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第八話
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「ふう、今日からここが俺の部屋になるわけだけど、やっぱりまだ不思議な感じだな」
夜、客間の一つのベッドに座りながら室内を見回す。広い部屋には二人で眠れるだけのベッドと少し大きなタンス、クリーム色のカーテンなどがあり、一人で過ごすには少し広すぎるくらいだった。
「でもまあ、一年間はここが俺の部屋になるわけだし、慣れていかないとな。それにしても、今日の夕飯、本当に美味しかったなあ」
ついさっきの出来事を思い出す。真夏さんと茉莉ちゃんと協力しながら夕飯を作り、俺達は松也さん達と一緒にそれを食べたのだが、それは本当に美味しかった。松也さん達もその出来を褒めてくれ、これなら安心して任せられるとも言ってくれた。
その言葉は本当に嬉しかったし、より頑張っていこうと思えた。だからこそ、これからも頑張ろう。真夏さんの婚約者としてだけじゃなく、茉莉ちゃんのパパとしても。
「さて、そろそろ寝ようかな」
ある程度眠くなってきたので寝ようかと思い始めたその時、部屋のドアがノックされた。
「はい、どうぞ」
すると、ドアが開いて寝間着の真夏さんが姿を見せた。シルク素材の白い寝間着姿の真夏さんはとても綺麗で可愛らしく、思わず喉をゴクリと鳴らしてしまった。
「夜分にすみません、少しお話がしたくなりまして。もしかして、今からお休みになるところでしたか?」
「あ、大丈夫ですよ。どうぞ座ってください」
「はい、失礼します」
真夏さんは頭を下げてから入ってくると、俺の隣に座った。その瞬間に甘い香りがふわりと鼻腔をくすぐり、異性と隣同士で座っているんだという実感が湧いてとても緊張してきた。
「け、結構部屋が広いですよね……」
「そうですね。私の家も広い方だとは思いますが、こちらのお屋敷は本当に広いですのでお部屋も一つ一つが広いと思いますよ」
「なんだか一人だと広すぎるなと思っていたところなんですよね。茉莉ちゃん達はもう慣れてそうですけど」
「ふふ、そうかもしれませんね」
真夏さんは口元に手を当てながら上品に笑う。その姿を見て改めて真夏さんがお嬢様なのだと感じて一番場違いなのはやっぱり俺なんだなと感じて少しだけ寂しくなった。
「冬矢さん」
突然、手を握られる。手を握ってきた真夏さんの目は真剣だけど優しく、その雰囲気にもドキドキしながら次の言葉を待っていると、真夏さんはにこりと笑った。
「あなたはもう私達の家族も同然ですからね」
「あ……もしかして、考えてた事がバレてました?」
「全部はわかりませんでしたが、なんだか寂しそうな顔をしていたので。けれど、おおよそ当たってはいたようですね」
「そうですね。真夏さんの婚約者にはなったものの、あくまでも俺は一般家庭の生まれですし、真夏さんや茉莉ちゃんの暮らしぶりを聞いてるとなんだか違う世界の話みたいに聞こえてしまって……」
「冬矢さん……」
「そんなこと考えてもしょうがないんですけどね。ただ、少しだけそんな事を考えてしまったんです。この場で一番場違いなのは俺なんだよなと」
真夏さんや茉莉ちゃん、そして松也さん達はそんな事は考えていないだろう。けれど、いくら努力を重ねても生まれは変えられない。きっと、その点を指摘してくる奴なんてごまんといるし、それを指摘された時に俺はたぶんなにも言えないだろう。それを考えただけでも悔しいのだ。
その時の事を考えて悔しさと哀しさを感じていた時、真夏さんはふわりと笑ってから俺は優しく抱き締めてくれた。
「真夏さん……」
