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第二十四話
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文化祭当日、俺は新旧生徒会の出し物である劇の時間を舞台袖で待っていた。新旧生徒会の共同制作という事も話題となっているのか観にきてくれた人はとても多く、その多さに俺は緊張していた。
「ついに始まるのか……」
「楽しみではありますけど、やはり緊張しますね」
「ですね。でも、みんなが頑張ってくれたわけですし、大成功で終わりましょう」
「はい。そういえば、茉莉ちゃんも楽しみにしていましたし、もしかしたらあの中にいるかもしれませんね」
真夏さんが観客席を見ながら言う。ガヤガヤとしていてよく見えないが、真宙さん達と一緒に来ているはずだ。それならカッコ悪いところは見せられない。
「よし、それじゃあ劇の準備と行きましょうか」
「はい!」
真夏さんが頷いた後、俺達は準備を始めた。文芸部と演劇部が共同で書き上げた脚本はいわゆる学園ものだ。男子学生が一つ上の女子の先輩と出会い、意気投合した二人はやがて恋に落ちていく。けれど、先輩は病魔におかされており、あるデートの際に倒れて入院を余儀なくされるが、思っていたよりも早く病魔は体を蝕んでいた。先輩は余命宣告をされて落ち込み、男子学生も先輩を喪う恐怖に襲われるも最期まで二人でいようと考えてデートを重ねていき、最後には病床の先輩の手を握って永遠の愛を誓いながら男子学生が泣き崩れるという悲恋の物語のようだ。
この脚本を初めに読んだ時、もしも真夏さんがこの物語のように病魔におかされてそのまま息を引き取ったらと考えた瞬間に涙がこぼれてしまい、みんなの前で真夏さんに背中を擦ってもらうという事にもなった。けれど、それだけいい脚本ではあったし、これを俺達の力で演じきれば観客全員を感動させられるものになると感じた。
『それでは次に、新旧の生徒会役員による劇、恋の音色よ永久に、です』
進行役の生徒の声と同時にブザーが鳴り、体育館のステージのカーテンが開いていく。その瞬間にさっきより多く見える観客の姿に緊張しかけたが、それでもとちらせるわけにはいかなかったので俺は男子学生としての役を演じ始めた。
「今日もいい天気だな。こんな日には外で日なたぼっこでも……あれ? ピアノの音が聞こえる?」
真夏さんが演じるピアノを弾く先輩と出会い、男子学生はピアノの演奏の感想を言いながら先輩と話し始める。そしてシーンが進み、あしげく音楽室に通って先輩と話していく内に二人は次第にお互いを想うようになり、男子学生の告白で二人は恋人同士になる。
そうしてデートのシーンになり、青いデニムのジャケットにベージュのスカート姿の先輩が嬉しそうに笑う。
「今日もいい天気でよかったね。絶好のデート日和だよ」
「そうですね。今日はどこに行きましょうか」
「そうだ……うっ!」
先輩が胸を押さえながら倒れて病院に運ばれる。そして余命いくばくもないことを告げられて俺が演じる男子学生が悩み始めた。
「先輩を喪いたくない……でも、俺には医療の知識も技術もない。いったいどうしたらいいんだ……!」
早くも観客達の中にすすり泣く声が出始める中で男子学生は最後の最後まで先輩を愛すると決めて毎日お見舞いに行ったり外出許可が出た時には思い出を作るためにデートしたり、と様々な事をした。そして遂にその日が来た。
「先輩、遂に今日ですね……」
「そうだね。最後まで色々なところに連れていってくれたり思い出を作ったりしてくれて本当にありがとう。恋人が君で本当によかったよ」
先輩が弱々しく微笑む中、男子学生の目から涙が流れる。
「先輩、死なないでください。俺を置いていかないでくださいよ!」
「残念だけど、それは無理かな。でも、私ももっと生きたかったなあ。もっと色々なところに行ったり結婚したりしておじいちゃんとおばあちゃんになっても二人でゆっくり生きていたかったよ」
