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久しぶりの湯浴み
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一日の作業を終えたあとは、一人、お風呂に入る。
王城内にお風呂を見つけたのは、コローナに指摘された部屋の掃除をするため。
シーツなどを洗う洗い場を探していた偶然の産物だ。
さすがに王宮内に作られたお風呂なだけあって、広く一人で入る分には、申し分ないというか、日本で言うところの大浴場のような場所で一人お風呂に浸かるのは、些か寂しくもある。
「ふうー」
まだ、お昼を国王陛下の寝所に持っていたばかりで、頑張って王城と王宮の警備をしている獣人族の皆には悪いという罪悪感があったが我慢できなかった。
あとで洗濯場を探すとしよう。
そう自分に言い聞かせながら、俺は少し温い風呂に浸かりながら体を風呂の――、大理石で作られた縁に背中を預けて目を閉じた。
「そういえば、国王陛下はずっと風呂に入っていなかったよな……」
――と、目を閉じて無心になったところで感づく。
風呂は心身の疲れを取るだけでなく、病気にも罹りにくくする効能がある。
日本人が風呂好きなのは、体の健康にもいいからだと誰かに聞いたことがある。
「――でもな……」
大理石の縁に背中を預けながら、天井を見る。
天井は、高さ4メートルほどあり巨石が横になり、それが天井の形を成していた。
おかげで天井の高さは高いが、圧迫感が半端ない。
「たしかアーチ工法は、メソポタミアのシュメール人が近代から数えて5000年前に発明したんだったな……。その割には……」
俺は思考する。
この世界の建築技術は、非常にお粗末と言っていい。
まるで誰かに技術の進歩を抑え込まれているかのように。
一瞬、ソルティを呼び出して聞こうと思ったが、俺はすぐに考えを改める。
いまは、ニードルス伯爵領に注視してもらっているからな。
最近は、ソルティに任せっぷりだし、疑問に思ったことを聞くためだけに呼び出すのもな……。
「とりあえず、あれだな――。国王陛下を風呂に入れるとするか。俺やディアナとロランが警護につけば何とかなるだろうし」
――コンコン
国王陛下の寝所の扉を数度ノックする。
「エイジか?」
「ちょっと話があって、来てみたんだが中に入っていいか?」
「話? 話とは、どういうことだ?」
「国王陛下に風呂に入ってもらおうと思って来た」
「風呂に? 体は、エイジに出してもらった水で拭いてはいるが?」
「水だけだと、どうしても身体の表皮の微生物は対処ができない。まずは、風呂に毎日入ってもらおうと思っている」
「微生物? エイジは、何の話をしているんだ? それよりもエイジが、そこまで気にしているって事は、もしかして風呂というのは、そんなに大事なのか?」
「大事だ。とくに陛下は、老齢だからな。本当は、体を動かしてもらう事も大事なんだが、そこまでは警備の手が回らない。よって風呂だけには入ってほしい」
「……本当に大丈夫なのか?」
「今のところはな――、だが陛下の体調管理も俺たちの仕事だろう?」
「……そ、そうだな。――わ、わかった。今、結界を解除する」
寝所の扉の結界が解除したところで、部屋へと入る。
「本当に大丈夫なのか? エイジ」
「ああ。獣人族が、今は王宮内を警護しているからな。それに、俺とお前なら確実に陛下を守れる。短時間という限定ならな」
「分かった……。それでは、国王陛下に伝えてくる。待っていてくれ」
ロランが国王陛下の寝所へと――、カーテンの向こうへと姿を消したあと、すぐに陛下を共だって姿を見せる。
「エイジ殿。湯浴みに安全に行けるというのは本当か?
「本当です、陛下。久しぶりの湯浴みは、如何でしょうか?」
「――う、うむ。……エイジ殿が言われるのなら、それは信じましょう」
「――では、行くとしましょう」
「任せたぞ」
国王陛下の寝所から、大浴場まで移動したところで陛下が浴槽に入っていく。
「ロラン、お前も浴槽の中で陛下の警護をしてくれ。俺は周囲を警戒しておくから」
「分かった。私が陛下を必ずお守りする。聖騎士ロランの名において!」
「ああ。任せたぞ、ロラン」
さすがに一部始終、国王陛下の相手をしていると疲れるからな。
ロランが受け入れてくれて助かった。
まぁ、ロランは、責任感だけは強いからな。
大浴場から出たあと、出入り口は一か所だけなので、入口へ移動したあと、警備をすることにする。
しばらくしたあと――、ペタッペタッという音が聞こえてくる。
どうやら、風呂から出たらしい。
大浴場へと繋がる出入口――、その白の大理石の壁に背中を預けていた俺は視線を音がした方向へと向ける。
「エイジ殿、待たせたのう」
ほくほく顔の陛下が声をかけてくる。
「どうでしたか? 陛下」
「久しぶりに風呂に入ったからのう。やはり湯浴みすると、いい気分になるのう」
「それは良かったです」
「――一応、城内を見て回りたいと思って居るのだが、どうだろうか? エイジ殿」
「普通に駄目です。まだ警備の人数も集まってないので、今はギリギリの人数で王宮と王城の警備を回しているので、何かあったら困るので、いまは寝所で待っていてください、陛下」
