四人で話せば賢者の知恵? ~固有スキル〈チャットルーム〉で繋がる異世界転移。知識と戦略を魔法に込めて、チート勇者をねじ伏せる~

藤ノ木文

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115話 我が家の番犬と犯罪者

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 ワープゲートを開き迷宮から納屋へと抜け出すと、今度はタンザスの村のとあるコテージにワープゲートを開いてモーディーンさん達を送り届ける。
 足を洗いに行ったトトが、なぜだかすぐに戻ってきた。
 何処にでも居そうな普通の黒い子犬を連れて。

 
 オルトロス
 オルトロス メス 0歳
 メインジョブ:オルトロスLv1
 セカンドジョブ:なし
 サードジョブ:なし


 もう生まれたのか!?

 今朝迷宮へと発つ前に納屋改装の見積もりを頼むべく、リベクさんの所に行き、その序でに魔物の卵を孵す〈孵化袋〉をもらって来たのだ。

 まだ数時間しか経ってないのにこんなに速く生まれるとは。
 ハーピーのミネルバは3日くらいかかったのになんでそんなに早いんだか。

 ちなみに子犬の主はローザにしてある。
  彼女の護衛のため家に置く事にしたのだ。

 地獄の番犬ケルベロス、我が家の番犬オルトロス。
 一瞬かっこいいと思ったが、冷静に考えると我が家の番犬ってそれただの飼い犬でしかない。

 あまりの違和感の無いマヌケさに思わず鼻で笑ってしまう。
 個人的には猫じゃないのが残念極まりないところではあるが。

 いや、こいつは犬の形をした猫だ。
 誰がなんと言おうと猫と言い張ろう。

 子い…子猫をPTに迎え入れ、メインジョブのオルトロスをそのままにファイターとシーフを設定した。

 シーフの〈投擲修練〉のスキルなんて使えないのに習得できるとかなんだよお前。

 オルトロスのジョブ変更のついでに、自分のジョブも変更しておく。

 なんたってセージとウォーロックのジョブがカンストしているのだから!

 カンストと言ってもあくまでも本来のカンストLv50を指してであって、実際にはボーナススキル〈ジョブLv上限解放〉のお陰で上限が撤廃されていたりするが。
 そんな訳でジョブ変更っと。


 トシオ
 ベースレベル:Lv116
 ファーストジョブ:マナロードLv1
 セカンドジョブ:シーフLv1
 サードジョブ:ガーディアンLv1


 マナロードキタァァァァァァァァァッァ!
 これで勝つる!

 スキルを確認したいが、皆を待たせたままなので早く魔水晶使って休憩にしよう。
 四十四階層と四十五階層で拾った魔水晶は大きいのが1個に中が8個、小が14個。
 まずまずの成果である。
 全員のジョブを弄りながら使っていく。
 何気にローザ達自宅組もPTに入れており、一度も戦闘経験のない人間が最上級職だったりする。

 その内〈ローザ、マナロードLv50、職業:主婦〉なんて物体がライシーンの街中をたゆんたゆんさせながら闊歩かっぽする姿が拝めたりしてな。
〝たゆんたゆん〟が何を表しているのかは我が家の最大機密事項、言及は控えて頂きたい。

 冗談は俺の頭の中だけにしろと俺のマナロードもLv13に。
 魔水晶の使用個数の割には思ったより上がらなかったな。

「ワープゲートはこのまま開けておきますので、一時間後に納屋ここに集合ってことで」
「よろしく頼みますにゃ」
「トシオ、また明日ね~♪」
「あ、はい、お疲れ様です」

 筋肉美少女からの思わせぶりな視線込みの挨拶を軽くあしらう様に躱し、モーディーンさん達と一旦別れる。
 午後からはモーディーンさん達に変わりザアラッドさん達が探索に加わる予定となっている。

