忌み嫌われる夜の令嬢ですが国家の中枢を担っています

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デレリアット侯爵家を調査開始

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その後、大きなトラブルはなく街の見回りを終えた私たちは明け方近くに屋敷へと帰ってきた。

「お疲れ様、ハオル」

「うぅ……やっと楽になってきました……」

「ゆっくり休んね」

「そうさせてもらいます……」

一足早くに自室へと戻ったハオルの背中を見送っていると、執事のゼオンがやってきた。

「お帰りなさいませ」

「ただいま、ゼオン」

「何か変わったことはございましたか?」

「そうね……一つ気になったことがあったわ。調べてほしいの」

「……かしこまりました」

ゼオンのおっとりとした目がすっと鋭くなる。

「デレリアット侯爵家を調べてくれない?」

「デレリアット侯爵家ですね。すぐに調査します」

「ありがとう。それじゃよろしくね」

「はい」

ゼオンは理由を聞くこともなく会釈をする。
その美しい視線に少し見惚れた後に、私は浴場へと赴く。
そうしていつものようにアイリスに入浴を手伝ってもらった私は、そのままふわふわのベッドで眠りにつくのだった。

───翌日の昼───

私はすっかりと疲れが取れて、快適な目覚めを迎えた。
それから着替えや洗顔などをした後に、食堂へと向かう。

「おはようございます。お嬢様」

「おはよう。ゼオン」

「例の件、調べて参りましたので食事の後によろしいでしょうか?」

「相変わらず仕事が早いわね」

「部下たちが優秀ですので」

夜の街ナディアスといえど、朝にその全てが眠っている訳ではない。
レミゼラルムーン家の諜報員たちは朝も夜も関係なく、様々な情報を集めている。
その管理をしているのが、ゼオン。
彼がいなくなったらと思うとゾッとするわね。

「じゃあ執務室でね」

「はい」

「おはよう……姉様……」

「おはようハオル。あなたも食事に来たの?」

「ううん……お水を飲みに来ただけ……」

「そう……お大事にね……」

私はハオルを見送った後、アイリスが並べてくれた食事を取る。
ハムと野菜のサンドイッチとスープは、疲れた胃腸に染み渡っていくのだった。

───執務室───

食事を終えた私は執務室へと向かう。
そこはレミゼラルムーン家の当主の部屋。
黒い絨毯を敷かれた室内には、中央にテーブルと二人掛けのソファーが二組向き合い、奥に私のデスクがある。
そこには赤い薔薇が飾られており、私の目を楽しませてくれた。

アイリス、いつもありがとう。

私は少し屈んで、薔薇の香りを楽しんだ。

その時、

コンコン。

ノックの声が響いた。

「入って」

「失礼いたします」

ノックの主はゼオンだった。

「デレリアット侯爵に関する報告書をまとめて参りました」

「ありがとう」

私は当主の椅子に座り、ゼオンの手書きの報告書を読む。
十数枚の書類たちには丁寧な文字でデレリアット侯爵の素行や資金の巡り方、夫婦の関係など様々なことが書かれていた。
半日足らずでこの情報量、手の内でありながらも怖くあるわね。

ピクッ。

私の目が止まった一文がある。
それは、一年ほど前から異国連合と頻繁に関わるようになったというものだ。
別に貴族がどこと取引をしようが構わないが、貴族の家を買い、派手に遊びと金回りが良すぎる。
通常の取引でここまでの利益を上げられることなど、宝石などの鉱床を掘り当てたくらい大きなことがないと難しい。
だが、そういったニュースはなかった。

「何かしらの明るみには出せないやり取りがありそうね」

「間違いないと思われます」

「うん。それじゃその辺りを詳しく調べておいて」

「はい。すでに手配してあります」

「そう思ってた」

こちらの意図を先んじてやってくれるゼオンには感謝しかない。

「何かご褒美をあげたいわね。欲しいものはないの?」

「いえ、特にありません」

「そう言わずに、何かないの?」

「……そうですね。部下たちと一緒に飲めるおすすめの場所を教えていただけますか?」

「本当に自分のことには無頓着なのだから。そうね、ピアノが素敵なバーを見つけたの。そこでゆっくりと飲んできたら?」

「ありがとうございます」

「お金は出してあげるから」

「いえ、それは……」

「これも給金の内よ。黙って受け取りなさい」

「……はい、お嬢様」

にっこりと微笑んだゼオン。
そんな彼に私はさらなる信頼を寄せるのだった。
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