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闇ギルド

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「いってらっしゃいにゃん!」
 
 ディアナとソルティへ王城の護衛を任せたあと、俺は城壁へと向かう為に王城から出るが、すぐに衆人観衆の目が俺に向けられてくる。
 その中で、情報統制を任せているラウリが手を振ってくるのが見える。
 これは、あれだな……。
 話をした方が案件だな……。
 まったく、面倒な。
 
「どうした? ラウリ」
「ふふーん」
 
 何だか知らないがドヤ顔で腰に手を当てて俺を見上げてくるラウリ。
 
「なんだよ? 何か、得意げになりそうな良い事でやったのか?」
「そうじゃな! 冒険者ギルドの方から連絡が来たのだ」
「冒険者ギルドの方から?」
「うむ。ちょっと、ここではあれだから、少し歩きながら話さんか?」
「そうだな……」
 
 王城の城門前で立ち話をしていると、変に勘繰られても困るからな。
 
「――それじゃ、王都に入る詰め所へ向かわないといけないから、その間に話さないか? 情報のすり合わせも必要になるからな」
「うむ。わかったのだ」
「――じゃ、いくぞ」
 
 俺は身体強化を行い、ラウリを御姫様抱っこで抱き上げる。
 
「――ちょ!? ちょっと! ちょっと待つのだ! エイジ!」
「黙っていろ。とりあえず安定するまでは、口を閉じていないと舌を噛むぞ!」
 
 ラウリを抱きかかえたまま、俺は城門から噴水広場に通じる道を走る。
 坂道を走り下りながら、近くの2階建ての商店へと視線を向けたあと、路地裏へと入る。
 
「ラウリ、口を閉じていろよ?」
 
 踏み込む足に力を入れて跳躍する。
 2階建てのレンガ造りの商店の屋根上に着地したあとは、さらに他の背丈の高い建物の屋根へと跳躍し着地した。
 
「よし、ラウリ。会話しても大丈夫だぞ?」
「大丈夫じゃないわ! それよりも、このお姫様抱っこをやめんか!」
「気にするな」
 
 俺はラウリを御姫様抱っこしながら屋根の上を王都を囲う城壁へ向かって走る。
 
「気にするが? それよりも、このままいくのだな?」
「そうだな。それよりも、情報操作をしているお前が俺に接触してくるという事は何かあったということか?」
「うむ。そのことだが、闇ギルドの連中が王城へ攻め入ろうとしているようだ」
「闇ギルド? 暗殺ギルドではなくて?」
「うむ。どうやら、王城内が、かなり混乱していると闇ギルドの連中は考えているようだ。ずっと王城内にエイジが居て連絡がつかなかったらどうなるのかと思っておったところだ。何せヤバイやつが王城を護衛しているようじゃからの」
「ヤバイやつ?」
「いるのだろう? 太古の神が――」
「ああ。ソルティのことか……。ソルティのことは、ラウリも分かるのか?」
「そうじゃな。気配から、察することはできる」
「気配か……」
「アレは、全ての生物の神々の一柱であるからな。それに――」
「それに?」
「――エイル・バートラスも来ておった。何か、あったことは容易に想像がつく」
「エイル・バートラス?」
「白竜神族の族長の名前だ。だが、この大陸に来るとは……、その理由は分からなかったが、今は、その気配は消えておる。そのことを含めて、お主に伝えておこうと思っただけだ」
「そうか……。――で、そのエイル・バートラスってのは、もう此処には居ないんだよな?」
「そうなる」
「――なら、問題はないな。そうなると、今すぐに問題になるのは、闇ギルドへの対策くらいか。――で、どのくらいで闇ギルドが王城を攻めるか分かるか?」
「そこまでは分からんな」
「それは残念だ。だが、闇ギルドが王城を狙っているとなれば、ある程度の対策はとれるからいい情報だ」
「それは良かった。塩の女神ソルティは、人間には不寛容を聞いたことがあるからの。だからこそ、あまり派手に暴れられたら王都どころか貧民街の人間も被害を受けると思っていたからの」
「そうか。それにしてもソルティって、かなりヤバイやつってイメージがあるんだな」
「当たり前じゃ! やつからしてみたら、儂ら人間やエルフや獣人族や魔族も等しく無価値だと思っているとエルフの文献にはあったからの」
「ほう……」
 
 まぁ、ソルティの言動から言って、そういうところは往々にして、そういうところは見受けられるが、いまは、そうでもないような……そうでもないよな?
 
「エイジには、随分と神の一柱は寛容のようだな」
「まぁ……な……」
 
 それは、俺が、この世界の人間ではないからだ。
 超古代文明の人間と俺が同じだからだ。
 
「どうかしたのか?」
「――いや、何でもない。それよりも、話は今までので全部か?」
「うむ。あとは王城の警備に関しては幽閉されていた国王陛下を守ろうとした兵士や近衛兵、そして魔物を倒した英雄であるエイジが守っているという情報を巷に流しておいた」
「そうか……。つまり王城内の警護が手薄になっている部分を闇ギルドが襲うってことか?」
「私としては、どこまで闇ギルドが王城の現状を察しているのか分からない。だが――、王城を攻めるという事は確固たる情報源があると考えておる」
「そうなると、それはそれで問題だな」
「うむ。何か分かればいいのだが……」
「無理をするな。闇ギルドは、暗殺ギルドの大元締めだからな。あまり足を踏み入れるとろくなことにならないぞ」
「そうだな……」
 
 
 
 
  
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