34 / 88
長い朝の終わり
しおりを挟む
「レミゼラルムーン伯爵、おはようございます」
「あら、シェルド。おはよう」
出動要請からすぐにやってきた第一騎士団のシェルド。
相変わらず青い髪はしっかりと整えられており、銀縁眼鏡も輝きを放っている。
「ずいぶんと重装備でいらっしゃいますね」
「そう?こう見えて結構軽いのだけど」
「それにしても電光石火の如き解決でしたね。使者の方から聞きましたが、事件発覚からおよそ二時間ほどですよ」
「少し無茶な捜査だったことは認めるけど、結果良ければ全て良しということね」
「……本当に無茶をされる方だ。冷静沈着なあなたと燃えるような熱を持ったあなた。どちらが本当のあなたなのでしょうか?」
「正解は、どちらも私よ」
「ふふふ、そうですね。愚問でした」
シェルドは微笑んだ後すぐに表情を真剣なものへと戻していく。
「建物内にいるものは全て確保せよ!」
「はっ!」
そして彼の命令で警士たちが一斉に建物の中へと入っていった。
「それからサクリッド・シルヴァ殿。一応あなたからも事情聴取させてもらう必要があります」
「はい、もちろんです」
サクリッド様は知らなかったとはいえ、彼の部下である弟が犯した罪。
こうなることは彼も知っていたはずだ。
「彼は協力者でもあるの。手荒な尋問はやめるように」
「ええ、心得ておりますとも」
「ライラック様、お気遣い感謝いたします」
「後、亜人の子どもたちも保護したので彼らを家に送り返してあげて」
「かしこまりました。すぐに手配します」
ふぅ……これで引き継ぎは完了かな?
サリーナさんたちが心配しているから、早く屋敷に戻るとしましょう。
「少し狭くなるけど、馬車には乗れそうね」
四人用の馬車だけど子どもが五人ならばなんとかなりそう。
「馬車に乗れるの!?やったぁ!」
「わーい!」
「俺、運転するとこに乗りたい!」
先ほどまで怖い思いをしていただろうに、元気になってくれて嬉しいわ。
こうして私たちはまだざわめく現場を後にしようとした。
そのとき。
「ライラック様、その可憐なる御姿にかの戦乙女のような美しさを感じました。改めて申し上げさせていただきます。お綺麗です」
シェルドがそんなことを言ってきた。
こ、この男は……私が無防備になった瞬間を狙っているのかしら?
「……ありがとう」
私はそれだけしか返すことができずに、馬車へと乗り込んだ。
その後、行きとは違いスピードを落とした馬車の中はにぎやかなものとなり、あっという間に屋敷へと到着した。
「リアット!」
「お母さん!」
そして親子の対面が果たされる。
皆それぞれが抱きしめ合い、子どもたちの無事を喜んだ。
「ライラック様……本当にありがとうございました……」
「いえいえ、サリーナさんやお母さんたちにお子様を無事に帰すことができてよかったです」
「何度お礼を言わせてもらっても、感謝しきれません……本当にお世話になりっぱなしで……」
「いいのです。サリーナさんたちは私の大切な人なのですから」
「ライラック様……」
サリーナさんたちの瞳から涙がこぼれる。
こうも泣かれてしまうと、少し困ってしまった。
だけど、
ぐぅぅぅ……
「あっ……」
リアット君が鳴らしたお腹の音で一気に場は明るくなった。
「うふふ……この子ったら……」
「お腹が空くのは元気な証拠ですね。よろしかったら皆さんで食事していきませんか?」
「これ以上ご迷惑をかけるわけには……」
「お客様を空腹で帰すなんてレミゼラルムーン家の名が廃れますので、ぜひ御一緒に」
サリーナさんや他の母親たちが視線を合わせると、
「それでは、御一緒させていただきます」
にこりと微笑んだ。
「それじゃハオル。ゼオンに言って準備させてちょうだい」
「かしこまりました、姉様」
これまで生きてきた中で一番長い朝だったけれど、皆に笑顔が戻ったことで疲れも吹き飛ぶのだった。
「あら、シェルド。おはよう」
出動要請からすぐにやってきた第一騎士団のシェルド。
相変わらず青い髪はしっかりと整えられており、銀縁眼鏡も輝きを放っている。
「ずいぶんと重装備でいらっしゃいますね」
「そう?こう見えて結構軽いのだけど」
「それにしても電光石火の如き解決でしたね。使者の方から聞きましたが、事件発覚からおよそ二時間ほどですよ」
「少し無茶な捜査だったことは認めるけど、結果良ければ全て良しということね」
「……本当に無茶をされる方だ。冷静沈着なあなたと燃えるような熱を持ったあなた。どちらが本当のあなたなのでしょうか?」
「正解は、どちらも私よ」
「ふふふ、そうですね。愚問でした」
シェルドは微笑んだ後すぐに表情を真剣なものへと戻していく。
「建物内にいるものは全て確保せよ!」
「はっ!」
そして彼の命令で警士たちが一斉に建物の中へと入っていった。
「それからサクリッド・シルヴァ殿。一応あなたからも事情聴取させてもらう必要があります」
「はい、もちろんです」
サクリッド様は知らなかったとはいえ、彼の部下である弟が犯した罪。
こうなることは彼も知っていたはずだ。
「彼は協力者でもあるの。手荒な尋問はやめるように」
「ええ、心得ておりますとも」
「ライラック様、お気遣い感謝いたします」
「後、亜人の子どもたちも保護したので彼らを家に送り返してあげて」
「かしこまりました。すぐに手配します」
ふぅ……これで引き継ぎは完了かな?
