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一年生
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「カイ……えっとお疲れ?」
ルースが労ってくれようとしているが、少々困った表情だ。
「……疲れる前に終わったんだが?」
「あははは……だよね」
勝利してルードリア学園側の観客席へと戻ったものの、なんとも微妙な表情で出迎えてくれるクラスメイトたち。
それもそうだろう。
白熱した闘いになると思いきや、盛り上がりに欠ける圧勝で終わったのだから。
「ルナ先生、アルグランド学園の代表ってあれほど弱いものなんですか?」
不思議に思った俺はルナ先生に質問してみる。
「言っておきますが、例年通りであれば彼は優等生の部類に入りますよ?今年のあなたたちが異常なのです」
「それってどういう……」
「私にも詳しく説明していただきましょうか?ルナ先生?」
ん?誰だ?
「これはこれは、アルグランド学園のペトル教授ではありませんか。何をご説明したら良いのでしょうか?」
なるほど、アルグランド学園の先生か。
三十代前半くらいだと思う。
短めの茶髪は綺麗に整えられ、銀縁眼鏡の下にある切れ長の目からは冷たさを感じる。
丁寧な言葉遣いとは違い、見下す視線はダクドと一緒だな。
生徒があれなら教師も似たようになるわけだ。
「しらばっくれるのはよろしい。あなた方は指導マニュアルを大きく逸脱していますね?」
「指導マニュアル?」
俺が口を挟むと、ペトル教授は鋭い視線を俺に向けてきた。
「そうだ。アルグランド学園には三年間での完璧な育成プログラムがある。そして各学園にもそのプログラムに従った指導マニュアルを配布している。それによれば一年生の間は無茶なカリキュラムは禁止だ。生徒の安全のためにな。これは多くの生徒を見てきたアルグランド学園だからこそできるものである。それを無視するとはどういうことですか?」
説明を終えると再び視線をルナ先生に戻す。
「お言葉ですが、無茶なカリキュラムなどは一切しておりません」
「先ほどの闘いを観れば明らかに完成度が違う。そんなことは教師から見れば一目瞭然だ。どれだけ無茶な指導をしたのかと聞いている」
「重ねて言いますが、一切しておりません」
荒くなる言葉遣いを前にしても、ルナ先生は冷静に返していく。
「ならば誰があれほどの実力を引き出したのだ!」
「生徒自身です」
「生徒自身だと?」
「はい、私たちはほんの少し手助けをしただけです」
……ほんの少し?
俺は二年生との模擬戦前に行われた地獄の特訓を思い出した。
それはフレアたちも同じのようだ。
おかげでサリアのような無表情になってしまっている。
「……君の生徒たちの表情が無になったが?」
「……時には厳しくなることもあったでしょうが、主体となったのは生徒たち自身です」
「そんな生徒のはやる気持ちを抑えることも教師の役目だ。成長は一日にしてならず。少しづつ確実に歩んでいくことこそが肝要だろう」
「そうして生徒自身に何も考えさせないつもりですか?だからこそあなた方の生徒の創造力、思考力は落ちていくばかりなのです」
「貴様、愚弄するか!」
「事実を言ったまでです。ダクド君との試合でカイ君は慎重に事を運びました。初見である相手の実力を見極めることに重きを置いたのです。ですが、ダクド君はどうでしたか?」
「うっ……」
「何も考えず、召喚獣を単騎で向かわせました。定石ならば上空と地の二面から同時に攻めていくでしょう?それをしなかった結果、各個撃破されて試合終了です。人の教育方針に文句を言う前に闘いの基本を教えてあげてくださいませんか?私のクラスにはリビングメイルだからと油断する生徒は一人もいませんよ?」
「くっ!失礼する!だが、覚えておけ!我が学園の首席には勝てんぞ!」
ニッコリと笑みを浮かべたルナ先生の言葉に何も言い返さなかったのか、捨て台詞だけを残して去って行った。
ルナ先生……俺たちのことをちゃんと見てくれて……
「……うふふ!見ましたかあの悔しそうな顔!ああすっきりしました!」
初めて見るルナ先生の満面の笑み。
「ルナはいつも女教師ってことでグダグダ言われてたからなぁ……」
「しかも学者よりの人で、理屈っぽいのがなおさらルナ先生に合わないんですよ……」
ひそひそと小さな声でガレフ先生とサフィール先生が、俺にルナ先生の笑顔の理由を教えてくれる。
「ああ……ルナ先生って結構パワータイプですからね……」
「カイ君!」
「は、はい!なんでしょう!?」
ペトル教授の背中を見送っていたルナ先生が俺へと振り返った。
俺の呟きが聞こえてしまったのか?
そう焦ったのだが、
「よくやってくれました!」
むぎゅっ!
