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王城内での戦闘(2)

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「残念だったな……」
 
 ソルティと出会ってから日ごとに生活魔法の威力と魔法抵抗力が上がっている気がする。
 もしかしたら、この世界で唯一の人間というのが理由なのかも知れないが、今度、詳しく聞いてみる必要があるかもしれない。
 
「もうっ! ――それならっ!」
 
 サキュバスたちが一斉に黒いマニュキュアで塗られたような爪を伸ばす。
 爪の長さは30センチ近く。
 そして、サキュバスたちが一斉に俺へと飛び掛かってきようとするが――、
 
「生活魔法発動、ガソリン――気化――、種火発動!」
 
 生活魔法が発動すると同時に、サキュバスたちを炎が包み込む。
 
「ファイアーウォール!? こんな高等な魔法を人間が!? 魔法陣すら使わずに!? そ、そんなばかな……」
「ううううっ、魔法障壁がまったく意味を為さな――」
 
 サキュバスたちが炎の中で次々と灰となって消し飛んでいく。
 どうやら、俺の魔法は抵抗魔法で防ごうとしたらしい。
 ただ、俺の発動させているのは魔法ではなく物理現象であり魔法では防ぐことは出来ない。
 5匹のサキュバスを一瞬で屠り、すぐに場所を移動する。
 真っ直ぐに伸びる回廊を走る。
 建物から出て30メートルほど走ったところで、俺は何らかの気配を察して直径2メートルほどの大理石の柱の裏へと身を隠す。
 
「――くそっ! 何なんだ! あの化け物は!」
「どうしますか? 小隊長」
「どうするも何もない! 空を覆い尽くすほどのサキュバスの数だぞ! もう、エルダ王国は終わりだ……」
「それでは、どうしますか?」
「逃げるしかないだろ!」
「――陛下は?」
「もう王都は終わりだ! 今更、どうしようもできない。俺達は、まずは自分の身を守ることを……ひいいいい」
 
 小隊長と呼ばれた男が小さな悲鳴を上げる。
 その声を聞いた俺は、隠れていた柱から声のした方へと視線を向ける。
 視線の先には、二人の兵士がサキュバスに馬乗りにされていて、チャームで魅惑を受けたのかサキュバスたちに性を吸われていた。
 
「一瞬だけ正気はあるが、すぐに魅惑で理性を破壊されるのか……」
 
 ガルガンに、聞いた通り、男の兵士二人はサキュバスの魅惑に耐えることも出来ずに、体を重ねているだけ。
 その瞳には、もはや理性というモノは存在していなかった。
 まるで獣のように交わっているだけだ。
 男二人に対して、サキュバスが10匹ほど囲っている。
 まるで城内では獲物は既に存在してないように振る舞っている。
 
「とりあえず始末しないとな」
 
 俺は、ガソリンを気化させると同時に火種の生活魔法により10匹近くのサキュバスを爆殺する。
 そして、回廊を走るが何時の間にか戦いの音は鳴りを潜めていた。
 
「戦いの決着がついたということか?」
 
 おそらくサキュバス相手だと、近衛騎士と兵士は男しかいないから一方的に狩られただけだと思うが……。
 そう考えたところで――、巨大な爆発音が聞こえてくる。
 それと同時に衝撃も大気を伝わって響いてきた。
 
「これは……」
 
 光を反射しているのかキラキラと光るモノが空から降ってくる。
 俺は空を見上げる。
 すると空を覆うように飛翔していた卑猥な下着を身につけたサキュバスが数十匹まとめて白い塊になったかと思うと砕け散る。
 
「ソルティがサキュバスと戦っているのか?」
「けけけっ――。お、おまえは……、城の兵士か? 見た事の無い髪のいろ……」
 
 中庭にいたのか、ふらつく足取りで、俺に近づいてくる老人が独り言のように呟くと目をコレでもかというほどカッ! と、開くと俺の元へと走ってくる。
 咄嗟に、俺はタックルしてきた老人を躱す。
 すると、老人は唐突に血を吐き出し、体が膨れ上がって爆散する。
 
「これは……魔力暴走か?」
 
 ガルガンの時よりも威力が低いが間違いなく魔力暴走であることに気が付くと同時に、上空からサキュバスが次々と落ちてくる。
 その数は数百を超えている。
 
「エイジ・カンダ」
「お前は……、メリア王女か?」
「ええ――、メリア・ド・エルダよ?」
 
 俺は、数百匹のサキュバスの中から現れた人間を見て眉を顰める。
 人間が、サキュバスの中から無傷で出てくることなんてありえないからだ。
 
「なるほど……。アンタが、全ての元凶だったってことか?」
「全ての?」
 
 俺の言葉にメリアは笑みを浮かべる。
 そして、体の色が肌色から魔族のサキュバスの証である青い肌に。
 さらに、牙や漆黒のコウモリの翼に、ハートマーク型の尻尾が生えた。
 
「それは誤解よ。私の、お姉さまが今回の絵を描いたのだもの。だから、エイジ・カンダ。貴方には死んでもらうわよ?」
「そうかよ」
 
 どうやら、お姉さまというのが淫魔たちを統括している存在なのだろう。
 そして、以前に会ったことがメリア王女は、お淑やかな存在だった。
 それが、淫魔にされた事で、俺の暗殺を企てるほどに思考パターンが変わったと――、つまりそういうことだろう。
 
「悪いが手加減はしないぞ? 殺されても文句は言うなよ?」
「ふんっ! 人間風情が生意気な」
 
 俺はメリア王女の言葉に返事する事なく生活魔法で作り出す摂氏3000度の炎でサキュバスを纏めて焼き払った。
 
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