四人で話せば賢者の知恵? ~固有スキル〈チャットルーム〉で繋がる異世界転移。知識と戦略を魔法に込めて、チート勇者をねじ伏せる~

藤ノ木文

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32話 獣の姉妹

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 まぁ結論から言うと、美少女奴隷の仲間なんて居なかった。
 
 戻ってきたベラーナさんと一緒に居たマルタという太めのおばさんに連れられ奴隷女性達の居住区画に行くと、そこには数名の女性が並んでいた。

 中にはそこそこ戦闘経験のある女性も居たが、目つきがあからさまに反抗的だったり、ガラが悪かったりするのでパスする。
 こういう女性は犯罪者が奴隷として身を落としたり、借金の形で奴隷落ちする人が多いそうだ。
 奴隷女性という括りであるならば、協調性がありそうな人も多くいる。
 しかし、そういう女性は大体が農家の出で、養えなくて身売りされた娘さんだったりするため戦闘に連れて行っても役に立たなそうな感じである。

 それが普通なんだろうけど、ここは美少女なケモ戦士や美人エルフ魔法使いが居たりするところだよね?
 俺に起こる状況が異世界モノのお約束をことごとく粉砕してくれるスタイルなんなの?

 ちなみに不幸なロリケモ幼女なんてのもここには居らず、そういう子は教養を与えてここで働かせ、自身の権利を本人に買い取らせるのがリベクさんのやり方なのだそうだ。

 奴隷商にも関わらずそんな慈善活動していれば、そら称号に【慈悲深き】なんて付くわ。 

「う~ん、ダメみたいだねぇ。よし、次は魔物舎に行こう」

 リベクさんがこちらの意見を聞くことなく踵を返し、俺達を連れて建物を出た。 
 その先には大きな倉庫の様な建物が2棟あり、正面入り口に近い倉庫の中は柵に繋がれた魔物が多く居た。

「ここは荷車を引いたり土木作業や農作業に使う魔物を扱っているところだ。馬ほど上品ではないが力が強かったり、長距離の移動に適している魔物が多い。中級以上の冒険者ともなると、必ずと言っていいほど馬車の代わりとなるこの手の魔物を所持している」

 ジスタさんの説明を聞きながら倉庫に入ってみると、仲間探しなんてそっちのけになるくらいの衝撃的な物がそこにあった。

 ちょっとした動物園どことか動物園ではお目にかかれないファンタジー世界の家畜系モンスターが何十頭と存在した。

 体高4メートル程の草食恐竜っぽいのが数頭で固まって眠っている。
 羽毛ちっくなのが生えてる。
 鳥に進化する途中感がいいなぁ。

 茶色で地味だが2メートル以上もある巨大ヒヨコが、キツツキの様に高速で餌箱を突いてる。
 ohビッグうずら。
 触りたいが突かれて大けがしそう。

 平たい甲羅から竜の様な顔と脚を出し入れする亀。
 これで尻尾に蛇が生えて居ようものならリアル玄武だ

 巨大なアリの様な昆虫の口には牙が無く、明らかに樹液を吸いますみたいになっている。
 カナブンか? その顔はカナブンなのか?

 歪なくらい腕が肥大化した5メートル巨人は、岩の様な肌を緩慢な動作で掻いていた。 
 これのちっさいのを昔のファンタジー映画で見たような気がする。
 エターナルストーリーとかそんな感じの名前のやつ。

 わーい、なにこれなにこれー!
 すっごくたーのしーい!

 動物好きとしてはお金を払ってでも堪能したい光景だ。

 次に目を向けたのは、灰色と黒茶の2頭の獣だった。
 一見、全身が体毛で覆われたケンタウロスの様な生物だ。
 首には鉄の首輪がつけられ、鎖で柵に繋ぎとめられている。
 だがその美しく愛らしい姿に目が釘付けになってしまった。


 ククテト 
 セントーラ 女 18歳
 セントーラLv8

 トトテト
 セントーラ 女 15歳
 セントーラLv17


 頭頂部にウサギのような長い耳が生えており、頭部は平面顔の卵型だが全身が犬のようなもふもふな体毛に覆われているため、上半身だけならウサギ人間だ。
 体毛の分膨らんではいるが、見た感じ人と同じサイズで女性らしい細身の体型で、腕は人よりもやや太い。
 下半身は上半身と同じ毛質で覆われた四足歩行。
 まるでウェルシュコーギーのような胴体だ。

 そして二人の違いは足の付け根からその先に見られた。
 ククテトはまるでサイのような太い脚をしており、爪先には体毛からは小さく丸みのある爪が3本覗く。
 トトテトはトラのような大型のネコ科動物のそれで、ククテトと比べると足の付け根も滑らかで、見るからに獰猛そうである。

 同じ種族みたいなのに面白いな。

 ククテトは長いまつ毛とやや下にタレた切れ長の目には艶やかで濃い青の瞳。
 腰まで届く髪と全身の体毛は汚れた白だ。
 そして上半身の大きな胸が、女性らしさを強調している。
 その眼には怯えの色を見せながらも、もう一体の子を守るように抱きしめている。

 その抱きしめられているトトテトだが、ククテトより一回り以上小さく、ショートカットに切りそろえられた髪は灰色で、体の体毛は黒い赤毛をしている。
 大きな耳はククテトの半分くらいしかなく、少し太めの眉にややたれ気味の丸い金目が、愛嬌を出していて実に可愛い。
 だがくすんだ金の瞳には、嫌悪の色が多分に含まれている。

 てか二人ともなにそのもこもこのぷりっケツと尻尾可愛い。
 お尻がまんまコーギーですやん。
 もふっていいですか?

