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2話 声はすれども
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目を開くと、そこは大きな川沿いの街道だった。
頭上には夏を感じさせる日差しの強さ。
川の方から風が吹くと、初夏を感じさせる冷たさと共に草と水の香りを運んできた。
地面を踏みしめると、靴底がジャリっと音をさせた。
顔にはヘッドマウントディスプレイの感覚は無く、周囲にはアスファルトや排気ガスの臭いなんて何処にも無い。
逆に先程まで着ていた部屋着ではなく、外出用の普段着にスニーカーとラフな格好、そして腰には一振りの片手剣だけが腰のベルトに刺さっていた。
「なんぞこれ……?」
ただ呆然と目の前に流れる大きな川を見つめてつぶやいた。
VRゲーっていつからフルダイブ型になったんだ?
唐突過ぎる状況に、頭が全く追い付かない。
『わー、超リアルー! 腰の剣なんて本物みたいですよ!』
『ちょ、おま、リアルってレベルやないやろ!?』
すると、どこからともなく突然シンくんと大福さんの声が聞こえてきた。
それに反応して辺りを見回すも、大福さんやシンくんの姿だって何処にも無い。
イヤホンの類を付けてはいないが、周囲の風の音なんかよりも鮮明に聞こえる。
『一体、これはどういうことだ……?』
今度はレンさんの驚愕が聞こえたが、やはりその姿も無い。
なんだ、声が直接頭に流れてくるこの感覚は?
念のためにと川とは反対側、街道を挟んで木々が生い茂る森の中を覗き込むも姿は見当たらない。
人の姿は見当たらなかったが、見当たってはいけないモノを見つけてしまいゾっとする。
カエルだ。
それもただのカエルじゃない。
体高2メートルは優にあろう紫色のファンシーカラーな巨大ウシガエル。
カエルは口に入るものなら何でも飲み込む貪欲な生物。
そんなのが2メートルともなると、人だって丸のみにしかねない。
幸い距離は離れていたため気付かれてはおらず、襲われる前にと慌てながらも静かに街道まで戻る。
そして早歩きでその場から離れた。
この分だと川にも近付かない方が無難そうだ。
『声だけは届いている様だが、皆無事か?』
『こっちは問題無いよ』
『右に同じです』
「俺も一応は……」
先程のドデカカエルに更に頭が混乱したが、一応正気は保てている……はず……かも?
「まさか、異世界ってやつか……?」
『いやいやいや、いきなり異世界とか藪からポールやろ』
「んふっ」
大福さんの唐突すぎるルー語に、思わず鼻から息が漏れる。
そしてその音が巨大ウシカエルに聞かれたらと、手のひらに変な汗をかく。
「一応集団催眠の可能性もあったりなかったり?
『集団催眠って言うか、4人同時に同じ夢を見てる感じですね』
「そうそれ」
俺の言い間違いを修正してくれるシンくん。
『せやけど夢にしてはちゃんと試行して喋れとるし、眠ってる間に知らん場所に置いてかれたって方がまだ現実的やないか?』
『眠っている間に変な場所に連れてこられた可能性か? ……4人同時となると流石に混沌無形にすぎるな。第一、俺達はただの一般人だ、どこの誰だか知らんがそんな大掛かりなことをする理由がない』
大福さんの指摘にレンさんが思案するも、すぐに発言を否定した。
そうなるともう、何らかの力が働いて異世界に飛ばされたとしか思えない。
そもそもあんなバカでかいカエルを見せつけられると、催眠術とか超スピードなんてちゃちなもんじゃあ決して無い。
本物のファンタジーの片りんを味わったぜ……。
って落ち着け落ち着け、ポルナってる場合でもない。
何せ山から熊が下りてきたレベルの命の危機がすぐ近くにあるのだ、まずは異世界に来たかもしれない可能性を皆に伝えることが重要だ。
「けどさぁ、直ぐ近くで2メートルのウシガエルを見ると、流石に異世界一択じゃね?」
