68 / 196
正妻戦争(18)エルナ VS 神田栄治
しおりを挟む
冒険者ギルドの建物の中に入って、建物の中を見ていた俺達に話しかけてきたのは、ラムドに引退した冒険者を集めるようにと命令を受けた男だった。
「ずいぶんと忙しそうだな」
「はい。総督府が消えてしまったので、戦える戦力を有しているのは冒険者ギルドだけですから。総督府に所属していた兵士の方も、冒険者ギルドで一時的に運用する形になっていますし」
「なるほど……」
「それよりも、カズマさんとエミリアさん、こちらへ――、ギルドマスターがお待ちです」
案内されたのは、以前にも通された冒険者ギルドマスターの部屋。
そこには、二人の人物がソファーに座っている。
一人は港町ケインの冒険者ギルドマスターの代理をしていた女性職員のソフィア。
そして、もう一人は冒険者ギルドの城塞都市デリア支部のギルドマスターのラムド。
二人は視線を俺達の方へと向けてきた。
「カズマ君、待っていたよ。それとエミリアさんも」
ソファーから立ち上がり、先に話しかけてきたのはラムドであった。
「私も……ですか?」
ラムドの言葉に戸惑いの表情を浮かべるエミリア。
たしかに、エミリアの名前をラムドが口にしたのは俺にとっても以外ではあった。
今までは、エミリアが俺と一緒にいても人間はエミリアの存在をいないモノとして扱っていたからだ。
だから、エミリアが困惑するのも無理はない。
「そうだ。まずは腰を下ろしてくれ」
勧められるがままに、ソファーへ腰を下ろす。
そして、俺の横にもエミリアが座り――、それを確認したラムドが口を開く。
「今回、呼び立てた理由は幾つかある」
そのラムドの言葉に俺は頷く。
まぁ、大体の想像はつくが……、魔王軍のことだろう。
「まず、城塞都市デリアを襲った魔王軍四天王の討伐に関してだ」
「まぁ、そういう所だとは思っていた。つまり、報酬の話をしたいということか?」
「そうなる」
俺は、冒険者ギルドマスターのラムドの言葉に「なるほど」と、頷く。
前回、港町ケインで魔王軍四天王を倒した時も莫大な報奨金をもらったからな。
それなりの額が貰えるのは想定済みだ。
問題は、城塞都市デリアを守った功績を含めて、どれだけの報奨金が貰えるのか? という点だ。
「――で、いくらだ?」
「まぁ待ちたまえ。そんなに急ぐものでもない。その前に、エミリアさんから用事を済ませたいと思う」
ずいぶんと――、まあ、もったいつけてくるな。
まぁ、貰うものは変わらないから別にいいか。
「――で、エミリアに何かようか?」
「うむ。エミリアさん」
「は、はい」
エミリアは、何を言われるのかと緊張しているのが横に座っている俺に伝わってくる。
「まず城塞都市デリアの兵士が掛かっていた傀儡を解いてくれた事を感謝したい」
エミリアに向けて頭を下げてくるラムド。
それは、エミリアが兵士を傀儡化した術を解呪したという事が調査から判明し確定したという何よりの証。
「いえ。偶然でしたので……」
「それでもエミリアさん、君に救われた人間は1000人近い。それはとても大きな意味を持つ。だから誇ってくれていい」
「……はい。ありがとうございます」
どこか居心地が悪そうに見えるのは、俺の気のせいではないだろう。
この世界では、獣人族や亜人族は人間からは魔王の手下ということで基本的に忌み嫌われているし、見つかれば問答無用で奴隷とされる。
そんなに亜人種に頭を下げるという行為は意味がある行為だ。
「エミリアさん。君には、多くの兵士が感謝をしており、その家族も然りだ。よって君には、これを渡しておきたい」
テーブルを挟んで対面に座っているラムドが、一枚のプレートをテーブルの上に置き、エミリアの方へと差し出してくる。
「これは……、冒険者ギルドカードですか?」
「ああ、それと城塞都市デリアの市民権も付与してある」
「市民権をですか!?」
「そうだ。君は、それだけの功績を今回上げてくれた。都市の皆は、君に感謝をしている」
「……あ、ありがとうございます……」
ポロポロと、瞳から涙を零すエミリア。
「エミリア……」
「わ、私……。皆さんに必要とされて……」
今まで、人に迫害されてきた亜人種であるエミリアの胸中には幾つも思うところがあったのだろう。
その心境を俺は察してやることはできない。
同じ立場ではなかったから。
だが――。
「ああ、よかったな」
――認めることはできる。
「エミリアが、頑張って――、人を助けようと頑張ったからだ」
「私、そんなつもりは……」
「そんなつもりは無くても結果が付いてきた。それだけのことだ」
「そうね。エミリアさんは、港町ケインでの魔王軍との攻防戦の時から、一生懸命、人助けを頑張ってきたものね。今回の市民権に関しては冒険者ギルド、港町ケイン支店も賛同しているわ」
黙っていたソフィアが話に加わってくる。
「――まぁ、そういうことだ。安心して受け取ってくれ」
「はい……、ありがとうございます。ラムドさん、ソフィアさん」
エミリアはテーブルから冒険者ギルドカードを手に取ると両手で大事そうに握りしめた。
そんなエミリアを見て、俺も嬉しくなった。
「おほん、それでだな……」
仕切り直しとばかりに、ラムドが一度、咳をしたかと思うと緊張感ある声で俺の方を見てくる。
