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第十五話
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「ん~……美味しい~……!」
「ふふん、そうでしょ。リリーほどじゃないけど、アタシだって料理くらい出来るんだから」
お風呂から上がった後、私は愛奈さんが作ってくれたご飯を食べていた。その味は期待以上であり、凛莉さんとはまた違った味わいのあるとても美味しい料理ばかりだった。
「愛奈さんも料理上手だったんですね。こう言ったらなんですが、少し意外だったというか……」
「アタシだって一人暮らししてるから自炊くらいは出来るのよ。料理が好きで料理人になったリリーの方がもちろん味がいいのは作れるけど、それでも誰かに食べさせられるほどのものは作れるわ。仕方ないとはいえあそこまでの物を作れるリリーは本当にスゴいと思うわ」
「そういえば凛莉さんってどうして料理人になったんでしょうか……」
「そういうのは本人から聞くのが一番だけどね。とりあえずアタシが喋れる限りで言うと、リリーの家庭ってそんなに恵まれたものじゃなかったみたいで、父親も母親もよそに愛人を作って家にまったく帰ってこない時が多かったらしいの。だから、リリーは自分で料理を覚えて作るしかなかったけど、その内に料理の素晴らしさに気づいて料理人を志したって聞いたわね」
「そんなことが……」
「そういえばアンタのお家ってどんな感じなの? 実家を出て一人暮らしをしてる辺り、理由があっての事なんでしょ?」
愛奈さんに聞かれて私は頷いてから答えた。
「ウチは結構厳しい家庭で、成績も上位じゃないといけなくて交遊関係も制限するっていうだいぶ息苦しいところでした。だから、小学生の時にスカートめくりに遭って帰ってきた日もそんな事をさせるような隙を見せた私が悪いみたいな事を言われて、その時から両親は信用できないと思うようになりましたけど、それでも両親に逆らうのは中々出来なくて、大学を卒業するまでずっと実家に居続けました」
「うわ……人ん家の事を悪く言うのはあまりよくないけど、典型的な毒親って感じじゃない。そんな家庭だったのによくアンタ潰れずにいたわね」
「成績さえよくしてれば何も言われないので。そして大学卒業と同時に自分達が見つけてきたお見合い相手と会えって強要してきたんですが、それが嫌で私は家を出る決意をしましたし、お見合い相手の人にも自分から会いに行ってあなたとお見合いをする気はないってきっぱり言ってきましたよ」
「アンタ、結構フッ軽なのね。これまで親に抑制されてただけで、アンタの本質はそれなのかしら」
「もしかしたらそうかもしれないです。そうして小さい頃からの貯金を使いながらローンも組んでこの家を買って、私は親元を離れて今こうして作家として生活してるんです。やっぱりあの家を出たからかのびのびと出来ますし、あの家にいた時よりは健康的になったと思いますよ」
あの時はどうにか生きていたっていう感じだったけれど、今は大変でありながら自分の好きな事をしながら暮らせているから幸せだ。でも、私はまだあの家に心が囚われている。少しでもあの家の事を考えてしまう時点でそれは間違いないんだろう。
「だから、凛莉さんとの事を考えると実家の事も頭に浮かんでしまうんです。知らせる必要はないですが、何かのきっかけで両親がそれを知ったら驚かれるだけじゃなく、凛莉さんに酷い事を言ったり無理矢理私を連れ戻そうとしたりするんじゃないかって思って……」
「まあ、そんな親ならあり得るわよね。でもアンタはもう成人してるんだし、自己責任で何をしたっていいのよ。未成年なら親の庇護の元で暮らすことの方が多いと思うけど、アタシ達はもういい歳した大人なのよ。それなら自分で決めて自分で行動したって構わない。さっきも言ったように自己責任でね」
「はい……」
「それに、リリーとの事で世間から色々言われるって恐れるのはわかるけど、そんなの気にしてたらアンタは今後何も出来ないわ。ようやく親元から離れて自由になれたのに、今度はアンタ自身の手で足枷や手錠をつけて生活するつもり?」
「それは……」
愛奈さんは真剣な顔をしながら言葉を続けた。
「アタシだったらそんなの願い下げ。アタシはアタシだし、アタシの好きなように生きる。この格好だってアタシの好みを全面に出してる物だし、誰にも文句は言わせない。似合う似合わないはアタシ自身が決める。他の誰かに言われたって知ったことじゃないわ」
「愛奈さん……」
「アンタはどう? 好きなものを仕事にしてるアンタだったら、どうするのが一番かわかるはずよね」
「私は……」
俯きながら今後について考える。やっぱり世間からの風当たりは強くなると思うし、とやかく言われる事はあると思う。でも、私は好きなものを仕事にしたくて家も出たし今こうして頑張っている。だったら答えは一つしかない。
「しっかり凛莉さんに告白して、付き合えるように努力します。この気持ちを諦める事はやっぱり出来ないですし、諦めたくないですから」
「いい目してるわよ、今のアンタ。やっぱりリリーにはアンタみたいな子が似合ってるのよ。まあ年下に負けてる時点でアタシの悔しさはあるけどね」
「あ、やっぱり愛奈さんもとしう――」
その瞬間、私は愛奈さんに頬をつねられた。
「いひゃひゃ……!」
「アンタね、女の前で歳の話はご法度よ。たとえどんな女の前でもね。わかった?」
「わ、わかりました……」
「それならいいけどね」
愛奈さんが手を離し、ヒリヒリする頬を自分で軽く撫でていた時、玄関が開く音が聞こえた。
「あ……」
「リリーでしょ。ほら、早く出迎えてあげなさい」
「は、はい!」
