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93話 みんな大好き黄色い食べ物
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帰宅後、吉乃さんに家族の紹介をしてみたところ、静かに呼吸を荒げる地味眼鏡美少女女子高生なる物体を目の当たりにさせられた。
上気した頬の赤味に少しエロさを感じるが、冷静に観察していると、妻達の誰かを見ては俺に目を向け、別の誰かを見るとまた視線が俺に戻ってきた。
どうやら全員と関係を持っていることで、脳内で何かを拗らせているご様子だった。
今からこんなに拗らせていていいのか女子高生……。
更にメイド服姿で家の掃除をしていたリシアを目撃する。
「スコティッシュの猫耳メイドとかやばくないですか!? しかもすごい美少女です、尊すぎます、二人の馴れ初めとか是非聞かせてください!」
目を血走らせて寄って来ないでほしい。
鼻息もかかってるし。
てか、リシアとのなれそめなんて、リシアにとってある意味黒歴史なので言わぬが吉だな。
「ほら、風呂はこっちだから付いてきて」
質問を敢えて無視して風呂場に連れて行くと、風呂の沸かし方を実演して見せそのまま置いてきた。
本当に彼女は16歳なのか?
俺が16の頃はこんなにはっちゃけてなかったぞ。
「あの方は大丈夫なのでしょうか? その、色々と」
ミネルバと全く同じことを心配そうに口にするリシア。
「俺の〝猫好き〟みたいに、彼女は〝恋愛好き〟をこじらせてるから気にしないであげて」
「トシオ様の世界では、そのような持病を誰しもがお持ちなのですか?」
悶える吉乃さんを生暖かい目で見つめていたリシアによる容赦のない言葉に、居たたまれなさから俺の胸まで苦しくなる。
なぜに人助けをした俺まで病人扱いされにゃならんのか。
じっとしていると今の言葉が脳内でリフレインされ続けそうなので、リシアには吉乃さんの着替えの手配を頼み、リビングの掃除を終えた皆を労いながら、買ってきたプリンを配っていく。
リシアが戻ってきたところで、みんな揃っていただきます。
俺の分は眼鏡の肥やしとして消えたので、お茶を飲んで眺めていると、リシアがプリンの乗った匙をこちらに差し出してくれた。
あーんっ……おいちい!
最愛の妻から〝あーん〟をしてもらえた喜びに、プリンネタを脳内で垂れ流す。
交互に食べるつもりなのか、リシアが二匙目を差し出してくれた。
プリンは彼女の好物でもあるため、これは辞退する。
「ありがと、でもリシアの分がなくなっちゃうから気にせず食べてね」
些細なことだが、気遣ってくれるその優しさだけで、心が暖かさで満たされる。
はぁ可愛い。
美味しそうにプリンを頬張る女性達を眺めながら部屋を見回す。
ユニスにプリンを食べさせてもらっていた幼鳥形態のミネルバが、初めて食す甘未を口に入れる度に羽を大きく広げ、妙なテンションで荒ぶった。
普段は大人しいだけに、ユニスもこれには苦笑い。
まぁ大空の覇者様は帰ってくる前にも散々荒ぶってたけど。
「なにこれおいしー! でももう無くなっちゃった……」
ぺろりと平らげてしまったトトが、空になった容器を残念そうに見つめ、その隣では、ククが感極まってはらりと涙を流す。
「これほど美味しい物が食べられるなんて……。ご主人様には引き取って頂いてからと言うもの、日々が幸福すぎてこれが夢なのではないかと時々怖くなります」
そこまで幸せと想って頂けているなら、旦那冥利に尽きるというものだ。
「話には聞いていましたけど、〝テレンスのお店〟のプティングは絶品でしゅね」
「美味しいです……」
フィローラとセシルが、まるで口の中で成分を分析するような真剣な面持ちで味わった。
けど、いくら美味くてもこれはプリン。
それをこれほどまでに喜ぶという事は、きっと何かやばい薬物が入っているに違いない。
その場合は異世界人の俺には通用されないが、現地人の彼女達には効果抜群の白い粉的ななにかである。
テレンスさんごめんなさい。
失礼過ぎる思考に、パン屋の店主の顔を思い浮かべながら謝罪しておく。
次に視界に入ったモリーさんとモティナの指には、どこかのムチムチぷにょぷにょダークエルフとそっくりな指輪が鈍く光る。
あれってただの流行り物じゃなかったのね。
当然セシルが指輪を外した時から気にはなってたけれど、今の関係を壊したくないので敢えて言及は避けてる。
……私、気になります!