元の世界に30センチ近いおたまじゃくしは居ても、2メートルなんてバカでかいカエルは存在しない。
動物好きな俺が言うんだ、まず間違いない。
『2メートルのカエルて、流石にそんなん居たらやば過ぎやろ……』
「それがちょっと森を覗き込んだら普通に居るんだからしょうがないでしょ……」
『ねこさんは直ぐにその場から離れることをお勧めするぞ』
「大丈夫、もう離れた後だから」
一応普通の人よりかは危機認識感覚はある方なので、その辺はご安心あれ。
『てことは……、異世界来たあああああああああああああ!』
『『「うおっ!?」』』
3人が状況把握に努めている中、最年少者のシンくんが唐突に大声で叫ぶ。
心臓に悪いからやめてくれ……。
『異世界ですよ異世界! 僕ずっと夢見ていたんですよ!』
『シンくん落ち着き。確かにホンマの異世界やったらワシも願ったり叶ったりやが、まずは安全の確保が最優先やで』
『本当に異世界だというならなおさらだ。浮かれていると死ぬぞ』
「いやホント、レンさんの言う通り。腰の剣一本で体高2メートルオーバーのウシガエルと戦って勝てると思う?」
『丸のみにされたら剣なんぞあっても振れんからな。下手したら抜く前に乙るわ』
格闘技者である大福さんの真っ当な解説を聞きながら、周囲を警戒しながら大丈夫そうなので木陰に入る。
日差しが遮られると、途端に暑さから解放される。
『だが、どうも全員別々の場所に居るようだな』
「そうみたいね、なんで会話出来てるのか知らんけど。一応みんな身体とか異常は無い?」
若干現実逃避気味に空を見上げると、視界の片隅に浮いている見慣れないものが目に留まる。
丸い何か……?
その丸いモノに意識を集中すると、突然目の前の空間にウィンドウらしきものが立体映像のように開いた。
一ノ瀬俊夫
人 男 24歳
ベースLv1
ノービスLv1
HP:140
MP:15
筋力:30
体力:1
敏捷:71
魔力:1
ステータスポイント:0
ジョブスキル▼
ジョブスキルポイント:0
ボーナススキル▼
ボーナススキルポイント:1
装備▼
アイテム▼
所持金500カパー
「に”ゃ!?」
『どうしたねこさん!?』
『さっきのカエルが追ってきたか!?』
『大丈夫ですか!?』
猫好きが高じてというか拗らせすぎて驚くと〝に”ゃ〟と言ってしまう癖が飛び出てしまった。
人前でこの声を出すのなんて初めてなので恥ずかしすぎる。
「あー、いやごめん大丈夫。みんな、視界の右上にアイコンみたいなの無い?」
『アイコン?』
『あぁ、これか?』
『なんでしょう?』
『『『うわっ!?』』』
どうやらみんなの前にもウィンドウのようななにかが開いたようだ。
「ステータスウィンドウかな?」
『そのようだな』
『黒い逆三角のところをタッチするとスキルが見れますね』
あ、これタッチ式なんだ。
シンくんの言う通りジョブスキルの横にある▼をタッチ。
ジョブスキル△
ノービスLv1/8
〈手当Lv1〉:消費MP2
自分のHPを少量回復。
※スキル名を唱えると習得済みのスキルが使用できます。
※ノービススキルのみLvUP時に自動取得します。
『〈手当〉わ、何か光りましたよ!』
『マジで? 〈手当て〉。おお、ホンマや』
『〈手当〉、ほぅ』
「〈手当〉」
シンくんの言葉に皆がそれぞれ〈手当〉を試す。
身体が黄緑色の光りに包まれると共に暖かさを感じると、光はすぐに消えてしまった。
尻に灯せば蛍って一発芸が出来そうだ。
『なんだか本当に異世界転生モノみたいですね』
『ゲームみたいな設定の世界に飛ばされる系のあれやな』
『これは面白そうだな』
こうなるとゲーム感覚で楽しんでしまうのがゲームオタという奴だ。
『ノービスのジョブが1/8で残りの未修得スキル7つと言うことは、ノービスのジョブはLv8までの様だな』
「みたいね」