「そんな事はありませんよ。どんな生まれだとしてもその後の努力が無駄になる事はありませんし、それを認めてくれる人は絶対にいます。たしかに世の中にはそういった見方をする人はいますが、そんな人は放っておけばいいんです。それよりも自分の努力を認めてくれる人の方を大事にした方が人生は楽しいと思いますよ?」
「……そう、かもしれませんね」
「少なくとも、私や茉莉ちゃん、お父様達や伯父様は冬矢さんが頑張ろうとしているのを知っていますし、それを応援しています。それぞれ違った形で。だから、一緒に頑張っていきましょう。隣にいますから、ずっと」
「それ、生徒指導室で俺が言った事のお返しですか?」
「ふふ、さてどうでしょう」
真夏さんはクスクス笑いながら言う。その笑い声が不思議と安心出来て、俺も思わず笑ってしまった。そうして二人で笑っていた時、ドアがキイと音を立てながら開いた。誰だろうと思いながらビクリと体を震わせてからそちらに顔を向けると、そこには眠たそうに目を擦る茉莉ちゃんがいた。
「茉莉ちゃん……?」
「どうしたの?」
「なんだか眠れなくて……それでママの部屋に行ってもいなかったから……」
「俺の部屋に来てみたわけか」
「う、ん……」
茉莉ちゃんは本当に眠そうな様子で頷く。このままだと本当に眠ってしまいそうだ。そう思っていた時、真夏さんは俺から離れ、茉莉ちゃんへと近づいてからその体を優しく抱き上げた。
「それなら私達と一緒に寝ようか。冬矢さんもいいですか?」
「はい、もちろん。このベッドも一人で使うには少し大きいと思ってたので三人で眠ればちょうどいいかなと思います」
「そうですね。それじゃあ茉莉ちゃん、私達と一緒に寝ようね」
「うん……ママと、パパと一緒に寝る……」
声も眠たそうだったが答え方も少し途切れ途切れだった。そんな茉莉ちゃんの姿が可愛らしく見えてクスクス笑っている内に真夏さんは茉莉ちゃんを運んでくると、ベッドの真ん中に優しく置いた。そして窓側に寝転がると、俺を見ながらニコニコ笑った。
「せっかくなので、パパももう寝ましょうか」
「そうですね。それじゃあ電気を消してきます」
「はい」
部屋の電気を消し、窓から差し込んでくる月明かりを頼りにベッドまで戻った後、俺は茉莉ちゃんを真夏さんと挟む形で寝転がった。そして三人にかかるようにして毛布を肩辺りまで持ってくると、目を閉じた茉莉ちゃんからスウスウという寝息が聞こえてきた。
「もう寝ちゃいましたね。やっぱりもう少し俺達と一緒にいたかったんでしょうか」
「そうかもしれませんね。ふふ……なんだかこうしてると、茉莉ちゃんが本当に私達の子供みたいでより愛おしく感じます」
「たしかに」
安心した様子で眠る茉莉ちゃんは本当に可愛く、幸せな夢でも見ているのかその顔は穏やかで嬉しそうだった。
「パパって呼ばれて慕われてる以上、茉莉ちゃんにとって恥ずかしくない男にならないと」
「それは私も同じです。今も色々努力はしているつもりですが、これからはもっと努力をしないといけません。私は冬矢さんにとっても自慢出来る婚約者になりたいですから」
「真夏さんは本当に努力家ですね」
「ふふ、頑張りを見せたい相手がいるから頑張れるんですよ。それが誰か……わかりますよね?」
「ええ、もちろん」
俺は嬉しさを感じながら頷く。こんな風に言ってくれる人がいるんだ。俺だって真夏さんに頑張りを見せたいから頑張ろう。
真夏さんの顔を見ながらそれを決意していた時、真夏さんは静かに目をつぶり、スヤスヤと寝息を立て始めた。どうやら真夏さんも眠くなったらしい。
「それじゃあ俺も寝るかな」
真夏さんと茉莉ちゃんの寝息を聞きながら俺も目を瞑る。二人の寝息だけが聞こえる静かな部屋の中でゆっくりと眠気が強くなっていく。
