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161話 真夏の夜のホラー注意報
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夕刻に差し掛かった時間帯、アイヴィナーゼの牢獄から解放した魔族領の人達を連れて旧アウグスト邸の中庭に居た。
彼ら彼女らにはしばらくは元アウグストの屋敷(以後別宅)を使ってもらうことにしたのだ。
それと、自宅と別宅、更には自宅と城にあるクラウディアの自室をワープゲートで繋ぎ、互いに行き来き出来るようにもしておく。
このワープゲートは魔法で再現したもので、それの維持には魔力を勝手に取り込み充電し続ける魔改造を施した例の魔核を用いた。
ここまでくると、もう魔道具の作成も思いのままだな。
リシア達と別宅に必要な生活用品を搬入していると、別宅を物珍しがったトトとメリティエがペスルを連れて屋敷の探索を開始した。
しばらくすると、リシアがエクソシストの除霊魔法で別宅の浄化を開始した。
それを目の当たりにし悪寒が走る。
やっぱり何か居るんだ……。
てかそんな家を1人で家宅捜索していたのかよ。
知っていたら絶対1人でなんて乗り込まなかったな。
手足に嫌な汗をかきながら、除霊を行うリシアを傍で見守った。
けっして終わ胃から離れたくないとかそういうんじゃないからね?
だがここでクラウディア王女がいきなりやらかすこととなる。
「何をされてますの?」
よりにもよって、皆の居る前で除霊をしているリシアに尋ねやがったのだ。
クラウディアの問われたリシアが、世間話でもするような声量で言葉を出す。
「〝苦しい苦しい〟と泣いてるから送っていたのよ」
「苦しい? 送る? なにをですの?」
「そこの納屋に居る男の子の怨霊よ。……あ」
「!?」
自身のやらかしに気が付くリシアとクラウディア。
後に語られたこの時のリシアの心境は〝掃除中に出て来た虫を駆除するような感覚でした〟であったため、周りへの配慮が抜け落ちていたそうだ。
それを聞いていたモティナとよしのんが涙目で引きつり笑いを浮かべながら、互いに抱き合ったまま腰を抜かしてその場に崩れ落ちる。
イルミナさんが巨大ラミア化して2人を抱きかかえると、フィローラとセシルを連れて自宅へと逃げ帰った。
普段動じないミネルバですら、ぎこちない動きで自宅に避難しようとしたところを、背後からユニスがかっ攫い走り去って行く。
それを見ながら、俺はすぐ隣で気を失い倒れかかったローザを何とか受け止めた。
力が抜けた人間は重いとは言うが、ローザの重さは格別だな……。
でもお肉揉み放題だぁ~。
などと現実逃避のための現実直視をしたまさにその時、〝バーン!〟と大きな音と共に納屋の扉が勢い良く開かれた。
驚きで反射的にビクリと身を振るわせる。
注視した納屋の扉からは、双頭の巨大な黒犬、オルトロスのペスルが威風堂々といった面持ちで現れる。
曇り無き眼はキラキラと輝き、純粋を通り越しアホの子といったドヤ顔である。
心臓に悪いからやめなさい……。
だがその鼻先と前足は土で汚れ、口には泥だらけの白い球体が咥えられていた。
ペスル、その白くて丸い物はなにかなぁ?
って何かも何も、どう見てもちょっと小さな頭蓋骨にしか見えないわ……。
そんなペスルが俺を見つけるや否や、猛突進でこちらに向かってきた。
ぎゃああああああああああ!?
そんなの銜えてくんなし!
慌てて防御魔法を作り強引に抑え込むと、身体強化魔法を発動させローザを自宅に運び込んだ。
その後、すぐにアイヴィナーゼの憲兵を呼びに行き、俺とリシアの立ち合いの元で納屋を調査してもらう。
ペスルの掘り返した穴からは白骨化した未成年者の遺体が複数出土した。
こんな屋敷、絶対に手放してやる……。
首都観光から戻って来たレスティー達に事情を説明しつつ、俺はそう固く誓うのだった。
後日譚
それから数日後。
この事件を境に、一ノ瀬家では夜1人でトイレに行けなくなった者が続出した。
そんな皆の要望に応え、夜は寝室の前からトイレにかけて煌々と魔法の明かりが灯ることとなる。
え、俺?
俺は平気だよ?
毎晩誰かしら俺を頼ってくれるので、今日もこうしてトイレに付き添っているから。
今もフィローラと手を繋いで廊下を歩いて……フィローラの手、めっちゃ冷えてるなぁ。
冷房で冷えすぎたか、後で設定温度を調整しておこう。
なんて思っていると、廊下の明かりがふっと消えた。
ひぐっ!?