ノービススキルは他にもあるが、すべて灰色になっており、灰色になっている残り7個のスキルは現在は使用不可なようだ。
レンさんの言葉にふんふんとうなずきながらジョブスキルの横にある△を再びタッチすると、ジョブスキルの項目が閉じた。
そしてみんなの話題はボーナススキルへ。
ボーナススキル▽
ボーナススキルポイント:1
※ベースレベルが上昇するとスキルポイントを獲得出来ます。
※ボーナススキルのポイントはいつでも振りなおしが可能です。
ざっと見た限りスキルの種類は50以上もあり、そのどれもがあると便利そうなものばかりだった。
ウィンドウのスキル欄からスキル名に指を添えると、大まかな説明がポップ表示される。
実に親切設計である。
『ボーナススキル多いですね』
『〈鑑定〉はこの手の異世界物でお約束やな。〈言語/人族共用語〉に〈獲得経験値増加〉に〈アイテムドロップ率UP〉〈カードドロップ率UP〉? カードってなんやろ?』
「んー、アレじゃない?装備アイテムに着けると特殊能力が付与されるとかの」
『あぁ、EE9のマテリアルオーブみたいなもんか』
『EE6の召喚符みたいなモンスターを呼び出すアイテムかもしれませんよ』
『そっちの線もあるなぁ』
「まぁ拾ってからのお楽しみやね。他には状態異常耐性系に感情操作系なんてあんのか」
『感情操作系は自分限定ですね。なんに使うんですか?ねレベルを上げたらどうなるんでしょう?』
『〈詠唱短縮Lv1〉…〈MP回復量増加Lv1〉…〈MP自動回復量増加Lv1〉…〈HP回復量増加Lv1〉…〈ジョブ追加Lv1〉…〈筋力追加ボーナスLv1〉…ワープの類は無さそうだな』
真面目なレンさんは俺達のようにレベルを端折ったり系統でくくったりせず、一つ一つ入念に確認している。
レンさんの発声に若干の乱れが混じってるのは歩きながらだからか?
「瞬間移動系が無いのは痛いなぁ」
『見落としがあるかもしれん。皆も一度チェックしてくれ』
レンさんの指示に皆で再度確認をしたが、やはりワープの類はなかった。
『システムはこれまでのEEシリーズとは違うみたいですね』
『EEの知識ではどうにもならんか』
『EEオンラインと同じシステムかもしれんが、まだキャラメイクしかしていないから分からんな。まぁその辺は手探りで行くしかないだろう』
「んで、装備はロングソードのみ、と」
スキルチェックはひとまず置いておくことにし、次は装備欄をチェックした。
装備箇所と装備アイテムの名称が表示されている。
頭:なし
胴:服
腕:なし
足:シューズ
武器:ロングソード
盾:なし
装備していない場所は〈なし〉っと。
おもむろに腰に下げている剣を抜き放つと刀身を確認した。
ロングソード:片手剣
刀身80センチ、柄の長さが20センチ程の片手で扱うことの出来る剣だ。
「ロングソードは普通に西洋の片手剣やね」
『確かに、鉈の延長みたいなモンやな』
『だな』
『え、剣ですよね?』
ファンタジー好きの俺と大福さん、刀剣から近代兵器マニアのレンさんの物知り風な会話にシンくんが疑問の声を上げる。
『西洋の剣は切るより断つことに向いてる。切れ味が良く突き刺すこともできる鉈と思えば良い』
レンさんの補足は分かり易くて完璧でした。
「ロングソードってのは片手で持てる少し刀身が長めの剣、だから〈ロングソード〉ね」
剣名の由来もついでに補足したけどこれは蛇足か。
でもこういう武器ってファンタジースキーとしてはやっぱり感動してしまう。
……さすがにこんなもんで先程のジャンボウシガエルを狩ろうだなんて思わないけど。
『たぶんシンくんが想像してる西洋剣はクレイモアやな。アレは両手剣で諸刃やけど、刃が鋭く切る事を目的に作られとる』
ちなみにロングソードをそのまま大型化して両手持ちにしたらツーハンドソードになる。
ツヴァイハンダーはツーハンドソードのドイツ語読みの日本語訛り。
ドイツ語での正しい読みは……なんだっけ?