「先輩……!」
「ありがとう、私の大切な人。私はあなたの事をずっと愛しています」
その言葉を最後に、先輩は横になってそのまま息を引き取った。
「先輩? 先輩……!!」
先輩のなきがらを見て男子学生はその手を握る。徐々に冷たくなる先輩のなきがらの前で男子学生が泣き崩れ始めた。
「う、ああぁーっ!!」
愛し合う二人の最後に観客席からはすすり泣きが多く聞こえ、劇の成功を確信しながらも俺はカーテンが閉まりきるまで声を上げて泣く演技を続けた。そしてカーテンが閉まりきると、進行役の生徒の声が聞こえてきた。
『以上を持ちまして、新旧の生徒会による劇、恋の音色よ永久に、を終了します』
観客席から多くの拍手が送られる中、俺が顔を上げると、真夏さんは体を起こしながら微笑みかけてくれた。
「お疲れ様です、冬矢さん」
「まなつ、さん……」
未だ役が抜けていなかった事で俺は真夏さんが生きている事に涙が流れた。そして声を上げずに泣いていると、真夏さんは近づいてから静かに抱き締めてくれた。
「私はここにいますよ、冬矢さん。あなたを置いていなくなる事はありませんから安心してください」
「はい、はい……!」
真夏さんの温もりを感じながら俺はしばらく泣いていた。そして泣き止んだ後、真夏さんと一緒に舞台まで行くとそこに副会長達が近づいてきた。
「父川、お疲れ様」
「お疲れ様です。すみません、役が抜けきってなかったもので……」
「いいんじゃないか、父川。それだけ田母神先輩の事を大事にしてるってわけだしさ」
「父川君の演技、本当にすごかったよ! これはお芝居だってわかってても、本当に田母神先輩が亡くなったように思えて私も泣いちゃった」
「さっすがは俺達の生徒会長だな」
「みんな……」
みんなの言葉に胸の奥が熱くなる。自分では拙いと思っていた演技だけど、それでも観ていた人達に感動を与えられて、それを評価してもらえた事がやっぱり嬉しかったのだ。そうして笑っていたその時だった。
「パパ! ママ!」
その声に振り向くと、そこには茉莉ちゃんと今日の保護者をしてくれている真宙さんと夏海さんがいた。
「茉莉ちゃん、観にきてくれたんだね」
「うん! パパ達のお芝居、とってもスゴかった! 観てる内に胸のこの辺がキューっとなってきて、すごくうるうるしちゃった!」
「茉莉ちゃんの言う通りだね。冬矢君達の演技力がこの脚本を見事に昇華させていて、まるで一本の映画を観たような満足感があったよ」
「作家の目から見てもとても楽しかったです。是非この脚本を書いた子達とお話がしてみたいです」
「みんなに楽しんでもらえたみたいでよかったです」
初挑戦の劇だったけれどみんなが楽しめたのならよかったし、これを機に新旧の生徒会メンバー達が協力しながら一つのものを作っていく流れが確立していけばいいなと思った。そして衣装から制服に着替えると、茉莉ちゃんは目を輝かせ始めた。
「ねえねえ、パパとママともお祭りまわりたい! いいでしょ?」
「あ、うん。今日はウチのクラスの出し物の当番は免除してもらってるし、俺は大丈夫だよ」
「私も大丈夫だよ、茉莉ちゃん。でも、後片付けをしないと……」
真夏さんがセットや衣装を見ると、副会長達は笑いながら首を横に振った。
「行ってきてください、田母神さん。後片付けは俺達でやっておきますから」
「で、ですが……」
「茉莉ちゃんも二人とまわるの楽しみにしていたようですし、茉莉ちゃんの気持ちを大事にしてあげてください」
「父川君もお疲れ様。あとは私達がやっとくから文化祭をみんなで楽しんできて」
「みんな……」
みんなは笑みを浮かべながら頷いた。その気持ちはとても嬉しかったし、このメンバーと一緒に一つの物を作り上げられてよかったと感じた。
「それじゃあお言葉に甘えさせてもらうよ。真夏さんもそれでいいですよね」
「そうですね。それでは皆さん、よろしくお願いします」
「よろしくお願いしまーす!」