私はすぐさま玄関に向かった。そして到着すると、そこには友美さんに連れられた凛莉さんの姿があった。
「ふふん、そうでしょ。リリーほどじゃないけど、アタシだって料理くらい出来るんだから」
お風呂から上がった後、私は愛奈さんが作ってくれたご飯を食べていた。その味は期待以上であり、凛莉さんとはまた違った味わいのあるとても美味しい料理ばかりだった。
「愛奈さんも料理上手だったんですね。こう言ったらなんですが、少し意外だったというか……」
「アタシだって一人暮らししてるから自炊くらいは出来るのよ。料理が好きで料理人になったリリーの方がもちろん味がいいのは作れるけど、それでも誰かに食べさせられるほどのものは作れるわ。仕方ないとはいえあそこまでの物を作れるリリーは本当にスゴいと思うわ」
「そういえば凛莉さんってどうして料理人になったんでしょうか……」
「そういうのは本人から聞くのが一番だけどね。とりあえずアタシが喋れる限りで言うと、リリーの家庭ってそんなに恵まれたものじゃなかったみたいで、父親も母親もよそに愛人を作って家にまったく帰ってこない時が多かったらしいの。だから、リリーは自分で料理を覚えて作るしかなかったけど、その内に料理の素晴らしさに気づいて料理人を志したって聞いたわね」
「そんなことが……」
「そういえばアンタのお家ってどんな感じなの? 実家を出て一人暮らしをしてる辺り、理由があっての事なんでしょ?」
愛奈さんに聞かれて私は頷いてから答えた。
「ウチは結構厳しい家庭で、成績も上位じゃないといけなくて交遊関係も制限するっていうだいぶ息苦しいところでした。だから、小学生の時にスカートめくりに遭って帰ってきた日もそんな事をさせるような隙を見せた私が悪いみたいな事を言われて、その時から両親は信用できないと思うようになりましたけど、それでも両親に逆らうのは中々出来なくて、大学を卒業するまでずっと実家に居続けました」
「うわ……人ん家の事を悪く言うのはあまりよくないけど、典型的な毒親って感じじゃない。そんな家庭だったのによくアンタ潰れずにいたわね」
「成績さえよくしてれば何も言われないので。そして大学卒業と同時に自分達が見つけてきたお見合い相手と会えって強要してきたんですが、それが嫌で私は家を出る決意をしましたし、お見合い相手の人にも自分から会いに行ってあなたとお見合いをする気はないってきっぱり言ってきましたよ」
「アンタ、結構フッ軽なのね。これまで親に抑制されてただけで、アンタの本質はそれなのかしら」
「もしかしたらそうかもしれないです。そうして小さい頃からの貯金を使いながらローンも組んでこの家を買って、私は親元を離れて今こうして作家として生活してるんです。やっぱりあの家を出たからかのびのびと出来ますし、あの家にいた時よりは健康的になったと思いますよ」
あの時はどうにか生きていたっていう感じだったけれど、今は大変でありながら自分の好きな事をしながら暮らせているから幸せだ。でも、私はまだあの家に心が囚われている。少しでもあの家の事を考えてしまう時点でそれは間違いないんだろう。
「だから、凛莉さんとの事を考えると実家の事も頭に浮かんでしまうんです。知らせる必要はないですが、何かのきっかけで両親がそれを知ったら驚かれるだけじゃなく、凛莉さんに酷い事を言ったり無理矢理私を連れ戻そうとしたりするんじゃないかって思って……」
「まあ、そんな親ならあり得るわよね。でもアンタはもう成人してるんだし、自己責任で何をしたっていいのよ。未成年なら親の庇護の元で暮らすことの方が多いと思うけど、アタシ達はもういい歳した大人なのよ。それなら自分で決めて自分で行動したって構わない。さっきも言ったように自己責任でね」
「はい……」
「それに、リリーとの事で世間から色々言われるって恐れるのはわかるけど、そんなの気にしてたらアンタは今後何も出来ないわ。ようやく親元から離れて自由になれたのに、今度はアンタ自身の手で足枷や手錠をつけて生活するつもり?」
「それは……」
愛奈さんは真剣な顔をしながら言葉を続けた。
「アタシだったらそんなの願い下げ。アタシはアタシだし、アタシの好きなように生きる。この格好だってアタシの好みを全面に出してる物だし、誰にも文句は言わせない。似合う似合わないはアタシ自身が決める。他の誰かに言われたって知ったことじゃないわ」
「愛奈さん……」
「アンタはどう? 好きなものを仕事にしてるアンタだったら、どうするのが一番かわかるはずよね」
「私は……」
俯きながら今後について考える。やっぱり世間からの風当たりは強くなると思うし、とやかく言われる事はあると思う。でも、私は好きなものを仕事にしたくて家も出たし今こうして頑張っている。だったら答えは一つしかない。
「しっかり凛莉さんに告白して、付き合えるように努力します。この気持ちを諦める事はやっぱり出来ないですし、諦めたくないですから」
「いい目してるわよ、今のアンタ。やっぱりリリーにはアンタみたいな子が似合ってるのよ。まあ年下に負けてる時点でアタシの悔しさはあるけどね」
「あ、やっぱり愛奈さんもとしう――」
その瞬間、私は愛奈さんに頬をつねられた。
「いひゃひゃ……!」
「アンタね、女の前で歳の話はご法度よ。たとえどんな女の前でもね。わかった?」
「わ、わかりました……」
「それならいいけどね」
愛奈さんが手を離し、ヒリヒリする頬を自分で軽く撫でていた時、玄関が開く音が聞こえた。
「あ……」
「リリーでしょ。ほら、早く出迎えてあげなさい」
「は、はい!」
私はすぐさま玄関に向かった。そして到着すると、そこには友美さんに連れられた凛莉さんの姿があった。
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