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一年生
休日はのんびりと過ごします
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すぅ……はぁ……
「ああ、体中に染み渡るぅ……」
まるでお年寄りのようですね。
ベッドの上で大きく息を吸うと、大気に含まれる魔力といったものが体中に廻っていくのをしみじみと感じた。
ここ最近は息を吸ってもそれ以上に何かが出ていっていたので、こんな風にまったりと出来る余裕は何事にも変えがたい喜びである。
俺は気づいたんだ。
落ち着いて呼吸ができるって、最高に幸せなんだって……
まったく最近の若者はたるんでいるようですね。
あの質の訓練は私の騎士団では通常訓練でしたが?
ファーナの騎士団の人はどんなふうにこなしていたんだよ……
それはもう無言で一糸乱れずにこなし、彼らの足並みは素晴らしいものでしたね。
そして訓練後は陽気に笑っていたものです。
……完全に人じゃねぇ。
平和は大事にしないとな……
俺はしみじみと思いながら、まだ深く残る疲労を追い出していく。
そうして、休日の初日は自室に引きこもり、これ以上ないくらいにゆっくりと過ごした。
コンコン。
「カイー?ご飯行こうよ」
「おっ、もうそんな時間か?」
扉の外からのルースの誘う声に気づくと、夕食時間だった。
俺は部屋から出ると、ルースと二人で食堂へと向かう。
そしていつものテーブル席に座るとすぐに、
「揃っているな」
「お二人ともこんばんはです!」
「こん」
三人娘もやってきた。
「待ってたよ」
「うん、こんばんは」
俺たちは挨拶を交わしたのち、
「「「いただきます」」」
食事を始めていく。
「みんなゆっくりと休めたか?俺はまだ体が痛いんだけど」
「休めはしたが、疲労はなかなかに根深いようで体力魔力ともにまだ万全ではない」
「私も同じくですね。ですが、明日もしっかりと休めば大丈夫そうです」
「わたしも、まだ体が重い……」
「あはは、僕も。こうやってみんな一日で回復してないのを聞くと、限界ギリギリまで訓練したんだなって改めて思うよ」
「そうだな……こうして目を閉じれば懐かしい日々が……」
さあ!走りなさい!召喚獣とともに走り続けるのです!
体力も魔力も言ってしまえば根源は気力です!
ふふふ……さあ気力を燃やしなさい!
実戦だ!実戦こそが一番人を強くする!
さあ闘え!力が欲しいのなら!闘うんだ!
人の何倍もの実戦を積んでいけ!
ガハハハッ!
明鏡止水。
状況判断は冷静に、そして確実に行われなければなりません。
どんなことにも動じない不動の心を持つことが大切ですが、それを邪魔するのは感情です。
戦闘中は無心になれ!
相手が嫌う行動をすることこそが勝利に近づくのだ!
だが貴様らは獣ではない!人の理性だけを持って冷徹に敵を追い詰めていけ!
ふはははははは!
脳裏に三人の先生がいた。
だが、普段の先生たちの姿ではない。
そこにいたのは、まるで鬼神に変貌したかのように変わり果てた姿だ。
……まさに地獄の光景だった。
「この話はやめておこう……」
フレアは魂が抜けたような表情を浮かべたまま硬直し、リーナはすん……っと無表情になり、サリアはふしゃぁぁぁ!っと周囲を威嚇する。
振り返るには早すぎる思い出だ。
「ごめん……」
「と、ところで明日の夕方にみんなで軽く体を動かさないか?準備運動がてらな」
「そ、それはいいね!どうかな!?」
「「「……」」」
俺の提案とルースから話題を振られた三人は、一瞬の硬直の後に、
「それは良い考えだ」
「はい、準備運動は大事ですからね」
「異議なし……」
何事もなかったように普段通りの反応で、賛成の意見が返ってきた。
少しの間思考を停止していた三人だったが、無事戻ってきたようだ。
「それじゃあ寮のロビーに運動着で四時集合ということでいいか?」
その場にいる全員から同意の言葉をもらい、休日初日は過ぎていった。
「さて、準備していくとするか」
時計を確認すると、約束の時間が近くなっている。
俺が運動着に着替えていると、
コンコン。
ガチャ。
「カイー?準備できた?」
ちょうどルースが声をかけに来てくれた。
「もうすぐできるからちょっと待ってくれ」
俺は上半身裸だったが、風呂にも一緒に入った仲だ。
特に気にしないでいると、
「なんだか、たくましくなったね……?」
ルースは恥ずかしそうに俺の方を見ていた。
「そ、そうか?」
「うん、僕ってなかなか筋肉つかないから憧れるよ」
「そ、そういうルースだって細い身体つきだけど引き締まっていてカッコいいと思うぞ?」
「あ、ありがとう……」
お互いに褒め合うという恥ずかしいやり取りをしたのち、いたたまれない静寂が訪れた。
「……僕、先に行くね?」
「あ、ああ、すぐ行くよ」
「うん、待ってる……」
静かに扉が閉まると、パタパタとルースの立ち去っていく音がした。
男同士で甘酸っぱい空気を出さないでいただけますか?