真夏さんの真似をして茉莉ちゃんが元気よく頭を下げると、その姿にみんなは癒されたようだった。そして俺達も癒された後に舞台袖から出て、楽しそうにしている茉莉ちゃんと一緒に文化祭を楽しみために俺達は体育館を出て歩き始めた。
「ついに始まるのか……」
「楽しみではありますけど、やはり緊張しますね」
「ですね。でも、みんなが頑張ってくれたわけですし、大成功で終わりましょう」
「はい。そういえば、茉莉ちゃんも楽しみにしていましたし、もしかしたらあの中にいるかもしれませんね」
真夏さんが観客席を見ながら言う。ガヤガヤとしていてよく見えないが、真宙さん達と一緒に来ているはずだ。それならカッコ悪いところは見せられない。
「よし、それじゃあ劇の準備と行きましょうか」
「はい!」
真夏さんが頷いた後、俺達は準備を始めた。文芸部と演劇部が共同で書き上げた脚本はいわゆる学園ものだ。男子学生が一つ上の女子の先輩と出会い、意気投合した二人はやがて恋に落ちていく。けれど、先輩は病魔におかされており、あるデートの際に倒れて入院を余儀なくされるが、思っていたよりも早く病魔は体を蝕んでいた。先輩は余命宣告をされて落ち込み、男子学生も先輩を喪う恐怖に襲われるも最期まで二人でいようと考えてデートを重ねていき、最後には病床の先輩の手を握って永遠の愛を誓いながら男子学生が泣き崩れるという悲恋の物語のようだ。
この脚本を初めに読んだ時、もしも真夏さんがこの物語のように病魔におかされてそのまま息を引き取ったらと考えた瞬間に涙がこぼれてしまい、みんなの前で真夏さんに背中を擦ってもらうという事にもなった。けれど、それだけいい脚本ではあったし、これを俺達の力で演じきれば観客全員を感動させられるものになると感じた。
『それでは次に、新旧の生徒会役員による劇、恋の音色よ永久に、です』
進行役の生徒の声と同時にブザーが鳴り、体育館のステージのカーテンが開いていく。その瞬間にさっきより多く見える観客の姿に緊張しかけたが、それでもとちらせるわけにはいかなかったので俺は男子学生としての役を演じ始めた。
「今日もいい天気だな。こんな日には外で日なたぼっこでも……あれ? ピアノの音が聞こえる?」
真夏さんが演じるピアノを弾く先輩と出会い、男子学生はピアノの演奏の感想を言いながら先輩と話し始める。そしてシーンが進み、あしげく音楽室に通って先輩と話していく内に二人は次第にお互いを想うようになり、男子学生の告白で二人は恋人同士になる。
そうしてデートのシーンになり、青いデニムのジャケットにベージュのスカート姿の先輩が嬉しそうに笑う。
「今日もいい天気でよかったね。絶好のデート日和だよ」
「そうですね。今日はどこに行きましょうか」
「そうだ……うっ!」
先輩が胸を押さえながら倒れて病院に運ばれる。そして余命いくばくもないことを告げられて俺が演じる男子学生が悩み始めた。
「先輩を喪いたくない……でも、俺には医療の知識も技術もない。いったいどうしたらいいんだ……!」
早くも観客達の中にすすり泣く声が出始める中で男子学生は最後の最後まで先輩を愛すると決めて毎日お見舞いに行ったり外出許可が出た時には思い出を作るためにデートしたり、と様々な事をした。そして遂にその日が来た。
「先輩、遂に今日ですね……」
「そうだね。最後まで色々なところに連れていってくれたり思い出を作ったりしてくれて本当にありがとう。恋人が君で本当によかったよ」
先輩が弱々しく微笑む中、男子学生の目から涙が流れる。
「先輩、死なないでください。俺を置いていかないでくださいよ!」
「残念だけど、それは無理かな。でも、私ももっと生きたかったなあ。もっと色々なところに行ったり結婚したりしておじいちゃんとおばあちゃんになっても二人でゆっくり生きていたかったよ」
「先輩……!」
「ありがとう、私の大切な人。私はあなたの事をずっと愛しています」
その言葉を最後に、先輩は横になってそのまま息を引き取った。
「先輩? 先輩……!!」
先輩のなきがらを見て男子学生はその手を握る。徐々に冷たくなる先輩のなきがらの前で男子学生が泣き崩れ始めた。
