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第三十二話
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「やっぱりまだ人が多いな」
三が日、俺達はあの八幡宮に初詣に来ていた。去年ほどではなかったが境内には多くの参拝客が来ていて、人混みではぐれてしまわないように俺は茉莉ちゃんの手をしっかりと握った。
「茉莉ちゃんも離れないようにね」
「うん! パパとママの手を離さない!」
「ただ、私達も気を付けないとですね。こんなにも人が多いと気を付けていても何らかのきっかけではぐれてしまう可能性はありますし、物を取り出したりして一時的に手を離した際などに人混みに紛れてしまうなどもありますからね」
「私達も気をつけておく。何かあってからでは遅いからな」
「そうですね。とりあえずお互いに気をつけていきましょう」
結里さんの言葉に俺達は頷く。こういう場ではトラブルというのは起きやすいものだし、自分達で気をつけていても起きてしまう時には起きてしまう。だからこそ最悪の場合だけは想定しておいて、そうならないように気をつけていくのがいいのだ。
「そういえば、お参りの前に甘酒飲もうかと思って売店に行ったら、はぐれて不安そうにしてた茉莉ちゃんを見つけたんだったな」
「うん。あの時は本当に怖かったし、もう会えないんじゃないかって不安だったもん……でも、パパが優しく声をかけてくれて、甘酒を買ってくれたり甘酒の事を教えてくれたりしたからとても安心できたよ。その後すぐにママも来てくれたしね」
「私も不安と心配で張り裂けそうでしたよ。私が手を繋いでいたのにはぐれさせてしまった事で自分を責めましたし、茉莉ちゃんが何か危険な目に遭っていたらどうしようと思っていましたから。けれど、私の時と同じように冬矢さんが見つけてくれていましたし、とても安心した茉莉ちゃんの顔を見た瞬間に緊張がほどけて安心感で肩の力が抜けましたよ」
「茉莉は基本的に分け隔てなく接する子だが、それでも危険な事に首を突っ込んだり不審な相手はしっかりと判断出来たりする子でもあるから、初対面の相手にとても懐いていると聞いて私達も冬矢君なら安心出来ると感じたよ。実際、真夏ちゃんと一緒にしっかりと茉莉の面倒を見てくれた上に楽しい毎日を過ごさせてくれたようだしな」
「茉莉の表情が全てを物語っていますよね。さて、それではそろそろお参りにいきましょうか」
結里さんの言葉に頷いてから俺達は境内の石畳を歩き始めた。晴れ着姿の真夏さんたちはやっぱり人目を惹いていたし、中には声をかけてこようとしている人もいた。けれど、松也さんの無言の圧がそれを許さず、俺達は全く声をかけられることなく進み続けた。
「やっぱり真夏さん達は異性からの人気が高いですね。俺がいても声をかけてこようとしてる奴までいましたし」
「伯父様の姿を見てそれは断念しているようですけどね。ですが、異性からの視線を集めているのは冬矢さんもですよ?」
「え?」
俺は驚く。これまで異性から特別好かれた事がほとんどない俺だったからこそその言葉は驚くべき物だった。
「あ、たしかに。綺麗な格好をしたお姉ちゃん達とか私と同じくらいの歳の子達がすごくパパの事を見てるよね」
「たしかに女性の視線も結構あるなと思ってたけど、てっきり全部松也さんに向けられてるんだと思ってたよ」
「ふっふっふ、冬矢君もこの一年で男性としての魅力が身に付いたということだろうな。異性から魅力的に見られるのは悪いことではないから、もっと異性から好かれるように努力を重ねてもいいだろう。もっとも、それで調子にのって真夏ちゃんを悲しませる事があれば真宙が黙っていないと思うが」