『せやけど、どうせならバスタードソードが良かったな』
『確かに、両手でも使えるバスタードソードの方が使い勝手は良いな』
柄の長いロングソードだしね、バスタードソード。
刀身はロングソードと10センチ前後しか変わらないので、片手でも両手でも使用でき〈片手半剣〉とも呼ばれている。
カテゴリーとしては片手剣/両手剣ってところか。
『アイテムは薬草3つとお金が銀貨5枚しかありませんね』
刀剣談義から離れたシンくんはアイテム欄を確認しはじめたようだ。
薬草:3
銀貨:5
『所持金が500カパーって事は銀貨1枚100カパーってことでええんかな?』
『そうじゃないか?』
大福さんの認識にレンさんが同意。
たぶんそれで合ってそうだ。
おやつは一人500カパーまでですね、わかります。
先生、薬草はおやつに含まれますか?
眼鏡を掛けた美人教師が脳裏に現れ『含まれますん♪』と、お茶目に言われてしまった。
どっち?
てかどこから湧いて出た眼鏡ボイン先生。
『とりあえずこんなものか。今知りえる情報は大体出揃っただろうし、ひとまず集まらないか?』
『ですね。もう真っ暗だし宿をとらなきゃですね』
『『「え?」』』
『どうかしました?』
シンくん、今何て言った?
「真っ暗?」
『ですよ? 星がたくさん光っててすごく綺麗ですよ! こんなの東京じゃまず見れませんから感動ものです!』
『ちょう待て、こっちはまだ明け方やぞ!?』
『こっちはもうすぐ日が沈むな』
『あ、そうなんですか?』
「おい……」
驚愕している俺達に、あっけらかんと返事をするシンくん。
まだ事の重大性に気付いていない様子だ。
『シン、時差はわかるか……?』
『それくらい知ってますよ?』
『いや、たぶんシンくんわかってへんで……』
『なにがです?』
『いいかシン、よく聞け。仮に俺達が今居るここが経度0度として、時差ってのは緯度1度の違いで4分の差だ。距離にして111キロ。俺と大福さん、お前とねこさんでは180度、恐らく2万キロ近く離れている可能性がある…』
『……う…あ…!?』
ここでシンくんが重大性に気が付いた。
「ちなみにこっちは真昼間だから、俺とシンくんが丁度足の裏を合わせてる状態か。ブラジルのシンくん聞こえますかー? なんてね……」
星の反対側だもんな。
さすがに乾いた笑いしかでてこねーよ……。
『見事に全員バラけたモノだ。……まずシン、今どこに居る? 街の中か? 外か?』
『大きな壁の内側です。酒場の裏手みたいなところです』
『そうか、なら大丈夫だな。後はならず者などに気をつけて出来る限り人気のある場所を意識して行動しろ』
『は、はい!』
レンさんの緊迫した声に緊張の色を帯びて返事をしたシンくん。
真夜中で森の中とかだったらそらやばいもんな…。
てかアレ?
日が沈むのに魔力極振りな上に戦闘スキルのないノービス(初心者)とか、レンさんが一番危ないんじゃね?
「レンさんは大丈夫なの!?」
『俺は近くに町が見えるから今そこへ向かっている』
『なら大丈夫そうやな…』
大福さんの安堵の声。
「大福さんも一先ず人の大勢いる場所を目指そう。気をつけてね」
『ねこさんもな』
こうして俺たちは行動を開始した。
異世界ものって普通皆一緒の場所に飛ばされるもんだろうが、何でよりにもよって徒歩じゃどうにもならないところに飛ばされてるんだよ!