「う、ああぁーっ!!」
愛し合う二人の最後に観客席からはすすり泣きが多く聞こえ、劇の成功を確信しながらも俺はカーテンが閉まりきるまで声を上げて泣く演技を続けた。そしてカーテンが閉まりきると、進行役の生徒の声が聞こえてきた。
『以上を持ちまして、新旧の生徒会による劇、恋の音色よ永久に、を終了します』
観客席から多くの拍手が送られる中、俺が顔を上げると、真夏さんは体を起こしながら微笑みかけてくれた。
「お疲れ様です、冬矢さん」
「まなつ、さん……」
未だ役が抜けていなかった事で俺は真夏さんが生きている事に涙が流れた。そして声を上げずに泣いていると、真夏さんは近づいてから静かに抱き締めてくれた。
「私はここにいますよ、冬矢さん。あなたを置いていなくなる事はありませんから安心してください」
「はい、はい……!」
真夏さんの温もりを感じながら俺はしばらく泣いていた。そして泣き止んだ後、真夏さんと一緒に舞台まで行くとそこに副会長達が近づいてきた。
「父川、お疲れ様」
「お疲れ様です。すみません、役が抜けきってなかったもので……」
「いいんじゃないか、父川。それだけ田母神先輩の事を大事にしてるってわけだしさ」
「父川君の演技、本当にすごかったよ! これはお芝居だってわかってても、本当に田母神先輩が亡くなったように思えて私も泣いちゃった」
「さっすがは俺達の生徒会長だな」
「みんな……」
みんなの言葉に胸の奥が熱くなる。自分では拙いと思っていた演技だけど、それでも観ていた人達に感動を与えられて、それを評価してもらえた事がやっぱり嬉しかったのだ。そうして笑っていたその時だった。
「パパ! ママ!」
その声に振り向くと、そこには茉莉ちゃんと今日の保護者をしてくれている真宙さんと夏海さんがいた。
「茉莉ちゃん、観にきてくれたんだね」
「うん! パパ達のお芝居、とってもスゴかった! 観てる内に胸のこの辺がキューっとなってきて、すごくうるうるしちゃった!」
「茉莉ちゃんの言う通りだね。冬矢君達の演技力がこの脚本を見事に昇華させていて、まるで一本の映画を観たような満足感があったよ」
「作家の目から見てもとても楽しかったです。是非この脚本を書いた子達とお話がしてみたいです」
「みんなに楽しんでもらえたみたいでよかったです」
初挑戦の劇だったけれどみんなが楽しめたのならよかったし、これを機に新旧の生徒会メンバー達が協力しながら一つのものを作っていく流れが確立していけばいいなと思った。そして衣装から制服に着替えると、茉莉ちゃんは目を輝かせ始めた。
「ねえねえ、パパとママともお祭りまわりたい! いいでしょ?」
「あ、うん。今日はウチのクラスの出し物の当番は免除してもらってるし、俺は大丈夫だよ」
「私も大丈夫だよ、茉莉ちゃん。でも、後片付けをしないと……」
真夏さんがセットや衣装を見ると、副会長達は笑いながら首を横に振った。
「行ってきてください、田母神さん。後片付けは俺達でやっておきますから」
「で、ですが……」
「茉莉ちゃんも二人とまわるの楽しみにしていたようですし、茉莉ちゃんの気持ちを大事にしてあげてください」
「父川君もお疲れ様。あとは私達がやっとくから文化祭をみんなで楽しんできて」
「みんな……」
みんなは笑みを浮かべながら頷いた。その気持ちはとても嬉しかったし、このメンバーと一緒に一つの物を作り上げられてよかったと感じた。
「それじゃあお言葉に甘えさせてもらうよ。真夏さんもそれでいいですよね」
「そうですね。それでは皆さん、よろしくお願いします」
「よろしくお願いしまーす!」
真夏さんの真似をして茉莉ちゃんが元気よく頭を下げると、その姿にみんなは癒されたようだった。そして俺達も癒された後に舞台袖から出て、楽しそうにしている茉莉ちゃんと一緒に文化祭を楽しみために俺達は体育館を出て歩き始めた。
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