33 / 88
ギゼルを成敗いたします
しおりを挟む
「三階の一番奥の部屋……ここね」
目の前にある大きな木製の扉には竜の装飾が施されている。
「竜なんて贅沢ね。コソコソ引きこもっているならネズミでもいいでしょうに」
すっかりと静かになった通路を歩いて到着したギゼルがいると思しき、部屋の前で私は愚痴る。
コンコン。
そして一応の礼儀を示し、扉をノックした。
シーン……
だが、何も返ってこない。
「あら?留守かしら?」
コンコン。
私は再度ノックをするが返答はない。
「留守じゃしょうがないわね」
ガァン!
一歩後ろに下がり、扉の中央にある鍵穴に拳をぶつけた。
バキバキ!
すると木製の扉は吹き飛び、バタンと倒れていく。
「あら、いるじゃない」
立派な執務机が中央にあり、その左奥にベッドがある。
その上に銃をこちらに向けむ男がいた。
ヤギのような角に長い灰色の髪に赤い瞳。
サクリッド様と良く似た風貌だけど、顔には恐怖の色が強い。
「な、なんだ貴様は!?」
「あなたがギゼル?」
「そうだ!」
「はじめまして。私、ライラック・レミゼラルムーンと申します。奪われたものを取り返しにこさせていただきました」
「お、俺は何も奪っていない!」
「子どもを販売するオークションを行っているのでしょう?だけどもグリオン男爵が捕まったおかげで子どもたちを密入国させられなくなった。なので身近なところから拐っていったというわけなのよね?」
「す、全て言いがかりだ!証拠はあるのか!」
「私が証拠ね」
「は、はぁ……?」
「消去法よ。あなたしか容疑者がいないの。万が一、違ってたらごめんなさいね?運が悪かったと思ってあきらめて」
「そんなバカな話が許されてたまるかぁ!」
タァン!
ギゼルの持つ魔導銃が放たれた。
一条の雷撃が私に襲いかかってくるけど、右手でサッと払いのける。
「あ、ああ……」
「上手くやっていたようだけれど、あなた今日でおしまいよ」
「俺は、兄貴に代わってこの街のトップに……」
「なれるわけないでしょう?あなたどれだけ視野も思考も甘いのかしら?そんなレベルじゃ今のあなたの立場も分不相応だわ。どうせお兄さんの名前を使ってのし上がったのでしょうね」
「うるせぇ!」
私の指摘にギゼルは顔を真っ赤にして怒鳴る。
「あの野郎がいなきゃ俺がトップだったんだ!」
「逆よ逆。あんな立派なお兄さんがいたからあなたはここまでの立場に立てた。甘ったれるのもいい加減になさい」
「黙れぇぇぇ!」
逆上したギゼルは傍に置いてあった剣で私に襲いかかってくる。
けれども一切の脅威を感じず、私は手甲でその剣を掴んだ。
「こ、この馬鹿力が!」
「その汚い口、もう聞き飽きたわ」
ドスッ!
