氷の薔薇は愛に目覚める~婚約破棄された令嬢と救国の王子~

イアペコス

文字の大きさ
44 / 68

愛の誓いと真実の力 2

しおりを挟む
「エリザベス・フォン・クライフォルト!貴様の、その、神をも恐れぬ忌まわしくも、そして救いようのないほどに愚かしい悪行の数々も、もはや、この場をもって完全に終わりだ!潔く、その全ての、醜く汚れた罪を、神と、そしてこのアルカディア王国の全ての、善良なる民の前で、洗いざらい認め、シルヴァリアの、貴様に唆され、道を踏み外した哀れなルシアン王子と共に、神妙に、そして速やかに、この王国の厳正なる裁きを受けるが良い!それが、貴様のような、国を裏切り、人々を欺いた大罪人に残された、唯一の、そして最後の、慈悲とも言うべき道なのだ!」
エドワード王太子の声は、必死で、そして懸命に平静を装ってはいたが、その言葉の端々には、エリザベスへの、未だ完全に断ち切ることのできない複雑な、そしておそらくは愛憎の入り混じった感情と、そして何よりも、この、あまりにも悲劇的で、そしてあまりにも多くの血が流れそうな状況に対する、彼の、若く未熟な魂の、深い苦悩と葛藤が、隠しようもなく、そして痛々しいほどに滲み出ていた。

エリザベスは、まるで魂の抜け殻のように、あるいは、全ての糸が切れてしまった操り人形のように、ゆっくりと、そして力なく、その美しい顔を上げた。そして、エドワードの、その苦悩と怒りに満ちた、しかしどこか救いを求めているかのような目を、何の感情も、何の光も映し出すことのない、ただただ虚ろで、そして全てを諦めきったかのような瞳で、まっすぐに見つめた。その瞳には、もはや、かつての、氷のような鋭い輝きも、炎のような激しい知性も、そして何よりも、彼女を彼女たらしめていた、決して誰にも屈することのない気高ささえも、一片たりとも宿ってはいなかった。そこには、ただ、深い、そして底なしの、まるで死んだ冬の湖面のような諦観と、そしてこの世の全ての不条理と悪意を、ただ静かに、そして何の抵抗もなく受け入れるかのような、不気味なほどの、そしてどこか神聖ささえ感じさせる虚無的な静けさだけが、まるで死の直前の凪のように、重く、そして冷たく漂っていた。
「…はい、エドワード殿下。全ての…全ての罪は、この、わたくし…エリザベス・フォン・クライフォルトが、ただ一人で、そして自らの意志で企てました。わたくしこそが、その、神から与えられたはずの美貌と、そしてクライフォルト公爵家という、あまりにも大きな地位を悪用し、善良で純粋な人々を惑わし、そそのかし、そしてこの、平和で秩序あるべきアルカディア王国に、許されざる、そして最も忌むべき反旗を翻そうとした、救いようのない、そして万死をもってしても償いきれないほどの罪を犯した、歴史上最も愚かで、そして最も邪悪な『悪役令嬢』でございます…」
彼女の声は、まるで遠い、霧に閉ざされた、誰もいない世界の、最も深い場所から、かろうじて聞こえてくる、か細く、そして弱々しい囁きのように、そして何の抑揚も、何の感情の起伏もなく、まるで予め、誰かによって完璧に録音された、感情のない言葉を、ただただ再生しているかのように、一切の、人間的な温かみや、魂の響きというものが、完全に抜け落ちていた。
リリアは、その、あまりにも従順で、そして彼女が望んだ通り、いや、それ以上に完璧なまでの「悪役令嬢」の、魂からの懺悔とも言うべき告白を聞いて、その美しい顔に、もはや隠すことさえしない、恍惚とした、そしてサディスティックなまでの勝利の表情を浮かべ、その赤い唇を、まるで犠牲者の生き血を吸ったばかりの、美しいが恐ろしい蛭のように、ゆっくりと、そして満足そうに歪め、オルダス公爵は、その、まるで石でできた能面のような、一切の感情を読み取ることのできない顔に、ほんのわずかな、しかし誰の目にも明らかな、完全な勝利を確信したことを示す、冷たい微かな笑みを浮かべ、静かに、そして重々しく、まるで歴史の審判者のように頷いた。エドワードは、エリザベスの、その、あまりにもあっけなく、そして何の、ほんのわずかな抵抗の素振りさえも見せない、まるで全てを諦めきったかのような告白に、一瞬、言葉を完全に失い、まるで信じられないもの、あるいは理解できないものを見たかのように、ただただ呆然としていた。彼は、おそらく、心の奥底の、彼自身でさえ気づいていないような場所で、エリザベスが、最後まで、その気高いプライドを捨てずに抵抗し、自らの潔白を、そして真実を、力強く主張することを、どこかで、ほんのわずかでも期待していたのかもしれない。その期待が、今、無残にも打ち砕かれたのだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

