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プロローグ
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王都グレシオン。
ラングレイ大陸でも有数の大国であるグレイシア王国の都。
今宵、王宮にて国王の五十回目の誕生日が盛大に祝われていた。
綺羅びやかな立食スタイルのパーティ会場では数多くの貴族たちが談笑しながら、主賓の登場を待っている。
そんな最中の一角で、一人佇む女性がいた。
彼女の周辺には誰もおらず、話しかけようともしない。
その理由は彼女の異質な容姿のせいか。
真っ黒な長い髪に瞳。
他の来賓客は金や茶や銀といった色とりどりの中で彼女の髪は異様さを誇っていた。
だが、それだけではない。
祝いの席には相応しくない闇のようなドレス。
胸には大きな薔薇と鳥の羽根が舞うように刺繍されている
まるで喪服のようにも見えるが、祭典に相応の華やかさを見せる服装は、彼女の容姿とマリアージュを見せただ美しい。
少し離れた場所では、若き女性は羨ましそうに、男性は見惚れているものもいる。
しかし、その他の多くのものは嫌悪の視線や無視といったふうに決して良好な雰囲気ではなかった。
ただ、そんな中でも壁際に咲く一輪の黒薔薇は静かにその場所で時を待つ。
パァパァパァァァ!パラララァァァ!
それから少しの時が流れると、二階席の楽団によるファンファーレが鳴り響いた。
どうやら主賓の到着らしい。
パーティ会場は一気に静まり返る。
すると玉座の奥にある扉が開き、威厳ある一人の男性が現れた。
艷やかな金髪の上に煌めく王冠。
鋭い目つきの下には整った長い髭。
重層感のある真っ赤なマント。
多くの装飾が施された白い礼服を着込み、右手には大きな白い宝石が頂点で輝く杖。
彼こそが十五代国王。
ランドルフ・フォレインバッハ・グレイシアである。
その姿に皆が彼に向かって頭を下げた。
「皆のもの。面を上げい」
静かな空間に厳かなる低音の声が轟く。
「今宵は余の誕生を祝いに来てもらい、感謝する。ここにいる皆々がこの国を支えている貴重な人物たちだ。日々の仕事には多くの苦労もあるだろう。だが!今日の短い時間ではあるがこの場では、憩いの場であって欲しいと願う!さぁ皆のもの!歌い、踊り、飲み、食べ、楽しむがいい!」
「「「陛下!お誕生、おめでとうございます!!!」」」
王の演説が終わると、来賓客は盛大な拍手と祝福の言葉を贈る。そんな中で、漆黒の令嬢もまた微笑みながら拍手を贈っていたのだった。
やがて拍手や祝福が落ち着くと、来賓客による陛下への謁見が始まっていく。
謁見だけでも貴重ではあるが、来賓客の格から順に謁見していくというもので、来賓客が他の来賓客たちに威厳を見せつけられるというある種のパフォーマンスでもあった。
「第一に、アンデルフォンス公爵閣下!」
そう臣下のものに呼び上げられた人物が、玉座の方へと向かっていく。
歳の頃は王と同じくらいだろうか?
柔和な人物が赤い絨毯を敷かれた階段を歩んでいく。
「陛下、お誕生日おめでとうございます」
公爵は胸に手を当てて、恭しく頭を下げた。
「おぉ、アンス。祝いに来てくれて感謝する。そして日々の働きにも労いを贈ろう」
そんな彼を王は抱きしめると、盛大な歓声が湧いた。
貴族の筆頭と王の親密は国の安定に関わってくるからだ。
「いえいえ。これからも陛下の導きとともに我ら一堂、従って参りますのでどうぞご健康であられますように」
「うむ。アンスの言葉、嬉しく思うぞ」
「ははっ」
こうしてアンデルフォンス公爵の謁見は終わった。
それからも次々に重要人物が謁見を果たし、大きな歓声が湧く中で、最後の人物の名が呼ばれた。
「最後に……レミゼラルムーン伯爵閣下……」
今までの来賓客は力強く呼び上げていた者であったが、最後に至る人物は弱々しい。
それに加え、場内は誰しもが拍手を贈らずに静まり返ってしまった。
そんな中を堂々を歩く人物こそが、漆黒の令嬢だった。
闇のように黒いドレスはシャンデリアが燦々と照らしてもなお吸い込むほどに暗い。
「ライラック・レミゼラルムーン。陛下のお誕生日をお祝い申し上げます」
ドレスの端を摘み、優雅なカテーシーをこなした令嬢に王は侮蔑の眼差しで睨んだ。
「ふん……下がれ」
そしてただ一言のみを返すのだった。
そう言われたライラック……ライラは静かに会釈をして階段を降りていく。
そんな中を来賓客たちまでもが彼女を見下したり嘲笑したりするが、ライラは一切動じずに歩みを進め、先ほどまでいた壁際の端まで戻っていった。
そして……
「ふぅ……」
窓の外に目をやり、
「今日は美しい満月ね」
優しく微笑みのだった。
ラングレイ大陸でも有数の大国であるグレイシア王国の都。
今宵、王宮にて国王の五十回目の誕生日が盛大に祝われていた。
綺羅びやかな立食スタイルのパーティ会場では数多くの貴族たちが談笑しながら、主賓の登場を待っている。
そんな最中の一角で、一人佇む女性がいた。
彼女の周辺には誰もおらず、話しかけようともしない。
その理由は彼女の異質な容姿のせいか。
真っ黒な長い髪に瞳。
他の来賓客は金や茶や銀といった色とりどりの中で彼女の髪は異様さを誇っていた。
だが、それだけではない。
祝いの席には相応しくない闇のようなドレス。
胸には大きな薔薇と鳥の羽根が舞うように刺繍されている
まるで喪服のようにも見えるが、祭典に相応の華やかさを見せる服装は、彼女の容姿とマリアージュを見せただ美しい。
少し離れた場所では、若き女性は羨ましそうに、男性は見惚れているものもいる。
しかし、その他の多くのものは嫌悪の視線や無視といったふうに決して良好な雰囲気ではなかった。
ただ、そんな中でも壁際に咲く一輪の黒薔薇は静かにその場所で時を待つ。
パァパァパァァァ!パラララァァァ!