「……分かった。ここはエイジ殿に従うとしよう」
王城内にお風呂を見つけたのは、コローナに指摘された部屋の掃除をするため。
シーツなどを洗う洗い場を探していた偶然の産物だ。
さすがに王宮内に作られたお風呂なだけあって、広く一人で入る分には、申し分ないというか、日本で言うところの大浴場のような場所で一人お風呂に浸かるのは、些か寂しくもある。
「ふうー」
まだ、お昼を国王陛下の寝所に持っていたばかりで、頑張って王城と王宮の警備をしている獣人族の皆には悪いという罪悪感があったが我慢できなかった。
あとで洗濯場を探すとしよう。
そう自分に言い聞かせながら、俺は少し温い風呂に浸かりながら体を風呂の――、大理石で作られた縁に背中を預けて目を閉じた。
「そういえば、国王陛下はずっと風呂に入っていなかったよな……」
――と、目を閉じて無心になったところで感づく。
風呂は心身の疲れを取るだけでなく、病気にも罹りにくくする効能がある。
日本人が風呂好きなのは、体の健康にもいいからだと誰かに聞いたことがある。
「――でもな……」
大理石の縁に背中を預けながら、天井を見る。
天井は、高さ4メートルほどあり巨石が横になり、それが天井の形を成していた。
おかげで天井の高さは高いが、圧迫感が半端ない。
「たしかアーチ工法は、メソポタミアのシュメール人が近代から数えて5000年前に発明したんだったな……。その割には……」
俺は思考する。
この世界の建築技術は、非常にお粗末と言っていい。
まるで誰かに技術の進歩を抑え込まれているかのように。
一瞬、ソルティを呼び出して聞こうと思ったが、俺はすぐに考えを改める。
いまは、ニードルス伯爵領に注視してもらっているからな。
最近は、ソルティに任せっぷりだし、疑問に思ったことを聞くためだけに呼び出すのもな……。
「とりあえず、あれだな――。国王陛下を風呂に入れるとするか。俺やディアナとロランが警護につけば何とかなるだろうし」
――コンコン
国王陛下の寝所の扉を数度ノックする。
「エイジか?」
「ちょっと話があって、来てみたんだが中に入っていいか?」
「話? 話とは、どういうことだ?」
「国王陛下に風呂に入ってもらおうと思って来た」
「風呂に? 体は、エイジに出してもらった水で拭いてはいるが?」
「水だけだと、どうしても身体の表皮の微生物は対処ができない。まずは、風呂に毎日入ってもらおうと思っている」
「微生物? エイジは、何の話をしているんだ? それよりもエイジが、そこまで気にしているって事は、もしかして風呂というのは、そんなに大事なのか?」
「大事だ。とくに陛下は、老齢だからな。本当は、体を動かしてもらう事も大事なんだが、そこまでは警備の手が回らない。よって風呂だけには入ってほしい」
「……本当に大丈夫なのか?」
「今のところはな――、だが陛下の体調管理も俺たちの仕事だろう?」
「……そ、そうだな。――わ、わかった。今、結界を解除する」
寝所の扉の結界が解除したところで、部屋へと入る。
「本当に大丈夫なのか? エイジ」
「ああ。獣人族が、今は王宮内を警護しているからな。それに、俺とお前なら確実に陛下を守れる。短時間という限定ならな」
「分かった……。それでは、国王陛下に伝えてくる。待っていてくれ」
ロランが国王陛下の寝所へと――、カーテンの向こうへと姿を消したあと、すぐに陛下を共だって姿を見せる。
「エイジ殿。湯浴みに安全に行けるというのは本当か?
「本当です、陛下。久しぶりの湯浴みは、如何でしょうか?」
「――う、うむ。……エイジ殿が言われるのなら、それは信じましょう」
「――では、行くとしましょう」
「任せたぞ」
国王陛下の寝所から、大浴場まで移動したところで陛下が浴槽に入っていく。
「ロラン、お前も浴槽の中で陛下の警護をしてくれ。俺は周囲を警戒しておくから」
「分かった。私が陛下を必ずお守りする。聖騎士ロランの名において!」
「ああ。任せたぞ、ロラン」
さすがに一部始終、国王陛下の相手をしていると疲れるからな。
ロランが受け入れてくれて助かった。
まぁ、ロランは、責任感だけは強いからな。
大浴場から出たあと、出入り口は一か所だけなので、入口へ移動したあと、警備をすることにする。
しばらくしたあと――、ペタッペタッという音が聞こえてくる。
どうやら、風呂から出たらしい。
大浴場へと繋がる出入口――、その白の大理石の壁に背中を預けていた俺は視線を音がした方向へと向ける。
「エイジ殿、待たせたのう」
ほくほく顔の陛下が声をかけてくる。
「どうでしたか? 陛下」
「久しぶりに風呂に入ったからのう。やはり湯浴みすると、いい気分になるのう」
「それは良かったです」
「――一応、城内を見て回りたいと思って居るのだが、どうだろうか? エイジ殿」
「普通に駄目です。まだ警備の人数も集まってないので、今はギリギリの人数で王宮と王城の警備を回しているので、何かあったら困るので、いまは寝所で待っていてください、陛下」
「……分かった。ここはエイジ殿に従うとしよう」
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