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王都震撼(7)
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――王都リーズに拠点を作ってから、3日が経過した。
ガルガンが用意してくれた部屋は冒険者ギルドの職員が使う部屋の中でも一番大きな部屋で、部屋数は3部屋ある。
そして、台所も備え付けてある。
日本でいう所の3DKと言ったところだろう。
そんな部屋の一室で暇を持て余していると、ディアナが部屋に入ってきた。
「ご主人様、今戻りましたにゃん」
野菜や肉などが入っているカゴを手にしたディアナは、笑顔を俺に向けてくる。
リルカとエルナを開拓村に戻してから、ずっと、ディアナは笑顔だな。
「そうか。王都の様子はどうだ?」
「あまり宜しくないにゃん。病気を患う人も増えてきたにゃん」
「だろうな……。――で、物価の方も高騰してきたのか?」
「はいですにゃん」
「そうか」
俺は思わず溜息が出る。
たった一人を王都に入れないために、随分と民に迷惑をかけるのだなと。
それは、俺を必要以上に警戒している事になるのだが、逆を言えば、王都民からの反感を買っていることになる。
「今日で、水門を閉じて4日か……」
「はいですにゃん。いまも川から水だけが流入している状態ですにゃん。もう、踝まで王都内の水位が上がってきてるにゃん」
「それは大問題だな」
戦国時代には、豊臣秀吉が水攻めを行ったことがあったが、それを宰相がセルフ水攻めを自ら行っている状況で、さらに言えば衛生面が壊滅的な中世以前のこの世界では、水が停滞して淀むと言う事は、危険な状況だと言える。
おかげで感染症が発症して蔓延してきているのだろう。
俺が暮らしている冒険者ギルド職員が寝泊まりしている建物は、表側にある冒険者ギルドの建物の裏側だから広場の様子を見ることは出来ないが、屋根の上に上がれば見ることはできる。
俺は屋根の上に上がり、広場の方へと視線を向ける。
すると、広場では兵士達と王都民の間で小競り合いが勃発していた。
兵士達は、力で王都民の声を封殺しようとしているが、それが事態を更にややこしく、そして加速させていて――、
「何をしているのか……」
俺は、屋根の上で座りながら広場で起きている王都民と兵士との間のゴタつきを見ながら思わず声を漏らしてしまう。
王都民を守るために本来は組織された軍隊である兵士達が、王都民が水門を開けることを要求しても、それを突っぱねるだけで何もしないというのは、どう考えても悪手としか言えないし、そんなことをすれば反感を買うのは当然だろうに。
「ご主人様。王都中で、広場と同じようなことが起きてますにゃん」
俺のあとをついてきたディアナが黒い尻尾を交互に揺らしながら、そう呟いてくる。
「王都中でか……」
これは、思ったよりも問題は大きくなりそうというか大きくなっているが――、
「どうして宰相は動かないんだろうな。――いや、むしろこれだけ問題が大事になっているのに国王が静観している方が気になるな」
流石に、現段階では敵がどうして、そこまで俺を敵対視しているのか分からないから、王宮に忍び込むのは早計だから動くことはできない。
それに――、
「国王陛下は、最近は、臥せっていると聞いたにゃん」
「ベルリアンが病?」
「ですにゃん」
ベルリアン・ド・エルダ。
それがエルダ王国の国王の名前だが、未だに年齢は50歳に届くかどうかと言ったところのはずだ。
それが病に臥せているというのは、納得いかない部分だが――、
「だが、国王が病に臥せっている状況なら宰相が水門を一切開けないことにも説明はつくか……。現代日本と違って情報をシャットアウトしておけば、いくらでも情報操作は出来るからな……」
「現代日本ですかにゃん?」
「ああ。気にしなくていい」
「分かったにゃん」
思わず日本という単語が出てしまった。
そう思ったところで、ディアナが俺の横に座ってくると体を預けてくる。
「あのご主人様……」
「分かっている」
頭を撫でる。
「にゃーん」
頭や顎を撫でると、思わず「にゃーん」と口にしてしまう山猫族。
それは獣人族の特徴なのか? と、思ってしまう。
リルカやエルナは、そう言う事が無かったので、少しばかり気になってしまうが……。
「あのご主人様」
情熱的な表情で俺を上目遣いで見てくるディアナ。
「分かった。仕方ないな」
発情期中の獣人を放置しておくと、何をするか分からないからな。
ディアナと共に部屋に戻るとベッドに行きディアナとしばらく寝て――、逢瀬をしたあと、俺は心地良い眠りについた。
――コンコン
目を覚ましたのは、ドアをノックする音だった。
「誰だ?」
俺は着の身着のまま木製のドアに近づきながら声をあげる。
「俺だ。ガルガンだ」
「ガルガンか」
俺は閂を外しガルガンを室内に招き入れるが、すぐに顔をしかめるとガルガンは部屋に入ってきようとしない。
「おい、換気くらいしておけ」
「ああ……。悪いな」
思わず苦笑いを返しつつ、俺は部屋の外に出てガルガンと廊下で話すことにした。