「おやすみなさい、二人とも」
すでに夢の世界に旅立った二人に呼び掛けた後、俺の意識も静かに夢の世界へと旅立っていった。
夜、客間の一つのベッドに座りながら室内を見回す。広い部屋には二人で眠れるだけのベッドと少し大きなタンス、クリーム色のカーテンなどがあり、一人で過ごすには少し広すぎるくらいだった。
「でもまあ、一年間はここが俺の部屋になるわけだし、慣れていかないとな。それにしても、今日の夕飯、本当に美味しかったなあ」
ついさっきの出来事を思い出す。真夏さんと茉莉ちゃんと協力しながら夕飯を作り、俺達は松也さん達と一緒にそれを食べたのだが、それは本当に美味しかった。松也さん達もその出来を褒めてくれ、これなら安心して任せられるとも言ってくれた。
その言葉は本当に嬉しかったし、より頑張っていこうと思えた。だからこそ、これからも頑張ろう。真夏さんの婚約者としてだけじゃなく、茉莉ちゃんのパパとしても。
「さて、そろそろ寝ようかな」
ある程度眠くなってきたので寝ようかと思い始めたその時、部屋のドアがノックされた。
「はい、どうぞ」
すると、ドアが開いて寝間着の真夏さんが姿を見せた。シルク素材の白い寝間着姿の真夏さんはとても綺麗で可愛らしく、思わず喉をゴクリと鳴らしてしまった。
「夜分にすみません、少しお話がしたくなりまして。もしかして、今からお休みになるところでしたか?」
「あ、大丈夫ですよ。どうぞ座ってください」
「はい、失礼します」
真夏さんは頭を下げてから入ってくると、俺の隣に座った。その瞬間に甘い香りがふわりと鼻腔をくすぐり、異性と隣同士で座っているんだという実感が湧いてとても緊張してきた。
「け、結構部屋が広いですよね……」
「そうですね。私の家も広い方だとは思いますが、こちらのお屋敷は本当に広いですのでお部屋も一つ一つが広いと思いますよ」
「なんだか一人だと広すぎるなと思っていたところなんですよね。茉莉ちゃん達はもう慣れてそうですけど」
「ふふ、そうかもしれませんね」
真夏さんは口元に手を当てながら上品に笑う。その姿を見て改めて真夏さんがお嬢様なのだと感じて一番場違いなのはやっぱり俺なんだなと感じて少しだけ寂しくなった。
「冬矢さん」
突然、手を握られる。手を握ってきた真夏さんの目は真剣だけど優しく、その雰囲気にもドキドキしながら次の言葉を待っていると、真夏さんはにこりと笑った。
「あなたはもう私達の家族も同然ですからね」
「あ……もしかして、考えてた事がバレてました?」
「全部はわかりませんでしたが、なんだか寂しそうな顔をしていたので。けれど、おおよそ当たってはいたようですね」
「そうですね。真夏さんの婚約者にはなったものの、あくまでも俺は一般家庭の生まれですし、真夏さんや茉莉ちゃんの暮らしぶりを聞いてるとなんだか違う世界の話みたいに聞こえてしまって……」
「冬矢さん……」
「そんなこと考えてもしょうがないんですけどね。ただ、少しだけそんな事を考えてしまったんです。この場で一番場違いなのは俺なんだよなと」
真夏さんや茉莉ちゃん、そして松也さん達はそんな事は考えていないだろう。けれど、いくら努力を重ねても生まれは変えられない。きっと、その点を指摘してくる奴なんてごまんといるし、それを指摘された時に俺はたぶんなにも言えないだろう。それを考えただけでも悔しいのだ。
その時の事を考えて悔しさと哀しさを感じていた時、真夏さんはふわりと笑ってから俺は優しく抱き締めてくれた。
「真夏さん……」