そ、そんな空気は出してない!
あいにくですが、その反論には無理があるでしょう。
うっ……
返す言葉がないとはこのことである。
マスター。
どのような道に進んでも、私はあなたの元にいますので……
急に優しくするんじゃない!
俺はさっさと運動着に着替えて、ロビーへと向かった。
するとすでに俺以外は集まっており、円形のソファーに座って四人で話しているようだ。
俺が近づいていくと、ルースと目が合ってしまう。
「お、お待たせ……待ったか?」
少し気まずく思いながら、声をかけると、
「ううん……そんなに待ってないよ?」
ルースも気まずそうに返事をした。
「貴様ら、何をそんなに照れ合っているのだ?」
「へんなの」
「ず、ズルいですぅぅぅ!」
きょとんとするフレアとサリアだったが、リーナは感情を爆発させた。
「な、なにがズルいのか意味が分からんぞ?」
「いいですか?お待たせ、待った?からのううん……待ってないよ?というのはデートの待ち合わせをした二人の定番な挨拶なんです!」
「なにっ!?」
「それはズルい……」
「はい!ルース君だけズルいと思います!」
三人はじぃぃぃ……っと恨めしそうに見つめてくる。
「いやそんなつもりは全くないぞ!?」
「ぼ、僕もだよ!?」
「いいえ!お二人だけの問題ではありません!私たち三人もルース君と同じように待ったのですからカイ君は私たちにも同じことを言うべきです!」
「ええぇぇぇ……」
なんでこんなめんどくさいことになるのか。
「わ、私は作法が分からんからリーナがお手本を見せてくれ」
「お願い」
「任せてください!」
だが、女子たちの間では話が進んでいるようである。
リーナは立ち上がるとサイドポニーをいじって、こちらをチラッと見てきた。
「お、お待たせ……待った?」
察した俺は、言葉に詰まりながらもご希望の言葉を口にする。
「ううん……待ってないですよ?今来たところですから……」
にこりと微笑むリーナにドキッとしてしまった。
「はぁぁぁ……なんだかふわふわしますぅぅぅ……」
「つ、次は私だ!」
「まけた……かなしい……」
順番はすでに決まっているようだ。
フレアもリーナと同じように立ち上がると、腕を組み仁王立ちをしてこちらをチラッと見ている。
俺はそのポーズはどうなんだ?と思いつつも声をかけた。
「お、お待たせ……待った?」
「い、いや!待っていない!今来たところだからな!」
フレアはポニーテールを揺らし、ふいっとそっぽを向く。
演技が恥ずかしいのか、頬が赤くなっている。
こ、これは……結構いいかもしれない。
「つぎ、わたし」
サリアが見とれている俺の運動着をくいくいっと引っ張ってきた。
「あ、ああ……こほん」
俺が咳払いをするのと同時に、サリアは腕を後ろに回して俺の言葉を待つ。
「お待たせ……待った?」
「うん。はやくいこ?」
むにっ。
サリアは俺の腕にしがみつくと、てくてくと歩き始めた。
それにつられて俺も歩き出す。
あれ?
