召喚されたリビングメイルは女騎士のものでした

think

文字の大きさ
27 / 179
一年生

休日はのんびりと過ごします

しおりを挟む
すぅ……はぁ……

「ああ、体中に染み渡るぅ……」

まるでお年寄りのようですね。

ベッドの上で大きく息を吸うと、大気に含まれる魔力といったものが体中に廻っていくのをしみじみと感じた。
ここ最近は息を吸ってもそれ以上に何かが出ていっていたので、こんな風にまったりと出来る余裕は何事にも変えがたい喜びである。

俺は気づいたんだ。
落ち着いて呼吸ができるって、最高に幸せなんだって……

まったく最近の若者はたるんでいるようですね。
あの質の訓練は私の騎士団では通常訓練でしたが?

ファーナの騎士団の人はどんなふうにこなしていたんだよ……

それはもう無言で一糸乱れずにこなし、彼らの足並みは素晴らしいものでしたね。
そして訓練後は陽気に笑っていたものです。

……完全に人じゃねぇ。
平和は大事にしないとな……
俺はしみじみと思いながら、まだ深く残る疲労を追い出していく。
そうして、休日の初日は自室に引きこもり、これ以上ないくらいにゆっくりと過ごした。

コンコン。

「カイー?ご飯行こうよ」

「おっ、もうそんな時間か?」

扉の外からのルースの誘う声に気づくと、夕食時間だった。
俺は部屋から出ると、ルースと二人で食堂へと向かう。
そしていつものテーブル席に座るとすぐに、

「揃っているな」

「お二人ともこんばんはです!」

「こん」

三人娘もやってきた。

「待ってたよ」

「うん、こんばんは」

俺たちは挨拶を交わしたのち、

「「「いただきます」」」

食事を始めていく。

「みんなゆっくりと休めたか?俺はまだ体が痛いんだけど」

「休めはしたが、疲労はなかなかに根深いようで体力魔力ともにまだ万全ではない」

「私も同じくですね。ですが、明日もしっかりと休めば大丈夫そうです」

「わたしも、まだ体が重い……」

「あはは、僕も。こうやってみんな一日で回復してないのを聞くと、限界ギリギリまで訓練したんだなって改めて思うよ」

「そうだな……こうして目を閉じれば懐かしい日々が……」

さあ!走りなさい!召喚獣とともに走り続けるのです!
体力も魔力も言ってしまえば根源は気力です!
ふふふ……さあ気力を燃やしなさい!

実戦だ!実戦こそが一番人を強くする!
さあ闘え!力が欲しいのなら!闘うんだ!
人の何倍もの実戦を積んでいけ!
ガハハハッ!

明鏡止水。
状況判断は冷静に、そして確実に行われなければなりません。
どんなことにも動じない不動の心を持つことが大切ですが、それを邪魔するのは感情です。
戦闘中は無心になれ!
相手が嫌う行動をすることこそが勝利に近づくのだ!
だが貴様らは獣ではない!人の理性だけを持って冷徹に敵を追い詰めていけ!
ふはははははは!