はじめまして、私の知らない婚約者様

有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。 見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。 けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。 ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。 けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。 この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。 悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに? ※他サイトにも掲載しています。

田舎娘をバカにした令嬢の末路

冬吹せいら
恋愛
オーロラ・レンジ―は、小国の産まれでありながらも、名門バッテンデン学園に、首席で合格した。 それを不快に思った、令嬢のディアナ・カルホーンは、オーロラが試験官を買収したと嘘をつく。 ――あんな田舎娘に、私が負けるわけないじゃない。 田舎娘をバカにした令嬢の末路は……。

第一王子は私(醜女姫)と婚姻解消したいらしい

麻竹
恋愛
第一王子は病に倒れた父王の命令で、隣国の第一王女と結婚させられることになっていた。 しかし第一王子には、幼馴染で将来を誓い合った恋人である侯爵令嬢がいた。 しかし父親である国王は、王子に「侯爵令嬢と、どうしても結婚したければ側妃にしろ」と突っぱねられてしまう。 第一王子は渋々この婚姻を承諾するのだが……しかし隣国から来た王女は、そんな王子の決断を後悔させるほどの人物だった。

ずっと引きこもってた悪役令嬢が出てきた

桜井ことり
恋愛
そもそものはじまりは、 婚約破棄から逃げてきた悪役令嬢が 部屋に閉じこもってしまう話からです。 自分と向き合った悪役令嬢は聖女(優しさの理想)として生まれ変わります。 ※爽快恋愛コメディで、本来ならそうはならない描写もあります。

死亡予定の脇役令嬢に転生したら、断罪前に裏ルートで皇帝陛下に溺愛されました!?

六角
恋愛
「え、私が…断罪?処刑?――冗談じゃないわよっ!」 前世の記憶が蘇った瞬間、私、公爵令嬢スカーレットは理解した。 ここが乙女ゲームの世界で、自分がヒロインをいじめる典型的な悪役令嬢であり、婚約者のアルフォンス王太子に断罪される未来しかないことを! その元凶であるアルフォンス王太子と聖女セレスティアは、今日も今日とて私の目の前で愛の劇場を繰り広げている。 「まあアルフォンス様! スカーレット様も本当は心優しい方のはずですわ。わたくしたちの真実の愛の力で彼女を正しい道に導いて差し上げましょう…!」 「ああセレスティア!君はなんて清らかなんだ!よし、我々の愛でスカーレットを更生させよう!」 (…………はぁ。茶番は他所でやってくれる?) 自分たちの恋路に酔いしれ、私を「救済すべき悪」と見なすめでたい頭の二人組。 あなたたちの自己満足のために私の首が飛んでたまるものですか! 絶望の淵でゲームの知識を総動員して見つけ出した唯一の活路。 それは血も涙もない「漆黒の皇帝」と万人に恐れられる若き皇帝ゼノン陛下に接触するという、あまりに危険な【裏ルート】だった。 「命惜しさにこの私に魂でも売りに来たか。愚かで滑稽で…そして実に唆る女だ、スカーレット」 氷の視線に射抜かれ覚悟を決めたその時。 冷酷非情なはずの皇帝陛下はなぜか私の悪あがきを心底面白そうに眺め、その美しい唇を歪めた。 「良いだろう。お前を私の『籠の中の真紅の鳥』として、この手ずから愛でてやろう」 その日から私の運命は激変! 「他の男にその瞳を向けるな。お前のすべては私のものだ」 皇帝陛下からの凄まじい独占欲と息もできないほどの甘い溺愛に、スカーレットの心臓は鳴りっぱなし!? その頃、王宮では――。 「今頃スカーレットも一人寂しく己の罪を反省しているだろう」 「ええアルフォンス様。わたくしたちが彼女を温かく迎え入れてあげましょうね」 などと最高にズレた会話が繰り広げられていることを、彼らはまだ知らない。 悪役(笑)たちが壮大な勘違いをしている間に、最強の庇護者(皇帝陛下)からの溺愛ルート、確定です!

断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます

山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。 でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。 それを証明すれば断罪回避できるはず。 幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。 チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。 処刑5秒前だから、今すぐに!

婚約破棄してくださって結構です

二位関りをん
恋愛
伯爵家の令嬢イヴには同じく伯爵家令息のバトラーという婚約者がいる。しかしバトラーにはユミアという子爵令嬢がいつもべったりくっついており、イヴよりもユミアを優先している。そんなイヴを公爵家次期当主のコーディが優しく包み込む……。 ※表紙にはAIピクターズで生成した画像を使用しています

悪意には悪意で

12時のトキノカネ
恋愛
私の不幸はあの女の所為?今まで穏やかだった日常。それを壊す自称ヒロイン女。そしてそのいかれた女に悪役令嬢に指定されたミリ。ありがちな悪役令嬢ものです。 私を悪意を持って貶めようとするならば、私もあなたに同じ悪意を向けましょう。 ぶち切れ気味の公爵令嬢の一幕です。

処理中です...