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冒険者ギルドマスター就任前の裏話
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何よりも、冒険者ギルドの運営には国が携わっている。
それなら、内部の――、国王陛下に近い部分に知り合いが関与しているのは悪い事ではないか……。
「はぁ。ロラン、国王陛下の警護をきちんとしてくれよ? 俺は、王都の冒険者ギルドマスターをするから」
「それでは! エイジ殿は、王都の冒険者ギルドマスターをしてくれるという事でいいのか?」
「それは、仕方ないですよね」
俺以外の人間が冒険者ギルドマスターになってくれればいいが、リムルの父親みたく放任主義が冒険者ギルドマスターになったら、また問題になった時に後手に回ったらトンデモ無い事になりそうだし、そんなことになればニードルス伯爵領を守る事も大変になるし……。
「ただ――、一つお願いがあります」
「お願い?」
国王陛下が眉を顰める。
「はい。実は、俺は村を一つ開拓している状況で、王都の冒険者ギルドには、俺の代理を配属させてもらいたいのです」
「ふむ……。それで代理とは、儂の知っているモノか?」
「いえ。国王陛下はご存じではないと思いますが、以前に自分が冒険者をしていた時に、パーティを組んでいた人物になります」
「エイジ! それは、あの二人のことか!」
国王陛下の前だというのに、ズカズカと歩いてくると俺の肩にロランが手を置く。
「な、なんだよ? ロラン。国王陛下の前だぞ?」
「お前が冒険者をしていた時にパーティを組んでいた人物と言えば低ランク冒険者の魔法師と弓使いだろう?」
「そ、そうだが……」
「だったら駄目だろう? 実績が無い人間が冒険者ギルドの中でも最高峰の王都の冒険者ギルドマスターの代理とは言え就任すれば冒険者ギルドに所属している冒険者や、職員が黙ってはいない! お前は、サキュバスを殲滅できる力を有しているから問題ないが、そいつらに同じ事ができるのか?」
「それは……」
「冒険者ギルドマスターは――、特に王都の冒険者ギルドマスターに就任するのがガルガンのような実力者の理由は、他の冒険者ギルドメンバーが暴走した時に抑止力として対応するためだ。だから、冒険者ギルドのギルドマスターは、どこの町であったとしてもSランク、最低でもAランク冒険者の実力が求められる! そのくらいは、お前だって理解しているはずだ!」
「だから代理だと……」
「代理でも、お前が即日に対応は出来ないだろう? だったら、王都にお前が居残って冒険者ギルドマスターとして仕事をしなければいけない」
「……そいつは無理だ」
俺は肩を竦める。
そもそも俺が開拓の村に居たい本当の理由は、リルカのお腹の中で育っている俺の子供の件が一番大きい。
これからの事を考えると、リルカの傍に居てやりたい。
「それなら、俺は冒険者ギルドマスターを降りることになるが?」
俺の中で大事なのは第一に、リルカと、そのお腹の中にいる俺とリルカの子供であり、それ以外は二の次だ。
日本人らしい考えだと言われればそれまでの事だが、そこは譲れない部分だ。
「エイジ……本気なのか? 国よりも大事なモノがあるのか?」
「ああ。俺は守るべき家族が出来たからな」
「家族?」
「さっきも言っただろう? 俺には妻がいると」
「……王都に連れてくればいいだけの話だろう?」
「そいつは無理だ」
「マスター」
俺とロランの会話を聞いていたソルティが近づいてきた。
「どうした? ソルティ」
「妾がメディデータの二人の代わりに王都での抑止力として滞在するというのは如何でしょうか? 書類作業に関しては、マスターの代わりにリアとソフィアにやらせる事にして、不測の事態には妾が全てを消し去るというのは――」
「それは良い案だな」
「――め、女神様が!?」
国王陛下が目を見開き慌てるが――、
「何か問題でもありますか?」
「それは……」
「何か問題でもありますか?」
「――いえ。ありません。ロラン、エイジ殿の言う通りにしなさい」
ソルティの無言というか上司ばりの圧力に屈しる国王陛下。
「陛下!?」
「――ってことだ。ロラン、すまないな」
「……はぁ。わかったよ」
肩からロランの手が離れる。
振り返ればロランは溜息をつきながら――、「まったく、神を味方につけるなんて反則だろうに……」と、呟いている。
「それでは、国王陛下。王都の冒険者ギルドマスターは、自分が就任する方向で。ただ、代理を置くという事でよろしいでしょうか?」
「うむ」
「うむ! ではないのよ? メディ―データ。お前たちの主たる人間からの命令には無条件で傅くのがメディデータの役割ですよ?」
国王陛下の物言いに眉をピクッ! と、動かしたソルティが少々口早になりながら、そう語る。
「申し訳ありません。女神様」
「分かったのならいいわ。それよりも、さっさとマスターを冒険者ギルドマスターへ就任するように手配をしなさい」
「はっ!」
「マスター。私は、ソフィアとリアに王都へと来るように伝えてくるわね」
「ああ。頼んだ」
「行ってくるわ」