「そんな事はありませんよ。どんな生まれだとしてもその後の努力が無駄になる事はありませんし、それを認めてくれる人は絶対にいます。たしかに世の中にはそういった見方をする人はいますが、そんな人は放っておけばいいんです。それよりも自分の努力を認めてくれる人の方を大事にした方が人生は楽しいと思いますよ?」
「……そう、かもしれませんね」
「少なくとも、私や茉莉ちゃん、お父様達や伯父様は冬矢さんが頑張ろうとしているのを知っていますし、それを応援しています。それぞれ違った形で。だから、一緒に頑張っていきましょう。隣にいますから、ずっと」
「それ、生徒指導室で俺が言った事のお返しですか?」
「ふふ、さてどうでしょう」
真夏さんはクスクス笑いながら言う。その笑い声が不思議と安心出来て、俺も思わず笑ってしまった。そうして二人で笑っていた時、ドアがキイと音を立てながら開いた。誰だろうと思いながらビクリと体を震わせてからそちらに顔を向けると、そこには眠たそうに目を擦る茉莉ちゃんがいた。
「茉莉ちゃん……?」
「どうしたの?」
「なんだか眠れなくて……それでママの部屋に行ってもいなかったから……」
「俺の部屋に来てみたわけか」
「う、ん……」
茉莉ちゃんは本当に眠そうな様子で頷く。このままだと本当に眠ってしまいそうだ。そう思っていた時、真夏さんは俺から離れ、茉莉ちゃんへと近づいてからその体を優しく抱き上げた。
「それなら私達と一緒に寝ようか。冬矢さんもいいですか?」
「はい、もちろん。このベッドも一人で使うには少し大きいと思ってたので三人で眠ればちょうどいいかなと思います」
「そうですね。それじゃあ茉莉ちゃん、私達と一緒に寝ようね」
「うん……ママと、パパと一緒に寝る……」
声も眠たそうだったが答え方も少し途切れ途切れだった。そんな茉莉ちゃんの姿が可愛らしく見えてクスクス笑っている内に真夏さんは茉莉ちゃんを運んでくると、ベッドの真ん中に優しく置いた。そして窓側に寝転がると、俺を見ながらニコニコ笑った。
「せっかくなので、パパももう寝ましょうか」
「そうですね。それじゃあ電気を消してきます」
「はい」
部屋の電気を消し、窓から差し込んでくる月明かりを頼りにベッドまで戻った後、俺は茉莉ちゃんを真夏さんと挟む形で寝転がった。そして三人にかかるようにして毛布を肩辺りまで持ってくると、目を閉じた茉莉ちゃんからスウスウという寝息が聞こえてきた。
「もう寝ちゃいましたね。やっぱりもう少し俺達と一緒にいたかったんでしょうか」
「そうかもしれませんね。ふふ……なんだかこうしてると、茉莉ちゃんが本当に私達の子供みたいでより愛おしく感じます」
「たしかに」
安心した様子で眠る茉莉ちゃんは本当に可愛く、幸せな夢でも見ているのかその顔は穏やかで嬉しそうだった。
「パパって呼ばれて慕われてる以上、茉莉ちゃんにとって恥ずかしくない男にならないと」
「それは私も同じです。今も色々努力はしているつもりですが、これからはもっと努力をしないといけません。私は冬矢さんにとっても自慢出来る婚約者になりたいですから」
「真夏さんは本当に努力家ですね」
「ふふ、頑張りを見せたい相手がいるから頑張れるんですよ。それが誰か……わかりますよね?」
「ええ、もちろん」
俺は嬉しさを感じながら頷く。こんな風に言ってくれる人がいるんだ。俺だって真夏さんに頑張りを見せたいから頑張ろう。
真夏さんの顔を見ながらそれを決意していた時、真夏さんは静かに目をつぶり、スヤスヤと寝息を立て始めた。どうやら真夏さんも眠くなったらしい。
「それじゃあ俺も寝るかな」
真夏さんと茉莉ちゃんの寝息を聞きながら俺も目を瞑る。二人の寝息だけが聞こえる静かな部屋の中でゆっくりと眠気が強くなっていく。
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