脳裏に三人の先生がいた。
だが、普段の先生たちの姿ではない。
そこにいたのは、まるで鬼神に変貌したかのように変わり果てた姿だ。
……まさに地獄の光景だった。

「この話はやめておこう……」

フレアは魂が抜けたような表情を浮かべたまま硬直し、リーナはすん……っと無表情になり、サリアはふしゃぁぁぁ!っと周囲を威嚇する。
振り返るには早すぎる思い出だ。

「ごめん……」

「と、ところで明日の夕方にみんなで軽く体を動かさないか?準備運動がてらな」

「そ、それはいいね!どうかな!?」

「「「……」」」

俺の提案とルースから話題を振られた三人は、一瞬の硬直の後に、

「それは良い考えだ」

「はい、準備運動は大事ですからね」

「異議なし……」

何事もなかったように普段通りの反応で、賛成の意見が返ってきた。
少しの間思考を停止していた三人だったが、無事戻ってきたようだ。

「それじゃあ寮のロビーに運動着で四時集合ということでいいか?」

その場にいる全員から同意の言葉をもらい、休日初日は過ぎていった。

「さて、準備していくとするか」

時計を確認すると、約束の時間が近くなっている。
俺が運動着に着替えていると、

コンコン。
ガチャ。

「カイー?準備できた?」

ちょうどルースが声をかけに来てくれた。

「もうすぐできるからちょっと待ってくれ」

俺は上半身裸だったが、風呂にも一緒に入った仲だ。
特に気にしないでいると、

「なんだか、たくましくなったね……?」

ルースは恥ずかしそうに俺の方を見ていた。

「そ、そうか?」

「うん、僕ってなかなか筋肉つかないから憧れるよ」

「そ、そういうルースだって細い身体つきだけど引き締まっていてカッコいいと思うぞ?」

「あ、ありがとう……」

お互いに褒め合うという恥ずかしいやり取りをしたのち、いたたまれない静寂が訪れた。

「……僕、先に行くね?」

「あ、ああ、すぐ行くよ」

「うん、待ってる……」

静かに扉が閉まると、パタパタとルースの立ち去っていく音がした。

男同士で甘酸っぱい空気を出さないでいただけますか?

そ、そんな空気は出してない!

あいにくですが、その反論には無理があるでしょう。

うっ……

返す言葉がないとはこのことである。

マスター。
どのような道に進んでも、私はあなたの元にいますので……

急に優しくするんじゃない!

俺はさっさと運動着に着替えて、ロビーへと向かった。
するとすでに俺以外は集まっており、円形のソファーに座って四人で話しているようだ。
俺が近づいていくと、ルースと目が合ってしまう。

「お、お待たせ……待ったか?」

少し気まずく思いながら、声をかけると、

「ううん……そんなに待ってないよ?」

ルースも気まずそうに返事をした。

「貴様ら、何をそんなに照れ合っているのだ?」

「へんなの」

「ず、ズルいですぅぅぅ!」

きょとんとするフレアとサリアだったが、リーナは感情を爆発させた。

「な、なにがズルいのか意味が分からんぞ?」

「いいですか?お待たせ、待った?からのううん……待ってないよ?というのはデートの待ち合わせをした二人の定番な挨拶なんです!」

「なにっ!?」

「それはズルい……」

「はい!ルース君だけズルいと思います!」

三人はじぃぃぃ……っと恨めしそうに見つめてくる。

「いやそんなつもりは全くないぞ!?」

「ぼ、僕もだよ!?」

「いいえ!お二人だけの問題ではありません!私たち三人もルース君と同じように待ったのですからカイ君は私たちにも同じことを言うべきです!」

「ええぇぇぇ……」

なんでこんなめんどくさいことになるのか。

「わ、私は作法が分からんからリーナがお手本を見せてくれ」

「お願い」

「任せてください!」

だが、女子たちの間では話が進んでいるようである。

リーナは立ち上がるとサイドポニーをいじって、こちらをチラッと見てきた。

「お、お待たせ……待った?」

察した俺は、言葉に詰まりながらもご希望の言葉を口にする。

「ううん……待ってないですよ?今来たところですから……」

にこりと微笑むリーナにドキッとしてしまった。

「はぁぁぁ……なんだかふわふわしますぅぅぅ……」

「つ、次は私だ!」

「まけた……かなしい……」

順番はすでに決まっているようだ。

フレアもリーナと同じように立ち上がると、腕を組み仁王立ちをしてこちらをチラッと見ている。

俺はそのポーズはどうなんだ?と思いつつも声をかけた。

「お、お待たせ……待った?」

「い、いや!待っていない!今来たところだからな!」

フレアはポニーテールを揺らし、ふいっとそっぽを向く。
演技が恥ずかしいのか、頬が赤くなっている。

こ、これは……結構いいかもしれない。

「つぎ、わたし」

サリアが見とれている俺の運動着をくいくいっと引っ張ってきた。

「あ、ああ……こほん」

俺が咳払いをするのと同時に、サリアは腕を後ろに回して俺の言葉を待つ。

「お待たせ……待った?」

「うん。はやくいこ?」

むにっ。

サリアは俺の腕にしがみつくと、てくてくと歩き始めた。
それにつられて俺も歩き出す。

あれ?