「調子に乗る気はないですよ。どんなに異性から好かれようが、俺は真夏さんがいればいいですし、今後も真夏さん以外の異性に目を奪われる気はないですよ」
婚約者というのもあるけれど、俺にとって真夏さんはこれ以上ないくらいに素敵な女性なのだ。そんな人を悲しませるのはやはりよくない。だからこそ、今後の振る舞い方を俺は気を付けるべきなんだ。俺が気づいていないところで真夏さんが悲しんでしまう事だってあるのだから。
そうして石畳を歩き、石造りの階段や砂利道を進んでいくと、俺達の目の前には大きくて立派な拝殿が現れた。
「やっぱりここの拝殿って立派だな。いつ見ても圧倒されるよ」
「たしかにそうですね。さて、お参りをするために五円玉を用意していましょうか。茉莉ちゃんも五円玉にする?」
「うん! 今年も神様とご縁があったらいいなって思うから!」
「意味合いがなくても茉莉ちゃんみたいにいい子なら神様達も喜んで力を貸してくれると思うよ。それじゃあ俺もせっかくだから五円玉にしようかな」
俺達は揃って財布から五円玉を取り出す。そして俺達の番になり、いつものように二礼二拍一礼でお参りを済ませ、他の人のためにおみくじが売られている方へと退けた。
「さて、次はおみくじかな。今年も大吉が出るといいけど」
「そういえば……パパ、おみくじって大吉以外にも色々あるよね?」
「うん、あるよ。大吉に吉、中吉に小吉、末吉と凶、あとは大凶だったかな」
「いっぱいあるね。大吉が一番よくて大凶が一番よくないのはわかるけど、他のってどんな順番なの?」
「一般的には大吉の次が吉でその次が中吉、その次が小吉で末吉と凶、大凶っていう順番にはなるかな。そのおみくじを売ってる神社によっては吉が小吉と末吉の間に来るところもあるようだけどね」
「そうなんだね。でも、やっぱり大吉がいいなあ」
茉莉ちゃんの言葉に頷きながらクスリと笑った後、俺達はそれぞれおみくじを引いた。
「……あ、大吉です!」
「私は中吉だな」
「私は小吉ですね」
「俺は吉か。茉莉ちゃんはどうだった?」
「んーと、末吉だって。凶じゃなくてよかったけど、大吉じゃなくて残念だな……」
茉莉ちゃんが残念そうに言う中、俺はクスクス笑ってから茉莉ちゃんに話しかけた。
「たしかに大吉が一番いいけど、末吉だって必ずしも悪いものじゃないんだよ?」
「そーなの?」
「そう。小吉は無難で平和な運勢を表し、ささやかな幸せが続くことを示していて、末吉は吉の中でも一番弱い吉とは言われているけど、これから吉に向かって運気が上がっていく可能性がある未来に向かっていく運勢なんだよ」
「未来に向かっていく運勢……それじゃあ、私の頑張り次第で吉にも大吉にもなるってこと?」
「そうなるね。だから、大吉ばかりがいいわけじゃなくて、他の吉でも考え方一つでいいものに変えていけるんだ」
茉莉ちゃんは自分のおみくじを見た後、俺に視線を移してからニッコリと笑った。
「わかった! 私もガッカリするだけじゃなくて、今年もいい一年になるようにいっぱい頑張る! それで、大吉よりもいい吉になるようにする!」
「うん、俺もそう出来るように頑張るよ。茉莉ちゃん、今年も一緒に頑張ろう」
「うん!」
茉莉ちゃんは嬉しそうに笑いながら答える。その笑顔に嬉しさを感じていると、俺達の会話を聞いていた真夏さん達はクスクス笑った。
「冬矢さん、茉莉ちゃんの本当のパパみたいですね」
「ここまでしっかりと保護者としての姿を見せられると、やはり妬いてしまうな。冬矢君、今後とも茉莉をよろしく頼むぞ」
「茉莉も真夏ちゃんだけじゃなく冬矢君にも迷惑をかけないようにしましょうね?」
「はい、もちろんです」
「はーい!」
俺と茉莉ちゃんは揃って答える。その後、俺達は干支のお社にもお参りをしたり甘酒を飲んだりしながら神社での一時を過ごし、帰った後も今年の各々の過ごし方を話しながら楽しい一日を過ごした。
三が日、俺達はあの八幡宮に初詣に来ていた。去年ほどではなかったが境内には多くの参拝客が来ていて、人混みではぐれてしまわないように俺は茉莉ちゃんの手をしっかりと握った。
「茉莉ちゃんも離れないようにね」
「うん! パパとママの手を離さない!」
「ただ、私達も気を付けないとですね。こんなにも人が多いと気を付けていても何らかのきっかけではぐれてしまう可能性はありますし、物を取り出したりして一時的に手を離した際などに人混みに紛れてしまうなどもありますからね」
「私達も気をつけておく。何かあってからでは遅いからな」
「そうですね。とりあえずお互いに気をつけていきましょう」
結里さんの言葉に俺達は頷く。こういう場ではトラブルというのは起きやすいものだし、自分達で気をつけていても起きてしまう時には起きてしまう。だからこそ最悪の場合だけは想定しておいて、そうならないように気をつけていくのがいいのだ。
「そういえば、お参りの前に甘酒飲もうかと思って売店に行ったら、はぐれて不安そうにしてた茉莉ちゃんを見つけたんだったな」
「うん。あの時は本当に怖かったし、もう会えないんじゃないかって不安だったもん……でも、パパが優しく声をかけてくれて、甘酒を買ってくれたり甘酒の事を教えてくれたりしたからとても安心できたよ。その後すぐにママも来てくれたしね」
「私も不安と心配で張り裂けそうでしたよ。私が手を繋いでいたのにはぐれさせてしまった事で自分を責めましたし、茉莉ちゃんが何か危険な目に遭っていたらどうしようと思っていましたから。けれど、私の時と同じように冬矢さんが見つけてくれていましたし、とても安心した茉莉ちゃんの顔を見た瞬間に緊張がほどけて安心感で肩の力が抜けましたよ」
「茉莉は基本的に分け隔てなく接する子だが、それでも危険な事に首を突っ込んだり不審な相手はしっかりと判断出来たりする子でもあるから、初対面の相手にとても懐いていると聞いて私達も冬矢君なら安心出来ると感じたよ。実際、真夏ちゃんと一緒にしっかりと茉莉の面倒を見てくれた上に楽しい毎日を過ごさせてくれたようだしな」
「茉莉の表情が全てを物語っていますよね。さて、それではそろそろお参りにいきましょうか」
結里さんの言葉に頷いてから俺達は境内の石畳を歩き始めた。晴れ着姿の真夏さんたちはやっぱり人目を惹いていたし、中には声をかけてこようとしている人もいた。けれど、松也さんの無言の圧がそれを許さず、俺達は全く声をかけられることなく進み続けた。
「やっぱり真夏さん達は異性からの人気が高いですね。俺がいても声をかけてこようとしてる奴までいましたし」
「伯父様の姿を見てそれは断念しているようですけどね。ですが、異性からの視線を集めているのは冬矢さんもですよ?」
「え?」
俺は驚く。これまで異性から特別好かれた事がほとんどない俺だったからこそその言葉は驚くべき物だった。
「あ、たしかに。綺麗な格好をしたお姉ちゃん達とか私と同じくらいの歳の子達がすごくパパの事を見てるよね」
「たしかに女性の視線も結構あるなと思ってたけど、てっきり全部松也さんに向けられてるんだと思ってたよ」
「ふっふっふ、冬矢君もこの一年で男性としての魅力が身に付いたということだろうな。異性から魅力的に見られるのは悪いことではないから、もっと異性から好かれるように努力を重ねてもいいだろう。もっとも、それで調子にのって真夏ちゃんを悲しませる事があれば真宙が黙っていないと思うが」
「調子に乗る気はないですよ。どんなに異性から好かれようが、俺は真夏さんがいればいいですし、今後も真夏さん以外の異性に目を奪われる気はないですよ」
婚約者というのもあるけれど、俺にとって真夏さんはこれ以上ないくらいに素敵な女性なのだ。そんな人を悲しませるのはやはりよくない。だからこそ、今後の振る舞い方を俺は気を付けるべきなんだ。俺が気づいていないところで真夏さんが悲しんでしまう事だってあるのだから。
そうして石畳を歩き、石造りの階段や砂利道を進んでいくと、俺達の目の前には大きくて立派な拝殿が現れた。
「やっぱりここの拝殿って立派だな。いつ見ても圧倒されるよ」
「たしかにそうですね。さて、お参りをするために五円玉を用意していましょうか。茉莉ちゃんも五円玉にする?」
「うん! 今年も神様とご縁があったらいいなって思うから!」
「意味合いがなくても茉莉ちゃんみたいにいい子なら神様達も喜んで力を貸してくれると思うよ。それじゃあ俺もせっかくだから五円玉にしようかな」
俺達は揃って財布から五円玉を取り出す。そして俺達の番になり、いつものように二礼二拍一礼でお参りを済ませ、他の人のためにおみくじが売られている方へと退けた。
「さて、次はおみくじかな。今年も大吉が出るといいけど」
「そういえば……パパ、おみくじって大吉以外にも色々あるよね?」
「うん、あるよ。大吉に吉、中吉に小吉、末吉と凶、あとは大凶だったかな」
「いっぱいあるね。大吉が一番よくて大凶が一番よくないのはわかるけど、他のってどんな順番なの?」
「一般的には大吉の次が吉でその次が中吉、その次が小吉で末吉と凶、大凶っていう順番にはなるかな。そのおみくじを売ってる神社によっては吉が小吉と末吉の間に来るところもあるようだけどね」
「そうなんだね。でも、やっぱり大吉がいいなあ」
茉莉ちゃんの言葉に頷きながらクスリと笑った後、俺達はそれぞれおみくじを引いた。
「……あ、大吉です!」
「私は中吉だな」
「私は小吉ですね」
「俺は吉か。茉莉ちゃんはどうだった?」
「んーと、末吉だって。凶じゃなくてよかったけど、大吉じゃなくて残念だな……」
茉莉ちゃんが残念そうに言う中、俺はクスクス笑ってから茉莉ちゃんに話しかけた。
「たしかに大吉が一番いいけど、末吉だって必ずしも悪いものじゃないんだよ?」
「そーなの?」
「そう。小吉は無難で平和な運勢を表し、ささやかな幸せが続くことを示していて、末吉は吉の中でも一番弱い吉とは言われているけど、これから吉に向かって運気が上がっていく可能性がある未来に向かっていく運勢なんだよ」
「未来に向かっていく運勢……それじゃあ、私の頑張り次第で吉にも大吉にもなるってこと?」
「そうなるね。だから、大吉ばかりがいいわけじゃなくて、他の吉でも考え方一つでいいものに変えていけるんだ」
茉莉ちゃんは自分のおみくじを見た後、俺に視線を移してからニッコリと笑った。
「わかった! 私もガッカリするだけじゃなくて、今年もいい一年になるようにいっぱい頑張る! それで、大吉よりもいい吉になるようにする!」
「うん、俺もそう出来るように頑張るよ。茉莉ちゃん、今年も一緒に頑張ろう」
「うん!」
茉莉ちゃんは嬉しそうに笑いながら答える。その笑顔に嬉しさを感じていると、俺達の会話を聞いていた真夏さん達はクスクス笑った。
「冬矢さん、茉莉ちゃんの本当のパパみたいですね」
「ここまでしっかりと保護者としての姿を見せられると、やはり妬いてしまうな。冬矢君、今後とも茉莉をよろしく頼むぞ」
「茉莉も真夏ちゃんだけじゃなく冬矢君にも迷惑をかけないようにしましょうね?」
「はい、もちろんです」
「はーい!」
俺と茉莉ちゃんは揃って答える。その後、俺達は干支のお社にもお参りをしたり甘酒を飲んだりしながら神社での一時を過ごし、帰った後も今年の各々の過ごし方を話しながら楽しい一日を過ごした。
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