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獣人族合流

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 ――が! 王都を囲う城壁の外には、俺が依然に王都に来た時に見た時よりも遥かに多くのテントが設置されていて、野宿をしている人々の姿が見えた。
 
「あれって、もしかして、王都へ入るのを待っている商人とか、そのへんか?」
「へい。そうですぜ、旦那」
 
 もはや悪役の三下っぷりの口調に代わっている兵士。
 
「そうか……」
 
 応じながらも、今は王城の守りを完璧にする前に外部からの人の流入に関して許可はまずいと思いながらも俺はソルティが言ったとおり、城壁外を見まわす。
 そこで、俺は手を振っている一段を見つける。
 
「おい。あの一団を王都に入れることは出来るか?」
「お任せください」
 
 兵士は、すぐにテラスまで戻ると建物の1階まで降りていったあと、詰め所を通り王都の城壁の一部――、関係者だけが通ることが許されている小さなドアを開けると外へと出ていった。
 その一部始終を見ながら、俺はオオカミ族のコローナに向けて手を振るう。
 さすがにオオカミ族というだけあって、先に俺を発見していたコローナは、灰色の尻尾を嬉しそうに振るうと、近づいてきた兵士に声をかけられていた。
 
 
 
「ご主人様っ! お待たせしましたワン!」
「ああ。ご苦労様。悪かったな。いきなり呼び寄せてしまって」
 
 兵士に連れられて王都に入ってきた獣人に俺は声をかける。
応じたのは、灰色の髪を背中まで伸ばしていたオオカミ族のコローナであった。
 
「問題ないですワン! それよりも、ディアナがご主人様からの寵愛を一人で受けている方が問題ですワン!」
 
 コローナは、拳を握りしめると答えてくる。
 そして、コローナの後ろに控えている獣人たちも何故か何度も頷いている。
 まったく……、これじゃ夜はたいへんそうだ。
 違う意味でなっ!
 
「そ、そうか……。それよりも、今回の集団の指揮をとっていたのはリアでもソフィアでもないんだな? ――って、リアとソフィアの姿が見えないんだが?」
「二人は、遅れてくるワン! 人間は足が遅いワン!」
「つまり二人が到着するのは、もうしばらくかかるってことか」
 
 そうなると冒険者ギルドでの立ち回りは少し考え直さないといけないな。
 
「エイジ様っ!」
「――ん?」
 
 俺とコローナの会話を聞いていた兵士が会話に割って入ってくると、「私が、馬を使って迎えに行ってきてもいいですが?」と、リアとソフィアを迎えに行ってきますと、詰め所の兵士が提案してきた。
 これは間違いなく、俺に取り入ろうとしているのがありありと分かる。
 ただ、逆に言えば取り入ろうとするのなら仕事はキチンとこなしてくれるだろう。
 
「分かった。頼めるか?」
「はい! 任せてください! それよりもお連れの方の特徴を教えて頂けますか?」
「そうだな……。リアは人間で、栗色の髪の赤い瞳の少女で魔法師だ」
「なるほど……」
「――で、ソフィアは金髪碧眼のハーフエルフだ。こちらは弓使いだな」
「それでしたら、すぐに見つけることが出来ると思います。――では、私がお二人を迎えに行ってきますので、成功した暁には、国王陛下には先ほどのご無礼を働いた件については――」
「わかった、わかった。その点については、言及しないことを誓う」
「ありがとうございます!」
 
 兵士は、詰め所に走って向かうと他の兵士に何やら話しかけて身振り手振りで事情を説明している。
 しばらくすると、兵士は詰め所の裏手に回り視界から姿を消す。
 そして、馬を引いてきた。
 
「それではエイジ様。お約束の方、お願いします」
「分かっている」
 
兵士は小さな荷車を馬に繋げると、関係者だけが通る事が許されている小さな門から出ていった。
門が閉じたあと、俺は溜息をつく。
 
「ご主人様、あいつは調子がいいやつワン。ああいうのは、すぐに裏切るワン!」
「だろうな……。ただ、今回はあいつは自分の失態をなくそうとしているから、きちんと仕事はこなすはずだ」
 
 利害関係が一致している人間関係の方が裏切りは少ないからな。
 その点、とても分かりやすい兵士だったから、信用はできるだろう、信頼はできないがな!
 
「そうですかワン」
「ああ。それよりも、場所を移動しよう」
 
 城門前で立ち話をしていた俺たちを王都の人間は好奇な視線を向けてきている。
 さらに言えば王都の外から入ってきた30人近くの獣人も、王都の人間の関心や興味を掻き立て際立てる材料となっている。
 
「わかりましたワン」
 
 獣人族を連れて王城へと向かう。
 もちろん、今回は下の道を通って――、噴水広場を通り、王城まで続く一本道を歩く。
 途中で、景気の悪い視線を向けられるが、それは集まって行動していた獣人が物珍しいという部分もあったのだろう。
 
 王城前まで移動したところで、俺が到着したことに気が付いたヤマネコ族のディアナが、城門を開けた。
 すぐに俺を含めた獣人たちは、王城の中へと入る。
 すぐに城門は閉じると、ディアナが走って近づいてくる。
 
「ご主人様。侵入者はありませんでしたにゃん」
「そうか」
「それにしても、コローナ。遅かったにゃん」
「うちらだって一生懸命走ってきたワン! ただ兎族や山猫族の足が遅かっただけワン!」
 
 
 
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