「ガフッ!」
「一応手加減してあげたけど、あばらの一本くらいは覚悟しておきなさい」
私はギゼルの腹にほどほどの力で拳を放った。
するとガックリとうなだれて、倒れていった。
(これで一件落着といけばいいのだけれど……ああ腹立つわね。もう一発蹴っておくとしましょう)
ドガッ。
気を失っているギゼルの横顔を軽く蹴り上げてあげる。
(ふぅ……少しはスッキリしたわ)
「お嬢様」
「あら、あなたは諜報部の人ね」
顔を黒頭巾で隠した男性が背後から話しかけてきた。
「はっ。賊の調査をし、判明したのでこちらに来てみたのですが……全て終わった後のようですね」
「子どもたちは?」
「ハオル様が保護なさり、外で待っています」
「先に帰りなさいと言っておいたのに?」
「それが、子どもたちがお嬢様と一緒じゃないと嫌だと申しておりまして……」
「わかったわ。みんな怪我はないのね?」
「はい」
もし怪我でもしていたらもう一発蹴ってやろうかと思ったけれど、ギゼル助かったわね。
「それはよかったわ」
「あと、亜人の子どもたちが数人いるのですが、どうしますか?」
「他の街の子?」
「いいえ、どうやらこの街の子どもだそうです」
「呆れた。同族だけではなく同胞からも拐っていたの?心底のクズね」
私は背中をグリグリと踏んであげる。
「……」
「どうかした?」
「いえ、少し羨ましいと思いまして……」
「……趣味は人それぞれだけど。ほどほどになさいね?」
「お言葉ありがとうございます」
「あと、騎士団を呼んでくれる?誘拐に密売、武器不法所持といくらでも罪状は出てくるだろうから」
「はっ」
私は倒れ込んだままのギゼルをその場に残し、この場を後にした。
「「「おねえちゃん!!!」」」
「みんなごめんなさいね。怖い思いをさせて」
外に出るとアルト君、カミーシャちゃん、レイト君、ミミちゃんが私に抱きついてきた。
リアット君もハオルの隣で笑顔でいるし、サクリッド様も亜人の子どもたちに囲まれて微笑んでいる。
よかった。
「リアット君、ありがとう。この子たちを励ましてくれたって聞いたわ」
「……僕はお兄ちゃんだから」
「うふふ、偉いわ」
「……あのねライラック様」
「なぁに?」
「握手してもらってもいい?」
「ええ、いいわよ」
私は右手の手甲を取り、素手でリアット君の手を握った。
するとリアット君は、私の手の甲を上に向けて、
「ありがとうございました」
チュッと手にキスをくれた。
「ふふふ……どういたしまして」
こうして誘拐事件は無事に解決となった。
そんな微笑ましい様子の一方で、
「我慢したまえ……子どものやることではないか?」
「くぅぅぅ……!」
ハオルを羽交い締めするサクリッドの姿があったという。
目の前にある大きな木製の扉には竜の装飾が施されている。
「竜なんて贅沢ね。コソコソ引きこもっているならネズミでもいいでしょうに」
すっかりと静かになった通路を歩いて到着したギゼルがいると思しき、部屋の前で私は愚痴る。
コンコン。
そして一応の礼儀を示し、扉をノックした。
シーン……
だが、何も返ってこない。
「あら?留守かしら?」
コンコン。
私は再度ノックをするが返答はない。
「留守じゃしょうがないわね」
ガァン!
一歩後ろに下がり、扉の中央にある鍵穴に拳をぶつけた。
バキバキ!
すると木製の扉は吹き飛び、バタンと倒れていく。
「あら、いるじゃない」
立派な執務机が中央にあり、その左奥にベッドがある。
その上に銃をこちらに向けむ男がいた。
ヤギのような角に長い灰色の髪に赤い瞳。
サクリッド様と良く似た風貌だけど、顔には恐怖の色が強い。
「な、なんだ貴様は!?」
「あなたがギゼル?」
「そうだ!」
「はじめまして。私、ライラック・レミゼラルムーンと申します。奪われたものを取り返しにこさせていただきました」
「お、俺は何も奪っていない!」
「子どもを販売するオークションを行っているのでしょう?だけどもグリオン男爵が捕まったおかげで子どもたちを密入国させられなくなった。なので身近なところから拐っていったというわけなのよね?」
「す、全て言いがかりだ!証拠はあるのか!」
「私が証拠ね」
「は、はぁ……?」
「消去法よ。あなたしか容疑者がいないの。万が一、違ってたらごめんなさいね?運が悪かったと思ってあきらめて」
「そんなバカな話が許されてたまるかぁ!」
タァン!
ギゼルの持つ魔導銃が放たれた。
一条の雷撃が私に襲いかかってくるけど、右手でサッと払いのける。
「あ、ああ……」
「上手くやっていたようだけれど、あなた今日でおしまいよ」
「俺は、兄貴に代わってこの街のトップに……」
「なれるわけないでしょう?あなたどれだけ視野も思考も甘いのかしら?そんなレベルじゃ今のあなたの立場も分不相応だわ。どうせお兄さんの名前を使ってのし上がったのでしょうね」
「うるせぇ!」
私の指摘にギゼルは顔を真っ赤にして怒鳴る。
「あの野郎がいなきゃ俺がトップだったんだ!」
「逆よ逆。あんな立派なお兄さんがいたからあなたはここまでの立場に立てた。甘ったれるのもいい加減になさい」
「黙れぇぇぇ!」
逆上したギゼルは傍に置いてあった剣で私に襲いかかってくる。
けれども一切の脅威を感じず、私は手甲でその剣を掴んだ。
「こ、この馬鹿力が!」
「その汚い口、もう聞き飽きたわ」
ドスッ!