「それで、何か進展があったのか?」
そう、俺は話を切り出した。
ガルガンが用意してくれた部屋は冒険者ギルドの職員が使う部屋の中でも一番大きな部屋で、部屋数は3部屋ある。
そして、台所も備え付けてある。
日本でいう所の3DKと言ったところだろう。
そんな部屋の一室で暇を持て余していると、ディアナが部屋に入ってきた。
「ご主人様、今戻りましたにゃん」
野菜や肉などが入っているカゴを手にしたディアナは、笑顔を俺に向けてくる。
リルカとエルナを開拓村に戻してから、ずっと、ディアナは笑顔だな。
「そうか。王都の様子はどうだ?」
「あまり宜しくないにゃん。病気を患う人も増えてきたにゃん」
「だろうな……。――で、物価の方も高騰してきたのか?」
「はいですにゃん」
「そうか」
俺は思わず溜息が出る。
たった一人を王都に入れないために、随分と民に迷惑をかけるのだなと。
それは、俺を必要以上に警戒している事になるのだが、逆を言えば、王都民からの反感を買っていることになる。
「今日で、水門を閉じて4日か……」
「はいですにゃん。いまも川から水だけが流入している状態ですにゃん。もう、踝まで王都内の水位が上がってきてるにゃん」
「それは大問題だな」
戦国時代には、豊臣秀吉が水攻めを行ったことがあったが、それを宰相がセルフ水攻めを自ら行っている状況で、さらに言えば衛生面が壊滅的な中世以前のこの世界では、水が停滞して淀むと言う事は、危険な状況だと言える。
おかげで感染症が発症して蔓延してきているのだろう。
俺が暮らしている冒険者ギルド職員が寝泊まりしている建物は、表側にある冒険者ギルドの建物の裏側だから広場の様子を見ることは出来ないが、屋根の上に上がれば見ることはできる。
俺は屋根の上に上がり、広場の方へと視線を向ける。
すると、広場では兵士達と王都民の間で小競り合いが勃発していた。
兵士達は、力で王都民の声を封殺しようとしているが、それが事態を更にややこしく、そして加速させていて――、
「何をしているのか……」
俺は、屋根の上で座りながら広場で起きている王都民と兵士との間のゴタつきを見ながら思わず声を漏らしてしまう。
王都民を守るために本来は組織された軍隊である兵士達が、王都民が水門を開けることを要求しても、それを突っぱねるだけで何もしないというのは、どう考えても悪手としか言えないし、そんなことをすれば反感を買うのは当然だろうに。
「ご主人様。王都中で、広場と同じようなことが起きてますにゃん」
俺のあとをついてきたディアナが黒い尻尾を交互に揺らしながら、そう呟いてくる。
「王都中でか……」
これは、思ったよりも問題は大きくなりそうというか大きくなっているが――、
「どうして宰相は動かないんだろうな。――いや、むしろこれだけ問題が大事になっているのに国王が静観している方が気になるな」
流石に、現段階では敵がどうして、そこまで俺を敵対視しているのか分からないから、王宮に忍び込むのは早計だから動くことはできない。
それに――、
「国王陛下は、最近は、臥せっていると聞いたにゃん」
「ベルリアンが病?」
「ですにゃん」
ベルリアン・ド・エルダ。
それがエルダ王国の国王の名前だが、未だに年齢は50歳に届くかどうかと言ったところのはずだ。
それが病に臥せているというのは、納得いかない部分だが――、
「だが、国王が病に臥せっている状況なら宰相が水門を一切開けないことにも説明はつくか……。現代日本と違って情報をシャットアウトしておけば、いくらでも情報操作は出来るからな……」
「現代日本ですかにゃん?」
「ああ。気にしなくていい」
「分かったにゃん」
思わず日本という単語が出てしまった。
そう思ったところで、ディアナが俺の横に座ってくると体を預けてくる。
「あのご主人様……」
「分かっている」
頭を撫でる。
「にゃーん」
頭や顎を撫でると、思わず「にゃーん」と口にしてしまう山猫族。
それは獣人族の特徴なのか? と、思ってしまう。
リルカやエルナは、そう言う事が無かったので、少しばかり気になってしまうが……。
「あのご主人様」
情熱的な表情で俺を上目遣いで見てくるディアナ。
「分かった。仕方ないな」
発情期中の獣人を放置しておくと、何をするか分からないからな。
ディアナと共に部屋に戻るとベッドに行きディアナとしばらく寝て――、逢瀬をしたあと、俺は心地良い眠りについた。
――コンコン
目を覚ましたのは、ドアをノックする音だった。
「誰だ?」
俺は着の身着のまま木製のドアに近づきながら声をあげる。
「俺だ。ガルガンだ」
「ガルガンか」
俺は閂を外しガルガンを室内に招き入れるが、すぐに顔をしかめるとガルガンは部屋に入ってきようとしない。
「おい、換気くらいしておけ」
「ああ……。悪いな」
思わず苦笑いを返しつつ、俺は部屋の外に出てガルガンと廊下で話すことにした。
「それで、何か進展があったのか?」
そう、俺は話を切り出した。
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