「リーナ!?あんなのありなのか!?」
「わ、私も知りません!サリアちゃん!?どこからそんな高位スキルを!?」
「お兄ちゃんと待ち合わせしたとき、だいたいこんなかんじだったから変えてみた」
「くぅ!?この甘え上手さん!」
「我らも追いかけるぞ!」
「はい!」
「……あははは!サリアさんは強いなぁ!」
フレアとリーナ、そして笑いをこらえきれなくなったルースが、二人の後を追いかけていく。
明日が親善試合という緊張感はまるでなく、自然体のまま最後の休日が過ぎようとしていた。
「ああ、体中に染み渡るぅ……」
まるでお年寄りのようですね。
ベッドの上で大きく息を吸うと、大気に含まれる魔力といったものが体中に廻っていくのをしみじみと感じた。
ここ最近は息を吸ってもそれ以上に何かが出ていっていたので、こんな風にまったりと出来る余裕は何事にも変えがたい喜びである。
俺は気づいたんだ。
落ち着いて呼吸ができるって、最高に幸せなんだって……
まったく最近の若者はたるんでいるようですね。
あの質の訓練は私の騎士団では通常訓練でしたが?
ファーナの騎士団の人はどんなふうにこなしていたんだよ……
それはもう無言で一糸乱れずにこなし、彼らの足並みは素晴らしいものでしたね。
そして訓練後は陽気に笑っていたものです。
……完全に人じゃねぇ。
平和は大事にしないとな……
俺はしみじみと思いながら、まだ深く残る疲労を追い出していく。
そうして、休日の初日は自室に引きこもり、これ以上ないくらいにゆっくりと過ごした。
コンコン。
「カイー?ご飯行こうよ」
「おっ、もうそんな時間か?」
扉の外からのルースの誘う声に気づくと、夕食時間だった。
俺は部屋から出ると、ルースと二人で食堂へと向かう。
そしていつものテーブル席に座るとすぐに、
「揃っているな」
「お二人ともこんばんはです!」
「こん」
三人娘もやってきた。
「待ってたよ」
「うん、こんばんは」
俺たちは挨拶を交わしたのち、
「「「いただきます」」」
食事を始めていく。
「みんなゆっくりと休めたか?俺はまだ体が痛いんだけど」
「休めはしたが、疲労はなかなかに根深いようで体力魔力ともにまだ万全ではない」
「私も同じくですね。ですが、明日もしっかりと休めば大丈夫そうです」
「わたしも、まだ体が重い……」
「あはは、僕も。こうやってみんな一日で回復してないのを聞くと、限界ギリギリまで訓練したんだなって改めて思うよ」
「そうだな……こうして目を閉じれば懐かしい日々が……」
さあ!走りなさい!召喚獣とともに走り続けるのです!
体力も魔力も言ってしまえば根源は気力です!
ふふふ……さあ気力を燃やしなさい!
実戦だ!実戦こそが一番人を強くする!
さあ闘え!力が欲しいのなら!闘うんだ!
人の何倍もの実戦を積んでいけ!
ガハハハッ!
明鏡止水。
状況判断は冷静に、そして確実に行われなければなりません。
どんなことにも動じない不動の心を持つことが大切ですが、それを邪魔するのは感情です。
戦闘中は無心になれ!
相手が嫌う行動をすることこそが勝利に近づくのだ!
だが貴様らは獣ではない!人の理性だけを持って冷徹に敵を追い詰めていけ!
ふはははははは!
脳裏に三人の先生がいた。
だが、普段の先生たちの姿ではない。
そこにいたのは、まるで鬼神に変貌したかのように変わり果てた姿だ。
……まさに地獄の光景だった。
「この話はやめておこう……」
フレアは魂が抜けたような表情を浮かべたまま硬直し、リーナはすん……っと無表情になり、サリアはふしゃぁぁぁ!っと周囲を威嚇する。
振り返るには早すぎる思い出だ。
「ごめん……」
「と、ところで明日の夕方にみんなで軽く体を動かさないか?準備運動がてらな」
「そ、それはいいね!どうかな!?」
「「「……」」」
俺の提案とルースから話題を振られた三人は、一瞬の硬直の後に、
「それは良い考えだ」
「はい、準備運動は大事ですからね」
「異議なし……」
何事もなかったように普段通りの反応で、賛成の意見が返ってきた。
少しの間思考を停止していた三人だったが、無事戻ってきたようだ。
「それじゃあ寮のロビーに運動着で四時集合ということでいいか?」
その場にいる全員から同意の言葉をもらい、休日初日は過ぎていった。
「さて、準備していくとするか」
時計を確認すると、約束の時間が近くなっている。
俺が運動着に着替えていると、
コンコン。
ガチャ。
「カイー?準備できた?」
ちょうどルースが声をかけに来てくれた。
「もうすぐできるからちょっと待ってくれ」
俺は上半身裸だったが、風呂にも一緒に入った仲だ。
特に気にしないでいると、
「なんだか、たくましくなったね……?」
ルースは恥ずかしそうに俺の方を見ていた。
「そ、そうか?」
「うん、僕ってなかなか筋肉つかないから憧れるよ」
「そ、そういうルースだって細い身体つきだけど引き締まっていてカッコいいと思うぞ?」
「あ、ありがとう……」
お互いに褒め合うという恥ずかしいやり取りをしたのち、いたたまれない静寂が訪れた。
「……僕、先に行くね?」
「あ、ああ、すぐ行くよ」
「うん、待ってる……」
静かに扉が閉まると、パタパタとルースの立ち去っていく音がした。
男同士で甘酸っぱい空気を出さないでいただけますか?
