四人で話せば賢者の知恵? ~固有スキル〈チャットルーム〉で繋がる異世界転移。知識と戦略を魔法に込めて、チート勇者をねじ伏せる~

藤ノ木文

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160話 王女の輿入れ

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「最後になるが、他に要望が有るなら言っておけ」

 グレアム陛下の申し出に少し考えこむ。

「要望ですか……そうですね、魔族の少年達を俺の奴隷として登録してますので、アウグストが持っていた魔族所持許可証を自分にも発行してください」
「そのくらいならお安い御用だ」

 よし、これで半分魔族であるメリティエの正体がバレてもお咎めなしだ。
 許可証無しでかくまっていたことを後から言及されても〝彼女が魔族だったなんて知りませんでした〟で押し通せばいいだろう。
 そうそう、忘れてはならないのがもう一つ。

「あと、犯罪を犯していないにもかかわらず、投獄されている魔族領の人達の釈放もお願いできますか?」

 イルミナさんがここに捕まっていた際、他にも魔族領の人種と言うだけで囚われていた人が居ると聞く。
 ダークエルフのセシルのように、魔族領から止む無く流れて来た人達だっているのだ、そんな人達が種族が違うからと言うだけで牢獄に入れられるのは理不尽に過ぎる。

「この国では奴隷以外で魔族領の者を移住させてはならない決まりがあるので、無条件という訳には」
「トシオが自身の奴隷として傍に置くのであれば釈放も厭わぬがどうだ?」

 セドリック大臣が法的問題を挙げ、グレアム陛下が法の抜け道を示唆してくれた。

「では彼らの身柄は奴隷として俺が預かる方向ででお願いします」
「早速手配しよう。バクストンよ、近衛騎士団団長として初の任だ。一っ走り行ってこい」
「はっ!」

 アウグストの後釜として副団長から団長に昇進したであろう男が、立ち上がると共に敬礼し、そのまま部屋を出て行った。

 てことは副団長の片腕であるフルブライトさんも結果的には出世したってことか?
 おめでとうございます。

 内心で祝辞を述べていると、

「あ、序に金銀の類を通貨に交換してもらえますでしょうか? 大量にあり過ぎて市場に流すと価格が暴落しそうで」

 囚われている人達がどれほどの人数なのかがわからないので、先立つ物としてまずは現金が必要だ。
 しかし、金品は有れど日常で使いやすい通貨その物が致命的に不足していた。

「金銀か……、そのまま貨幣の材料にしてしまえば済む話だが、軍備の増強などで時期が悪いな」
「戦時国よりも他国でも使える貨幣の方が信頼度は高いからのう。それに、造幣の手間を考えると多すぎるのも困るな」

 国王と将軍がこちらの申し出を渋る。
 機械の無い世界の造幣技術だ、精々人力で鋳型に溶かした金属を流し込むとかだろうが、金属を溶かすのも型にしれて固めて取り出すのも確かに手間だ。
 平時ならば通してくれただろうが、現実を見据えるとまさに〝時期が悪い〟というしかないだろう。

「相場よりも安くて構いませんのでお願いできませんか?」
「それならばこちらの益にもなりましょう」
「わかった。セドリック、お前の裁量に任せる」
「はっ」

 グレアム陛下がセドリック大臣の後押しで買い取りを決断する。

「一先ずはそれくらいです」 
「うむ。また何かあれば遠慮なく申せ」
「助かります」

 王の計らいに感謝を述べると、国王が世間話でもするような口調で言葉を続ける。

「それとクラウディアの王族籍の抹消、並びに王位継承権の破棄もしておこう。娘を頼んだ」
「あ、魂胆が見え見えなのでそう言うのは結構です」
 
 さらっとナニぶっ込んできてやがりますかこの国王おっさんは。

 だが俺が拒否した瞬間、国王の眼光が鋭さを増し、纏う空気が重苦しい物に変化したのを肌で感じとる。

「娘の何が不満なのかね?」
「王族と血縁って時点で面倒しかありませんやん」
「だからこその王族籍の抹消だが、それでも不満かね?」
「そっちが気にするなって言っても一緒に暮らす以上は嫁の生家を気にしない訳にはいかないでしょ。ただでさえ多いのに、そこに来て国なんて巨大な責任やら義務なんて面倒は背負ってられませんよ」

 俺の言葉が終わるや否や国王が立ち上がり、ものすごい睨みを利かせて左隣にやって来ると、こちらの肩に腕を回す。
 迫力のあるヤクザ顔が、触れそうなくらいの距離に来る。

「トシオよぉ、自分自身の行動を今一度よぉく考えてみてはどうだ? 責任や義務が面倒だと言ってはおるが、今でも十分面倒なことに首突っ込んでるではないか? 誰がどう見たところで、この国だけでなく他所の国の面倒まで見ようとしておるではないか、えぇ?」

 グレアム国王陛下が低くドスの効いた言葉を吐くと、肩に回った腕で俺の身体を小刻みに揺らし、額同士がゴツゴツと当たる。

 だから怖ぇーんだよ指定暴力団組長!