そうして視線を止めることなくリビングを眺め終え、次に収納袋様の中にある残り2つのプリンに意識が向く。
あとは別室で休息中のメリティエとイルミナさんにも届けてあげたいが、まだそっとしておいた方が良いか判断しかねる。
でもこの季節だし、食べ物が痛むと勿体ないなぁ。
冷蔵庫があったら良いんだけど。
確か電気冷蔵庫が無い時代は木箱みたいなのに氷の塊を入れて冷やしてたんだっけ?
シンくんが知識チートをしようとしたら大抵のものがあると言っていたし、木製冷蔵庫もこの世界にならあるかもしれないな。
もし無くても特注で頼むか。
今の時期だと保存状態にも影響が出まくりだし、なにより冷えたものがある方が快適だ。
ローザの為にも。
保存と言えば、収納袋様にナマモノを入れ続けた場合の品質劣化を見る性能実験をまだしてなかったなぁ。
「ちょっとお出かけ」
「またですか?」
「危険なことはしないから大丈夫だよ」
心配そうに問うてくるリシアの頭を、手のひらで軽く触れながら後ろを通り、玄関へ向かう。
そしてワープゲートを開くと、広い湖面と痛々しい戦闘の爪痕が残るクレアル湖の畔へ足を踏みだした。
さっそく収納袋様に腕を突っ込み、スリープゴートの肉を掴む。
真夏のこの時期に2週間以上放置してそのままの生肉を、戦々恐々の面持ちで取り出してみたが、特に変色した様子もなく異臭も放ってはいなかった。
すごいな、これなら食品の運搬事業とかでも食っていけるぞ!
収納袋様マジ有能!
ボーナススキルさんありがとー!
いやぁ良かった、真っ黒でぐちゃぐちゃに変色した異臭を放つ〝肉だったモノ〟を掴むハメにならなくて本当に良かった……。
手に強烈な異臭を放つ汚物で汚れずに済んだ事に安堵するも、心情的には2週間も放置された生肉なんて食べたくはないので、これでもかと力いっぱい湖に投げ捨ててやった。
ザバアアアアアアン!
湖の中から巨大な、そう、体長10メートルを優に超える巨大すぎる魚が飛び跳ね、空中で肉に食らいついた。
着水の水しぶきを避けるように慌ててゲートの中に退避する。
でかい湖だとは思っていたけどあんなの居るんだ……、ファンタジー世界は湖の生物も半端無いなぁ。
水辺には極力近付かない様にしようと心に誓ながらリビングに戻ると、風呂上りの吉乃さんが居た。
丁度いいかと、俺がこの世界で知り得た知識や経験した事を、リシア達の補足も交えて真面目に説いた。
久々のお風呂で緩んだ気持ちを硬化させてしまう結果となったが、知っておいてほしい事である。
特にこの世界では俺たちでも簡単に死ぬこと、それに自分の行動で多くの人間の運命が変わる可能性を。
そして、この国の勇者であるアキヤと敵対した経緯のあと、殺害したことも話しておいた。
「戦わなくて済むならそのための努力や策は講じるけど、それでも家族の身に不幸が降りかかるなら例え人間相手でも戦うつもりだ。今後もしそうなった場合は君だけでも逃げてくれて構わないから」
沈痛な面持ちで吉乃さんに告げると、納得した様子で頷いてくれた。
周りの空気が少し重たくなるも、それを払拭するようにユニスが手を挙げ、当面の問題を話題に振ってきた。
「ところで、勇者殿が逃亡などして大丈夫なのでしょうか?」
「勇者の有用性はみんなの冒険者カードを見るだけでもわかると思うよ、勇者を連れたレベル上げが出来なくなるだけでも、国からすれば大きな損失じゃないかな。もしかすると新たに勇者召喚するかもだけど……。勇者なんてそう易々と呼べるものなのかな?」
「一国が勇者召喚に必要な魔力を集めるのに、数十年から百年はかかるとも言われています……」
「私はダンジョンコアが必要とか本で読んだことがありましゅ」
「百年に一度の召喚で呼ばれた勇者が逃亡では、ウィッシュタニアも血眼で探していそうですね」
セシルとフィローラが俺の疑問に答えると、リシアが頬に手を当てながら小首をかしげた。