「リーナ!?あんなのありなのか!?」

「わ、私も知りません!サリアちゃん!?どこからそんな高位スキルを!?」

「お兄ちゃんと待ち合わせしたとき、だいたいこんなかんじだったから変えてみた」

「くぅ!?この甘え上手さん!」

「我らも追いかけるぞ!」

「はい!」

「……あははは!サリアさんは強いなぁ!」

フレアとリーナ、そして笑いをこらえきれなくなったルースが、二人の後を追いかけていく。

明日が親善試合という緊張感はまるでなく、自然体のまま最後の休日が過ぎようとしていた。
しおりを挟む
感想 44

あなたにおすすめの小説

ダンジョン冒険者にラブコメはいらない(多分)~正体を隠して普通の生活を送る男子高生、実は最近注目の高ランク冒険者だった~

エース皇命
ファンタジー
 学校では正体を隠し、普通の男子高校生を演じている黒瀬才斗。実は仕事でダンジョンに潜っている、最近話題のAランク冒険者だった。  そんな黒瀬の通う高校に突如転校してきた白桃楓香。初対面なのにも関わらず、なぜかいきなり黒瀬に抱きつくという奇行に出る。 「才斗くん、これからよろしくお願いしますねっ」  なんと白桃は黒瀬の直属の部下として派遣された冒険者であり、以後、同じ家で生活を共にし、ダンジョンでの仕事も一緒にすることになるという。  これは、上級冒険者の黒瀬と、美少女転校生の純愛ラブコメディ――ではなく、ちゃんとしたダンジョン・ファンタジー(多分)。 ※小説家になろう、カクヨムでも連載しています。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

距離を置きたい女子たちを助けてしまった結果、正体バレして迫られる

歩く魚
恋愛
 かつて、命を懸けて誰かを助けた日があった。  だがその記憶は、頭を打った衝撃とともに、綺麗さっぱり失われていた。  それは気にしてない。俺は深入りする気はない。  人間は好きだ。けれど、近づきすぎると嫌いになる。  だがそんな俺に、思いもよらぬ刺客が現れる。  ――あの日、俺が助けたのは、できれば関わりたくなかった――距離を置きたい女子たちだったらしい。

社畜だった俺、最弱のダンジョンマスターに転生したので、冒険者を癒やす喫茶店ダンジョンを経営します

☆ほしい
ファンタジー
過労死した俺が目を覚ますと、そこは異世界のダンジョンコアの前だった。 どうやら俺は、ダンジョンマスターとして転生したらしい。 だが、与えられた俺のダンジョンは最低ランクのF級。魔力を生み出す力は弱く、生み出せる魔物もスライムやゴブリンといった最弱クラスばかり。これでは、冒険者を呼び込んで魔力を得るなんて夢のまた夢だ。 絶望する俺だったが、ダンジョンの創造機能を使えば、内装を自由にデザインできることに気づく。 「……そうだ、喫茶店を開こう」 前世で叶えられなかった夢。俺は戦闘を放棄し、ダンジョンの入り口に木造の喫茶店『やすらぎの隠れ家』を作り上げた。メニューは、前世の知識を活かしたコーヒーと手作りケーキだけ。 ところが、そのコーヒーには異常なまでの疲労回復効果が、ケーキには一時的な能力向上効果が付与されていることが判明。噂を聞きつけた訳ありの冒険者たちが、俺のダンジョンに癒やしを求めて集い始めるのだった。

落ちこぼれの貴族、現地の人達を味方に付けて頑張ります!

ユーリ
ファンタジー
気がつくと、見知らぬ部屋のベッドの上で、状況が理解できず混乱していた僕は、鏡の前に立って、あることを思い出した。 ここはリュカとして生きてきた異世界で、僕は“落ちこぼれ貴族の息子”だった。しかも最悪なことに、さっき行われた絶対失敗出来ない召喚の儀で、僕だけが失敗した。 そのせいで、貴族としての評価は確実に地に落ちる。けれど、両親は超が付くほど過保護だから、家から追い出される心配は……たぶん無い。 問題は一つ。 兄様との関係が、どうしようもなく悪い。 僕は両親に甘やかされ、勉強もサボり放題。その積み重ねのせいで、兄様との距離は遠く、話しかけるだけで気まずい空気に。 このまま兄様が家督を継いだら、屋敷から追い出されるかもしれない! 追い出されないように兄様との関係を改善し、いざ追い出されても生きていけるように勉強して強くなる!……のはずが、勉強をサボっていたせいで、一般常識すら分からないところからのスタートだった。 それでも、兄様との距離を縮めようと努力しているのに、なかなか縮まらない! むしろ避けられてる気さえする!! それでもめげずに、今日も兄様との関係修復、頑張ります! 5/9から小説になろうでも掲載中

