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偶然の再会
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「そろそろお腹が空いたわね。食事に行かない?」
「はい、姉様」
観劇の後にレストランを訪れた私とハオルは、店主に挨拶をされる。
そうしてオーダーをしたのだけど、オーダーした料理よりも大量の料理たちがテーブルの上に並んでしまっていた。
「……マスター?これは?」
「レミゼラルムーン家の皆様にはお世話になっておりますので、サービスです!」
ホカホカと湯気を立てる肉、魚、スープにパン。
どれもが美味しそうである。
そしてサービスというマスターの笑顔。
それらのどれもがこんなに食べ切れないなどと言えない状況だった。
ハオル……お残しは許されないわよ?
……頑張ります、姉様。
私たちは視線で会話した後、テーブルにたっぷりと置かれた料理を片付けていく。
そしていつもの食事の二倍の時間をかけて、何とか料理を片付けたのだった。
「あっ!デザートもあるので!」
「ちょ、ちょっと待って!さすがにお腹いっぱいだから!デザートは次の機会にさせてもらうわ!」
「そうですか……」
人の良さそうなマスターの顔が曇ることに罪悪感があるけど、これ以上は食べられない。
「絶対に来てくださいねー!」
そうしてマスターの熱烈な見送りを経て、何とかお店を出ることができた。
「うっ……姉様……お腹が……」
「す、少しどこかで休みましょうか……」
飲食店ばかりが並ぶこのエリアで、休めそうな場所はというと……
私の目にあるバーが目についた。
もはや水分すら入らない状況だけど、仕方ないわね。
私たちは木造建てのおしゃれなバーへと向かった。
入って見ると、ピアノの演奏が聞こえる。
どうやら生演奏が売りのようね。
「これは、ライラック様。ようこそいらっしゃいました」
入り口で老紳士が出迎えてくれる。
「少し休ませてもらってもいい?」
「もちろんです。ただテーブル席が満席でして、カウンター席になりますがよろしいでしょうか?」
「ええ、もちろんよ」
「ありがとうございます。ではお席にご案内します」
こうしてテーブル席を含めて四十名ほどが収容できる店内を歩いていく。
流れてくるピアノの音が激しいものでなく、ゆっくりとした曲調なのが助かっている。
「こちらへどうぞ」
「ありがとう」
そこは中央にあるピアノの演奏場所を背中にして座るカウンター席。
六人掛けのカウンターであり、端の二席が空いている。
ゆっくりとお酒を飲みたい人たち向けね。
そう思い、腰掛けたのだけど、
「おや?レミゼラルムーン伯爵ではありませんか?」
ハオルを挟んだ隣の席には先ほど会談をしたばかりのシェルド・リンブルクの姿があった。
薄暗くて気づかなかったが、空のように青い髪と銀縁眼鏡は彼がシェルドであることを証明している。
「あら、先ほどぶり。珍しくお酒を嗜んでいるのね?」
「おや?私があまり酒を飲まないことをご存じでしたか?」
……しまったわ。
これは彼の粗探しとして勝手に調べた情報だった。
「想像でものを語って申し訳なかったわ」
「いえいえ、おっしゃる通りですので、お気になさらずに」
「ありがとう」
ふぅ……何とか誤魔化せたわね……
「おいおい、そちらの方はライラック様じゃないか?」
シェルドの隣の男性が声を上げる。
「ハルト。レミゼラルムーン伯爵とお呼びしないか」
「シェルドは気にし過ぎだ。いいから紹介してくれよ」
ハルトと呼ばれた男性は身体をテーブルに傾けて、こちらに視線を送ってくる。
「彼はハルト・アーク。私の友人で、第三騎士団の分隊長をしております」
「よろしくお願いします!ハルトって呼んでください!」
声を抑えながらも覇気のある様子で、圧が凄い。
シェルドが水だとしたら彼は炎ね。
「よろしく。ライラック・レミゼラルムーンよ」
「少年!君の名は!?」
「……ハオルシア・レミゼラルムーン」
「はっはっはっ!元気がないな少年!おっと!ハオルシア様かな!?」
「せ、背中を叩くな……うっぷ」
ハオルが口を押さえる。
「申し訳ありません……酔っているわけではなくこれが素なので……いつも言ってはいるのですが……」
「ふふっ、気にしないでいいわ」
「まったく……伯爵はこうおっしゃっておられるが、あまり失礼なことをするな」
「分かった分かった。あ、ところでライラック様!」
「言ったそばからお前ってやつは……」
「あら、何かしら?」
「影の騎士団ってご存じですか!?」
私はその言葉で少し緊張する。
「陛下が運営していると言われている秘密の騎士団ね。それが何か?」
「そこにライラック様が関わってるんじゃないかと思ってですね!」
「なぜ伯爵に聞いたりするんだ?」
「なんとなく?」
ただの直感……だけど的を射ているところが怖いわね。
実際、情報を国王陛下に渡しているのは私なので、影の騎士団は私であるとも言える。
「私も噂くらいしか知らないけど、なぜ影の騎士団のことを知りたいの?」
「今日はグリオン男爵の汚職を摘発できたんですよ!それで、その証拠が影の騎士団からの情報らしくてですね!俺はめっちゃ感謝してるんです!」
ああ、この人がグリオンを逮捕した人なのね。
「機密情報をこんな場所で気軽に話すな!」
「大丈夫大丈夫。声抑えてるし誰も聞いてないって」
「お前はもう少し、規律というものを学べ」
「あちゃぁ……」
こう見えて意外と気が合う二人のようね。
楽しいやり取りだわ。
そう思っていたとき、曲の終わりではないところで急に曲が終わりを迎えた。
そして……
「きゃぁ!」
女性の叫び声を響くのだった。
「はい、姉様」
観劇の後にレストランを訪れた私とハオルは、店主に挨拶をされる。
そうしてオーダーをしたのだけど、オーダーした料理よりも大量の料理たちがテーブルの上に並んでしまっていた。
「……マスター?これは?」
「レミゼラルムーン家の皆様にはお世話になっておりますので、サービスです!」
ホカホカと湯気を立てる肉、魚、スープにパン。
どれもが美味しそうである。
そしてサービスというマスターの笑顔。
それらのどれもがこんなに食べ切れないなどと言えない状況だった。
ハオル……お残しは許されないわよ?
