四人で話せば賢者の知恵? ~固有スキル〈チャットルーム〉で繋がる異世界転移。知識と戦略を魔法に込めて、チート勇者をねじ伏せる~

藤ノ木文

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番外2話 大福の異世界散策・中編

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 狩りは順調に進んでいた。
 
 ベースLv13になり、ジョブはファイターLv7プリーストLv4に。

 セカンドジョブの方が必要経験地の入りが悪いみたいやな。
 まぁゲームではよくある話しや。
 せやけど狩りの時間はかれこれもう2時間を超える域に突入しとる。
 ええ加減切り上げんと事故るかもな。
 人間の集中力なんて長時間持続せんもんや。

「今日はこれくらいにしといたるわ」

〈アイテム収納空間〉には大量のいのししの毛皮と肉が詰まっている。

 買取屋に持っていけば引き取ってくれるらしいし、所持金も少しは回復するやろ。
 
 アイコンからステータスウィンドウを開いてボーナススキル欄を呼び出し、新たに獲得したポイントを〈人族共用語〉につぎ込む。


 山を下って町に続く道に出ようと歩いていると、下のほうから喧騒が聞こえてきた。

 ねこさんの時といい、物騒な世界やのう。

 人が魔物に襲われとったら助けたらなあかんしちょっと行ってみるか。

 山の斜面を小走りに駆け下りると、町に続く山間の道で10人程の男達が5人の少女を取り囲んで切り結んでいた。
 男達全員の称号が【野盗】になっている。
 

ファイターLv5
ファイターLv8
ファイターLv18
シーフLv11
ファイターLv9
ファイターLv12


マリアンヌ
ドワーフ 女 15歳
ファイターLv12
鉄のバルディッシュ
木のスモールシールド
鉄のチェインメイル
革のグローグ
革のブーツ

ノイエ
ドワーフ 女 18歳
プリーストLv20
鉄のメイス
木のバックラー
鉄のチェインメイル
革のグローブ
革のブーツ

ラァラ
マルモル 女 16歳
マジックユーザーLv10
木のワンド
布のローブ

ラフーラ
マルモル 女 16歳
エレメンタラーLv10
木のワンド
布のローブ

カサンドラ
ドワーフ 女 17歳
ファイターLv14
鉄のシィアー
鉄ブレスプレートチェインメイル
革グローブ
革のブーツ


シーフLv3
シーフLv5
シーフLv12
ファイターLv25
ファイターLv3
ファイターLv7


「うるぁあああああ!!!」

 坂道を下る勢いをそのままに、ワシの高速ドロップキックによるサイドアタックがファイターLv25に炸裂!
 デカっ鼻の男は面白いくらいなんの抵抗も無く、鯖折になって横へと飛んでいき、道から飛び出しそのまま鬱葱うっそうと木々が茂る山の斜面に消えていった。

「うはははは!」

 ワシの必殺〈0.1tドロップキック〉の味はどないや!

「な、何だテメェ!?」
「なんやと思う?」

 満面の笑みで逆に問い返しながら近付き、既に抜いていたロングソードをバンダナ男の視界の外から腹部に深く突き刺した。

 はい、二人目(シーフLv12)脱落。

 戦争は数だが戦闘は虚やで。

「うあああああああ!」

 ワシの後ろから雄叫びを上げて切りつけて来た細身の男の振り下ろされる剣に合わせ、(バッシュ!)と念じながら下から盾を振り上げる。
 ファイターのスキル{バッシュ〉は攻撃時に強打攻撃を放つスキルで、通常攻撃力の二倍もの力を発揮する。
 それを盾に乗せて剣を跳ね上げれば、インパクトのタイミング次第で剣は遠くへ飛んでいく。
 更に一連の流れで剣を飛ばされ無防備な男の腹にロングソードを横から振りぬくと、叩き斬られた腹から大量の血と臓物を撒き散らせながら横に倒れた。

 三人目(ファイターLv3)死亡確認。
 おっと、今のはフラグやったな。

 三人目の後ろに居たこれまた痩せた男に素早く近づくと、男は身構え直しバッシュ!と叫んで勢い良く剣の切っ先を繰り出してきた。

 まぁまぁ良い突きやがタイミングが早すぎる。
 焦り過ぎや。

 テレフォンパンチな上に途中で失速した突きを剣でなぎ払い軌道を変え、バランスを崩した男の顔面に体重を乗せた木の盾で殴りつけた。
 盾の淵が男の口にクリティカルヒット。
 飛び散る血と歯を見ながら「あ、こいつはもう流動食しか食えんやろうな」と冷静に思う。

「おごお…」

 痛みに口を押さえうずくまる男の背中に剣を突き立て永眠してもらった。

 流動食すら食わせてやれんですまんな。

「さて…」

 獰猛な笑みを浮かべて振り返ると、ワシの周辺には30秒と掛からず三人の死体が転がった。

 残りは8人。
 敵戦力の30%が損耗か、軍隊ならあと1~2人で全滅やな。

「どうしたんや、もっと楽しませろや?」

 にこやかに告げてやると、男達の顔が引きつった。

 ビビッてくれるのはありがたいが、ここから先は正直きつい。
 虚をつけたから上手くいったが流石にもう油断してはくれんやろ。
 先程のように一人一人ばらばらに向かって来てくれたらまだ何とかなるかもしれんが、数人で同時に来られると下手したら袋叩きや。

 男達はなかなか攻めて来ないが、かと言って逃げるそぶりもない。

 時間を稼がれ冷静になられるのが一番まずい。
 それにさっき蹴り飛ばしたヤツが戻ってきたら確実にアウトや…。 
 
 ワシは意を決して、一歩、また一歩と地面を踏みしめ獰猛さを演出しながら歩み寄る。

 その姿に恐れたのか、手前の髭面男が一瞬身を引くが、決意を込めた瞳で身体の重心を落とし身構えた。

 やるしかないか…!

「ぐあっ!?」

 内心の焦りを噛み殺し、剣を握る手に力を込めたとき、男の一人が頭に巨大な鎌の刃を生やして倒れ伏せた。

 大きな鎌の刃を長刀の刃の様にまっすぐ取り付けた長柄の鉈のような武器〈シィアー〉を振り下ろしたのは、栗色髪のドワーフの少女カサンドラだった。

 突然の悲鳴に反射的に後ろを振り向いた髭面男。
 そんな隙を逃す訳も無く、ワシは高速で距離を詰めると髭面男の首に死の一撃をお見舞いした!

 男の首に深々と食い込むロングソード。
 崩れ落ちる男を足の裏で蹴り飛ばし剣を引き抜き、少女達のPTを挟んで反対側に居る盗賊に向かって再び走った。

「助かったで!」

 巨大な鎌を男の頭から引き抜こうとしているカサンドラの横を通り抜けざまに礼を言うと、ラフーラ、ラァラ、ノイエの間を抜けて、マリアンヌの横に並び立つ。

「もう大丈夫や、後は任せとけ!」
「あ、ありがとうございます!」

 身体に裂傷を負い、肩で息をしながらも気丈に長柄の斧を構えるマリアンヌを庇うように前に出る。

「さぁ、皆殺しの時間やな!」

 当然これもハッタリやけどな!
 うははっ!

 だがここまできたらとことん殺りあう所存や、なんたってこいつらは重大な罪を犯したんやからな。
 

 ドワーフ娘&マルモル娘を傷つけた罪は重いで!!
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