 身を寄せ合う感じから姉妹だろうか。
 すごく良いなぁ。
 ケモナー心を存分に満足させてくれる存在が、今まさにここに居る。

 俺は2人の居る柵に近付きしゃがみ込むと、2人共怯えた表情でこちらを警戒している。
 やはりその瞳には知性の様なものが感じられた。

 ……欲しい。

 一級もふリストとしては是非確保しておきたいもふもふ美獣だ。
 誰がなんと言おうとリシア達ともふもふするべきである!

 コミュニケーションは取れるのだろうか?

「こんにちは」
「「………」」

 笑顔で声をかけるも返事こそ無いが、反応的には言葉はわからないがこちらが何かを話しかけているのがわかってる感じだ。

 俺はステータスウィンドウを開き、ボーナススキルの〈魔物共用語〉を習得して再び話しかけてみる。

「こんにちは」
「「!?」」

 お、明らかに驚いた反応をした。
〈魔物共用語〉でなら意思疎通が図れそうだ。 

「俺の名前はトシオ。君達の名前を聞かせてくれるかな?」

 2人は警戒してだんまりを続けているが、姉の方は怯えと戸惑い、妹は警戒と敵愾心てきがいしんといった感じである。
 俺は笑顔のまま辛抱強く待っていると、灰色の体毛の少女がおずおずと口を開く。

「ククテト……です……」
「ククテトね。君は?」
「………………トトテト」
「ククテトにトトテト、教えてくれてありがとね」

 怯えながらのククテトにぶっきらぼうなトトテト。
 礼を述べると、俺はリベクさんに向き直った。

「どうやら決まったようだね」
「はい。……お金足りますかね?」
「全然大丈夫! なんならもっと見ていくといいよ! と言うかもっと買ってくれると私の懐も暖かくなって助かるので是非そうしてほしい!」

 娘の旦那からどんだけ搾り取る気ですか義父さん?

 リベクさんは高笑いをしながら早速奴隷契約の時と同じように紙を取り出し、色々と書き込み、紙を空へと放り投げた。
 紙は空中で赤い炎を放ち、一瞬で燃え尽きる。

《新たな使役奴隷を獲得しました》

 視界の左端にシステムメッセージが現れすぐに消えた。

 魔物じゃないんだ。

 契約後はリベクさんの指示でジスタさんは柵を開けて彼女達を繋いでいる鎖を柵から外すと、鎖を引いてこちらに連れてきた。

 立ち上がった彼女達だが、ククテトは170センチよりも少し高く、トトテトは大体160センチ位だ。
 そんなのがぷりぷりもこもこのお尻をフリフリして歩いてくるんだからもうたまらない。

 絶対にあとでもふらせてもらおう。

 その間、俺はリベクさんに契約事項と言うか禁止事項を聞かされる。

《主人に危害を加えるな》
《主人の命令に絶対服従》
《人に危害を加えるな》
《主の命令やその家族と自身の身を守る場合のみ、3つ目の禁止を無視できる》

 まるでロボット三原則みたい。

 俺は今ので納得できたが、果たして彼女らにはどう言ったら理解できるのか?
 言語を解しても理解できるとは限らんしなぁ。

 家で留守番してる白い猫の顔を思い浮かべながら、どう言い聞かせようか思案する。

 彼女達に「危害を加えないから言うこと聞いて」と言って素直に聞いてくれれば問題はないが、俺だったら隙を突いて逃げるだろうな。
 とりあえず、言うことを聞かなければいけない状況を教えるしかない。

「えっと、俺が今日から君達を引き取ることになった。特殊な力で繋ぎとめてるので、逃げたり攻撃してきた場合、君達が苦しみ最悪死ぬことになるから、それを忘れずに行動してほしい。わかった?」

 怯えた表情でしぶしぶ頷く2人。
 信じては居ないかもだが、頷いているので言葉はちゃんと伝わっているはずだ。

「君達が俺の言うことを聞いて大人しくしている限り、俺は君達に危害を加えることは決してしないと約束する。まずは俺のPTに入ってくれ」

 2人にPT申請を送ると、少し間をおいてPTに加わったのを確認する。
 現在俺のPTにはリシアとローザ、そして新たに加わったククテトとトトテトの5人。

 ローザは一応入れていただけだが。

 まぁこれで人族共用語が二人にも機能するはずなので、会話は成立すると信じたい。
 彼女達の性格や知能などは後で確認するとして、今は用事の続きをしておこう。

「それじゃよろしくね。リシア、ローザ、俺はあっちの倉庫も見せてもらいたいから、悪いけどこの子達とここで待っててくれる?」
「はい、わかりました」
「気をつけてくださいね」
「行ってくる。二人も彼女達とここで待っててね」
 