「ずいぶんと忙しそうだな」
「はい。総督府が消えてしまったので、戦える戦力を有しているのは冒険者ギルドだけですから。総督府に所属していた兵士の方も、冒険者ギルドで一時的に運用する形になっていますし」
「なるほど……」
「それよりも、カズマさんとエミリアさん、こちらへ――、ギルドマスターがお待ちです」
案内されたのは、以前にも通された冒険者ギルドマスターの部屋。
そこには、二人の人物がソファーに座っている。
一人は港町ケインの冒険者ギルドマスターの代理をしていた女性職員のソフィア。
そして、もう一人は冒険者ギルドの城塞都市デリア支部のギルドマスターのラムド。
二人は視線を俺達の方へと向けてきた。
「カズマ君、待っていたよ。それとエミリアさんも」
ソファーから立ち上がり、先に話しかけてきたのはラムドであった。
「私も……ですか?」
ラムドの言葉に戸惑いの表情を浮かべるエミリア。
たしかに、エミリアの名前をラムドが口にしたのは俺にとっても以外ではあった。
今までは、エミリアが俺と一緒にいても人間はエミリアの存在をいないモノとして扱っていたからだ。
だから、エミリアが困惑するのも無理はない。
「そうだ。まずは腰を下ろしてくれ」
勧められるがままに、ソファーへ腰を下ろす。
そして、俺の横にもエミリアが座り――、それを確認したラムドが口を開く。
「今回、呼び立てた理由は幾つかある」
そのラムドの言葉に俺は頷く。
まぁ、大体の想像はつくが……、魔王軍のことだろう。
「まず、城塞都市デリアを襲った魔王軍四天王の討伐に関してだ」
「まぁ、そういう所だとは思っていた。つまり、報酬の話をしたいということか?」
「そうなる」
俺は、冒険者ギルドマスターのラムドの言葉に「なるほど」と、頷く。
前回、港町ケインで魔王軍四天王を倒した時も莫大な報奨金をもらったからな。
それなりの額が貰えるのは想定済みだ。
問題は、城塞都市デリアを守った功績を含めて、どれだけの報奨金が貰えるのか? という点だ。
「――で、いくらだ?」
「まぁ待ちたまえ。そんなに急ぐものでもない。その前に、エミリアさんから用事を済ませたいと思う」
ずいぶんと――、まあ、もったいつけてくるな。
まぁ、貰うものは変わらないから別にいいか。
「――で、エミリアに何かようか?」
「うむ。エミリアさん」
「は、はい」
エミリアは、何を言われるのかと緊張しているのが横に座っている俺に伝わってくる。
「まず城塞都市デリアの兵士が掛かっていた傀儡を解いてくれた事を感謝したい」
エミリアに向けて頭を下げてくるラムド。
それは、エミリアが兵士を傀儡化した術を解呪したという事が調査から判明し確定したという何よりの証。
「いえ。偶然でしたので……」
「それでもエミリアさん、君に救われた人間は1000人近い。それはとても大きな意味を持つ。だから誇ってくれていい」
「……はい。ありがとうございます」
どこか居心地が悪そうに見えるのは、俺の気のせいではないだろう。
この世界では、獣人族や亜人族は人間からは魔王の手下ということで基本的に忌み嫌われているし、見つかれば問答無用で奴隷とされる。
そんなに亜人種に頭を下げるという行為は意味がある行為だ。
「エミリアさん。君には、多くの兵士が感謝をしており、その家族も然りだ。よって君には、これを渡しておきたい」
テーブルを挟んで対面に座っているラムドが、一枚のプレートをテーブルの上に置き、エミリアの方へと差し出してくる。
「これは……、冒険者ギルドカードですか?」
「ああ、それと城塞都市デリアの市民権も付与してある」
「市民権をですか!?」
「そうだ。君は、それだけの功績を今回上げてくれた。都市の皆は、君に感謝をしている」
「……あ、ありがとうございます……」
ポロポロと、瞳から涙を零すエミリア。
「エミリア……」
「わ、私……。皆さんに必要とされて……」
今まで、人に迫害されてきた亜人種であるエミリアの胸中には幾つも思うところがあったのだろう。
その心境を俺は察してやることはできない。
同じ立場ではなかったから。
だが――。
「ああ、よかったな」
――認めることはできる。
「エミリアが、頑張って――、人を助けようと頑張ったからだ」
「私、そんなつもりは……」
「そんなつもりは無くても結果が付いてきた。それだけのことだ」
「そうね。エミリアさんは、港町ケインでの魔王軍との攻防戦の時から、一生懸命、人助けを頑張ってきたものね。今回の市民権に関しては冒険者ギルド、港町ケイン支店も賛同しているわ」
黙っていたソフィアが話に加わってくる。
「――まぁ、そういうことだ。安心して受け取ってくれ」
「はい……、ありがとうございます。ラムドさん、ソフィアさん」
エミリアはテーブルから冒険者ギルドカードを手に取ると両手で大事そうに握りしめた。
そんなエミリアを見て、俺も嬉しくなった。
「おほん、それでだな……」
仕切り直しとばかりに、ラムドが一度、咳をしたかと思うと緊張感ある声で俺の方を見てくる。
応援ありがとうございます!
1
お気に入りに追加
969
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる