婚約破棄と溺愛のアンソロジー[短編集]

イアペコス

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黒曜石の瞳に宿るは、ただひとつの真実

第六章:決別と再生

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再び、王宮の夜会が開かれた。
前回、セレスティアナが屈辱にまみれた場所。しかし、今の彼女はもう、何も恐れてはいなかった。隣には、誰よりも心強い守護者がいるのだから。

夜会が最高潮に達した頃、カイエンは国王陛下の許可を得て、ホールの中心に進み出た。その光景は、数ヶ月前の悪夢を彷彿とさせたが、意味合いは全く違っていた。

「皆様、今宵は、ある一つの真実をお話しするために参りました」

カイエンは、ヴァレンティス公爵家の不正な財産運用、そしてクラインフェルト伯爵家の財産を狙ったゼノンとリリアーナの陰謀を、次々と暴いていった。揺るぎない証拠の数々を突きつけられ、ゼノンは顔面を蒼白にさせる。

「そ、そんなことは…でっち上げだ!」
「ほう?では、リリアーナ嬢と交わしたこの手紙も、偽物だと?」

カイエンが掲げた手紙には、セレスティアナを陥れるための具体的な計画が、生々しい言葉で綴られていた。

追い詰められたリリアーナは、ついに猫なで声を捨て、ヒステリックに叫んだ。
「だって、お姉様が邪魔だったんだもの!完璧な姉の陰で、私はいつも惨めな思いをしてきたわ!公爵夫人の座は、私が手に入れるべきだったのよ!」

その醜い本性に、会場は水を打ったように静まり返る。
ゼノンは、自分が愛したと思っていた女の正体を知り、愕然としてその場に膝をついた。プライドも、未来も、全てを失った男の、哀れな末路だった。

全ての決着がついた時、セレスティアナは、震える足でゼノンの前に進み出た。見下ろす彼の姿は、かつて憧れた完璧な貴公子ではなく、ただのちっぽけな男にしか見えなかった。

セレスティアナは、深く、深く息を吸った。そして、はっきりと告げた。

「ゼノン様。わたくし、あなたとの婚約が破棄されて、本当に良かったと、心の底から思っておりますわ」

それは、過去の自分との決別の言葉だった。もう、誰かの理想のために自分を偽らない。誰かの評価に怯えることもない。

言い終えた彼女の肩を、カイエンが力強く抱き寄せた。彼の腕の中は、世界で一番安全な場所だった。

「セレスティアナは、俺の妻だ」

カイエンは、ホールにいる全ての人間に宣言するように言った。

「これからは俺が、彼女を生涯守り、愛し続ける。異論のある者は、この俺が相手になろう」

その深紅の瞳には、絶対的な自信と、セレスティアナへの揺るぎない愛情が満ち溢れていた。
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