「い、今明かりを点けなおすから」
怖がっているであろうフィローラにそう言い隣に目を向けると――
ねぇ ボクも みつけてよ
目が空洞と化した少年が、耳元まで裂けた口に笑みを浮かべていた。
彼ら彼女らにはしばらくは元アウグストの屋敷(以後別宅)を使ってもらうことにしたのだ。
それと、自宅と別宅、更には自宅と城にあるクラウディアの自室をワープゲートで繋ぎ、互いに行き来き出来るようにもしておく。
このワープゲートは魔法で再現したもので、それの維持には魔力を勝手に取り込み充電し続ける魔改造を施した例の魔核を用いた。
ここまでくると、もう魔道具の作成も思いのままだな。
リシア達と別宅に必要な生活用品を搬入していると、別宅を物珍しがったトトとメリティエがペスルを連れて屋敷の探索を開始した。
しばらくすると、リシアがエクソシストの除霊魔法で別宅の浄化を開始した。
それを目の当たりにし悪寒が走る。
やっぱり何か居るんだ……。
てかそんな家を1人で家宅捜索していたのかよ。
知っていたら絶対1人でなんて乗り込まなかったな。
手足に嫌な汗をかきながら、除霊を行うリシアを傍で見守った。
けっして終わ胃から離れたくないとかそういうんじゃないからね?
だがここでクラウディア王女がいきなりやらかすこととなる。
「何をされてますの?」
よりにもよって、皆の居る前で除霊をしているリシアに尋ねやがったのだ。
クラウディアの問われたリシアが、世間話でもするような声量で言葉を出す。
「〝苦しい苦しい〟と泣いてるから送っていたのよ」
「苦しい? 送る? なにをですの?」
「そこの納屋に居る男の子の怨霊よ。……あ」
「!?」
自身のやらかしに気が付くリシアとクラウディア。
後に語られたこの時のリシアの心境は〝掃除中に出て来た虫を駆除するような感覚でした〟であったため、周りへの配慮が抜け落ちていたそうだ。
それを聞いていたモティナとよしのんが涙目で引きつり笑いを浮かべながら、互いに抱き合ったまま腰を抜かしてその場に崩れ落ちる。
イルミナさんが巨大ラミア化して2人を抱きかかえると、フィローラとセシルを連れて自宅へと逃げ帰った。
普段動じないミネルバですら、ぎこちない動きで自宅に避難しようとしたところを、背後からユニスがかっ攫い走り去って行く。
それを見ながら、俺はすぐ隣で気を失い倒れかかったローザを何とか受け止めた。
力が抜けた人間は重いとは言うが、ローザの重さは格別だな……。
でもお肉揉み放題だぁ~。
などと現実逃避のための現実直視をしたまさにその時、〝バーン!〟と大きな音と共に納屋の扉が勢い良く開かれた。
驚きで反射的にビクリと身を振るわせる。
注視した納屋の扉からは、双頭の巨大な黒犬、オルトロスのペスルが威風堂々といった面持ちで現れる。
曇り無き眼はキラキラと輝き、純粋を通り越しアホの子といったドヤ顔である。
心臓に悪いからやめなさい……。
だがその鼻先と前足は土で汚れ、口には泥だらけの白い球体が咥えられていた。
ペスル、その白くて丸い物はなにかなぁ?
って何かも何も、どう見てもちょっと小さな頭蓋骨にしか見えないわ……。
そんなペスルが俺を見つけるや否や、猛突進でこちらに向かってきた。
ぎゃああああああああああ!?
そんなの銜えてくんなし!
慌てて防御魔法を作り強引に抑え込むと、身体強化魔法を発動させローザを自宅に運び込んだ。
その後、すぐにアイヴィナーゼの憲兵を呼びに行き、俺とリシアの立ち合いの元で納屋を調査してもらう。
ペスルの掘り返した穴からは白骨化した未成年者の遺体が複数出土した。
こんな屋敷、絶対に手放してやる……。
首都観光から戻って来たレスティー達に事情を説明しつつ、俺はそう固く誓うのだった。
後日譚
それから数日後。
この事件を境に、一ノ瀬家では夜1人でトイレに行けなくなった者が続出した。
そんな皆の要望に応え、夜は寝室の前からトイレにかけて煌々と魔法の明かりが灯ることとなる。
え、俺?
俺は平気だよ?
毎晩誰かしら俺を頼ってくれるので、今日もこうしてトイレに付き添っているから。
今もフィローラと手を繋いで廊下を歩いて……フィローラの手、めっちゃ冷えてるなぁ。
冷房で冷えすぎたか、後で設定温度を調整しておこう。
なんて思っていると、廊下の明かりがふっと消えた。
ひぐっ!?
「い、今明かりを点けなおすから」
怖がっているであろうフィローラにそう言い隣に目を向けると――
ねぇ ボクも みつけてよ
目が空洞と化した少年が、耳元まで裂けた口に笑みを浮かべていた。
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