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苦悩する王子
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王子セイクリッドは朝早くに目を覚ますと、カーテンを開いた。
前夜の生誕祭の賑わいが嘘のように静かな朝。
彼は昨日会ったライラックのことを思い出す。
彼女はさらに美しくなっていたな……
頭の中にある表情、声、身体が鮮明に脳内に映し出されると身体が火照っていく。
また会える日まで一ヶ月か……
どうにかして会いに行けないものか?
少し考え込んだセイクリッドだったが、父の忠告が頭によぎった。
その恋心は叶わんぞ。
同じ国の王子と伯爵令嬢。
結ばれてもおかしくない二人だが、現実は不可能に近い。
太陽と月に例えれば分かりやすいか。
その二つが触れ合うと、全てが滅ぶ。
「ふぅ……顔を洗って剣でも振るか……」
彼はそう思い立つと、洗面所へと向かった。
道すがら使用人が挨拶をする中、廊下を歩く。
そうして洗面所で顔を洗い、幾分すっきりとした表情を見せると中庭へと向かう。
王城から出た瞬間、綺麗に植えられた花々がセイクリッドを出迎える中、彼は片隅にある木造の管理小屋に目を移す。
そこに彼の練習用の木剣があるのだ。
ガタン。
小屋のドアを開くと園芸用品がところ狭しと並んでいる。
そういったものと並んで、一本の木剣が立てかけてあった。
木剣とはいえ、柄には装飾があり王子が使うに相応しい剣だ。
そんな一振りを持って小屋を出ると、大きな木の下で剣を上段から振り下ろした。
「ふっ!」
気迫とともに振り下ろされた剣が空気を切り裂く。
その凄まじい剣筋を縦横斜めと縦横無尽に繰り出すと、頭の中が空っぽになる。
そう思ったのだが、
「くっ……」
浮かんでくるのはライラックの姿だった。
「ライラック……」
彼がライラックと初めて会ったのは自身の十歳の誕生パーティーのとき。
真っ黒な髪とドレス。
自分のパーティーに相応しくないその格好に憤りを覚えたが、その顔を見た時に一瞬で心奪われた。
まだ少女のはずだというのに、他の令嬢が霞んで見えるほどの美しさ。
彼の心は高鳴った。
セイクリッドは父に問う。
彼女は誰ですか、と。
すると父は忌まわしそうに表情を歪めた後に、あやつらはレミゼラルムーン家だ。忌々しい奴らよ。と言い放った。
レミゼラルムーン家。
その名は知っていた。
歴史はあれど品格はなし。
それが王族と貴族の認識だった。
しかし彼は思った。
彼女の立ちふるまいは、どの令嬢よりも美しいと。
そう思う中でパーティーが進むとライラックが父親に連れられて、セイクリッドの前へとやってきた。
「娘とは初めてお顔を合わされますな。ほらお二方に挨拶なさい」
「お初にお目にかかります。ライラックと申します」
「ふん。そうか」
父がぞんざいにあしらうが、彼の瞳はライラックに釘付けだった。
「ライラック……」
「はい」
セイクリッドが呟き、それを聞いたライラックがにこりと微笑んだ瞬間、彼の胸は高鳴っていた。
自分でもこれが初恋なのだと分かるほどに。
父の手前上、それ以上は何もせずにいたがダンスのパートーナーを申し出たかった。
だが、それが許されないとも察した彼はその気持ちを押し殺すのだった。
そしてその気持ちは収まるどころか彼が成長するにつれ増していくばかり。
「この想い、そうやすやす断ち切れんな……」
剣を横に振るった後、彼は空を見上げた。
青く澄み晴れた空には太陽がある。
彼女は今頃眠っているのだろう。
そう思うとセイクリッドの心は重くなった。
その重みを振り払う為、
「はぁっ!」
彼は剣をまっすぐに振り下ろすのだった。
前夜の生誕祭の賑わいが嘘のように静かな朝。
彼は昨日会ったライラックのことを思い出す。
彼女はさらに美しくなっていたな……
頭の中にある表情、声、身体が鮮明に脳内に映し出されると身体が火照っていく。
また会える日まで一ヶ月か……
どうにかして会いに行けないものか?
少し考え込んだセイクリッドだったが、父の忠告が頭によぎった。
その恋心は叶わんぞ。
同じ国の王子と伯爵令嬢。
結ばれてもおかしくない二人だが、現実は不可能に近い。
太陽と月に例えれば分かりやすいか。
その二つが触れ合うと、全てが滅ぶ。
「ふぅ……顔を洗って剣でも振るか……」
彼はそう思い立つと、洗面所へと向かった。
道すがら使用人が挨拶をする中、廊下を歩く。
そうして洗面所で顔を洗い、幾分すっきりとした表情を見せると中庭へと向かう。
王城から出た瞬間、綺麗に植えられた花々がセイクリッドを出迎える中、彼は片隅にある木造の管理小屋に目を移す。
そこに彼の練習用の木剣があるのだ。
ガタン。
小屋のドアを開くと園芸用品がところ狭しと並んでいる。
そういったものと並んで、一本の木剣が立てかけてあった。
木剣とはいえ、柄には装飾があり王子が使うに相応しい剣だ。
そんな一振りを持って小屋を出ると、大きな木の下で剣を上段から振り下ろした。
「ふっ!」
気迫とともに振り下ろされた剣が空気を切り裂く。
その凄まじい剣筋を縦横斜めと縦横無尽に繰り出すと、頭の中が空っぽになる。
そう思ったのだが、
「くっ……」
浮かんでくるのはライラックの姿だった。
「ライラック……」
彼がライラックと初めて会ったのは自身の十歳の誕生パーティーのとき。
真っ黒な髪とドレス。
自分のパーティーに相応しくないその格好に憤りを覚えたが、その顔を見た時に一瞬で心奪われた。
まだ少女のはずだというのに、他の令嬢が霞んで見えるほどの美しさ。
彼の心は高鳴った。
セイクリッドは父に問う。
彼女は誰ですか、と。
すると父は忌まわしそうに表情を歪めた後に、あやつらはレミゼラルムーン家だ。忌々しい奴らよ。と言い放った。
レミゼラルムーン家。
その名は知っていた。
歴史はあれど品格はなし。
それが王族と貴族の認識だった。
しかし彼は思った。
彼女の立ちふるまいは、どの令嬢よりも美しいと。
そう思う中でパーティーが進むとライラックが父親に連れられて、セイクリッドの前へとやってきた。
「娘とは初めてお顔を合わされますな。ほらお二方に挨拶なさい」
「お初にお目にかかります。ライラックと申します」
「ふん。そうか」
父がぞんざいにあしらうが、彼の瞳はライラックに釘付けだった。
「ライラック……」
「はい」
セイクリッドが呟き、それを聞いたライラックがにこりと微笑んだ瞬間、彼の胸は高鳴っていた。
自分でもこれが初恋なのだと分かるほどに。
父の手前上、それ以上は何もせずにいたがダンスのパートーナーを申し出たかった。
だが、それが許されないとも察した彼はその気持ちを押し殺すのだった。
そしてその気持ちは収まるどころか彼が成長するにつれ増していくばかり。
「この想い、そうやすやす断ち切れんな……」
剣を横に振るった後、彼は空を見上げた。
青く澄み晴れた空には太陽がある。
彼女は今頃眠っているのだろう。
そう思うとセイクリッドの心は重くなった。
その重みを振り払う為、
「はぁっ!」
彼は剣をまっすぐに振り下ろすのだった。
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