 すると目の前のテーブルが〝バン!〟と大きな音が響く。
 テーブルにはいつの間にか俺の右側に来ていたマクシミリアン将軍のバカでかい手が置かれていた。
 そして自分の左腕を俺の肩に回し、国王以上の組長面した顔を近付ける。
 老将の巨体に押し出されたクラウディアが俺の腰にしがみ付き、太ももに暴力的な柔らかさを押し付けてくる。
 テーブルを挟んだ対岸からは、セドリック大臣が指でテーブルをトントンと叩き、額に血管を浮き上がらせた神経質な狂犬面がおっかない。
 4人のプレッシャーに胃の痛みがぶり返す。
 
 帰りたい。

「のぉトシオよ、〝毒食らわば皿まで〟とはお主の世界の言葉であろう? だったら四の五の言っとらんで男の甲斐性を見せたらどうだ?」

 老将の鉄面皮のような無表情さが逆に怖い。
 だが確かに彼らの言い分ももっともだが、クラウディアを娶るのには2つ程問題がある。
 1つは俺が彼女のことを女性として好きではないこと。
 そしてもう1つは――

「それでもダメです。自分に好意を持っていない人間を嫁にする気はありませんから」
「ならば問題はあるまい。こやつはお前に惚れておるからな」
「ゾッコンですわ♪」
「はい?」

 本日何度目かの間抜けな声と共にクラウディアを見ると、こちらを見詰めているクラウディアは、顔だけでなく耳の先まで真っ赤に染めて頷いた。
 アウグスト邸の家宅捜査時にあれ程俺を嫌っていたというのに、この短期間で一体何があったのか。
 
「なんでまた急に? さっきはあんなに罵っていたじゃないか」
「あの時はそう思っていたので言いたいことを吐き出しただけです! ですが、あれ程の漢気を見せられては……」
「漢気なんてもんいつ見せた?」
「わたくしが罵った後です! 全ての罪を自分が被ることも辞さず、わたくしや国のために動くと言って下さったことですわ! それに、わたくしの全てを知って尚も好きだと仰って下さったではありませんか……」

 クラウディアが後半をもじもじと恥じらいながら、くっそ可愛い仕草で告げてくる。

 誤解だ、あれはクラウディアやアイヴィナーゼのためではなく、大きな視点で見てライシーンに被害が及ぶからの行動だ!
 それにあの時言った好きも恋愛の好きではなく、友人としての好きだからな!

 そう告げようと言いかけるも、発言を封じるようにグレアム陛下が先に口を開く。

「それにお前さぁ、戦争を止めるためとはいえ、余を殺害するつもりだったそうではないか? それだけでも反逆罪で一族郎党を処刑する口実には十分であろう? だが余としても大変遺憾ではあるが、娘を人質に取られたのでは手出しのしようがない。まったく、実に遺憾だ遺憾だぁ」 

 ワザとらしい口ぶりでそううそぶく。
 どうやらこの王女様は俺が国王殺害をほのめかしたことまできっちり報告していたようだ。
 そしてこれまでの会話やクラウディアからの聞き取りで、暴力的なことや非人道的なことでもしない限り、俺が人畜無害であることまでバレてしまった。
 俺の性質をクラウディアから聞き出すための時間稼ぎを客間で取らされたのかと今更ながらそれに思い至り、胃の痛みが爆増する。

 ホント帰らせてもらっていいですか?

「お待ちください陛下、トシオ殿にも心の準備というものが必要でしょう。ここは婚姻という形ではなく、傍仕えの形で姫を置いてもらうのが宜しいかと」
「名案ではないかセドリック。トシオもそれならば問題はあるまい?」
「問題しかねーよ!?」

 何が〝宜しいかと〟だ、どう考えても傍仕えと言う名目で俺の傍に侍らせ篭絡させるのが目的じゃねーか!
 国王もしれっとなし崩し的に話しを進めようとしてやがるし。

「そういえばクラウディアは現在お主の奴隷として拘束されているのであったな。ならば、余も娘を人質に取られているのだ、先程トシオが要求した魔族領の住人、あれを人質に娘を傍に置くよう要求をしようではないか。どう思う、マクシミリアン、セドリックよ?」
「先代に負けず劣らずの知略、それでこそアイヴィナーゼ王国の国王に相応しき智謀よな」
「目には目をの大変素晴らしいお考えかと存じます」
「そうであろうそうであろう」

 無表情のまま称賛の拍手を送るマクシミリアンさんと、にこやかな笑顔で恭しくこうべを垂れるセドリックさん。
 そんな2人の賛辞を鷹揚に頷きながら、鼻高々といわんばかりのアイヴィナーゼ国王グレアム陛下。

 知略とか智謀なんて高尚な言葉を使ってるけど、そういうのを悪知恵って言うんですよ。
 てかこの3人、質が悪すぎる。
 なにが質が悪いって、その言動が〝国のことはどうでも良いから娘を嫁にもらってくださいお願いします〟を脅し風味で言っているだけなのだ。

「……そのなんだ、自分の娘でも差し出さんことにはお主に対して義理が果たせん。それを踏まえた上で娘をよろしく頼む」

 先程までのコミカルな態度はどこへやら、今度は国王自ら頭を下げ真面目に懇願した。
 流石にこうも下手に出られると、俺としても無下には扱えない。
 それに、ここまで言われて受けないとあらば、完全に相手の顔を潰したことになり、今後の信頼関係にも支障が出る。
 先程マクシミリアンさんに言われた毒食らわば皿までではないが、こうなっては仕方がない。

「……わかりました。結婚はまだ承服しかねますが、彼女は自分が責任を持ってお預かりさせて頂きます」

 所詮彼女は箱入り娘だ、庶民の生活に馴染めず自分から帰りたいと言い出すだろう。
 
 そんな淡い期待を秘め、王女を自宅に連れ帰ることにした。
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