ボーナススキルにワープが無いのが本気で痛い……。
頭上には夏を感じさせる日差しの強さ。
川の方から風が吹くと、初夏を感じさせる冷たさと共に草と水の香りを運んできた。
地面を踏みしめると、靴底がジャリっと音をさせた。
顔にはヘッドマウントディスプレイの感覚は無く、周囲にはアスファルトや排気ガスの臭いなんて何処にも無い。
逆に先程まで着ていた部屋着ではなく、外出用の普段着にスニーカーとラフな格好、そして腰には一振りの片手剣だけが腰のベルトに刺さっていた。
「なんぞこれ……?」
ただ呆然と目の前に流れる大きな川を見つめてつぶやいた。
VRゲーっていつからフルダイブ型になったんだ?
唐突過ぎる状況に、頭が全く追い付かない。
『わー、超リアルー! 腰の剣なんて本物みたいですよ!』
『ちょ、おま、リアルってレベルやないやろ!?』
すると、どこからともなく突然シンくんと大福さんの声が聞こえてきた。
それに反応して辺りを見回すも、大福さんやシンくんの姿だって何処にも無い。
イヤホンの類を付けてはいないが、周囲の風の音なんかよりも鮮明に聞こえる。
『一体、これはどういうことだ……?』
今度はレンさんの驚愕が聞こえたが、やはりその姿も無い。
なんだ、声が直接頭に流れてくるこの感覚は?
念のためにと川とは反対側、街道を挟んで木々が生い茂る森の中を覗き込むも姿は見当たらない。
人の姿は見当たらなかったが、見当たってはいけないモノを見つけてしまいゾっとする。
カエルだ。
それもただのカエルじゃない。
体高2メートルは優にあろう紫色のファンシーカラーな巨大ウシガエル。
カエルは口に入るものなら何でも飲み込む貪欲な生物。
そんなのが2メートルともなると、人だって丸のみにしかねない。
幸い距離は離れていたため気付かれてはおらず、襲われる前にと慌てながらも静かに街道まで戻る。
そして早歩きでその場から離れた。
この分だと川にも近付かない方が無難そうだ。
『声だけは届いている様だが、皆無事か?』
『こっちは問題無いよ』
『右に同じです』
「俺も一応は……」
先程のドデカカエルに更に頭が混乱したが、一応正気は保てている……はず……かも?
「まさか、異世界ってやつか……?」
『いやいやいや、いきなり異世界とか藪からポールやろ』
「んふっ」
大福さんの唐突すぎるルー語に、思わず鼻から息が漏れる。
そしてその音が巨大ウシカエルに聞かれたらと、手のひらに変な汗をかく。
「一応集団催眠の可能性もあったりなかったり?
『集団催眠って言うか、4人同時に同じ夢を見てる感じですね』
「そうそれ」
俺の言い間違いを修正してくれるシンくん。
『せやけど夢にしてはちゃんと試行して喋れとるし、眠ってる間に知らん場所に置いてかれたって方がまだ現実的やないか?』
『眠っている間に変な場所に連れてこられた可能性か? ……4人同時となると流石に混沌無形にすぎるな。第一、俺達はただの一般人だ、どこの誰だか知らんがそんな大掛かりなことをする理由がない』
大福さんの指摘にレンさんが思案するも、すぐに発言を否定した。
そうなるともう、何らかの力が働いて異世界に飛ばされたとしか思えない。
そもそもあんなバカでかいカエルを見せつけられると、催眠術とか超スピードなんてちゃちなもんじゃあ決して無い。
本物のファンタジーの片りんを味わったぜ……。
って落ち着け落ち着け、ポルナってる場合でもない。
何せ山から熊が下りてきたレベルの命の危機がすぐ近くにあるのだ、まずは異世界に来たかもしれない可能性を皆に伝えることが重要だ。
「けどさぁ、直ぐ近くで2メートルのウシガエルを見ると、流石に異世界一択じゃね?」
元の世界に30センチ近いおたまじゃくしは居ても、2メートルなんてバカでかいカエルは存在しない。
動物好きな俺が言うんだ、まず間違いない。