 ククテトが頷くのを確認すると、リベクさん達に顔を向けた。 

「では隣の魔物舎を見に行こうか」
「はい」

 リベクさんに着いて行ってはみたけれど、正直俺の手に負えそうにないのがいっぱいだった。

 血走った目で涎だらだら垂らしてる牛ほどの大きさをした狼Lv64に「ほ~ら、取ってこ~い」と微笑ましく棒拾いなんてさせられるか?

 下手したら俺がしつける前に脱走し、勝手に魔物紋を発動させて死にかねない。
 勝手に死ぬぶんには良いが、リシアやローザに危害が及んだらそれこそしゃれにならん。

 他にも肉食恐竜みたいなのや、ゴテゴテと牙やら角やらを生やしている訳の分からない熊など、凶悪そうな魔物だらけだ。
 逃げ出したりしないだろうな?
 周りを見渡すと、何気に似たようなモンスターを連れている武装した男達が、物陰からこちらの様子を伺っているのが見て取れた。
 おそらくここの警備員だ。
 
 モンスターにはモンスターをって事か。

「モンスターは知性があったり生まれたときから育てられて主人を親だと思っている子は良いが、狂暴なのは自分よりも弱い主人の言うことは聞かないからねぇ~」

 俺が警備員に気付いたため、リベクさんがオーバーに困った顔を作る。

 まぁ動物園で猛獣を見るよりも迫力があって楽しめただけでも満足だが。

「捕まえて来たこの手のモンスターは、闘技場で使われる事が殆どだからな」
「男ならアレくらいビシっと飼い慣らすくらいの度量を持ちなってんだ」

 そうジスタさんが補足してくれると、横に居たベラーナさんが無茶なことを言い出す。

 お義母様の脳筋っぷりは三千世界に響き渡るで。
 てか闘技場とかあるんだ。

 すると、何かに気付いたのかリベクさんが一か所を指さす。
 その先にはダチョウの卵みたいな物体が複数、木箱に入れられていた。

「マルタ、あの卵はなにかね?」
「あれは……ハーピーの卵でございます」

 そのリベクさんにマルタさんがリストを確認して応えた。

 ハーピーは頭から胸にかけて人の女性。それ以外は鳥の魔物である。
 最近でこそ可愛い女の子のモンスター娘として扱われる作品が多いが、ガチファンタジーの知識では醜く汚い魔物である。

 逸話としては、自分の食べ残しに糞尿撒き散らして誰も食べられなくするとかいう頭の悪いのがあったような……。
 そんなのが生まれてきたら嫌だなぁ。

「トシオくん、これも持っていくといい」

 そんな俺の不安を気にせず、リベクさんが積まれた卵の一つを取り上げ薦めてきた。
 可愛い系か汚い系のどっちかわからないので断ろうかとも思ったが、ここはリベクさんを信じたほうがいいだろう。

「わかりました。お願いします」

 俺がマルタさんから卵を受け取ると、リベクさんはまたも紙を取り出し書き込むと上空へ投げる。
 紙はやはり青い炎を吹いて消え去った。

 魔物だと炎は青なんだ…。

《新たに使役モンスターを手に入れました》

《〈奴隷使い〉の称号を得ました》
《〈魔物使い〉の称号を得ました》

 ここでまさかの称号二つ抜き。

 タイミング的に契約した奴隷と魔物、合わせて5体が解放条件なのかな?

「マルタ、孵化袋を持ってきてくれ」
「はい旦那様」

 言われてマルタさんが最初に行った魔物舎に入ると、すぐに戻ってきた。
 その手には大きめの革の袋が握られている。

「魔物の卵を人工的に孵化させるにはこの袋が必要でねー。これに入れておけば2~3日で雛が孵ると思うよ?」

 そう言って俺に渡してくれた。

 あと、袋は一度使うと魔力が抜けてただの袋になるそうだ。

「雛の餌って何を与えればいいのですか?」
「餌は生肉で大丈夫ですよ。中には人と同じモノを好む子もいるみたいねぇ」
「わかりました、ありがとうございます」

 こうして2人とハーピーの卵をお迎えした俺たちは、リベクさんに白金貨一枚を丸々渡す。
 それからジョゼットさんに挨拶をしに行くと、ここでも熱い母娘の抱擁が行われた。

 ローザの体を味わった後なだけに、不覚にもその間に挟まれたいと思ってしまった。
 

  

――――――――――――――――――――――――――
 やっと出したかったケモっ娘キャラの登場です。
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