そ、そんな空気は出してない!
あいにくですが、その反論には無理があるでしょう。
うっ……
返す言葉がないとはこのことである。
マスター。
どのような道に進んでも、私はあなたの元にいますので……
急に優しくするんじゃない!
俺はさっさと運動着に着替えて、ロビーへと向かった。
するとすでに俺以外は集まっており、円形のソファーに座って四人で話しているようだ。
俺が近づいていくと、ルースと目が合ってしまう。
「お、お待たせ……待ったか?」
少し気まずく思いながら、声をかけると、
「ううん……そんなに待ってないよ?」
ルースも気まずそうに返事をした。
「貴様ら、何をそんなに照れ合っているのだ?」
「へんなの」
「ず、ズルいですぅぅぅ!」
きょとんとするフレアとサリアだったが、リーナは感情を爆発させた。
「な、なにがズルいのか意味が分からんぞ?」
「いいですか?お待たせ、待った?からのううん……待ってないよ?というのはデートの待ち合わせをした二人の定番な挨拶なんです!」
「なにっ!?」
「それはズルい……」
「はい!ルース君だけズルいと思います!」
三人はじぃぃぃ……っと恨めしそうに見つめてくる。
「いやそんなつもりは全くないぞ!?」
「ぼ、僕もだよ!?」
「いいえ!お二人だけの問題ではありません!私たち三人もルース君と同じように待ったのですからカイ君は私たちにも同じことを言うべきです!」
「ええぇぇぇ……」
なんでこんなめんどくさいことになるのか。
「わ、私は作法が分からんからリーナがお手本を見せてくれ」
「お願い」
「任せてください!」
だが、女子たちの間では話が進んでいるようである。
リーナは立ち上がるとサイドポニーをいじって、こちらをチラッと見てきた。
「お、お待たせ……待った?」
察した俺は、言葉に詰まりながらもご希望の言葉を口にする。
「ううん……待ってないですよ?今来たところですから……」
にこりと微笑むリーナにドキッとしてしまった。
「はぁぁぁ……なんだかふわふわしますぅぅぅ……」
「つ、次は私だ!」
「まけた……かなしい……」
順番はすでに決まっているようだ。
フレアもリーナと同じように立ち上がると、腕を組み仁王立ちをしてこちらをチラッと見ている。
俺はそのポーズはどうなんだ?と思いつつも声をかけた。
「お、お待たせ……待った?」
「い、いや!待っていない!今来たところだからな!」
フレアはポニーテールを揺らし、ふいっとそっぽを向く。
演技が恥ずかしいのか、頬が赤くなっている。
こ、これは……結構いいかもしれない。
「つぎ、わたし」
サリアが見とれている俺の運動着をくいくいっと引っ張ってきた。
「あ、ああ……こほん」
俺が咳払いをするのと同時に、サリアは腕を後ろに回して俺の言葉を待つ。
「お待たせ……待った?」
「うん。はやくいこ?」
むにっ。
サリアは俺の腕にしがみつくと、てくてくと歩き始めた。
それにつられて俺も歩き出す。
あれ?
「リーナ!?あんなのありなのか!?」
「わ、私も知りません!サリアちゃん!?どこからそんな高位スキルを!?」
「お兄ちゃんと待ち合わせしたとき、だいたいこんなかんじだったから変えてみた」
「くぅ!?この甘え上手さん!」
「我らも追いかけるぞ!」
「はい!」
「……あははは!サリアさんは強いなぁ!」
フレアとリーナ、そして笑いをこらえきれなくなったルースが、二人の後を追いかけていく。
明日が親善試合という緊張感はまるでなく、自然体のまま最後の休日が過ぎようとしていた。
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