雨の日にやさぐれお姉さんを拾ったと思ったら胃袋も心も掴んでくるスーパーお姉さんだった

九戸政景

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第十四話

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「はー……あんたん家、結構お風呂広いのねー……」
「まあお風呂は大好きなのでそこはこだわったんです……」


 数分後、私は愛奈さんと一緒にお風呂に入っていた。というか、無理矢理入れられたと言うのが正しいと思う。けれど、やっぱりお風呂は身体も心もあたためてくれるようで、緊張や焦りで固まっていた心身が少しずつほぐれていくのを感じていた。


「ふー……」
「まあ多少はリリーから聞いたけど、ちゃんと聞いときたいから聞くわ。アンタに何があったの?」
「それは……」


 私は先日の会食の事、そしてさっきの凛莉さんとのやり取りについて話をした。


「なるほどねー……というか、今になって反省したからあなたの心を癒すために頑張りますなんて言う男は信用できるわけないでしょ。そんなの切っていいわよ」
「それはそうなんですけど……」
「アンタねぇ……アンタはソイツと付き合いたいの? カースト上位の奴に脅されたからといってアンタに長年残るようなトラウマを与えておいて今さら反省しましたなんて言うような男と付き合ってアンタは幸せになれるの?」


 その問いかけに対して私は少しだけ湯船に顔を沈めながら答えた。


「なれないと思います……というか、私には他に好きな人がいますし……」
「ああ、リリーでしょ。わかってるわ」
「……え? 私、凛莉さんが好きなこと言いましたっけ?」


 愛奈さんには色々話した記憶はあるけど、凛莉さんを好きな事を話した記憶はなかった。そう思って不思議に思っていると、愛奈さんは小さくため息をついた。


「言われなくてもわかるわよ。最近のアンタの視線やらリリーへの想いの強さやら見てればね」
「そうですか……」
「まあそれでアンタの悩みは一つわかったわ。リリーは好きだし、このまま一緒に暮らしながら付き合いたいけど、世間の目が気になってしょうがない。そんなところね」


 私は辛い気持ちで答える。


「はい……気にしてもしょうがないんだろうなとは思うんですが、それでもやっぱり同性愛っていうのは世間から歓迎されないものだと思ったら、それを両親に報告するのも怖くなってきて……」
「まあ同性が好きっていうのは本来はまれな例だし、アタシだって恋愛対象が同性だとわかった時は驚きもしたし、これでいいのかと思ったわ。でも、別にそれでもいいのよ。好きなものは好きなんだし、それに対して嘘をついたってしょうがない。好きなら好きでそのまま突っ走っていくしかないのよ」
「好きなら好きで……」
「アタシだってファッションに興味はあったし、アパレル業界っていいなと思ったから今の仕事に就いたし、色々辛い事はあっても好きな事が仕事になってるから辞めずに済んでる。美音だって作家になろうとしたのは何か理由があるからなんじゃないの?」


 その問いかけに対して私は頷いてから答えた。


「はい。昔から本を読むのが好きでしたし、自分で色々考えてみるのも好きだったので私は小説家になることを決めました。今のところにお世話になれるまで様々な公募にチャレンジしたり持ち込みなんかもしたりしましたけど、ようやくなれた時は本当に嬉しかったですし、好きなものを好きでい続けてよかったと思いました」
「でしょ? だから、好きな物は好きでいいのよ。それは趣味を仕事にすることだけじゃなくて恋愛も一緒。同性だろうが異性だろうが好きなら好きでいいの。世間とか法律なんて知ったことじゃない。そんなものでアタシ達の好きを縛るくらいならこっちから願い下げよ」
「なんというか……愛奈さんは本当に強いですよね。なんだか羨ましいです」
「アタシなんて強くないわよ。強くないから自分に負けて癇癪も起こすし、好きな人をちゃんと信用出来ずに変な嫉妬とかをしてリスカとかするのよ。でもアンタは違うでしょ、美音。アンタはしっかりと好きを貫きながら作家として頑張ってるし、アタシ達をしっかりと救ってくれた。そんなアンタの方が何倍も何千倍も強いわ。アタシが保証する」
「愛奈さん……ありがとうございます」


 ようやく私の心が安らいだ気がした。それと同時に凛莉さんに面と向かって謝るだけの勇気も出てきた。


「凛莉さんが帰ってきたらちゃんと謝ろう」
「それがいいと思うわ。リリーだってアンタの事は好きだし、声の感じから結構気にしてたみたいだから。アンタは自己評価こそ低めだけど、色々な好かれたりいい女になるだけの素質はあるんだからそれをむだにするんじゃないわよ」
「わかりました。私、無理ない程度に頑張ります」
「ええ。それにしても……」


 愛奈さんは私の事をじっと見てきた。


「な、なんですか……?」
「アンタ、やっぱり肌ツヤいいし、スタイルいいわよね。それに脱ぐともっとスゴいタイプだったというか……」
「そ、そんなことないと思いますけど……」
「羨ましいわね……ちょっとその秘訣を探らせてもらうわよ!」
「ちょ、どこ触って……やめ……!」


 愛奈さんがニヤニヤしながら色々なところを触ってくるのを私はどうにか阻止していた。けれど、何故だかこの時間は嫌なものではなく、なんだか楽しく感じられ、その後も私達は笑い合いながらのんびりお風呂を楽しんだ。
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