吉乃さんが逃げ出した原因を考えると、隣国の王子とやらは野心家で好戦的と見ていいだろう。
そんな国に万が一彼女が連れ戻された場合、アキヤの死亡が知られれば、この国に戦争を仕掛けてくると予想できる。
それも最上級職の兵を大量に引き連れてだ。
なので彼女を隣国へ返すって選択肢は無い。
まぁ元からそんな選択肢は無かったけど。
それと今更だが、フィローラの噛み芸はアレだな、幻術でマルモル種の姿をしてるだけで、本来の顔はキツネ娘の獣顔のままだ。
構造が人の口とはかなり違っているので発音し難いのかもしれない。
どういう原理なのか触れても全然わからないのがすごいなぁ。
本気で関係無さすぎる気付きなため、今は脇に置き思考を戻す。
もし戦争にでもなれば大勢の無関係な人が死ぬことになる。
それを避けるためには俺達のレベルを上げ、吉乃さんを守れるだけの力を持たなければならない。
いや、守る以前に余計な干渉すら及ぼせないだけの戦力が必要だ。
そのためにも戦力は多い方が良いに決まっているのだが、こんな時にレスティー達が居ないのがすごく痛い。
今日の半日だけで、俺の周囲が目まぐるしく変動し過ぎている。
こんなことなら救助した冒険者なんてワープゲートでライシーンに飛ばしてやれば良かったな。
身バレを考えると、あの時はああするより他はなかったので今更か。
だが、まだ戦力拡充を図る手段はある。
レスティー達が居ないのならほかの人をPTに取り込めばいい。
真っ先に思い浮かぶのはモーディーンさん達だ。
彼らなら吉乃さんを見捨てることも街が戦禍にさらされる危機を黙って見過ごすこともしないはず。
彼らの良心に付け入るようで申し訳ないが、ここは助けを求めるべきであろう。
見返りは……俺の所持金と高速パワーレベリングでなんとか引き受けてもらえないだろうか?
「リシア、ちょっとモーディーンさんの所へ行ってくる。吉乃さん、出かける準備して」
「は、はい」
「はい、行ってらっしゃい」
行き場所を告げたせいか、リシアは今度は心配した様子を見せなかった。
上気した頬の赤味に少しエロさを感じるが、冷静に観察していると、妻達の誰かを見ては俺に目を向け、別の誰かを見るとまた視線が俺に戻ってきた。
どうやら全員と関係を持っていることで、脳内で何かを拗らせているご様子だった。
今からこんなに拗らせていていいのか女子高生……。
更にメイド服姿で家の掃除をしていたリシアを目撃する。
「スコティッシュの猫耳メイドとかやばくないですか!? しかもすごい美少女です、尊すぎます、二人の馴れ初めとか是非聞かせてください!」
目を血走らせて寄って来ないでほしい。
鼻息もかかってるし。
てか、リシアとのなれそめなんて、リシアにとってある意味黒歴史なので言わぬが吉だな。
「ほら、風呂はこっちだから付いてきて」
質問を敢えて無視して風呂場に連れて行くと、風呂の沸かし方を実演して見せそのまま置いてきた。
本当に彼女は16歳なのか?
俺が16の頃はこんなにはっちゃけてなかったぞ。
「あの方は大丈夫なのでしょうか? その、色々と」
ミネルバと全く同じことを心配そうに口にするリシア。
「俺の〝猫好き〟みたいに、彼女は〝恋愛好き〟をこじらせてるから気にしないであげて」
「トシオ様の世界では、そのような持病を誰しもがお持ちなのですか?」
悶える吉乃さんを生暖かい目で見つめていたリシアによる容赦のない言葉に、居たたまれなさから俺の胸まで苦しくなる。
なぜに人助けをした俺まで病人扱いされにゃならんのか。
じっとしていると今の言葉が脳内でリフレインされ続けそうなので、リシアには吉乃さんの着替えの手配を頼み、リビングの掃除を終えた皆を労いながら、買ってきたプリンを配っていく。
リシアが戻ってきたところで、みんな揃っていただきます。
俺の分は眼鏡の肥やしとして消えたので、お茶を飲んで眺めていると、リシアがプリンの乗った匙をこちらに差し出してくれた。
あーんっ……おいちい!