【もうダメだ!】貧乏大学生、絶望から一気に成り上がる〜もし、無属性でFランクの俺が異文明の魔道兵器を担いでダンジョンに潜ったら〜

KEINO
ファンタジー
貧乏大学生の探索者はダンジョンに潜り、全てを覆す。 ~あらすじ~ 世界に突如出現した異次元空間「ダンジョン」。 そこから産出される魔石は人類に無限のエネルギーをもたらし、アーティファクトは魔法の力を授けた。 しかし、その恩恵は平等ではなかった。 富と力はダンジョン利権を牛耳る企業と、「属性適性」という特別な才能を持つ「選ばれし者」たちに独占され、世界は新たな格差社会へと変貌していた。 そんな歪んだ現代日本で、及川翔は「無属性」という最底辺の烙印を押された青年だった。 彼には魔法の才能も、富も、未来への希望もない。 あるのは、両親を失った二年前のダンジョン氾濫で、原因不明の昏睡状態に陥った最愛の妹、美咲を救うという、ただ一つの願いだけだった。 妹を治すため、彼は最先端の「魔力生体学」を学ぶが、学費と治療費という冷酷な現実が彼の行く手を阻む。 希望と絶望の狭間で、翔に残された道はただ一つ――危険なダンジョンに潜り、泥臭く魔石を稼ぐこと。 英雄とも呼べるようなSランク探索者が脚光を浴びる華やかな世界とは裏腹に、翔は今日も一人、薄暗いダンジョンの奥へと足を踏み入れる。 これは、神に選ばれなかった「持たざる者」が、絶望的な現実にもがきながら、たった一つの希望を掴むために抗い、やがて世界の真実と向き合う、戦いの物語。 彼の「無属性」の力が、世界を揺るがす光となることを、彼はまだ知らない。 テンプレのダンジョン物を書いてみたくなり、手を出しました。 SF味が増してくるのは結構先の予定です。 スローペースですが、しっかりと世界観を楽しんでもらえる作品になってると思います。 良かったら読んでください!

乙女ゲームのヒロインに転生、科学を駆使して剣と魔法の世界を生きる

アミ100
ファンタジー
国立大学に通っていた理系大学生カナは、あることがきっかけで乙女ゲーム「Amour Tale(アムール テイル)」のヒロインとして転生する。 自由に生きようと決めたカナは、あえて本来のゲームのシナリオを無視し、実践的な魔法や剣が学べる魔術学院への入学を決意する。 魔術学院には、騎士団長の息子ジーク、王国の第2王子ラクア、クラスメイト唯一の女子マリー、剣術道場の息子アランなど、個性的な面々が在籍しており、楽しい日々を送っていた。 しかしそんな中、カナや友人たちの周りで不穏な事件が起こるようになる。 前世から持つ頭脳や科学の知識と、今世で手にした水属性・極闇傾向の魔法適性を駆使し、自身の過去と向き合うため、そして友人の未来を守るために奮闘する。 「今世では、自分の思うように生きよう。前世の二の舞にならないように。」

クラスの陰キャボッチは現代最強の陰陽師!?~長らく継承者のいなかった神器を継承出来た僕はお姉ちゃんを治すために陰陽師界の頂点を目指していたら

リヒト
ファンタジー
 現代日本。人々が平和な日常を享受するその世界の裏側では、常に陰陽師と人類の敵である妖魔による激しい戦いが繰り広げられていた。  そんな世界において、クラスで友達のいない冴えない陰キャの少年である有馬優斗は、その陰陽師としての絶大な才能を持っていた。陰陽師としてのセンスはもちろん。特別な神具を振るう適性まであり、彼は現代最強の陰陽師に成れるだけの才能を有していた。  その少年が願うのはただ一つ。病気で寝たきりのお姉ちゃんを回復させること。  お姉ちゃんを病気から救うのに必要なのは陰陽師の中でも本当にトップにならなくては扱えない特別な道具を使うこと。    ならば、有馬優斗は望む。己が最強になることを。    お姉ちゃんの為に最強を目指す有馬優斗の周りには気づけば、何故か各名門の陰陽師家のご令嬢の姿があって……っ!?

処理中です...