『2メートルのカエルて、流石にそんなん居たらやば過ぎやろ……』
「それがちょっと森を覗き込んだら普通に居るんだからしょうがないでしょ……」
『ねこさんは直ぐにその場から離れることをお勧めするぞ』
「大丈夫、もう離れた後だから」
一応普通の人よりかは危機認識感覚はある方なので、その辺はご安心あれ。
『てことは……、異世界来たあああああああああああああ!』
『『「うおっ!?」』』
3人が状況把握に努めている中、最年少者のシンくんが唐突に大声で叫ぶ。
心臓に悪いからやめてくれ……。
『異世界ですよ異世界! 僕ずっと夢見ていたんですよ!』
『シンくん落ち着き。確かにホンマの異世界やったらワシも願ったり叶ったりやが、まずは安全の確保が最優先やで』
『本当に異世界だというならなおさらだ。浮かれていると死ぬぞ』
「いやホント、レンさんの言う通り。腰の剣一本で体高2メートルオーバーのウシガエルと戦って勝てると思う?」
『丸のみにされたら剣なんぞあっても振れんからな。下手したら抜く前に乙るわ』
格闘技者である大福さんの真っ当な解説を聞きながら、周囲を警戒しながら大丈夫そうなので木陰に入る。
日差しが遮られると、途端に暑さから解放される。
『だが、どうも全員別々の場所に居るようだな』
「そうみたいね、なんで会話出来てるのか知らんけど。一応みんな身体とか異常は無い?」
若干現実逃避気味に空を見上げると、視界の片隅に浮いている見慣れないものが目に留まる。
丸い何か……?
その丸いモノに意識を集中すると、突然目の前の空間にウィンドウらしきものが立体映像のように開いた。
一ノ瀬俊夫
人 男 24歳
ベースLv1
ノービスLv1
HP:140
MP:15
筋力:30
体力:1
敏捷:71
魔力:1
ステータスポイント:0
ジョブスキル▼
ジョブスキルポイント:0
ボーナススキル▼
ボーナススキルポイント:1
装備▼
アイテム▼
所持金500カパー
「に”ゃ!?」
『どうしたねこさん!?』
『さっきのカエルが追ってきたか!?』
『大丈夫ですか!?』
猫好きが高じてというか拗らせすぎて驚くと〝に”ゃ〟と言ってしまう癖が飛び出てしまった。
人前でこの声を出すのなんて初めてなので恥ずかしすぎる。
「あー、いやごめん大丈夫。みんな、視界の右上にアイコンみたいなの無い?」
『アイコン?』
『あぁ、これか?』
『なんでしょう?』
『『『うわっ!?』』』
どうやらみんなの前にもウィンドウのようななにかが開いたようだ。
「ステータスウィンドウかな?」
『そのようだな』
『黒い逆三角のところをタッチするとスキルが見れますね』
あ、これタッチ式なんだ。
シンくんの言う通りジョブスキルの横にある▼をタッチ。
ジョブスキル△
ノービスLv1/8
〈手当Lv1〉:消費MP2
自分のHPを少量回復。
※スキル名を唱えると習得済みのスキルが使用できます。
※ノービススキルのみLvUP時に自動取得します。
『〈手当〉わ、何か光りましたよ!』
『マジで? 〈手当て〉。おお、ホンマや』
『〈手当〉、ほぅ』
「〈手当〉」
シンくんの言葉に皆がそれぞれ〈手当〉を試す。
身体が黄緑色の光りに包まれると共に暖かさを感じると、光はすぐに消えてしまった。
尻に灯せば蛍って一発芸が出来そうだ。
『なんだか本当に異世界転生モノみたいですね』
『ゲームみたいな設定の世界に飛ばされる系のあれやな』
『これは面白そうだな』
こうなるとゲーム感覚で楽しんでしまうのがゲームオタという奴だ。
『ノービスのジョブが1/8で残りの未修得スキル7つと言うことは、ノービスのジョブはLv8までの様だな』
「みたいね」
ノービススキルは他にもあるが、すべて灰色になっており、灰色になっている残り7個のスキルは現在は使用不可なようだ。