最愛の妻から〝あーん〟をしてもらえた喜びに、プリンネタを脳内で垂れ流す。
交互に食べるつもりなのか、リシアが二匙目を差し出してくれた。
プリンは彼女の好物でもあるため、これは辞退する。
「ありがと、でもリシアの分がなくなっちゃうから気にせず食べてね」
些細なことだが、気遣ってくれるその優しさだけで、心が暖かさで満たされる。
はぁ可愛い。
美味しそうにプリンを頬張る女性達を眺めながら部屋を見回す。
ユニスにプリンを食べさせてもらっていた幼鳥形態のミネルバが、初めて食す甘未を口に入れる度に羽を大きく広げ、妙なテンションで荒ぶった。
普段は大人しいだけに、ユニスもこれには苦笑い。
まぁ大空の覇者様は帰ってくる前にも散々荒ぶってたけど。
「なにこれおいしー! でももう無くなっちゃった……」
ぺろりと平らげてしまったトトが、空になった容器を残念そうに見つめ、その隣では、ククが感極まってはらりと涙を流す。
「これほど美味しい物が食べられるなんて……。ご主人様には引き取って頂いてからと言うもの、日々が幸福すぎてこれが夢なのではないかと時々怖くなります」
そこまで幸せと想って頂けているなら、旦那冥利に尽きるというものだ。
「話には聞いていましたけど、〝テレンスのお店〟のプティングは絶品でしゅね」
「美味しいです……」
フィローラとセシルが、まるで口の中で成分を分析するような真剣な面持ちで味わった。
けど、いくら美味くてもこれはプリン。
それをこれほどまでに喜ぶという事は、きっと何かやばい薬物が入っているに違いない。
その場合は異世界人の俺には通用されないが、現地人の彼女達には効果抜群の白い粉的ななにかである。
テレンスさんごめんなさい。
失礼過ぎる思考に、パン屋の店主の顔を思い浮かべながら謝罪しておく。
次に視界に入ったモリーさんとモティナの指には、どこかのムチムチぷにょぷにょダークエルフとそっくりな指輪が鈍く光る。
あれってただの流行り物じゃなかったのね。
当然セシルが指輪を外した時から気にはなってたけれど、今の関係を壊したくないので敢えて言及は避けてる。
……私、気になります!
そうして視線を止めることなくリビングを眺め終え、次に収納袋様の中にある残り2つのプリンに意識が向く。
あとは別室で休息中のメリティエとイルミナさんにも届けてあげたいが、まだそっとしておいた方が良いか判断しかねる。
でもこの季節だし、食べ物が痛むと勿体ないなぁ。
冷蔵庫があったら良いんだけど。
確か電気冷蔵庫が無い時代は木箱みたいなのに氷の塊を入れて冷やしてたんだっけ?
シンくんが知識チートをしようとしたら大抵のものがあると言っていたし、木製冷蔵庫もこの世界にならあるかもしれないな。
もし無くても特注で頼むか。
今の時期だと保存状態にも影響が出まくりだし、なにより冷えたものがある方が快適だ。
ローザの為にも。
保存と言えば、収納袋様にナマモノを入れ続けた場合の品質劣化を見る性能実験をまだしてなかったなぁ。
「ちょっとお出かけ」
「またですか?」
「危険なことはしないから大丈夫だよ」
心配そうに問うてくるリシアの頭を、手のひらで軽く触れながら後ろを通り、玄関へ向かう。
そしてワープゲートを開くと、広い湖面と痛々しい戦闘の爪痕が残るクレアル湖の畔へ足を踏みだした。
さっそく収納袋様に腕を突っ込み、スリープゴートの肉を掴む。
真夏のこの時期に2週間以上放置してそのままの生肉を、戦々恐々の面持ちで取り出してみたが、特に変色した様子もなく異臭も放ってはいなかった。
すごいな、これなら食品の運搬事業とかでも食っていけるぞ!
収納袋様マジ有能!
ボーナススキルさんありがとー!
いやぁ良かった、真っ黒でぐちゃぐちゃに変色した異臭を放つ〝肉だったモノ〟を掴むハメにならなくて本当に良かった……。
手に強烈な異臭を放つ汚物で汚れずに済んだ事に安堵するも、心情的には2週間も放置された生肉なんて食べたくはないので、これでもかと力いっぱい湖に投げ捨ててやった。
ザバアアアアアアン!