そう言うと、ソルティは、白い粉を舞い上げて姿を消す。
「エイジ殿。今から一筆認める。少し待っていてくだされ」
「分かりました」
それなら、内部の――、国王陛下に近い部分に知り合いが関与しているのは悪い事ではないか……。
「はぁ。ロラン、国王陛下の警護をきちんとしてくれよ? 俺は、王都の冒険者ギルドマスターをするから」
「それでは! エイジ殿は、王都の冒険者ギルドマスターをしてくれるという事でいいのか?」
「それは、仕方ないですよね」
俺以外の人間が冒険者ギルドマスターになってくれればいいが、リムルの父親みたく放任主義が冒険者ギルドマスターになったら、また問題になった時に後手に回ったらトンデモ無い事になりそうだし、そんなことになればニードルス伯爵領を守る事も大変になるし……。
「ただ――、一つお願いがあります」
「お願い?」
国王陛下が眉を顰める。
「はい。実は、俺は村を一つ開拓している状況で、王都の冒険者ギルドには、俺の代理を配属させてもらいたいのです」
「ふむ……。それで代理とは、儂の知っているモノか?」
「いえ。国王陛下はご存じではないと思いますが、以前に自分が冒険者をしていた時に、パーティを組んでいた人物になります」
「エイジ! それは、あの二人のことか!」
国王陛下の前だというのに、ズカズカと歩いてくると俺の肩にロランが手を置く。
「な、なんだよ? ロラン。国王陛下の前だぞ?」
「お前が冒険者をしていた時にパーティを組んでいた人物と言えば低ランク冒険者の魔法師と弓使いだろう?」
「そ、そうだが……」
「だったら駄目だろう? 実績が無い人間が冒険者ギルドの中でも最高峰の王都の冒険者ギルドマスターの代理とは言え就任すれば冒険者ギルドに所属している冒険者や、職員が黙ってはいない! お前は、サキュバスを殲滅できる力を有しているから問題ないが、そいつらに同じ事ができるのか?」
「それは……」
「冒険者ギルドマスターは――、特に王都の冒険者ギルドマスターに就任するのがガルガンのような実力者の理由は、他の冒険者ギルドメンバーが暴走した時に抑止力として対応するためだ。だから、冒険者ギルドのギルドマスターは、どこの町であったとしてもSランク、最低でもAランク冒険者の実力が求められる! そのくらいは、お前だって理解しているはずだ!」
「だから代理だと……」
「代理でも、お前が即日に対応は出来ないだろう? だったら、王都にお前が居残って冒険者ギルドマスターとして仕事をしなければいけない」
「……そいつは無理だ」
俺は肩を竦める。
そもそも俺が開拓の村に居たい本当の理由は、リルカのお腹の中で育っている俺の子供の件が一番大きい。
これからの事を考えると、リルカの傍に居てやりたい。
「それなら、俺は冒険者ギルドマスターを降りることになるが?」
俺の中で大事なのは第一に、リルカと、そのお腹の中にいる俺とリルカの子供であり、それ以外は二の次だ。
日本人らしい考えだと言われればそれまでの事だが、そこは譲れない部分だ。
「エイジ……本気なのか? 国よりも大事なモノがあるのか?」
「ああ。俺は守るべき家族が出来たからな」
「家族?」
「さっきも言っただろう? 俺には妻がいると」
「……王都に連れてくればいいだけの話だろう?」
「そいつは無理だ」
「マスター」
俺とロランの会話を聞いていたソルティが近づいてきた。
「どうした? ソルティ」
「妾がメディデータの二人の代わりに王都での抑止力として滞在するというのは如何でしょうか? 書類作業に関しては、マスターの代わりにリアとソフィアにやらせる事にして、不測の事態には妾が全てを消し去るというのは――」
「それは良い案だな」
「――め、女神様が!?」
国王陛下が目を見開き慌てるが――、
「何か問題でもありますか?」
「それは……」
「何か問題でもありますか?」
「――いえ。ありません。ロラン、エイジ殿の言う通りにしなさい」
ソルティの無言というか上司ばりの圧力に屈しる国王陛下。
「陛下!?」
「――ってことだ。ロラン、すまないな」
「……はぁ。わかったよ」
肩からロランの手が離れる。
振り返ればロランは溜息をつきながら――、「まったく、神を味方につけるなんて反則だろうに……」と、呟いている。
「それでは、国王陛下。王都の冒険者ギルドマスターは、自分が就任する方向で。ただ、代理を置くという事でよろしいでしょうか?」
「うむ」
「うむ! ではないのよ? メディ―データ。お前たちの主たる人間からの命令には無条件で傅くのがメディデータの役割ですよ?」
国王陛下の物言いに眉をピクッ! と、動かしたソルティが少々口早になりながら、そう語る。
「申し訳ありません。女神様」
「分かったのならいいわ。それよりも、さっさとマスターを冒険者ギルドマスターへ就任するように手配をしなさい」
「はっ!」
「マスター。私は、ソフィアとリアに王都へと来るように伝えてくるわね」
「ああ。頼んだ」
「行ってくるわ」
そう言うと、ソルティは、白い粉を舞い上げて姿を消す。
「エイジ殿。今から一筆認める。少し待っていてくだされ」
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