「ひゃい!?」
笑顔のルナ先生は俺の身体に抱きついてきた。
俺の胸に控えめな柔らかな感触と、長い髪からはいい香りが漂う。
「「「ああっ!?」」」
「ルナ先生!離れてください!」
「そうですよ!」
「ダメ!」
騒がしい声が遠い場所でのことのように感じる中、俺は思う。
ルードリア学園でよかった……
はぁ……いろんな意味が含まれていそうですね……
ルースが労ってくれようとしているが、少々困った表情だ。
「……疲れる前に終わったんだが?」
「あははは……だよね」
勝利してルードリア学園側の観客席へと戻ったものの、なんとも微妙な表情で出迎えてくれるクラスメイトたち。
それもそうだろう。
白熱した闘いになると思いきや、盛り上がりに欠ける圧勝で終わったのだから。
「ルナ先生、アルグランド学園の代表ってあれほど弱いものなんですか?」
不思議に思った俺はルナ先生に質問してみる。
「言っておきますが、例年通りであれば彼は優等生の部類に入りますよ?今年のあなたたちが異常なのです」
「それってどういう……」
「私にも詳しく説明していただきましょうか?ルナ先生?」
ん?誰だ?
「これはこれは、アルグランド学園のペトル教授ではありませんか。何をご説明したら良いのでしょうか?」
なるほど、アルグランド学園の先生か。
三十代前半くらいだと思う。
短めの茶髪は綺麗に整えられ、銀縁眼鏡の下にある切れ長の目からは冷たさを感じる。
丁寧な言葉遣いとは違い、見下す視線はダクドと一緒だな。
生徒があれなら教師も似たようになるわけだ。
「しらばっくれるのはよろしい。あなた方は指導マニュアルを大きく逸脱していますね?」
「指導マニュアル?」
俺が口を挟むと、ペトル教授は鋭い視線を俺に向けてきた。
「そうだ。アルグランド学園には三年間での完璧な育成プログラムがある。そして各学園にもそのプログラムに従った指導マニュアルを配布している。それによれば一年生の間は無茶なカリキュラムは禁止だ。生徒の安全のためにな。これは多くの生徒を見てきたアルグランド学園だからこそできるものである。それを無視するとはどういうことですか?」
説明を終えると再び視線をルナ先生に戻す。
「お言葉ですが、無茶なカリキュラムなどは一切しておりません」
「先ほどの闘いを観れば明らかに完成度が違う。そんなことは教師から見れば一目瞭然だ。どれだけ無茶な指導をしたのかと聞いている」
「重ねて言いますが、一切しておりません」
荒くなる言葉遣いを前にしても、ルナ先生は冷静に返していく。
「ならば誰があれほどの実力を引き出したのだ!」
「生徒自身です」
「生徒自身だと?」
「はい、私たちはほんの少し手助けをしただけです」
……ほんの少し?
俺は二年生との模擬戦前に行われた地獄の特訓を思い出した。
それはフレアたちも同じのようだ。
おかげでサリアのような無表情になってしまっている。
「……君の生徒たちの表情が無になったが?」
「……時には厳しくなることもあったでしょうが、主体となったのは生徒たち自身です」
「そんな生徒のはやる気持ちを抑えることも教師の役目だ。成長は一日にしてならず。少しづつ確実に歩んでいくことこそが肝要だろう」
「そうして生徒自身に何も考えさせないつもりですか?だからこそあなた方の生徒の創造力、思考力は落ちていくばかりなのです」
「貴様、愚弄するか!」
「事実を言ったまでです。ダクド君との試合でカイ君は慎重に事を運びました。初見である相手の実力を見極めることに重きを置いたのです。ですが、ダクド君はどうでしたか?」
「うっ……」
「何も考えず、召喚獣を単騎で向かわせました。定石ならば上空と地の二面から同時に攻めていくでしょう?それをしなかった結果、各個撃破されて試合終了です。人の教育方針に文句を言う前に闘いの基本を教えてあげてくださいませんか?私のクラスにはリビングメイルだからと油断する生徒は一人もいませんよ?」
「くっ!失礼する!だが、覚えておけ!我が学園の首席には勝てんぞ!」
ニッコリと笑みを浮かべたルナ先生の言葉に何も言い返さなかったのか、捨て台詞だけを残して去って行った。
ルナ先生……俺たちのことをちゃんと見てくれて……
「……うふふ!見ましたかあの悔しそうな顔!ああすっきりしました!」
初めて見るルナ先生の満面の笑み。
「ルナはいつも女教師ってことでグダグダ言われてたからなぁ……」
「しかも学者よりの人で、理屈っぽいのがなおさらルナ先生に合わないんですよ……」
ひそひそと小さな声でガレフ先生とサフィール先生が、俺にルナ先生の笑顔の理由を教えてくれる。
「ああ……ルナ先生って結構パワータイプですからね……」
「カイ君!」
「は、はい!なんでしょう!?」
ペトル教授の背中を見送っていたルナ先生が俺へと振り返った。
俺の呟きが聞こえてしまったのか?
そう焦ったのだが、
「よくやってくれました!」
むぎゅっ!
「ひゃい!?」
笑顔のルナ先生は俺の身体に抱きついてきた。
俺の胸に控えめな柔らかな感触と、長い髪からはいい香りが漂う。
「「「ああっ!?」」」
「ルナ先生!離れてください!」
「そうですよ!」
「ダメ!」
騒がしい声が遠い場所でのことのように感じる中、俺は思う。
ルードリア学園でよかった……
はぁ……いろんな意味が含まれていそうですね……
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