湖の中から巨大な、そう、体長10メートルを優に超える巨大すぎる魚が飛び跳ね、空中で肉に食らいついた。
着水の水しぶきを避けるように慌ててゲートの中に退避する。
でかい湖だとは思っていたけどあんなの居るんだ……、ファンタジー世界は湖の生物も半端無いなぁ。
水辺には極力近付かない様にしようと心に誓ながらリビングに戻ると、風呂上りの吉乃さんが居た。
丁度いいかと、俺がこの世界で知り得た知識や経験した事を、リシア達の補足も交えて真面目に説いた。
久々のお風呂で緩んだ気持ちを硬化させてしまう結果となったが、知っておいてほしい事である。
特にこの世界では俺たちでも簡単に死ぬこと、それに自分の行動で多くの人間の運命が変わる可能性を。
そして、この国の勇者であるアキヤと敵対した経緯のあと、殺害したことも話しておいた。
「戦わなくて済むならそのための努力や策は講じるけど、それでも家族の身に不幸が降りかかるなら例え人間相手でも戦うつもりだ。今後もしそうなった場合は君だけでも逃げてくれて構わないから」
沈痛な面持ちで吉乃さんに告げると、納得した様子で頷いてくれた。
周りの空気が少し重たくなるも、それを払拭するようにユニスが手を挙げ、当面の問題を話題に振ってきた。
「ところで、勇者殿が逃亡などして大丈夫なのでしょうか?」
「勇者の有用性はみんなの冒険者カードを見るだけでもわかると思うよ、勇者を連れたレベル上げが出来なくなるだけでも、国からすれば大きな損失じゃないかな。もしかすると新たに勇者召喚するかもだけど……。勇者なんてそう易々と呼べるものなのかな?」
「一国が勇者召喚に必要な魔力を集めるのに、数十年から百年はかかるとも言われています……」
「私はダンジョンコアが必要とか本で読んだことがありましゅ」
「百年に一度の召喚で呼ばれた勇者が逃亡では、ウィッシュタニアも血眼で探していそうですね」
セシルとフィローラが俺の疑問に答えると、リシアが頬に手を当てながら小首をかしげた。
吉乃さんが逃げ出した原因を考えると、隣国の王子とやらは野心家で好戦的と見ていいだろう。
そんな国に万が一彼女が連れ戻された場合、アキヤの死亡が知られれば、この国に戦争を仕掛けてくると予想できる。
それも最上級職の兵を大量に引き連れてだ。
なので彼女を隣国へ返すって選択肢は無い。
まぁ元からそんな選択肢は無かったけど。
それと今更だが、フィローラの噛み芸はアレだな、幻術でマルモル種の姿をしてるだけで、本来の顔はキツネ娘の獣顔のままだ。
構造が人の口とはかなり違っているので発音し難いのかもしれない。
どういう原理なのか触れても全然わからないのがすごいなぁ。
本気で関係無さすぎる気付きなため、今は脇に置き思考を戻す。
もし戦争にでもなれば大勢の無関係な人が死ぬことになる。
それを避けるためには俺達のレベルを上げ、吉乃さんを守れるだけの力を持たなければならない。
いや、守る以前に余計な干渉すら及ぼせないだけの戦力が必要だ。
そのためにも戦力は多い方が良いに決まっているのだが、こんな時にレスティー達が居ないのがすごく痛い。
今日の半日だけで、俺の周囲が目まぐるしく変動し過ぎている。
こんなことなら救助した冒険者なんてワープゲートでライシーンに飛ばしてやれば良かったな。
身バレを考えると、あの時はああするより他はなかったので今更か。
だが、まだ戦力拡充を図る手段はある。
レスティー達が居ないのならほかの人をPTに取り込めばいい。
真っ先に思い浮かぶのはモーディーンさん達だ。
彼らなら吉乃さんを見捨てることも街が戦禍にさらされる危機を黙って見過ごすこともしないはず。
彼らの良心に付け入るようで申し訳ないが、ここは助けを求めるべきであろう。
見返りは……俺の所持金と高速パワーレベリングでなんとか引き受けてもらえないだろうか?
「リシア、ちょっとモーディーンさんの所へ行ってくる。吉乃さん、出かける準備して」
「は、はい」
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行き場所を告げたせいか、リシアは今度は心配した様子を見せなかった。
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