それから少しの時が流れると、二階席の楽団によるファンファーレが鳴り響いた。
どうやら主賓の到着らしい。
パーティ会場は一気に静まり返る。
すると玉座の奥にある扉が開き、威厳ある一人の男性が現れた。
艷やかな金髪の上に煌めく王冠。
鋭い目つきの下には整った長い髭。
重層感のある真っ赤なマント。
多くの装飾が施された白い礼服を着込み、右手には大きな白い宝石が頂点で輝く杖。
彼こそが十五代国王。
ランドルフ・フォレインバッハ・グレイシアである。
その姿に皆が彼に向かって頭を下げた。
「皆のもの。面を上げい」
静かな空間に厳かなる低音の声が轟く。
「今宵は余の誕生を祝いに来てもらい、感謝する。ここにいる皆々がこの国を支えている貴重な人物たちだ。日々の仕事には多くの苦労もあるだろう。だが!今日の短い時間ではあるがこの場では、憩いの場であって欲しいと願う!さぁ皆のもの!歌い、踊り、飲み、食べ、楽しむがいい!」
「「「陛下!お誕生、おめでとうございます!!!」」」
王の演説が終わると、来賓客は盛大な拍手と祝福の言葉を贈る。そんな中で、漆黒の令嬢もまた微笑みながら拍手を贈っていたのだった。
やがて拍手や祝福が落ち着くと、来賓客による陛下への謁見が始まっていく。
謁見だけでも貴重ではあるが、来賓客の格から順に謁見していくというもので、来賓客が他の来賓客たちに威厳を見せつけられるというある種のパフォーマンスでもあった。
「第一に、アンデルフォンス公爵閣下!」
そう臣下のものに呼び上げられた人物が、玉座の方へと向かっていく。
歳の頃は王と同じくらいだろうか?
柔和な人物が赤い絨毯を敷かれた階段を歩んでいく。
「陛下、お誕生日おめでとうございます」
公爵は胸に手を当てて、恭しく頭を下げた。
「おぉ、アンス。祝いに来てくれて感謝する。そして日々の働きにも労いを贈ろう」
そんな彼を王は抱きしめると、盛大な歓声が湧いた。
貴族の筆頭と王の親密は国の安定に関わってくるからだ。
「いえいえ。これからも陛下の導きとともに我ら一堂、従って参りますのでどうぞご健康であられますように」
「うむ。アンスの言葉、嬉しく思うぞ」
「ははっ」
こうしてアンデルフォンス公爵の謁見は終わった。
それからも次々に重要人物が謁見を果たし、大きな歓声が湧く中で、最後の人物の名が呼ばれた。
「最後に……レミゼラルムーン伯爵閣下……」
今までの来賓客は力強く呼び上げていた者であったが、最後に至る人物は弱々しい。
それに加え、場内は誰しもが拍手を贈らずに静まり返ってしまった。
そんな中を堂々を歩く人物こそが、漆黒の令嬢だった。
闇のように黒いドレスはシャンデリアが燦々と照らしてもなお吸い込むほどに暗い。
「ライラック・レミゼラルムーン。陛下のお誕生日をお祝い申し上げます」
ドレスの端を摘み、優雅なカテーシーをこなした令嬢に王は侮蔑の眼差しで睨んだ。
「ふん……下がれ」
そしてただ一言のみを返すのだった。
そう言われたライラック……ライラは静かに会釈をして階段を降りていく。
そんな中を来賓客たちまでもが彼女を見下したり嘲笑したりするが、ライラは一切動じずに歩みを進め、先ほどまでいた壁際の端まで戻っていった。
そして……
「ふぅ……」
窓の外に目をやり、
「今日は美しい満月ね」
優しく微笑みのだった。
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