レンさんの言葉にふんふんとうなずきながらジョブスキルの横にある△を再びタッチすると、ジョブスキルの項目が閉じた。
そしてみんなの話題はボーナススキルへ。
ボーナススキル▽
ボーナススキルポイント:1
※ベースレベルが上昇するとスキルポイントを獲得出来ます。
※ボーナススキルのポイントはいつでも振りなおしが可能です。
ざっと見た限りスキルの種類は50以上もあり、そのどれもがあると便利そうなものばかりだった。
ウィンドウのスキル欄からスキル名に指を添えると、大まかな説明がポップ表示される。
実に親切設計である。
『ボーナススキル多いですね』
『〈鑑定〉はこの手の異世界物でお約束やな。〈言語/人族共用語〉に〈獲得経験値増加〉に〈アイテムドロップ率UP〉〈カードドロップ率UP〉? カードってなんやろ?』
「んー、アレじゃない?装備アイテムに着けると特殊能力が付与されるとかの」
『あぁ、EE9のマテリアルオーブみたいなもんか』
『EE6の召喚符みたいなモンスターを呼び出すアイテムかもしれませんよ』
『そっちの線もあるなぁ』
「まぁ拾ってからのお楽しみやね。他には状態異常耐性系に感情操作系なんてあんのか」
『感情操作系は自分限定ですね。なんに使うんですか?ねレベルを上げたらどうなるんでしょう?』
『〈詠唱短縮Lv1〉…〈MP回復量増加Lv1〉…〈MP自動回復量増加Lv1〉…〈HP回復量増加Lv1〉…〈ジョブ追加Lv1〉…〈筋力追加ボーナスLv1〉…ワープの類は無さそうだな』
真面目なレンさんは俺達のようにレベルを端折ったり系統でくくったりせず、一つ一つ入念に確認している。
レンさんの発声に若干の乱れが混じってるのは歩きながらだからか?
「瞬間移動系が無いのは痛いなぁ」
『見落としがあるかもしれん。皆も一度チェックしてくれ』
レンさんの指示に皆で再度確認をしたが、やはりワープの類はなかった。
『システムはこれまでのEEシリーズとは違うみたいですね』
『EEの知識ではどうにもならんか』
『EEオンラインと同じシステムかもしれんが、まだキャラメイクしかしていないから分からんな。まぁその辺は手探りで行くしかないだろう』
「んで、装備はロングソードのみ、と」
スキルチェックはひとまず置いておくことにし、次は装備欄をチェックした。
装備箇所と装備アイテムの名称が表示されている。
頭:なし
胴:服
腕:なし
足:シューズ
武器:ロングソード
盾:なし
装備していない場所は〈なし〉っと。
おもむろに腰に下げている剣を抜き放つと刀身を確認した。
ロングソード:片手剣
刀身80センチ、柄の長さが20センチ程の片手で扱うことの出来る剣だ。
「ロングソードは普通に西洋の片手剣やね」
『確かに、鉈の延長みたいなモンやな』
『だな』
『え、剣ですよね?』
ファンタジー好きの俺と大福さん、刀剣から近代兵器マニアのレンさんの物知り風な会話にシンくんが疑問の声を上げる。
『西洋の剣は切るより断つことに向いてる。切れ味が良く突き刺すこともできる鉈と思えば良い』
レンさんの補足は分かり易くて完璧でした。
「ロングソードってのは片手で持てる少し刀身が長めの剣、だから〈ロングソード〉ね」
剣名の由来もついでに補足したけどこれは蛇足か。
でもこういう武器ってファンタジースキーとしてはやっぱり感動してしまう。
……さすがにこんなもんで先程のジャンボウシガエルを狩ろうだなんて思わないけど。
『たぶんシンくんが想像してる西洋剣はクレイモアやな。アレは両手剣で諸刃やけど、刃が鋭く切る事を目的に作られとる』
ちなみにロングソードをそのまま大型化して両手持ちにしたらツーハンドソードになる。
ツヴァイハンダーはツーハンドソードのドイツ語読みの日本語訛り。
ドイツ語での正しい読みは……なんだっけ?