サリーナさんたちが心配しているから、早く屋敷に戻るとしましょう。
「少し狭くなるけど、馬車には乗れそうね」
四人用の馬車だけど子どもが五人ならばなんとかなりそう。
「馬車に乗れるの!?やったぁ!」
「わーい!」
「俺、運転するとこに乗りたい!」
先ほどまで怖い思いをしていただろうに、元気になってくれて嬉しいわ。
こうして私たちはまだざわめく現場を後にしようとした。
そのとき。
「ライラック様、その可憐なる御姿にかの戦乙女のような美しさを感じました。改めて申し上げさせていただきます。お綺麗です」
シェルドがそんなことを言ってきた。
こ、この男は……私が無防備になった瞬間を狙っているのかしら?
「……ありがとう」
私はそれだけしか返すことができずに、馬車へと乗り込んだ。
その後、行きとは違いスピードを落とした馬車の中はにぎやかなものとなり、あっという間に屋敷へと到着した。
「リアット!」
「お母さん!」
そして親子の対面が果たされる。
皆それぞれが抱きしめ合い、子どもたちの無事を喜んだ。
「ライラック様……本当にありがとうございました……」
「いえいえ、サリーナさんやお母さんたちにお子様を無事に帰すことができてよかったです」
「何度お礼を言わせてもらっても、感謝しきれません……本当にお世話になりっぱなしで……」
「いいのです。サリーナさんたちは私の大切な人なのですから」
「ライラック様……」
サリーナさんたちの瞳から涙がこぼれる。
こうも泣かれてしまうと、少し困ってしまった。
だけど、
ぐぅぅぅ……
「あっ……」
リアット君が鳴らしたお腹の音で一気に場は明るくなった。
「うふふ……この子ったら……」
「お腹が空くのは元気な証拠ですね。よろしかったら皆さんで食事していきませんか?」
「これ以上ご迷惑をかけるわけには……」
「お客様を空腹で帰すなんてレミゼラルムーン家の名が廃れますので、ぜひ御一緒に」
サリーナさんや他の母親たちが視線を合わせると、
「それでは、御一緒させていただきます」
にこりと微笑んだ。
「それじゃハオル。ゼオンに言って準備させてちょうだい」
「かしこまりました、姉様」
これまで生きてきた中で一番長い朝だったけれど、皆に笑顔が戻ったことで疲れも吹き飛ぶのだった。
0
あなたにおすすめの小説
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
夫と愛し合った翌朝、一方的に離縁されました【完結】
星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
美しい公爵夫人マルグリートは、冷徹な夫ディートリヒと共に、王国の裏で密かに任務をこなす“悪女”。
だがある日、突然夫から離婚を言い渡される。しかもその裏には、平民の愛人の存在が──。
失意の中、王命で新たな婚約者・エルンストと結ばれることに。
どうやら今回の離婚再婚は、王家の陰謀があるよう。
「悪女に、遠慮はいらない」
そう決意した彼女は、華やかな舞踏会で王に真っ向から言い放つ。
「わたくし、人の家庭を壊しておきながら悪びれない方に、下げる頭は持っていませんの。
王族であられる前に、人におなりくださいませ。……失礼」
愛も、誇りも奪われたなら──
今度はこの手で、すべてを取り戻すだけ。
裏切りに燃える、痛快リベンジ・ロマンス!