「じゃぁ私達もお昼にいってくるわね」
「レスティー達はどこで食べるんだ?」
「昨日と同じ、表通りの宿屋の食堂よ。じゃ、またあとでね」
「ういうい、またのちほど~」

 レスティーが後ろ手をひらひらとさせ納屋から出ていく。
 風呂は解放しているが、迷宮内は自浄作用が働き汚れしらず。
 汚れないなら入る必要も無いと言う訳だ。
 なんたってゲロからモンスターの返り血まで粒子散乱する程である。
 最近ではリシア達が洗濯物を持ち歩いているくらいだ。
 家事で一番の重労働は何と言っても洗濯な訳だし、リシア達が楽できるならそれに越したことは無い。
 鎧を外し終えたクク達を、風呂場に連れて行き足を洗う。

 もっこもこ~もっこもこ~♪
 これからもふもふタイムだよー!

 ミネルバとイルミナさんは自分で足を洗い終えると、さっさとリビングへ向かっていった。
 3人となった風呂場で俺は甘えてくるトトとククの頭に手を回し抱き寄せる。
 
「2人ともお疲れ様。さっきはすごかったよ。PTの壁だけでなく敵の察知や攻撃まで、最近はククに助けられてばかりだ。トトの攻撃力にも驚かされたよ。これからも頼りにしてるからね」
「ご主人様の氷の魔法が綺麗で素敵でした」
「トシオかっこ良かった!」

 愛しい姉妹と更に密着し、二人の唇を交互についばむ。
 いつもならこれで甘美な一時に突入するはずなのだが、2人はどこかよそよそしく乗り気ではない様子。
 
 ……嫌われた!?
 いや、さっきの会話からしても、そんな様子は1ミリもなかったけど、なんでまた――

「ねぇ」
「うわっ!?」

 唐突に発せられた声にビクリと肩が跳ね上がる。
 振り返ると、ジットリとした目付きで睨むヴァルナさんと遭遇した。
 
「そのイチャイチャは25にもなってまだ独身の私に対する当てつけか何かかしら?」 
「そ、そんな訳ないじゃないですか――って、なんでヴァルナさんがここに?」

 てっきりモーディーンさん達とタンザス村に戻ったものとばかり思ってたけど。

「あなたがお風呂に入れてくれるって言ってたからでしょ。もしかして、自分で言ったことなのに忘れたの?」

 妙な凄みを醸し出すお姉さんに、思わず一歩後ずさる。

 はい、忘れてましたごめんなさい。
 そしてククとトトの2人は彼女が居たから乗ってこなかったのね。

「それにしても、本当に広いお風呂ね」
「まぁ脱衣場を含めて母屋一階の5分の1を占めてますからね」

 ちなみに一番広いのはリビング+土間で、次に広いのが風呂場+脱衣場、最後に寝室と個室3部屋+物置のセットが大体同じ大きさとなる。
 モリーさん達が使ってる2階部分は個室2部屋分くらいの広さだ。
 トイレは寝室とは壁越しに2部屋設置されており、一つは人間が使うには明らかに大きく、ケンタウロスのユニスが暮らし始めたその日の晩に、「やはりこの屋敷はケンタウロスが住んでいたとしか思えない程使い勝手が良いですね」と言ってのけたほどだ。
 更に余談としては、敷地内面積的には、母屋の半分ほどもある納屋が一番広い。

「とりあえず湯は沸かしますので、入浴が終わったらリビングで一声かけてください」
「悪いわね」
「いえいえ、ではごゆっくり」

 湯を張り終わり、2人を連れてリビングへと向かう。
 脱衣所からは、ヴァルナさんの鼻歌と共に衣擦れの音を耳にする。
 家族以外の美女が衣服を脱ぐという状況に、言い知れない興奮を覚える。

 決して聞き耳たてるために聴覚強化スキルを発動させたとか、そんなんじゃないんだからねっ!
 犯罪者は皆そう言うんや……。

 自分のバカバカしさに呆れながら、今度こそ3人でリビングへと向かった。
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