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貴族の到着と謁見(1)

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 王城や王宮の警備をスタートして2週間が経過したところで、ようやく町にも物資が行き届いたのか治安面で統制が効くようになった。
 闇ギルドが壊滅したという報は、王都中に出回ったのも犯罪組織による犯罪の抑制につながったのも大きい。
 おかげで王城へと続く城門前には、王城に興味のある王都民が足を運ぶだけ。
それ以外は、荒廃した王都の立て直しが進んでいた。
 
「ご主人様っ!」
 
 国王陛下の寝室へ食事を届け終わり、厨房でマキリが作ってくれた朝食を食べていたら、血相を変えてディアナが厨房に入ってくると俺の名を呼んできた。
 
「どうかしたのか? ディアナ」
「貴族が、王都の城壁に来たと報告があったニャン!」
「そうか。やっとか……」
 
 長かったなー。
 感慨深く思うが、とりあえずは――、
 
「それで、どこの貴族が来たんだ? ――いや、貴族というよりも家名は?」
 
 俺は国王陛下から渡されていた羊皮紙を掴むと、広げて信頼がおける順ということで聞いていた家名を確認することにする。
 
「シュライファイアー?」
「ふむ……」
 
 そんな家名は無いな……。
 近いところで言うと、シュライヒャーと言ったところか。
 
「シュライヒャーじゃないのか?」
「あ、そうニャン!」
「――となると……伯爵位を有する辺境伯か。王家に対する忠誠は高いようだ。それに王家からは王女が下賜されている事もあるから、信頼は置けるようだな……。すぐに王都内に通すように門番に指示を出してくれ」
「分かったニャン! 行ってくるニャン!」
 
 ディアナに命令を下すと、すぐにディアナは厨房から出ていく。
 
「さて、俺もさっそく行動しないとな……」
 
 今の王城と王宮内の現状は、冒険者が届けた手紙に書かれているはずだ。
 そのことを踏まえると、辺境伯が、いの一番に駆け付けたメリットは大きい。
 何せ、王家の血が入っている大貴族だ。
 朝食を急いで摂ったあとは、体を洗い服に着替えて国王陛下の元へと向かう。
 
「俺だ! エイジだ!」
 
 国王陛下の部屋の扉を何度かノックしながら俺の名前を告げる。
 するとすぐに部屋の扉を守っていた結界が解かれると、室内側から扉が開かれた。
 
「どうした? エイジ」
「陛下が、手紙を送った貴族の方が到着した。今、王都を囲っている壁を通り王城へと向かっている」
「分かった」
 
 扉が内側に開かれる。
 寝所に入ると、ロランはすぐに国王陛下のベッドへと小走りで向かう。
 
「陛下。王都の外の貴族が王都に到着したとのことです」
 
 カーテン向こうに移動することなくロランが声を張り上げるようにして現状を報告する。
 しばらくすると、カーテン向こう側からローブをまとった陛下が姿を見せる。
 
「そうか。――で、どこの貴族が到着したのだ?」
 
 2週間近く接していると、砕けてきたのか国王陛下という事を忘れてしまうが、久しぶりに威厳のある様子を見ると、やはり国王陛下なのだなと思ってしまう。
 
「エイジ。どこの貴族だった?」
「シュライヒャー家になります」
「それは重畳であるな。――と、なると、これだけの短期間で王都に来たという事は、ヨアヒムが直接来たと考えられるのう」
 
ヨアヒムか……。
たしか、ヨアヒムってガルガンの師だったという事を以前に聞いたことがある。
つまり、少なくとも50歳近くってことか。
そういえば、ガルガンが以前にヨアヒムという辺境伯は魔物狩りのエキスパートで、辺境の獅子と別名があると言っていたな」
 
「――では、すぐに出迎えの準備をした方がいいですね」
「エイジ殿、頼めるか? 儂も、すぐに着替えるとする。謁見の間まで、シュライヒャー辺境伯を案内しておいてくれ」
「分かりました」
 
 臣下が居ないとしても、一応、謁見の間で登城してきた貴族を迎い入れるのか。
 まぁ、互いに面子ってのもあるからな。
 とくに貴族や王族だと尚更。
 国王陛下の寝室から出たあとは、すぐに王城前へと移動する。
 
「ご主人さま! 噴水広場から、たくさんの兵士が、私たちがいる王城に向かってきてるワン!」
「どれどれ」
 
 城壁の上から、俺に話しかけてきたコローナの話を聞きながら、俺も城壁の上へと上がる。
 
「たしかに噴水広場から、こっちに向かってきているな」
 
 噴水広場から、俺たちが居る王城へと向かってきている一団。
 その数は100人近い。
 全員が帯剣しており、鎧こそ着てはいないが全員が全員、馬に乗り一糸乱れぬよう此方へと近づいてきている。
 その動きから見るだけで分かる。
 
「かなり訓練を受けている兵士たちだな。しかし……」
「どうかしましたワン?」
「――いや、随分と軽装だったからな。本当に進軍というか移動を主軸に置いた編成なんだろう。まぁ、だからこそ何処の貴族よりも早く到着することが出来たのかも知れないな」
「ご主人様、扉は開けるワン?」
「――いや、本人確認が先だな」
 
 携帯電話とか顔写真付きの免許証制度があれば便利なんだが、この世界では、そんなモノは存在していない。
 だから、確認する方法は一つしかない。
 
「ちょっと行ってくる」
 
 身体強化した上で城壁上から外へと飛び降りる。
 スタッ! と、言う音と共に石畳の上に着地した俺は、顔を上げると近づいてくる貴族の一団へと視線を移した。
 
 
 
 
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