……頑張ります、姉様。
私たちは視線で会話した後、テーブルにたっぷりと置かれた料理を片付けていく。
そしていつもの食事の二倍の時間をかけて、何とか料理を片付けたのだった。
「あっ!デザートもあるので!」
「ちょ、ちょっと待って!さすがにお腹いっぱいだから!デザートは次の機会にさせてもらうわ!」
「そうですか……」
人の良さそうなマスターの顔が曇ることに罪悪感があるけど、これ以上は食べられない。
「絶対に来てくださいねー!」
そうしてマスターの熱烈な見送りを経て、何とかお店を出ることができた。
「うっ……姉様……お腹が……」
「す、少しどこかで休みましょうか……」
飲食店ばかりが並ぶこのエリアで、休めそうな場所はというと……
私の目にあるバーが目についた。
もはや水分すら入らない状況だけど、仕方ないわね。
私たちは木造建てのおしゃれなバーへと向かった。
入って見ると、ピアノの演奏が聞こえる。
どうやら生演奏が売りのようね。
「これは、ライラック様。ようこそいらっしゃいました」
入り口で老紳士が出迎えてくれる。
「少し休ませてもらってもいい?」
「もちろんです。ただテーブル席が満席でして、カウンター席になりますがよろしいでしょうか?」
「ええ、もちろんよ」
「ありがとうございます。ではお席にご案内します」
こうしてテーブル席を含めて四十名ほどが収容できる店内を歩いていく。
流れてくるピアノの音が激しいものでなく、ゆっくりとした曲調なのが助かっている。
「こちらへどうぞ」
「ありがとう」
そこは中央にあるピアノの演奏場所を背中にして座るカウンター席。
六人掛けのカウンターであり、端の二席が空いている。
ゆっくりとお酒を飲みたい人たち向けね。
そう思い、腰掛けたのだけど、
「おや?レミゼラルムーン伯爵ではありませんか?」
ハオルを挟んだ隣の席には先ほど会談をしたばかりのシェルド・リンブルクの姿があった。
薄暗くて気づかなかったが、空のように青い髪と銀縁眼鏡は彼がシェルドであることを証明している。
「あら、先ほどぶり。珍しくお酒を嗜んでいるのね?」
「おや?私があまり酒を飲まないことをご存じでしたか?」
……しまったわ。
これは彼の粗探しとして勝手に調べた情報だった。
「想像でものを語って申し訳なかったわ」
「いえいえ、おっしゃる通りですので、お気になさらずに」
「ありがとう」
ふぅ……何とか誤魔化せたわね……
「おいおい、そちらの方はライラック様じゃないか?」
シェルドの隣の男性が声を上げる。
「ハルト。レミゼラルムーン伯爵とお呼びしないか」
「シェルドは気にし過ぎだ。いいから紹介してくれよ」
ハルトと呼ばれた男性は身体をテーブルに傾けて、こちらに視線を送ってくる。
「彼はハルト・アーク。私の友人で、第三騎士団の分隊長をしております」
「よろしくお願いします!ハルトって呼んでください!」
声を抑えながらも覇気のある様子で、圧が凄い。
シェルドが水だとしたら彼は炎ね。
「よろしく。ライラック・レミゼラルムーンよ」
「少年!君の名は!?」
「……ハオルシア・レミゼラルムーン」
「はっはっはっ!元気がないな少年!おっと!ハオルシア様かな!?」
「せ、背中を叩くな……うっぷ」
ハオルが口を押さえる。
「申し訳ありません……酔っているわけではなくこれが素なので……いつも言ってはいるのですが……」
「ふふっ、気にしないでいいわ」
「まったく……伯爵はこうおっしゃっておられるが、あまり失礼なことをするな」
「分かった分かった。あ、ところでライラック様!」
「言ったそばからお前ってやつは……」
「あら、何かしら?」
「影の騎士団ってご存じですか!?」
私はその言葉で少し緊張する。
「陛下が運営していると言われている秘密の騎士団ね。それが何か?」
「そこにライラック様が関わってるんじゃないかと思ってですね!」
「なぜ伯爵に聞いたりするんだ?」
「なんとなく?」
ただの直感……だけど的を射ているところが怖いわね。
実際、情報を国王陛下に渡しているのは私なので、影の騎士団は私であるとも言える。
「私も噂くらいしか知らないけど、なぜ影の騎士団のことを知りたいの?」
「今日はグリオン男爵の汚職を摘発できたんですよ!それで、その証拠が影の騎士団からの情報らしくてですね!俺はめっちゃ感謝してるんです!」
ああ、この人がグリオンを逮捕した人なのね。
「機密情報をこんな場所で気軽に話すな!」
「大丈夫大丈夫。声抑えてるし誰も聞いてないって」
「お前はもう少し、規律というものを学べ」
「あちゃぁ……」
こう見えて意外と気が合う二人のようね。
楽しいやり取りだわ。
そう思っていたとき、曲の終わりではないところで急に曲が終わりを迎えた。
そして……
「きゃぁ!」
女性の叫び声を響くのだった。
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