『せやけど、どうせならバスタードソードが良かったな』
『確かに、両手でも使えるバスタードソードの方が使い勝手は良いな』
柄の長いロングソードだしね、バスタードソード。
刀身はロングソードと10センチ前後しか変わらないので、片手でも両手でも使用でき〈片手半剣〉とも呼ばれている。
カテゴリーとしては片手剣/両手剣ってところか。
『アイテムは薬草3つとお金が銀貨5枚しかありませんね』
刀剣談義から離れたシンくんはアイテム欄を確認しはじめたようだ。
薬草:3
銀貨:5
『所持金が500カパーって事は銀貨1枚100カパーってことでええんかな?』
『そうじゃないか?』
大福さんの認識にレンさんが同意。
たぶんそれで合ってそうだ。
おやつは一人500カパーまでですね、わかります。
先生、薬草はおやつに含まれますか?
眼鏡を掛けた美人教師が脳裏に現れ『含まれますん♪』と、お茶目に言われてしまった。
どっち?
てかどこから湧いて出た眼鏡ボイン先生。
『とりあえずこんなものか。今知りえる情報は大体出揃っただろうし、ひとまず集まらないか?』
『ですね。もう真っ暗だし宿をとらなきゃですね』
『『「え?」』』
『どうかしました?』
シンくん、今何て言った?
「真っ暗?」
『ですよ? 星がたくさん光っててすごく綺麗ですよ! こんなの東京じゃまず見れませんから感動ものです!』
『ちょう待て、こっちはまだ明け方やぞ!?』
『こっちはもうすぐ日が沈むな』
『あ、そうなんですか?』
「おい……」
驚愕している俺達に、あっけらかんと返事をするシンくん。
まだ事の重大性に気付いていない様子だ。
『シン、時差はわかるか……?』
『それくらい知ってますよ?』
『いや、たぶんシンくんわかってへんで……』
『なにがです?』
『いいかシン、よく聞け。仮に俺達が今居るここが経度0度として、時差ってのは緯度1度の違いで4分の差だ。距離にして111キロ。俺と大福さん、お前とねこさんでは180度、恐らく2万キロ近く離れている可能性がある…』
『……う…あ…!?』
ここでシンくんが重大性に気が付いた。
「ちなみにこっちは真昼間だから、俺とシンくんが丁度足の裏を合わせてる状態か。ブラジルのシンくん聞こえますかー? なんてね……」
星の反対側だもんな。
さすがに乾いた笑いしかでてこねーよ……。
『見事に全員バラけたモノだ。……まずシン、今どこに居る? 街の中か? 外か?』
『大きな壁の内側です。酒場の裏手みたいなところです』
『そうか、なら大丈夫だな。後はならず者などに気をつけて出来る限り人気のある場所を意識して行動しろ』
『は、はい!』
レンさんの緊迫した声に緊張の色を帯びて返事をしたシンくん。
真夜中で森の中とかだったらそらやばいもんな…。
てかアレ?
日が沈むのに魔力極振りな上に戦闘スキルのないノービス(初心者)とか、レンさんが一番危ないんじゃね?
「レンさんは大丈夫なの!?」
『俺は近くに町が見えるから今そこへ向かっている』
『なら大丈夫そうやな…』
大福さんの安堵の声。
「大福さんも一先ず人の大勢いる場所を目指そう。気をつけてね」
『ねこさんもな』
こうして俺たちは行動を開始した。
異世界ものって普通皆一緒の場所に飛ばされるもんだろうが、何でよりにもよって徒歩じゃどうにもならないところに飛ばされてるんだよ!
ボーナススキルにワープが無いのが本気で痛い……。
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