「ガフッ!」
「一応手加減してあげたけど、あばらの一本くらいは覚悟しておきなさい」
私はギゼルの腹にほどほどの力で拳を放った。
するとガックリとうなだれて、倒れていった。
(これで一件落着といけばいいのだけれど……ああ腹立つわね。もう一発蹴っておくとしましょう)
ドガッ。
気を失っているギゼルの横顔を軽く蹴り上げてあげる。
(ふぅ……少しはスッキリしたわ)
「お嬢様」
「あら、あなたは諜報部の人ね」
顔を黒頭巾で隠した男性が背後から話しかけてきた。
「はっ。賊の調査をし、判明したのでこちらに来てみたのですが……全て終わった後のようですね」
「子どもたちは?」
「ハオル様が保護なさり、外で待っています」
「先に帰りなさいと言っておいたのに?」
「それが、子どもたちがお嬢様と一緒じゃないと嫌だと申しておりまして……」
「わかったわ。みんな怪我はないのね?」
「はい」
もし怪我でもしていたらもう一発蹴ってやろうかと思ったけれど、ギゼル助かったわね。
「それはよかったわ」
「あと、亜人の子どもたちが数人いるのですが、どうしますか?」
「他の街の子?」
「いいえ、どうやらこの街の子どもだそうです」
「呆れた。同族だけではなく同胞からも拐っていたの?心底のクズね」
私は背中をグリグリと踏んであげる。
「……」
「どうかした?」
「いえ、少し羨ましいと思いまして……」
「……趣味は人それぞれだけど。ほどほどになさいね?」
「お言葉ありがとうございます」
「あと、騎士団を呼んでくれる?誘拐に密売、武器不法所持といくらでも罪状は出てくるだろうから」
「はっ」
私は倒れ込んだままのギゼルをその場に残し、この場を後にした。
「「「おねえちゃん!!!」」」
「みんなごめんなさいね。怖い思いをさせて」
外に出るとアルト君、カミーシャちゃん、レイト君、ミミちゃんが私に抱きついてきた。
リアット君もハオルの隣で笑顔でいるし、サクリッド様も亜人の子どもたちに囲まれて微笑んでいる。
よかった。
「リアット君、ありがとう。この子たちを励ましてくれたって聞いたわ」
「……僕はお兄ちゃんだから」
「うふふ、偉いわ」
「……あのねライラック様」
「なぁに?」
「握手してもらってもいい?」
「ええ、いいわよ」
私は右手の手甲を取り、素手でリアット君の手を握った。
するとリアット君は、私の手の甲を上に向けて、
「ありがとうございました」
チュッと手にキスをくれた。
「ふふふ……どういたしまして」
こうして誘拐事件は無事に解決となった。
そんな微笑ましい様子の一方で、
「我慢したまえ……子どものやることではないか?」
「くぅぅぅ……!」
ハオルを羽交い締めするサクリッドの姿があったという。
0
あなたにおすすめの小説
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
冷遇された没落姫は、風に乗せて真実を詠う ─残り香の檻─
あとりえむ
恋愛
「お前の練る香など、埃と同じだ」
没落した名家の姫・瑠璃は、冷酷な夫・道隆に蔑まれ、極寒の離れに追いやられていた。夫の隣には、贅を尽くした香料を纏う愛人の明子。
しかし道隆は知らなかった。瑠璃が魂を削って練り上げた香は、焚く者の心根を映し出す「真実の鏡」であることを。
瑠璃が最後に残した香の種を、明子が盗み出し、手柄を偽って帝の前で焚き上げた瞬間。美しき夢は、獣の死臭が漂う地獄へと変貌する。
「この香りの主を探せ。これほど澄み切った魂が、この都に在るはずだ」
絶望の淵で放たれた一筋の香りに導かれ、孤独な東宮が泥の中に咲く白蓮を見つけ出す。
嘘と虚飾にまみれた貴族社会を、ひとりの調香師が浄化する、雅やかな逆転劇。
夫と愛し合った翌朝、一方的に離縁されました【完結】
星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
美しい公爵夫人マルグリートは、冷徹な夫ディートリヒと共に、王国の裏で密かに任務をこなす“悪女”。
だがある日、突然夫から離婚を言い渡される。しかもその裏には、平民の愛人の存在が──。
失意の中、王命で新たな婚約者・エルンストと結ばれることに。
どうやら今回の離婚再婚は、王家の陰謀があるよう。
「悪女に、遠慮はいらない」
そう決意した彼女は、華やかな舞踏会で王に真っ向から言い放つ。
「わたくし、人の家庭を壊しておきながら悪びれない方に、下げる頭は持っていませんの。
王族であられる前に、人におなりくださいませ。……失礼」
愛も、誇りも奪われたなら──
今度はこの手で、すべてを取り戻すだけ。
裏切りに燃える、痛快リベンジ・ロマンス!