⚠️本作は AI の生成した文章を一部に使っています。タイトル変えました。コメディーです。主人公は悪女です。
冷遇された没落姫は、風に乗せて真実を詠う ─残り香の檻─
あとりえむ
恋愛
「お前の練る香など、埃と同じだ」
没落した名家の姫・瑠璃は、冷酷な夫・道隆に蔑まれ、極寒の離れに追いやられていた。夫の隣には、贅を尽くした香料を纏う愛人の明子。
しかし道隆は知らなかった。瑠璃が魂を削って練り上げた香は、焚く者の心根を映し出す「真実の鏡」であることを。
瑠璃が最後に残した香の種を、明子が盗み出し、手柄を偽って帝の前で焚き上げた瞬間。美しき夢は、獣の死臭が漂う地獄へと変貌する。
「この香りの主を探せ。これほど澄み切った魂が、この都に在るはずだ」
絶望の淵で放たれた一筋の香りに導かれ、孤独な東宮が泥の中に咲く白蓮を見つけ出す。
嘘と虚飾にまみれた貴族社会を、ひとりの調香師が浄化する、雅やかな逆転劇。
美人同僚のおまけとして異世界召喚された私、無能扱いされ王城から追い出される。私の才能を見出してくれた辺境伯様と一緒に田舎でのんびりスローライ
さら
恋愛
美人な同僚の“おまけ”として異世界に召喚された私。けれど、無能だと笑われ王城から追い出されてしまう――。
絶望していた私を拾ってくれたのは、冷徹と噂される辺境伯様でした。
荒れ果てた村で彼の隣に立ちながら、料理を作り、子供たちに針仕事を教え、少しずつ居場所を見つけていく私。
優しい言葉をかけてくれる領民たち、そして、時折見せる辺境伯様の微笑みに、胸がときめいていく……。
華やかな王都で「無能」と追放された女が、辺境で自分の価値を見つけ、誰よりも大切に愛される――。
虐げられた私、ずっと一緒にいた精霊たちの王に愛される〜私が愛し子だなんて知りませんでした〜
ボタニカルseven
恋愛
「今までお世話になりました」
あぁ、これでやっとこの人たちから解放されるんだ。
「セレス様、行きましょう」
「ありがとう、リリ」
私はセレス・バートレイ。四歳の頃に母親がなくなり父がしばらく家を留守にしたかと思えば愛人とその子供を連れてきた。私はそれから今までその愛人と子供に虐げられてきた。心が折れそうになった時だってあったが、いつも隣で見守ってきてくれた精霊たちが支えてくれた。
ある日精霊たちはいった。
「あの方が迎えに来る」
カクヨム/なろう様でも連載させていただいております
蔑ろにされた王妃と見限られた国王
奏千歌
恋愛
※最初に公開したプロット版はカクヨムで公開しています
国王陛下には愛する女性がいた。
彼女は陛下の初恋の相手で、陛下はずっと彼女を想い続けて、そして大切にしていた。
私は、そんな陛下と結婚した。
国と王家のために、私達は結婚しなければならなかったから、結婚すれば陛下も少しは変わるのではと期待していた。
でも結果は……私の理想を打ち砕くものだった。
そしてもう一つ。
私も陛下も知らないことがあった。
彼女のことを。彼女の正体を。
彼女にも愛する人がいた
まるまる⭐️
恋愛
既に冷たくなった王妃を見つけたのは、彼女に食事を運んで来た侍女だった。
「宮廷医の見立てでは、王妃様の死因は餓死。然も彼が言うには、王妃様は亡くなってから既に2、3日は経過しているだろうとの事でした」
そう宰相から報告を受けた俺は、自分の耳を疑った。
餓死だと? この王宮で?
彼女は俺の従兄妹で隣国ジルハイムの王女だ。
俺の背中を嫌な汗が流れた。
では、亡くなってから今日まで、彼女がいない事に誰も気付きもしなかったと言うのか…?
そんな馬鹿な…。信じられなかった。
だがそんな俺を他所に宰相は更に告げる。
「亡くなった王妃様は陛下の子を懐妊されておりました」と…。
彼女がこの国へ嫁いで来て2年。漸く子が出来た事をこんな形で知るなんて…。
俺はその報告に愕然とした。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる