、朽木きららさん。
 教室では、カースト上位のグループのリーダーで、普段はあまり話す機会の無い人。

「今日は、純也は来てないの?」
「純也?」
「そうそう。いつも一緒だったわよね?」
「親戚で不幸があったらしくて、しばらく休むって言っていたけど……」
「なーんだ。――で! いつ来るの?」
「わからないけど、今度、聞いてみようか?」
「――べ、べつにいーし! じゃあね!」

 要件は済んだとばかりに朽木さんは、自分のグループへと戻っていく。
 その後ろ姿を見送った私は、校庭の方を見て思わず溜息が出てしまう。
 朽木さんに伝えた純也のこと――、それは嘘ではないけど、本当だとも思わない。
 連休中に起きた出来事。
 それらが全ての元凶なのは間違いなくて、分からないことだらけ。

「何だか、私だけ蚊帳の外にいるみたい……」

 ポツリと口から零れ落ちた言葉。
 変な化け物に、純也だけでなくて優斗も普通じゃなかった。
 本当に心配だったのに、二人共何も教えてくれない。
 優斗に聞いてもはぐらかすばかりで、昨日なんて喧嘩になったし……。

「私って、何なのかな……」

 机に頬を当てるとひんやりと涼しい
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