⚠️本作は AI の生成した文章を一部に使っています。タイトル変えました。コメディーです。主人公は悪女です。
蔑ろにされた王妃と見限られた国王
奏千歌
恋愛
※最初に公開したプロット版はカクヨムで公開しています
国王陛下には愛する女性がいた。
彼女は陛下の初恋の相手で、陛下はずっと彼女を想い続けて、そして大切にしていた。
私は、そんな陛下と結婚した。
国と王家のために、私達は結婚しなければならなかったから、結婚すれば陛下も少しは変わるのではと期待していた。
でも結果は……私の理想を打ち砕くものだった。
そしてもう一つ。
私も陛下も知らないことがあった。
彼女のことを。彼女の正体を。
虐げられた私、ずっと一緒にいた精霊たちの王に愛される〜私が愛し子だなんて知りませんでした〜
ボタニカルseven
恋愛
「今までお世話になりました」
あぁ、これでやっとこの人たちから解放されるんだ。
「セレス様、行きましょう」
「ありがとう、リリ」
私はセレス・バートレイ。四歳の頃に母親がなくなり父がしばらく家を留守にしたかと思えば愛人とその子供を連れてきた。私はそれから今までその愛人と子供に虐げられてきた。心が折れそうになった時だってあったが、いつも隣で見守ってきてくれた精霊たちが支えてくれた。
ある日精霊たちはいった。
「あの方が迎えに来る」
カクヨム/なろう様でも連載させていただいております
彼女にも愛する人がいた
まるまる⭐️
恋愛
既に冷たくなった王妃を見つけたのは、彼女に食事を運んで来た侍女だった。
「宮廷医の見立てでは、王妃様の死因は餓死。然も彼が言うには、王妃様は亡くなってから既に2、3日は経過しているだろうとの事でした」
そう宰相から報告を受けた俺は、自分の耳を疑った。
餓死だと? この王宮で?
彼女は俺の従兄妹で隣国ジルハイムの王女だ。
俺の背中を嫌な汗が流れた。
では、亡くなってから今日まで、彼女がいない事に誰も気付きもしなかったと言うのか…?
そんな馬鹿な…。信じられなかった。
だがそんな俺を他所に宰相は更に告げる。
「亡くなった王妃様は陛下の子を懐妊されておりました」と…。
彼女がこの国へ嫁いで来て2年。漸く子が出来た事をこんな形で知るなんて…。
俺はその報告に愕然とした。
ワザとダサくしてたら婚約破棄されたので隣国に行きます!
satomi
恋愛
ワザと瓶底メガネで三つ編みで、生活をしていたら、「自分の隣に相応しくない」という理由でこのフッラクション王国の王太子であられます、ダミアン殿下であらせられます、ダミアン殿下に婚約破棄をされました。
私はホウショウ公爵家の次女でコリーナと申します。
私の容姿で婚約破棄をされたことに対して私付きの侍女のルナは大激怒。
お父様は「結婚前に王太子が人を見てくれだけで判断していることが分かって良かった」と。
眼鏡をやめただけで、学園内での手の平返しが酷かったので、私は父の妹、叔母様を頼りに隣国のリーク帝国に留学することとしました!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる